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横顏
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よこがほ
と
向を
替へて、
團扇を
提げて、すらりと
立つた。
美人は
庭を
差覗く……
横顏は
尚ほ、くつきりと、
鬢の
毛は
艷増したが、
生憎草は
暗かつた。
御覽と
其所へ
置ばお光は
會釋し
行燈を
引寄頻りに見る
側で茶を
汲み
菓子を
薦めながら其の
横顏をつく/″\と
眺めて
意に
思ふやう
自分の方から
更るを待ち
親を
次の
日宗助が
役所の
歸りがけに、
電車を
降りて
横町の
道具屋の
前迄來ると、
例の
獺の
襟を
着けた
坂井の
外套が
一寸眼に
着いた。
横顏を
徃來の
方へ
向けて、
主人を
相手に
何か
云つてゐる。
尻目にかけて
振むかふともせぬ
横顏を
睨んで、
能い
加減に
人を
馬鹿にしろ、
默つて
居れば
能い
事にして
惡口雜言は
何の
事だ、
知人なら
菓子位子供にくれるに
不思議もなく、
貰ふたとて
何が
惡るい
工學士は、
井桁に
組んだ
材木の
下なる
端へ、
窮屈に
腰を
懸けたが、
口元に
近々と
吸つた
卷煙草が
燃えて、
其若々しい
横顏と
帽子の
鍔廣な
裏とを
照らした。
それが
如何にも
血色のわるい
横顏なのに
驚ろかされて
然る
大商人の
息子にてしがない
消光に
追るゝゆゑ
繕ひもせず
花香もなき此身の
姿がお目に
止り夫程迄に戀慕うて下さるといふ有難さ
勿體なやと
計にて
嬉しさ
交る
恥かしさに
塵のみ
捻りてゐたるゆゑ今改めて
父親に問れたりとて
回答も出來ず
押默止てゐる
横顏を
(あゝん、
此のさきの
下駄屋の
方が
可か、お
前好な
處で
買へ、あゝん。)と
念を
入れて
見たが、
矢張默つて、
爾時は、おなじ
横顏を
一寸背けて、あらぬ
處を
見た。
……そして、
肩越しに
此方を
見向いた、
薄手の、
中だかに、すつと
鼻筋の
通つた
横顏。
頬のかゝり
白々と、
中にも、
圓髷に
結つた
其の
細面の
氣高く
品の
可い
女性の、
縺れた
鬢の
露ばかり、
面窶れした
横顏を、
瞬きもしない
雙の
瞳に
宿した
途端に、スーと
下りて、
板の
間で
と
一寸横顏を
旦那の
方に
振向けて、
直ぐに
返事をした。
此の
細君が、
恁う
又直ちに
良人の
口に
應じたのは、
蓋し
珍しいので。……
西洋の
諺にも、
能辯は
銀の
如く、
沈默は
金の
如しとある。
母樣の
前であるから、
何の
見得も、
色氣もなう、
鼻筋の
通つた、
生際のすつきりした、
目の
屹として、
眉の
柔しい、お
小姓だちの
色の
白い、
面長なのを
横顏で、——
團子を
一串小指を
撥ねて
と
裳をすらりと
駒下駄を
踏代へて
向直ると、
半ば
向うむきに、すつとした
襟足で、
毛筋の
通つた
水髮の
鬢の
艶。と
拔けさうな
細い
黄金脚の、
淺黄の
翡翠に
照映えて
尚ほ
白い……
横顏で
見返つた。