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畔
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ほとり
ふりがな文庫
“
畔
(
ほとり
)” の例文
往時
(
むかし
)
は匪徒を伊豆の諸島に流すに、この橋の
畔
(
ほとり
)
と永代橋の畔より船を出すを例とし、かつこゝよりするものは帰期あるものと予定し
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
偶々
(
たまたま
)
道に迷うて、旅人のこの
辺
(
あたり
)
まで踏み込んで、この物怖しの池の
畔
(
ほとり
)
に来て見ると、こは不思議なことに年若い女が
悄然
(
しょんぼり
)
と
佇
(
たたず
)
んで
森の妖姫
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
藤木家の
寺院
(
おてら
)
は、浅草菊屋橋の
畔
(
ほとり
)
にあって、堂々とした、そのくせ閑雅な、広い
庫裏
(
くり
)
をもち、
藪
(
やぶ
)
をもち、かなり墓地も手広かった。
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかし江戸時代には、日本橋の
畔
(
ほとり
)
も、決してそうした無秩序ではなかったのであろう。もっと整理されたものであったのであろう。
日本橋附近
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その沼の
畔
(
ほとり
)
から
小半町
(
こはんちょう
)
ほど離れた原の真中に、十七八の美しい娘が頭の天辺から割りつけられ、血に染まって俯伏せに倒れていた。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
今朝は日曜なれば家に
在
(
あ
)
れど、心は楽しからず。エリスは
床
(
とこ
)
に
臥
(
ふ
)
すほどにはあらねど、
小
(
ち
)
さき
鉄炉
(
てつろ
)
の
畔
(
ほとり
)
に
椅子
(
いす
)
さし寄せて言葉すくなし。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
湯本達のベッドは、赤絵具を溶いて流した血の池地獄の
畔
(
ほとり
)
にあった。このサディストとマゾヒストは、そこで
夜毎
(
よごと
)
の痴戯を楽しむのだ。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そこから池之端へ出、
不忍
(
しのばず
)
の池の
畔
(
ほとり
)
をまわって、弁天の茶屋のほうへゆくあいだ、新八はうしろから、おみやの姿をつくづくと眺めた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
こうして、すでに
長蛇
(
ちょうだ
)
を逸し去った曹操は、ぜひなく途中に軍の行動を停止して、各地に散開した追撃軍を漢水の
畔
(
ほとり
)
に
糾合
(
きゅうごう
)
したが
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
我物語を
傍聽
(
かたへぎゝ
)
せし醫師は公子に向ひ頭を傾けて、さては君の此人を搜し得給ひしは彼魔窟の
畔
(
ほとり
)
なりけるよといひぬ。公子。さなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
セルギウスは夕方になつて或る村の
畔
(
ほとり
)
に来た。併しその村には足を入れずに河の方へ歩いて往つて、
懸崖
(
がけ
)
の下で夜を明かした。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
幽邃
(
ゆうすい
)
の趣きをたたえた
山裾
(
やますそ
)
の水の
畔
(
ほとり
)
を歩いたりして、日の暮れ方に帰って来たことなどもあって、また二日三日と日がたった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
丑満
(
うしみつ
)
も既に過ぎ去った。おりから
戸外
(
そと
)
の夜嵐が、ハタとばかりに途絶えたが、池の
畔
(
ほとり
)
で物を洗う、
幽
(
かす
)
かの水音が聞こえて来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
大正池の
畔
(
ほとり
)
に出て
草臥
(
くたび
)
れを休めていると池の中から絶えずガラガラガラ何かの機械の歯車の
轢音
(
れきおん
)
らしいものが聞こえて来る。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
渓の
畔
(
ほとり
)
にありいにしへは大蛇ありて
妖
(
よう
)
をなす時に弘法(大師)
持咒
(
じじゅう
)
したまいければ大蛇忽ち他所にうつりて跡に柳生ぜり因て此名ありといふ
植物一日一題
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
かの女は水の
浄
(
きよ
)
らかな美しい河の
畔
(
ほとり
)
でをとめとなつた女である。
其
(
そ
)
の川の水源は
甲斐
(
かい
)
か
秩父
(
ちちぶ
)
か、地理に
晦
(
くら
)
いをとめの頃のかの女は知らなかつた。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
信長鷹野で小鳥を得ると、政秀この鳥を食えよと空になげ、小川の
畔
(
ほとり
)
に在っては政秀この水を飲めよと叫び涙を流した。
桶狭間合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
丁度その図面にあらわれているのも岸本が旅で
逢
(
あ
)
ったと同じ季節の秋で、よく行って歩き廻ったヴィエンヌ河の
畔
(
ほとり
)
の旅情を
喚起
(
よびおこ
)
すに十分であった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
