方々ほうぼう)” の例文
その学んで卒業した者が方々ほうぼうに出て教師になる、教師になれば自分が今まで学んだものをその学校に用るのも自然の順序であるから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
魔法使いの住居すまいを、遠くから来た旅人や方々ほうぼうの学者に尋ねたり、自分で探し廻ったりしましたが、どうしても分かりませんでした。
魔法探し (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
来年らいねんなつは、方々ほうぼうやまへまいります。わたしつけなければ、おちおうた行者ぎょうじゃたのんで、どうにかして、れてまいります。」
山に雪光る (新字新仮名) / 小川未明(著)
男は、かの女がの時の真面目くさって自分の名を訊いた顔を忘れないと方々ほうぼうで話したそうだ。だが、それも、五六年前だった。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
東京でカフェーの女給を殺して、方々ほうぼうを逃げまわっていた奴を、そこで見つけて取押とりおさえようとすると、僕にむかってピストルを一発……。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日本にっぽん国中くにじゅう方々ほうぼうめぐりあるいて、あるとき奥州おうしゅうからみやこかえろうとする途中とちゅう白河しらかわせきえて、下野しもつけ那須野なすのはらにかかりました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
後任市長が無いというので、方々ほうぼうの人格者や名望家なぞに市会の銓衡せんこう委員が押しかけてまわったが、みんなていよく断られた。
ああそうかと思って附近を見ると、今まで立っていた方々ほうぼうの二階家も見えなくなって、真青まっさおに晴れた空が広々と見渡された。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「これをおせば、方々ほうぼうでベルの鳴るしかけだ。いまに、みんながやって来るからね。おとなしく待っているんだよ」
ふしぎな人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
犬というものはその肩骨けんこつの構造から考えても、車をくようにできておらぬが、とにかく方々ほうぼうで行われている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
このうわさはすぐに方々ほうぼうつたわったので、もうだれもこの寺の住職じゅうしょくになろうというものがなくなってしまった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
せっかく、方々ほうぼうの国から送られてくるこれらのおいしいじゅくしたくだものが、店にかざられたまま、毎日毎日こうもたくさんくさっていくのはどうしたことだろう。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
そうでしょう、みちがあるおかげで、方々ほうぼう土地とちに出来る品物しなものがどんどんわたしたちのところへはこばれて来ますし、おともだち同士どうしらくったりたりすることが出来ます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
唯私一人苦しむのなら何でもないが、私の身がきまらぬ為めに『方々ほうぼう』が我他彼此がたぴしするので誠に困る
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
方々ほうぼうの室から、呼鈴べるの電線がつづいているので、その室で呼ぶと、此処ここ電鈴べるが鳴って、その室の番号のついてる札が、パタリと引繰返ひっくりかえるという風になっているのだが、何しろ
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
私は方々ほうぼう旅をするので、旅の宿屋でたべる朝飯は、数かぎりもなく色々な思い出がある。
朝御飯 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
彼等が、誰か特に真面目な年長者の監督なしに、森や野原を方々ほうぼう歩き廻るというようなことは、彼等の注意深い父や母や、叔父や叔母や、あるいまた祖父母達から許されようとは思えない。
ウム、方々ほうぼう落武者おちむしゃ浪人ろうにんで、めしえないさむらいなどは、よく名のある者のすがたと偽名ぎめいをつかって、無智むち在所ざいしょの者をたぶらかして歩く手輩てあいがずいぶんある。おおかたそんな者たちだろう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最近だいぶ方々ほうぼうに名が出て来たようですが、非常に素質のいいステージシンガーです、——レコードにも相当吹きこんだようですから、あるいは知っていられるかも知れません——、秋本ネネという
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
った今おかみさんがつれて行かれたんですよ。それから帳場にもう一人の刑事さんが張込んでおきみさんを外へ出さないようにしているんです。帳場に方々ほうぼうの電話番号の書いた紙があるんですよ。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一首の意味は、この鮒は、深いところから岸の浅いところ方々ほうぼう歩いて、つかまえた藻の中にいた大鮒だが、おまえに持って来た、というぐらいの意で、「藻臥」は藻の中に住む、藻の中に潜むの意。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そうすると、王女はこっそりどこかへげてしまって、それなりがわからなくなりました。王さまは方々ほうぼうへ人を出してさんざんお探しになりましたが、とうとうしまいまで見附みつかりませんでした。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
高い望楼の上で、方々ほうぼうを見廻させて置きました。
おまえは、どこから、このまちへなどやってきたのだ。このごろはまちにろくなことがない。火事かじがあったり、方々ほうぼうでものをぬすまれたりする。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
といって、しましたがえてしまいました。そのうち方々ほうぼうにかくれていた為朝ためとも家来けらいが、一人ひとり二人ふたりとだんだんあつまって為朝ためともにつきました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
