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よこがほ
次の
日宗助が
役所の
歸りがけに、
電車を
降りて
横町の
道具屋の
前迄來ると、
例の
獺の
襟を
着けた
坂井の
外套が
一寸眼に
着いた。
横顏を
徃來の
方へ
向けて、
主人を
相手に
何か
云つてゐる。
尻目にかけて
振むかふともせぬ
横顏を
睨んで、
能い
加減に
人を
馬鹿にしろ、
默つて
居れば
能い
事にして
惡口雜言は
何の
事だ、
知人なら
菓子位子供にくれるに
不思議もなく、
貰ふたとて
何が
惡るい
けれど、
五月雨の
頃とて、
淡青い
空気にへだてられたその
横顔はほのかに
思ひうかぶ。
ネル
着けてランプを
点す
横顔のやはらかき涙にまじり