)” の例文
御墨付と見せたのは、どこにでもある小菊二三枚、短刀は、脇差をり上げて禿はげちょろざやに納めた、似も付かぬ偽物だったのでした。
れちがう事が出来ないくらいな狭い道で、五六歩行くごとに曲っているが、両側とも割合に小綺麗な耳門くぐりもんのある借家が並んでいて
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
吾輩みたいな、東京中の新聞社を喰い詰めた、パリパリのれっ枯らし記者の上に立つ編輯長とは、どう割引しても思えないだろう。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
八弥は、畸形きけい爬虫類はちゅうるいのように、ひじ、膝、肩までを地にりつけたまま、眼だけを相手の筒口つつぐちに向けて、ジリジリと前へ迫り出した。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから又喰べるものは、皆おいしいで、「鶉のかみ」といふお役が出来て、籠の掃除やら、餌の世話など一切をいたします。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
髪がえたのか、しばらくすると箪笥たんすの引出しがガタガタと鳴った。そして襖の向うからシュウシュウと、帯のれる音が聞えてきた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と言って、またり寄ってお銀様のかおを覗き込むようにしました。お銀様がついと横を向くと、乗り出してわざとまた覗き込んで
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なんでも砂利のような物で引っこすったように、顔一面にりむけている。おっかさんも驚いてきゃっと云うと、夢が醒めた……。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何里歩行あるいたとも分らぬ気がして、一まわり、足をって、手探りに遥々はるばると渡って来ますと、一歩上へ浮いてつく、その、その蹈心地ふみごこち
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その二尺にしやくほどした勾配こうばい一番いちばんきふところえてゐる枯草かれくさが、めうけて、赤土あかつちはだ生々なま/\しく露出ろしゆつした樣子やうすに、宗助そうすけ一寸ちよつとおどろかされた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と云ひながらそのり切れたところをみのるに見せた。秋か春に着るといふ洋服を義男は暑い時も雪の降る時も着なければならなかつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
版摺はんずりに任してもその版木をることを許されん場合には、自分が他から紹介状などをもらいわざわざ出かけて行って刷らして貰うようにして
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
終夜夫アレサンドロ氏によって残酷むごたらしき責め折檻に遭わされたらしく、額部より顔面へかけて三カ所のきずがあった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
仙台の近村で今も行わるる田植踊り、いわゆる弥十郎・藤九郎のエンブリり一行は、徳岡の村では十八日の朝やってきた。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そしてその急須を両手で包みこむようにしてしばらくじっとしていたのち、鳥の入れみたいに小さな茶碗の上に傾け
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
地をるかと思うほど低いところへ来て、鳴いて、復た威勢よく舞い揚った。チリヂリバラバラに成った鳥は、思い思いの軒を指して飛んだ。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
其度に自分の頬がお松のびんの毛や頬へさわるのであった。お松はわざと我頬を自分の頬へりつけようとするらしかった。
守の家 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そこらが薄暗くなっているのに気がつくと、笹村はマッチをってランプをけて見たが、余熱ほとぼりのまだめない部屋は、息苦しいほど暑かった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お湯に入って一時間も二時間も磨いて磨いて遂には顔の皮までく人があるけれどもそれがためにかえって食物の事を
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
よもぎつぶしたような、苦味を帯びた青臭さといった感じで、むろんその病人から匂ってくるのだろう、登は顔をしかめながら病床の脇に坐った。
佐兵衛さんは旦那だんなで、勝川お蝶は権妻ごんさい上り、関取××は出入りの角力、そして佐兵衛さんはさしもの大資産おおしんだいってしまってもお蝶さんと離れず
葉と葉のれる音、そこには、今まで、聞えなかったやさしみがある。どうして、樹はこんな美妙の音を出すであろうか。
森の暗き夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その実験は赤土を八百度の高温で三時間灼熱しゃくねつして有機物を焼きとばしてしまい、残りをよくつぶして作った土でも霜柱は出来るというのである。
「霜柱の研究」について (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
抒情詩じょじょうしでは子規の俳句や、鉄幹の歌の生れぬ先であったから、誰でも唐紙とうしった花月新誌や白紙はくしに摺った桂林一枝けいりんいっしのような雑誌を読んで、槐南かいなん
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
そうして、用を聞きに来た給仕に珈琲コオヒイを云いつけると、思い出したように葉巻を出して、何本となくマチをった揚句あげく、やっとそれに火をつけた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
