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摺
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す
ふりがな文庫
“
摺
(
す
)” の例文
御墨付と見せたのは、どこにでもある小菊二三枚、短刀は、脇差を
摺
(
す
)
り上げて
禿
(
はげ
)
ちょろ
鞘
(
ざや
)
に納めた、似も付かぬ偽物だったのでした。
銭形平次捕物控:035 傀儡名臣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
摺
(
す
)
れちがう事が出来ないくらいな狭い道で、五六歩行くごとに曲っているが、両側とも割合に小綺麗な
耳門
(
くぐりもん
)
のある借家が並んでいて
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
吾輩みたいな、東京中の新聞社を喰い詰めた、パリパリの
摺
(
す
)
れっ枯らし記者の上に立つ編輯長とは、どう割引しても思えないだろう。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
八弥は、
畸形
(
きけい
)
な
爬虫類
(
はちゅうるい
)
のように、
肘
(
ひじ
)
、膝、肩までを地に
摺
(
す
)
りつけたまま、眼だけを相手の
筒口
(
つつぐち
)
に向けて、ジリジリと前へ迫り出した。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから又喰べるものは、皆おいしい
摺
(
す
)
り
餌
(
ゑ
)
で、「鶉の
頭
(
かみ
)
」といふお役が出来て、籠の掃除やら、餌の世話など一切をいたします。
孝行鶉の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
▼ もっと見る
髪が
結
(
ゆ
)
えたのか、しばらくすると
箪笥
(
たんす
)
の引出しがガタガタと鳴った。そして襖の向うからシュウシュウと、帯の
摺
(
す
)
れる音が聞えてきた。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と言って、また
摺
(
す
)
り寄ってお銀様の
面
(
かお
)
を覗き込むようにしました。お銀様がついと横を向くと、乗り出してわざとまた覗き込んで
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なんでも砂利のような物で引っこすったように、顔一面に
摺
(
す
)
りむけている。おっかさんも驚いてきゃっと云うと、夢が醒めた……。
半七捕物帳:68 二人女房
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何里
歩行
(
ある
)
いたとも分らぬ気がして、一まわり、足を
摺
(
す
)
って、手探りに
遥々
(
はるばる
)
と渡って来ますと、一歩上へ浮いてつく、その、その
蹈心地
(
ふみごこち
)
。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
その
)
二尺
(
にしやく
)
程
(
ほど
)
下
(
した
)
の
勾配
(
こうばい
)
の
一番
(
いちばん
)
急
(
きふ
)
な
所
(
ところ
)
に
生
(
は
)
えてゐる
枯草
(
かれくさ
)
が、
妙
(
めう
)
に
摺
(
す
)
り
剥
(
む
)
けて、
赤土
(
あかつち
)
の
肌
(
はだ
)
を
生々
(
なま/\
)
しく
露出
(
ろしゆつ
)
した
樣子
(
やうす
)
に、
宗助
(
そうすけ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
驚
(
おど
)
ろかされた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
と云ひながらその
摺
(
す
)
り切れたところをみのるに見せた。秋か春に着るといふ洋服を義男は暑い時も雪の降る時も着なければならなかつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
版摺
(
はんずり
)
に任してもその版木を
摺
(
す
)
ることを許されん場合には、自分が他から紹介状などを
貰
(
もら
)
いわざわざ出かけて行って刷らして貰うようにして
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
終夜夫アレサンドロ氏によって
残酷
(
むご
)
たらしき責め折檻に遭わされたらしく、額部より顔面へかけて三カ所の
摺
(
す
)
り
疵
(
きず
)
があった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
仙台の近村で今も行わるる田植踊り、いわゆる弥十郎・藤九郎のエンブリ
摺
(
す
)
り一行は、徳岡の村では十八日の朝やってきた。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そしてその急須を両手で包みこむようにしてしばらくじっとしていたのち、鳥の
摺
(
す
)
り
餌
(
え
)
入れみたいに小さな茶碗の上に傾け
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
地を
摺
(
す
)
るかと思うほど低いところへ来て、鳴いて、復た威勢よく舞い揚った。チリヂリバラバラに成った鳥は、思い思いの軒を指して飛んだ。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
其度に自分の頬がお松の
鬢
(
びん
)
の毛や頬へさわるのであった。お松はわざと我頬を自分の頬へ
摺
(
す
)
りつけようとするらしかった。
守の家
