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ふりがな文庫
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はさ
)” の例文
旧字:
挾
それから彼は私の右手をなで、ひどく感心している様子でしたが、
蹄
(
ひづめ
)
に
挟
(
はさ
)
まれて手が痛くなったので、私は思わず大声をたてました。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
こういう谷が松林の多い
崖
(
がけ
)
を
挟
(
はさ
)
んで、古城の附近に幾つとなく有る。それが
千曲川
(
ちくまがわ
)
の方へ落ちるに随って余程深いものと成っている。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
既に畑に到れば斥候ら高地に上って四望し、その他はすこぶる
疾
(
と
)
く糧を集め、
頬嚢
(
きょうのう
)
に溢るるばかり詰め込んだ後多くの穂を脇に
挟
(
はさ
)
む。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
鶴子が間に
挟
(
はさ
)
まって困ったのであったが、十七回忌には大阪へ行って埋め合せをするからと云うのが、その折の辰雄の言訳であった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
神楽坂
(
かぐらざか
)
へかゝると、
寂
(
ひつそ
)
りとした
路
(
みち
)
が左右の
二階家
(
にかいや
)
に
挟
(
はさ
)
まれて、
細長
(
ほそなが
)
く
前
(
まへ
)
を
塞
(
ふさ
)
いでゐた。中途迄
上
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
たら、それが急に鳴り
出
(
だ
)
した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
耳に
挟
(
はさ
)
んだ筆をとると、さらさらと
帖面
(
ちょうめん
)
の上を走らせ、やがて、それを口にくわえて
算盤
(
そろばん
)
を
弾
(
はじ
)
くその姿がいかにもかいがいしく見えた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
懐中
(
ふところ
)
から
塵紙
(
ちりがみ
)
を
出
(
だ
)
して四つに
折
(
を
)
つて
揚子箸
(
やうじばし
)
で
手探
(
てさぐ
)
りで、
漸
(
や
)
うく
餅
(
もち
)
を
挟
(
はさ
)
んで
塵紙
(
ちりがみ
)
の
上
(
うへ
)
へ
載
(
の
)
せて
忰
(
せがれ
)
幸之助
(
かうのすけ
)
へ渡して自分も一つ取つて、乞
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「そうかそうか」だの「それは面白い点だ」などと兄はところどころに言葉を
挟
(
はさ
)
みながら、私の報告を大変興味探そうに聞いていました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『
温故之栞
(
おんこのしおり
)
』(巻十)にはこの国の水田生産のことを記して、以前は割竹五六本を木の台に立て
列
(
つら
)
ね、稲を七八
茎
(
けい
)
ずつ
挟
(
はさ
)
んで
扱
(
こ
)
いた故に
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
四、五たび
両妓
(
ふたり
)
がぶつかるうちに、当然、黒さんを
挟
(
はさ
)
んで張りッこになった。お鷹は、お蝶に
情夫
(
いろ
)
があるのを知っていたので
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それでも、脱ぎかけた
浴衣
(
ゆかた
)
をなお膝に半ば
挟
(
はさ
)
んだのを、おっ、と
這
(
は
)
うと、あれ、と言う
間
(
ま
)
に、亭主がずるずると引いて取った。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし汽車はその時分には、もう安々と隧道を
辷
(
すべ
)
りぬけて、枯草の山と山との間に
挟
(
はさ
)
まれた、或貧しい町はずれの踏切りに通りかかっていた。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
笠神博士の所にあった写真版が、毛沼博士の寝室にあった雑誌から取り去られたものであることは、疑いを
挟
(
はさ
)
む余地がない。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
それをちらと小耳に
挟
(
はさ
)
んだシユワツブ氏は、長い一生を通じてその瞬間ほど、どやしつけられたやうな思ひをしたことはないといつたさうだ。
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今夜は少し熱があるかして苦しいようだから、横に寝て句合の句を作ろうと思うて
蒲団
(
ふとん
)
を
被
(
かぶ
)
って験温器を脇に
挟
(
はさ
)
みながら月の句を考えはじめた。
句合の月
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
私は塩たれたメリンスの帯の結びめに、
庖丁
(
ほうちょう
)
や
金火箸
(
かなひばし
)
や、大根
擂
(
す
)
り、
露杓子
(
つゆじゃくし
)
のような、
非遊離的
(
ひゆうりてき
)
な諸道具の
一切
(
いっさい
)
を
挟
(
はさ
)