澄んだ
叡智
(
えいち
)
とに輝いた便りを下さった時、また湖の
畔
(
ほとり
)
の旅館からの静かな心をこめた手紙、また母上を東京に送って行かれて帰られた時の手紙など
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
さてこのひさきは奈良の都の
佐保川
(
さほがわ
)
の
畔
(
ほとり
)
などに、川風に吹かれて生長していたようである。渡来した理由はやはり薬種に関係があったからであろう。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
しかし楚の王が師を
興
(
おこ
)
してはるばる淮河の
畔
(
ほとり
)
から孔子を迎えたというような大事件が、『論語』の中に全然痕跡を残していないのは何ゆえであろうか。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
今日
(
きょう
)
一日は山中に潜伏して、日の暮るるを待って里へ出る方が安全であろうと、
飢
(
ひもじ
)
い腹を抱えて
当途
(
あてど
)
も無しに
彷徨
(
さまよ
)
う
中
(
うち
)
に、彼は
大
(
おおい
)
なる谷川の
畔
(
ほとり
)
に出た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これはアパラツチエン山の幹から出た小枝で、遙に西に向つて、仰いで見れば、麓は河の
畔
(
ほとり
)
に垂れて、
巓
(
いたゞき
)
は空に聳え、自づと近隣の地を支配して居ます。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
自分は小山にこの際の自分の感情を語りながら行くと、
一条
(
ひとすじ
)
の流れ、薄暗い林の奥から音もなく走り
出
(
い
)
でまた林の奥に没する
畔
(
ほとり
)
に来た。一個の橋がある。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
忽
(
たちま
)
ち
一閃
(
いつせん
)
の光ありて焼跡を貫く道の
畔
(
ほとり
)
を照しけるが、その
燈
(
ともしび
)
の
此方
(
こなた
)
に向ひて
近
(
ちかづ
)
くは、巡査の
見尤
(
みとが
)
めて
寄来
(
よりく
)
るなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
余
(
よ
)
明治
(
めいぢ
)
三十五
年
(
ねん
)
春
(
はる
)
四
月
(
ぐわつ
)
、
徳島
(
とくしま
)
を
去
(
さ
)
り、
北海道
(
ほくかいだう
)
に
移住
(
いぢゆう
)
す。
是
(
これ
)
より
先
(
さ
)
き、
四男
(
しなん
)
又一
(
またいち
)
をして、
十勝國
(
とかちのくに
)
中川郡
(
なかがはごほり
)
釧路國
(
くしろのくに
)
足寄郡
(
あしよろごほり
)
に
流
(
なが
)
るゝ
斗滿川
(
とまむがは
)
の
畔
(
ほとり
)
に
牧塲
(
ぼくぢやう
)
を
經營
(
けいえい
)
せしむ。
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
の如き
能
(
よ
)
くわが記憶する所なり。現に
城南新橋
(
じょうなんしんきょう
)
の
畔
(
ほとり
)
南鍋街
(
なんこがい
)
の一
旗亭
(
きてい
)
にも
銀屏
(
ぎんぺい
)
に酔余の筆を残したまへるがあり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
博士の『水と原生林の
畔
(
ほとり
)
にて』は邦訳もあった筈であり、その自叙伝『我が生涯と思想』は日本の読書界にもかなりよく読まれたということを聴いている。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
ロンドンのテームス河の
畔
(
ほとり
)
で、一匹の小さい
船喰虫
(
ふなくいむし
)
が、
頻
(
しき
)
りに材木をかじっていました。ちょっときくと、それは私どもお互いとは、なんの関係もないようです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
さつき晴なる折々は広瀬川の
畔
(
ほとり
)
にもさまよひ青野の
涯
(
はて
)
に海を見る天主台、むかひ山などにものぼりぬ。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
向うの平地へ
驀地
(
まっしぐら
)
に走る、森は孤立した小島になる、水楊が川の
畔
(
ほとり
)
にちょんぼりと、その蒼い灰のような、水銀白を柔らかに
布
(
し
)
いた薄葉を微風にうら
反
(
が
)
えしている
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
それはいうまでもなく夢のように記憶の底にある池の
畔
(
ほとり
)
の森に囲まれた家を捜すためである。家の主人は一里ばかり離れたところに大きな池があると教えてくれた。
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
深山を下ること二里余り、
紺碧
(
こんぺき
)
の水を
湛
(
たた
)
えたる湖の
畔
(
ほとり
)
へ出た。ここで渇したる
咽
(
のど
)
を清水に
濡
(
うる
)
おし、物凄き山中を行くと、深林の中に人が歩るいたらしい
小径
(
しょうけい
)
がある。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
貢さんは
兎
(
うさぎ
)
の
跳
(
と
)
ぶ様に駆け出して桑畑に入つて行つた。
畑
(
はたけ
)
の
中
(
なか
)
にお濱さんは居ない。
沼
(
ぬま
)
の
畔
(
ほとり
)
に出た。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