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そこらが薄暗くなっているのに気がつくと、笹村はマッチを
摺
(
す
)
ってランプを
点
(
つ
)
けて見たが、
余熱
(
ほとぼり
)
のまだ
冷
(
さ
)
めない部屋は、息苦しいほど暑かった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お湯に入って一時間も二時間も磨いて磨いて遂には顔の皮まで
摺
(
す
)
り
剥
(
む
)
く人があるけれどもそれがためにかえって食物の事を
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
蓬
(
よもぎ
)
を
摺
(
す
)
り
潰
(
つぶ
)
したような、苦味を帯びた青臭さといった感じで、むろんその病人から匂ってくるのだろう、登は顔をしかめながら病床の脇に坐った。
赤ひげ診療譚:02 駈込み訴え
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
佐兵衛さんは
旦那
(
だんな
)
で、勝川お蝶は
権妻
(
ごんさい
)
上り、関取××は出入りの角力、そして佐兵衛さんはさしもの
大資産
(
おおしんだい
)
を
摺
(
す
)
ってしまってもお蝶さんと離れず
旧聞日本橋:10 勝川花菊の一生
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
葉と葉の
摺
(
す
)
れる音、そこには、今まで、聞えなかった
柔
(
やさ
)
しみがある。どうして、樹はこんな美妙の音を出すであろうか。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その実験は赤土を八百度の高温で三時間
灼熱
(
しゃくねつ
)
して有機物を焼きとばしてしまい、残りをよく
摺
(
す
)
り
潰
(
つぶ
)
して作った土でも霜柱は出来るというのである。
「霜柱の研究」について
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
抒情詩
(
じょじょうし
)
では子規の俳句や、鉄幹の歌の生れぬ先であったから、誰でも
唐紙
(
とうし
)
に
摺
(
す
)
った花月新誌や
白紙
(
はくし
)
に摺った
桂林一枝
(
けいりんいっし
)
のような雑誌を読んで、
槐南
(
かいなん
)
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そうして、用を聞きに来た給仕に
珈琲
(
コオヒイ
)
を云いつけると、思い出したように葉巻を出して、何本となくマチを
摺
(
す
)
った
揚句
(
あげく
)
、やっとそれに火をつけた。
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
カキツバタの語原は書きつけ花の意で、その
転訛
(
てんか
)
である。すなわち、書きつけは
摺
(
す
)
り
付
(
つ
)
けることで、その
花汁
(
かじゅう
)
をもって布を
摺
(
す
)
り
染
(
そ
)
めることである。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
女が駿河路にかかったときには花後の
樗
(
おうち
)
の空に、ほととぎす鳴きわたり、
摺
(
す
)
らずとも草あやめの色は、裳に露で染った。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
西洋から輸入して来たいろいろの
摺
(
す
)
り物、外字新聞の
挿画
(
さしえ
)
のようなものや、広告類の色摺りの
石版画
(
せきばんが
)
とか、またはちょっとした鉛筆画のようなもの
幕末維新懐古談:35 実物写生ということのはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
買った別荘地がとんだインチキもので、相当あった父の遺産を半分ほども
摺
(
す
)
ってしまい、そのためにひどく叔父に怒られて、自分の金でありながら
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
胡粉
(
ごふん
)
、朱、白緑、白群青、群青、
黄土
(
おうど
)
、
代赭
(
たいしゃ
)
等を使用するのが、最もいいようです、右を充分
乳鉢
(
にゅうばち
)
で
摺
(
す
)
って用います。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
白河原毛
(
しろかわらげ
)
なる馬の逞しきに、六文銭を金もて
摺
(
す
)
りたる鞍を置かせ、ゆらりと打跨り、五六度乗まわして、原に見せ
真田幸村
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その中に唱歌会員が二人、後れたものと見えて、あわただしくフェリックス、マリイの二人連と
摺
(
す
)
れ違って行った。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
「まあ、温かね」と言いながら、蒲団を手
摺
(
す
)
りにかけた。と、それはすぐ日向の匂いをたてはじめるのであった。
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
又、クサリ鎌の特色の中で忘れてはならぬことはクサリの用法で、これを引っぱると棒になるから、之で大刀を受けたり
摺
(
す
)
り外したり出来るのだそうだ。
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
しかして神の
婢
(
はしため
)
を見よといふ言葉、あたかも蝋に
印影
(
かた
)
の
捺
(
お
)
さるゝごとくあざやかにその姿に
摺
(
す
)
られき 四三—四五