んだ。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
又恋愛の欲望の
鞭
(
むち
)
でむちうたれていてすると云うなら、それも別問題であろう。この場合に果してそれがあろうか、少くも疑を
挟
(
はさ
)
む余地がある。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
笹村は時々兄から祖先のことを言い聞かされることがないでもなかった。自分の母親の実家に伝わったいろいろの伝説なども小耳に
挟
(
はさ
)
んでいた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
白墨を耳に
挟
(
はさ
)
んだ彼等は、据えつけた機械のまわりを歩いたり、指先きでこすってみたり、ヤレ、ヤレという顔をした。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
じりじりと照りつける陽の光と
腹匍
(
はらば
)
いになった塚の熱砂の熱さとが、小初の肉体を上下から
挟
(
はさ
)
んで、いおうようない苦痛の
甘美
(
かんび
)
に、小初を
陥
(
おとしい
)
れる。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
怪我
(
けが
)
もしなかったことを私は安心しましたが、父はこんな突発的な場合にも素早く、馴れたものでそれというと、
葛籠
(
つづら
)
の中の売り
溜
(
だ
)
めを脇に
挟
(
はさ
)
んで
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
雅子は顔を
赧
(
あか
)
くしたが、別にとめだてしないで、その両頬を手で
挟
(
はさ
)
んで、テーブルに眼を落した。私も、うつむいた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
足軽
(
あしがる
)
の家に生れた者は足軽になり、先祖代々、家老は家老、足軽は足軽、その
間
(
あいだ
)
に
挟
(
はさ
)
まって居る者も同様、何年経ても
一寸
(
ちょい
)
とも変化と
云
(
い
)
うものがない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
銀公は両手で頭を押え、前後を私服に
挟
(
はさ
)
まれて、渡り板を渡りながら、痛えよう、死んじまうよう、とかなきり声で叫び続けた。私服は三人いたのだ。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そのはずみに掴まれた帯はゆるんで、帯に
挟
(
はさ
)
んでいたらしい何物かがかちりと地に落ちた。勘太が手早く拾ってみると、それは月に光る二朱銀であった。
半七捕物帳:65 夜叉神堂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
やっぱり柳沢の方に向ってそういいながら
餉台
(
ちゃぶだい
)
を
挟
(
はさ
)
んで柳沢と向い合って座った。そしてその横手に黙って坐っている私の方をチラリと振り向きながら
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
けれどもその代りに、杉本は、妙な毛の生えた小さな肉片を、まるでジグソー・パズルでもする様な意気込んだ調子で
鉄火箸
(
かねひばし
)
の先に
挟
(
はさ
)
んで持出して来ました。
とむらい機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
何か考え深そうな面持をしているドイツ人らしい両親の間に
挟
(
はさ
)
まれた、まだ幼い、いかにも腕白者らしい子供が、彼から少し離れた席にいる同じような年頃の
木の十字架
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
されども諸王は積年の威を
挟
(
はさ
)
み、大封の
勢
(
いきおい
)
に
藉
(
よ
)
り、
且
(
かつ
)
は
叔父
(
しゅくふ
)
の尊きを
以
(
もっ
)
て、
不遜
(
ふそん
)
の事の多かりければ、皇太孫は
如何
(
いか
)
ばかり心苦しく
厭
(
いと
)
わしく思いしみたりけむ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私たちは、机の傍の炉を
挟
(
はさ
)
んで坐った。彼の机の上には、一冊の書物が、ひらかれたまま置かれていた。
母
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
創立以来勤続三十年といふ漢文の老教師は、癖になつてゐる鉄縁の老眼鏡を
気忙
(
きぜは
)
しく耳に
挟
(
はさ
)
んだり
外
(
はづ
)
したりし
乍
(
なが
)
ら、
相好
(
さうがう
)
を
崩
(
くづ
)
した笑顔で
愛弟子
(
まなでし
)
の成功を自慢した。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
翻
(
ひるがえ
)
って俳句を見ると、なるほど俳句にはこういう長所がある、俳句は他の文芸の間に
挟
(
はさ
)
まってこういう性質のものである、という事がわかるようになるであろう。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
千枝子と定雄は中に清を
挟
(
はさ
)
んで、固そうな雪の上を選びながら渡っていった。ひやりと肌寒い空気の
頬
(
ほお
)
にあたって来る中で、
鶯
(
うぐいす
)
がしきりに羽音を立てて鳴いていた。
比叡
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
