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横顔
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よこがほ
此の
煽動に
横顔を
払はれたやうに
思つて、
蹌踉としたが、
惟ふに
幻覚から
覚めた
疲労であらう、
坊主が
故意に
然うしたものでは
無いらしい。
三四郎はそれを見当に
覘を付けた。——舞台の
端に立つた与次郎から一直線に二三
間隔てゝ美禰子の
横顔が見えた。
けれど、
五月雨の
頃とて、
淡青い
空気にへだてられたその
横顔はほのかに
思ひうかぶ。
ネル
着けてランプを
点す
横顔のやはらかき涙にまじり
三四郎は自分の方を見てゐない。女は
先へ行く足をぴたりと
留めた。
向から三四郎の
横顔を熟視してゐた。
駅員の
一人は、
帽子とゝもに、
黒い
頸窪ばかりだが、
向ふに
居て、
此方に
横顔を
見せた
方は、
衣兜に
両手を
入れたなり、
目を
細め、
口を
開けた、
声はしないで、あゝ、
笑つてると
思ふのが
うつむく
横顔の
薄い
白粉を
汗ばませ
眉毛を
長く、
睫毛を
濃く、
彼方を
頸に、
満坐の
客を
背にして、
其の
背の
方は、
花輪が
隔てゝ、
誰にも
見えない。——
此方に
斜くらゐな
横顔で、
鼻筋がスツとして、
微笑むだやうな
白歯が
見えた。
坊主は、
時々眼を
開いて、
聞澄す
美女の
横顔を
窺ひ
見る。