ここ)” の例文
ここに於て日本は彼の長を採って我の短を補うたことがく分る。総じて物事は一利一害で、仏教なり儒教なり多少の害を伴っておる。
女子教育の目的 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
ここに於て守る者便べんを得、連夜水をみて城壁にそそげば、天寒くしてたちまち氷結し、明日に至ればまた登ることを得ざるが如きことありき。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここおいせいぐんものをして、(五三)萬弩ばんどみちはさんでふくせしめ、(五四)していはく、『くれがるをともはつせよ』
ここにおいてわたくしは、外崎さんの捜索をわずらわすまでもなく、保さんの今の牛込うしごめ船河原町ふながわらちょうの住所を知って、すぐにそれを外崎さんに告げた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここにおいてか芭蕉は無比無類の俳人として認められ、また一人のこれに匹敵ひってきする者あるを見ざるの有様なりき。芭蕉は実に敵手なきか。いわく、否。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここテ相逢フゴトニ先生ノ文ト翁ノ学トヲ追称ス。交誼こうぎただニ門ヲ同ジクスルノミニアラズ。このこロソノ青年ノ所著『親灯余影』ナル者ヲ示サル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
予はここに於て、予が警告をふたたびするの、必要なる所以ゆゑんを感ぜざるあたはず。予は全然正気しやうきにして、予が告白は徹頭徹尾事実なり。卿等さいはひにそを信ぜよ。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わだの源と天の戸閉塞とぢふさがりて天よりの雨やみぬ。ここに於て水次第に地より退き百五十日を経てのち水減り、方舟はこぶねは七月に至り其月の十七日にアララテの山に止りぬ。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
ここにおいて個物は既に機械的でもなく、単に合目的的でもなく、形成的でなければならない。動物的身体的であっても、意識的であるかぎりくいうことができる。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
ここにおいてか、或るものは意外の成功に誇り、或るものは幻滅の悲哀を感ずる。誰かかかる転変と、かくして現出せる新しき世界の状態とを予知し得るものがあろうぞ。
歴史の矛盾性 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
むしろこういう顕著けんちょなる実例にもとづいて、改めてここから研究せられてよい問題である故に、ひろく児童文化の考察者のために、我々はこの記録を残して置きたいのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
政府は政令を行ひ、軍備を設け、一国の男女を保護して、其身体、生命、財産、名誉、自由を侵害せしめざるを任務とす。ここを以て国民は軍事に服し国費を負担するの義務あり。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
「日本書紀」には、「伊弉諾尊いざなぎのみこと伊弉冉尊いざなみのみこと、天の浮橋の上に立たして、共に計りて、底つ下に国や無からんとのり給ひて、すなはあめ瓊矛ぬぼこを指しおろして、滄海を探ぐりしかばここに獲き。 ...
日本天変地異記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ここにおいて我が正義党は国民の名により、世界正義の名により、閣下に対し天誅を加うるの余儀よぎなきに至りたることを遺憾とす。既に我が党は中央執行委員会にてこのことを議決せり。
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
ここからは道を離れ沢を離れて、山の神尾根の登りに懸るのである、少し登るとシシ崩れと称する大きなガレ(山側の崩壊したる所をいう)があるので、猟師はこれをシシ崩れの道と呼んでいる。
大井川奥山の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
権徳輿の晩渡揚子江の詩に云ふ、遠岫有無中、片帆烟水ほとりと。已に是れ維語を用ふ。欧陽公の長短句に云ふ、平山闌檻倚晴空、山色有無中と。詩人ここに至つてけだし三たび用ふ。
予がさきに諸君に向いて、凄まじきものの経験を有せりと謂いしはここなり。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここに於て作家は如何どうしても其主観を修養しなければならん事になる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ここおいテ項王すなわチ悲歌慷慨こうがいシ自ラ詩ヲつくリテいわク「力山ヲ抜キ気世ヲおおフ、時利アラズ騅カズ、騅逝カズ奈何いかんスベキ、虞ヤ虞ヤなんじ奈何いかニセン」ト。歌フコト数けつ、美人之ニ和ス。項王なみだ数行下ル。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
狂態もここに至りて極まれり。
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
李克りこくいはく、『たんにしていろこのむ。しかれどもへいもちふるは、司馬穰苴しばじやうしよぐるあたはざるなり』と。ここおい文矦ぶんこうもつしやうす。
すなわち城外の諸渓しょけいの水をきてそそぎ、一城のを魚とせんとす。城中ここに於ておおいに安んぜず。鉉曰く、おそるゝなかれ、われに計ありと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここに於て常に社会のために力を尽さるる有力なる諸君は、今後益々この大学のために助力さるることを信じて疑わぬのである。
早稲田大学の教旨 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