極度の緊張から
驚駭
(
きょうがい
)
へ、驚駭から失望へ、失望から
弛緩
(
しかん
)
へ、私は恐ろしい夢と、金を取戻した
儚
(
はかな
)
い喜びの夢を、
夢現
(
ゆめうつつ
)
の境に夢みながら、琵琶湖の
畔
(
ほとり
)
をひた走りしていた。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
勝道はまた庚申講の熱心な勧進者であったが、村の流れの駒形岩の淵の
畔
(
ほとり
)
において、やはり竜神の饗応を受け、その食物を食べたという点は、丹後紀伊などと似ていた。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ことに東山の
畔
(
ほとり
)
のこととて人の足音もふっつりと絶えていたが、
蒼白
(
あおじろ
)
く
靄
(
もや
)
の立ちこめた空には、ちょうど十六、七日ばかりの月が明るく照らして、頭を
仰
(
あお
)
のけて
眺
(
なが
)
めると
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
天龍寺の
峨山
(
がざん
)
和尚が、ある時食後の腹ごなしに境内の池の
畔
(
ほとり
)
をぶらぶらしてゐた事があつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
浦幌
(
うらほろ
)
川に流れ込むその清水の谷川の
畔
(
ほとり
)
には、半分腐れかけた幾本もの大木が倒れていた。雄吾はそれらの大木を
跨
(
また
)
ぐのが面倒なので、猟銃を杖にして木から木へと伝い歩いた。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
二十荷の桶がぶっつかり、たぽたぽと鳴る。ぎぎぎと
軋
(
きし
)
み、トラックが急停車したので、前の板で大方額を打つところであった。トラックは唐人川尻の土橋の
畔
(
ほとり
)
に止まっていた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そしてその
翌
(
あく
)
る日は、いよいよ今日がお名残の日というので、また岬から工事場の跡、湖の
畔
(
ほとり
)
まで
姉妹
(
きょうだい
)
と連れ立って、遊びに出かけましたが、その日はとても蒸し暑い日でした。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
唐の高宗の時に
柳毅
(
りゅうき
)
という書生があった。文官試験を受けたが合格しなかったので、故郷の呉に帰るつもりで
涇川
(
けいせん
)
の
畔
(
ほとり
)
まで帰ってきたが、その涇川の北岸に同郷の者が住んでいた。
柳毅伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そういう武装は、原始林にいどみ、野獣に備え、
餌
(
え
)
ものを
漁
(
あさ
)
る用具であった。踏みあばいて行く川の
畔
(
ほとり
)
の
濶葉樹
(
かつようじゅ
)
つづきの森林に、彼らはふと、黒々と見える常緑の
水松
(
おんこ
)
を発見した。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
海老名
(
えびな
)
弾正
(
だんじょう
)
君司会のもとに、箱根山上、蘆の湖の
畔
(
ほとり
)
においてなしたものであります。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
筧
(
かけひ
)
の水音を枕に聞く
山家
(
やまが
)
の住居。山雨常に来るかと疑う
渓声
(
けいせい
)
の
裡
(
うち
)
。平時は
汪々
(
おうおう
)
として声なく音なく、一たび怒る時万雷の崩るゝ如き大河の
畔
(
ほとり
)
。裏に
鳧
(
ふ
)
を飼い門に舟を
繋
(
つな
)
ぐ江湖の住居。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
伯父の作った
胡瓜
(
きゅうり
)
の漬けたのを、
美味
(
うま
)
い美味いといって随分沢山食って行ったことと、それからこれも伯父の趣味であろうが、ここの浴室は、全然離れた庭の端の金鱗湖のすぐ
畔
(
ほとり
)
の所に
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
烏江
(
うこう
)
水浅
(
みずあさくして
)
騅能逝
(
すいよくゆくも
)
、
一片
(
いっぺんの
)
義心
(
ぎしん
)
不可東
(
ひんがしすべからず
)
とは、
往古
(
おうこ
)
漢楚
(
かんそ
)
の戦に、
楚軍
(
そぐん
)
振
(
ふる
)
わず
項羽
(
こうう
)
が走りて
烏江
(
うこう
)
の
畔
(
ほとり
)
に至りしとき、或人はなお江を渡りて、
再挙
(
さいきょ
)
の望なきにあらずとてその死を
留
(
とど
)
めたりしかども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
鶴の青銅の噴水のある池の
畔
(
ほとり
)
の
亭
(
ちん
)
にかけて降る雪を眺めていたら、雪は薄く街の灯をてりかえしていて白雪紛々。紅梅の枝に柔かくつもってまるで紅梅が咲いているような匂わしい優美さでした。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして、上野の
不忍
(
しのばず
)
の池の
畔
(
ほとり
)
に来たときに自然と二人の足は
停
(
と
)
まった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
と団さんは池の
畔
(
ほとり
)
のベンチにかけて煙を吐きながら語りだした。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
畔
常用漢字
中学
部首:⽥
10画
“畔”を含む語句
河畔
川畔
橋畔
畔道
池畔
湖畔
墓畔
畔路
畔放
江畔
田畔
畔倉
畦畔
畔傳
畔田翠山
畔柳芥舟
畔柳
畔田
水畔
宍道湖畔
...