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
返って来ればチャンと
膳立
(
ぜんだ
)
てが出来ているというのが、毎日毎日版に
摺
(
す
)
ったように
定
(
き
)
まっている寸法と見える。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「白菅の真野の榛原心ゆもおもはぬ吾し
衣
(
ころも
)
に
摺
(
す
)
りつ」(同・一三五四)、「住吉の岸野の榛に
染
(
にほ
)
ふれど
染
(
にほ
)
はぬ我やにほひて居らむ」(巻十六・三八〇一)
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
摺
(
す
)
り染めや、
擣
(
う
)
ち染めの技術も、女たちの間には、目立たぬ進歩が年々にあったが、
浸
(
ひ
)
で染めの為の染料が、韓の
技工人
(
てびと
)
の影響から、途方もなく変化した。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
柿のやうに頭の
尖
(
と
)
がんだ掛員は私に
椅子
(
いす
)
をすゝめて置いて、質素な鉄縁眼鏡に英字新聞を
摺
(
す
)
りつけたまゝ、発禁の理由は風俗
紊乱
(
びんらん
)
のかどであることを告げて
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
荘主
(
あるじ
)
頭
(
かうべ
)
を
畳
(
たたみ
)
に
摺
(
す
)
りて、御僧この事をなし給はば、此の国の人は浄土にうまれ出でたるがごとしと、涙を流してよろこびけり。山里のやどり
八四
貝鐘
(
かひがね
)
も聞えず。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
引き返して、水茶屋の前に、また
女將
(
おかみ
)
の寢息が漏れるかと立ち止り、それから東の門を入つて行くと、
隨神門
(
ずゐじんもん
)
の内にマッチでも
摺
(
す
)
つたらしい光がチラと見えた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
美的百姓は
木臼
(
きうす
)
に腰かけたまゝ、
所在
(
しょざい
)
なさに手近にある大麦の穂を摘んでは、掌で
籾
(
もみ
)
を
摺
(
す
)
って
噛
(
かじ
)
って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
摺
(
す
)
り
最
(
いと
)
忠實
(
まめ/\
)
しく
働
(
はたら
)
く
體
(
さま
)
如何にも孝子と見えけるゆゑ九助も
不便
(
ふびん
)
に思ひ
勝手元迄
(
かつてもとまで
)
手傳
(
てつだ
)
ひて少し
乍
(
なが
)
ら
母公
(
はゝご
)
に何ぞ
進
(
まゐ
)
らせられよと錢一
貫文
(
くわんもん
)
を
遣
(
やり
)
ければ母子は有難
涙
(
なみ
)
だを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
いろ/\胡麻を
摺
(
す
)
りやアがって仕様がねえからお内儀さんも心配をしていらっしゃるんだが、ねえ粂どん
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その時、あの奇獣の
鯨狼
(
アー・ペラー
)
をつかまえた。だが、その探検も結局空しくおわり、僕は全財産を
摺
(
す
)
り結核にまでなって、とうとうこのイースト・サイドへ落ちこんだ。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そこへ
摺
(
す
)
り込んだ広太郎、またダッと車に斬る。どうかわせたか
左身
(
さしん
)
を入れ、敵はピッタリ受け止めた。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
矢張り卒業生らしかった。
摺
(
す
)
れ違った時、失業者の
香
(
におい
)
がした。以前の自分に行き会ったのかも知れない。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
けれども試験を受けぬ訳には往かぬから試験前三日といふに哲学のノート(
蒟蒻板
(
こんにゃくばん
)
に
摺
(
す
)
りたる)と手帳一冊とを携へたまま
飄然
(
ひょうぜん
)
と下宿を出て向島の
木母寺
(
もくぼじ
)
へ往た。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
やがて
元
(
もと
)
も
子
(
こ
)
も
摺
(
す
)
つて
情
(
なさけ
)
なき
樣子
(
やうす
)
が
思
(
おも
)
はるゝと
後言
(
しりうごつ
)
も
有
(
あり
)
けらし、
須彌
(
しゆみ
)
も
出
(
いで
)
たつ
足
(
あし
)
もとの、
其當時
(
そのはじめ
)
の
事
(
こと
)
少
(
すこ
)
しいはゞや、
茨
(
いばら
)
につらぬく
露
(
つゆ
)
の
玉
(
たま
)
この
與
(
よ
)
四
郎
(
らう
)
にも
戀
(
こひ
)
は
有
(
あり
)
けり
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あゆはたで酢がつきものだが、たで酢の作り方はまずたでを
擂鉢
(
すりばち
)
で
摺
(
す
)
り、
絹漉
(
きぬご
)
しにかけ、後で酢を入れる。この場合たでの沈殿を防ぐために飯粒を入れて摺るとよい。
若鮎の塩焼き
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
摺
漢検準1級
部首:⼿
14画
“摺”を含む語句
引摺
地摺
手摺
頬摺
笈摺
阿婆摺
摺合
雲母摺
手古摺
摺鉢
摺寄
袖摺
摺付
悪摺
青摺
摺出
籾摺
摺附木
摺上川
衣摺
...