そしてその弊をすくうには、ただ個人教育の法を参取する一途があるのみである。ここにおいて世には往々昔の儒者の家塾を夢みるものがある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一、第一期は何人なんぴとにても修し得べく、第二期はやや専門に属す。ここを以て天才ある者は殆んど第一期を通過せずして初めより第二期に入ることあり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここに於て、中央公論記者も「梅花の」なる語を用ゐるならん。)梅花を唯愛すべきジエヌス・プリヌスの花とすは紅毛碧眼こうまうへきがんの詩人のことのみ。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
松塘の社中から『七曲吟社絶句』初編二巻が出たのは少しく後れて明治十二年己卯きぼうの秋であった。ここて見るも当時詩賦の盛であったことが知られるであろう。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ここにおいて議するものあり曰く国家の俸禄をむ史家は誤謬の索捜を勉めて国史の美観を損ずと。曰く国庫の資を以て蒐集したる断簡零墨を憑拠としてみだりに賢相名臣の跡を抹殺すと。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
矛盾的自己同一的に自己自身を形成する社会は、ここにおいてイデヤ的形成的として国家となる、即ち理性的となるのである。かかる社会の形成要素として我々は具体的人格となるのである。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
ここに至って私は後立鹿島槍同山説を主張して、てこでも動かぬ考である。
闔廬かふろいはく、『こころみに婦人ふじんもつてすきか』と。いはく、『なり』と。ここおいこれゆるす。宮中きうちう美女びぢよいだし、百八十にんたり。
寒生のわたくしがその境界をうかがい知ることを得ぬのは、乞丐こつがいが帝王の襟度きんど忖度そんたくすることを得ぬと同じである。ここにおいてや僭越のそしりが生ずる。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
即ち仮りにここに家というとも、夫なくんば家を成さぬのである。ここに於て、次いで現れたるものは一夫多妻である。
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
ここに至りて人その言の応を知りぬ。燕王今はていたり、宮人内侍ないじなじりて、建文帝の所在を問いたもうに、皆皇后の死したまえるところを指してこたう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここにおいて余はようやく不折君を信ずるの深きと共に君を見るの遅きをたんじたり。これより後また新聞の画に不自由を感ずる事なかりき。(六月二十五日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここクソノ機宜ヲ詳ニシソノ形勢ヲことごとクス。然レバ則海防ノ策コノ篇ヨリ善キハシ。予乃チ抄シテコレヲニ付シ題シテ『聖武記採要』トイヒ以テ世ニ問フ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかしかう云ふ随筆は多少の清閑も得なかつた日には、たとひ全然とは云はないにしろ、さうさう無暗むやみに書けるものではない。ここに於て、新らしい随筆は忽ち文壇に出現した。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
((莊賈ノ使者))すでき、いまかへるにおよばず。((穰苴))ここおいつひ莊賈さうかり、もつて三ぐんとなふ。三ぐんみな(一九)振慄しんりつせり。
予はここにおいてまさに自ら予が我分身の鴎外と共に死んで、新しい時代の新しい文学を味わうことを得ないようになったかを疑わんとするに至った。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここにおいて余は始めて平賀元義の名を知ると共にその歌の万葉調なるを見て一たびは驚き一たびは怪しみぬ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここに於て吾人ごじんは四十年前来学問の独立を高唱して、優等の国民即ち模範国民の養成に努力した。
始業式に臨みて (新字新仮名) / 大隈重信(著)
ここに於て誰か知ら然る可き人物を会津の主将に据えて、奥州出羽の押えの大任、わけては伊達政宗をのさばり出さぬように、表はじっとりと扱って事端を発させぬように
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここにおいて考証家の末輩まつばいには、破壊を以て校勘の目的となし、ごうもピエテエのあとを存せざるに至るものもある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここにおいて衛生上の営養と快心的の娯楽と一時に奪ひ去られ、衰弱とみに加はり昼夜悶々もんもんたちまち例の問題は起る「人間は何が故に生きて居らざるべからざるか」
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ゆゑ其傳そのでん(六六)ついづ。其書そのしよいたつてはおほこれり。ここもつろんぜず、その(六七)軼事いつじろんず。管仲くわんちう所謂いはゆる賢臣けんしんなり。しかれども(六八)孔子こうしこれせうとす。
ここに於てこれから学ぶところの諸君は何処どこまでも共同の精神をもってやらなければならぬ。
始業式訓示 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
(この句恐らくは南禅寺なんぜんじより思ひつきたらんか)ここにおいてか神無月の語は一歩も動かざるを見るべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここおい韓非かんぴ、((韓王ノ))くにをさむるに、その法制はふせい修明しうめいし・(四七)いきほひつてもつその臣下しんかぎよし・くにましへいつようして・もつひともとけんにんずるをつとめず
調和が出来なければ衝突だ。衝突の次には争い。これほど恐るべきものはない。ここに於て吾人が世界的に努力せんとすればまず身を修める。それには何処どこまでも人格が基礎をなす。
始業式訓示 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
近衛師団は全国の精鋭を集めしかもまさに山海関さんかいかん方面に向はんとせりとの風説ありき。ここにおいてか新聞記者は四方より集まりて我も我もと従軍を希望してまず。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)