むかし、世の中にいろんな神が——風の神や水の神や山の神などいろんな神が、方々ほうぼうにたくさんいた頃のこと、ある所に一人の長者ちょうじゃが住んでいました。
雷神の珠 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
私は探偵小説のすじを考えるために、方々ほうぼうをぶらつくことがあるが、東京を離れない場合は、大抵たいてい行先がきまっている。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
福澤が塾をてゝ他に移るなら塾も一緒に移ろうと云う説がおこって、その時には東京中に大名屋敷が幾らもあるので、塾の人は毎日のように方々ほうぼう明屋敷あきやしきを捜してわり
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いずれ近所の人の児であろうと、あくる朝方々ほうぼうへ問い合わして見たが、このしゅくでは小児こどもられた者は一人ひとりも無い。隣村にも無い。つま何処どこから持って来たのだか判らずにしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雲の上について飛びながら、その端からのぞいて、ビレラフォンはかなりはっきりと、リシアの山の多い部分を見渡すことが出来、また蔭になった方々ほうぼうの谷の中も一度に見ることが出来ました。
私はいま世界地図を拡げて、印度インドへ行く事を計画している。秋頃には、欧洲へ行った時のように、気軽に船出したいものだと思っている。何度でも初旅のような気持ちで、私は随分方々ほうぼうへ行った。
生活 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「きさまはだれにゆるされて、方々ほうぼうかってにとびまわっているんだ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、方々ほうぼう村々むらむらでも、かねもうけのことなら、なんだって見逃みのがしはしないので、かぎりなく、なしのえたのであります。
ちょうど田植たうやすみの時分じぶんで、むらでは方々ほうぼうで、にぎやかなもちつきのおとがしていました。山のおさると川のかにが、途中とちゅう出会であって相談そうだんをしました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それから随分方々ほうぼう探し廻っていた様ですが、まさか長吉と僕とが馴染の間柄で、僕の部屋に逃げ込んだとは、女中にしたって想像もしなかったでしょう。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
旅人 一月ひとつきほど前、丁度ちょうど十五夜の晩からうちを飛び出して、方々ほうぼうをあるいて来ました。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
老母の大坂見物も叶わずさて神戸こうべついた処で、母は天保七年、大阪をさってから三十何年になる、誠に久し振りの事であるから、今度こそ大阪、京都方々ほうぼうを思うさま見物させてよろこばせようと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
方々ほうぼう尋ね歩いて、ここまでやって来た者でございます
魔法探し (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しかし、それきり、そのこえこえませんでした。少年しょうねんは、じっとしていられなくなって、ついに、もんそとて、方々ほうぼうをながめたのです。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして方々ほうぼういえ毎日まいにち毎日まいにち六部ろくぶんで、丁寧ていねいにおもてなしをした上に、おれいをたんとたせてたせてやりました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
近頃蜘蛛女だとか首ばかりで胴のない女だとかいう見世物が、方々ほうぼうではやっているのを知っているでしょう。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そこで、心当りを方々ほうぼう探しているんだが、うも判らないので困っている。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
子供こども老婆ろうばが、二人ふたりともむらからいなくなったので、人々ひとびとおどろいて、方々ほうぼうさがしまわりました。けれど、ついに見当みあたらずにしまったのです。
泣きんぼうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのころ丹波たんば大江山おおえやまに、酒呑童子しゅてんどうじばれたおそろしいおにんでいて、毎日まいにちのようにみやこまちへ出てては、方々ほうぼういえ子供こどもをさらって行きました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それには、彼は学校を出て以来、安飜訳の下請したうけだとか、お伽噺だとか、まれには大人の小説だとかを書いて、それを方々ほうぼうの雑誌社に持込んでは、からくも其日のたつきを立てているのでした。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
このなかには、もっとただしいことも、幸福こうふくなこともたくさんあるのですよ。わたしは、まちや、むらや、方々ほうぼうあるいてきました。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのときにはもういつかむらの中にはいっていました。方々ほうぼういえからはのどかなあさけむりがすうすうちのぼっていました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ほんとうに神隠かみかくしにでも逢った様な気がします。警察のほう内々ないないで捜索を願ってあるんですし、主人を始め出入の方も手分けをして方々ほうぼう探しているのですけれど、まるで手がかりがありません。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは、方々ほうぼうひと出入でいりするところへいって、いろいろのひとに、おまえさんのにいさんのはなしをしていてみなければ、わかりっこはないよ。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
母親ははおやわった姿すがたてびっくりした子供こどもは、きながら方々ほうぼう父親ちちおやのいるところさがあるいて、やっとつけると、いまがたたふしぎを父親ちちおやはなしたのです。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)