カキツバタの語原は書きつけ花の意で、その転訛てんかである。すなわち、書きつけはけることで、その花汁かじゅうをもって布をめることである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
女が駿河路にかかったときには花後のおうちの空に、ほととぎす鳴きわたり、らずとも草あやめの色は、裳に露で染った。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
西洋から輸入して来たいろいろのり物、外字新聞の挿画さしえのようなものや、広告類の色摺りの石版画せきばんがとか、またはちょっとした鉛筆画のようなもの
買った別荘地がとんだインチキもので、相当あった父の遺産を半分ほどもってしまい、そのためにひどく叔父に怒られて、自分の金でありながら
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
胡粉ごふん、朱、白緑、白群青、群青、黄土おうど代赭たいしゃ等を使用するのが、最もいいようです、右を充分乳鉢にゅうばちって用います。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
白河原毛しろかわらげなる馬の逞しきに、六文銭を金もてりたる鞍を置かせ、ゆらりと打跨り、五六度乗まわして、原に見せ
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その中に唱歌会員が二人、後れたものと見えて、あわただしくフェリックス、マリイの二人連とれ違って行った。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
「まあ、温かね」と言いながら、蒲団を手りにかけた。と、それはすぐ日向の匂いをたてはじめるのであった。
雪後 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
又、クサリ鎌の特色の中で忘れてはならぬことはクサリの用法で、これを引っぱると棒になるから、之で大刀を受けたりり外したり出来るのだそうだ。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
しかして神のはしためを見よといふ言葉、あたかも蝋に印影かたさるゝごとくあざやかにその姿にられき 四三—四五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
返って来ればチャンと膳立ぜんだてが出来ているというのが、毎日毎日版にったようにまっている寸法と見える。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「白菅の真野の榛原心ゆもおもはぬ吾しころもりつ」(同・一三五四)、「住吉の岸野の榛ににほふれどにほはぬ我やにほひて居らむ」(巻十六・三八〇一)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
り染めや、ち染めの技術も、女たちの間には、目立たぬ進歩が年々にあったが、で染めの為の染料が、韓の技工人てびとの影響から、途方もなく変化した。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
柿のやうに頭のがんだ掛員は私に椅子いすをすゝめて置いて、質素な鉄縁眼鏡に英字新聞をりつけたまゝ、発禁の理由は風俗紊乱びんらんのかどであることを告げて
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
荘主あるじかうべたたみりて、御僧この事をなし給はば、此の国の人は浄土にうまれ出でたるがごとしと、涙を流してよろこびけり。山里のやどり八四貝鐘かひがねも聞えず。
引き返して、水茶屋の前に、また女將おかみの寢息が漏れるかと立ち止り、それから東の門を入つて行くと、隨神門ずゐじんもんの内にマッチでもつたらしい光がチラと見えた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
美的百姓は木臼きうすに腰かけたまゝ、所在しょざいなさに手近にある大麦の穂を摘んでは、掌でもみってかじって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いと忠實まめ/\しくはたらさま如何にも孝子と見えけるゆゑ九助も不便ふびんに思ひ勝手元迄かつてもとまで手傳てつだひて少しなが母公はゝごに何ぞまゐらせられよと錢一貫文くわんもんやりければ母子は有難なみだを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いろ/\胡麻をりやアがって仕様がねえからお内儀さんも心配をしていらっしゃるんだが、ねえ粂どん
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その時、あの奇獣の鯨狼アー・ペラーをつかまえた。だが、その探検も結局空しくおわり、僕は全財産をり結核にまでなって、とうとうこのイースト・サイドへ落ちこんだ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこへり込んだ広太郎、またダッと車に斬る。どうかわせたか左身さしんを入れ、敵はピッタリ受け止めた。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
矢張り卒業生らしかった。れ違った時、失業者のにおいがした。以前の自分に行き会ったのかも知れない。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
けれども試験を受けぬ訳には往かぬから試験前三日といふに哲学のノート(蒟蒻板こんにゃくばんりたる)と手帳一冊とを携へたまま飄然ひょうぜんと下宿を出て向島の木母寺もくぼじへ往た。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
やがてもとつてなさけなき樣子やうすおもはるゝと後言しりうごつありけらし、須彌しゆみいでたつあしもとの、其當時そのはじめことすこしいはゞや、いばらにつらぬくつゆたまこのらうにもこひありけり
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゆはたで酢がつきものだが、たで酢の作り方はまずたでを擂鉢すりばちり、絹漉きぬごしにかけ、後で酢を入れる。この場合たでの沈殿を防ぐために飯粒を入れて摺るとよい。
若鮎の塩焼き (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)