一人は「腕の喜三郎」という
綽名
(
あだな
)
で呼ばれている三十二、三歳の男で、紡績工場の職工だった時、機械に
挟
(
はさ
)
まれて
挘
(
も
)
ぎとられたとかで右の腕が附け根から無かった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
家の者は窓へ
倚
(
よ
)
って発砲し、警官隊は塀の間から
挟
(
はさ
)
み撃ちし、強盗は、植え込みから植込みを昆虫のように
這
(
は
)
って縫いながら、この内外の敵を相手に
猛悪
(
もうあく
)
に応戦した。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
美佐子はそう
宥
(
なだ
)
めるように言って、青年紳士の立っている方へ
駈
(
か
)
けて行った。青年は煙草を
挟
(
はさ
)
んだ手を眼のところまで上げて、
微笑
(
ほほえ
)
みながら伸子への挨拶を送っていた。
秘密の風景画
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
わたくしは人に道をきく
煩
(
わずら
)
いもなく、構内の水溜りをまたぎまたぎ灯の下をくぐると、
家
(
いえ
)
と
亜鉛
(
トタン
)
の
羽目
(
はめ
)
とに
挟
(
はさ
)
まれた三尺幅くらいの路地で、右手はすぐ行止りであるが
寺じまの記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
叱っているうちに、
参詣
(
さんけい
)
すべきお寺について相談している婆さんの五、六人が、電車とバスの間に
挟
(
はさ
)
まれてうろうろする。それを救助して電車へ押込まなければならぬ。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
額
(
ひたい
)
には湯のような汗があった。彼は右の手を腰にやった。白い
浴衣
(
ゆかた
)
の
兵児帯
(
へこおび
)
には
手拭
(
てぬぐい
)
を
挟
(
はさ
)
んであった。彼は手さぐりにその手拭を
執
(
と
)
り、左の手で帽子を脱いで汗を
拭
(
ぬぐ
)
った。
雑木林の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
...
睡魔
(
すいま
)
です!
左様
(
さよう
)
!』と、イワン、デミトリチは
昂然
(
こうぜん
)
として『
貴方
(
あなた
)
は
苦痛
(
くつう
)
を
軽蔑
(
けいべつ
)
なさるが、
試
(
こころみ
)
に
貴方
(
あなた
)
の
指
(
ゆび
)
一
本
(
ぽん
)
でも
戸
(
と
)
に
挟
(
はさ
)
んで
御覧
(
ごらん
)
なさい、そうしたら
声
(
こえ
)
限
(
かぎ
)
り
呌
(
さけ
)
ぶでしょう。』
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
おめえやお
袋
(
ふくろ
)
に、
会
(
あ
)
わせる
顔
(
かお
)
はねえンだが、ちっとばかり、
人
(
ひと
)
に
頼
(
たの
)
まれたことがあって、
義理
(
ぎり
)
に
挟
(
はさ
)
まれてやって
来
(
き
)
たのよ。おせん、
済
(
す
)
まねえが、おいらの
頼
(
たの
)
みを
聞
(
き
)
いてくんねえ
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
こめて、うんと担ぎ上げ、
山路
(
やまみち
)
を登つてまゐりましたが、途中で、右と左から、山と山との、さし出た所で、岩が両方の岸に、がつちり、
挟
(
はさ
)
まつてしまひましたのでございます。
岩を小くする
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
六区の映画街の中ほどに、コンクリートの大映画館に
挟
(
はさ
)
まれた、谷底のように薄暗くて狭い抜け道がある。どんな
雑沓
(
ざっとう
)
の日でも、この陰気な抜け道を利用する者はごく
稀
(
まれ
)
であった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
唯
(
た
)
だ私の詩集が八冊程
花瓶
(
はながめ
)
の前へ二つに分けて積まれてあるのだけは近頃からのことであると思ふと云ふのです。本の
彼方此方
(
あちこち
)
には白い紙が
栞
(
しおり
)
のやうにして
挟
(
はさ
)
んであると云ふのです。
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
が、紅葉の方ではとかくに疎隔して会えば
打釈
(
うちと
)
けていても内心は敵意を
挟
(
はさ
)
んでいた。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
両方の軍勢は川を
挟
(
はさ
)
んで向かい合いに
陣取
(
じんど
)
りました、
彦国夫玖命
(
ひこくにぶくのみこと
)
は、敵に向かって
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
「そうだろう。もう明日だって
明後日
(
あさって
)
だって、いいんだから。早く承諾書をとれぁいいんだ。どうしたんだろう、昨日校長は、たしかに証書をわきに
挟
(
はさ
)
んでこっちの方へ来たんだが。」
フランドン農学校の豚
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
私の席の下の方に、知らない人たちの間に
挟
(
はさ
)
まって、今さらのように失意な淋しい気持で、坐っていた。やがて佐々木は、発起人を代表して、皆なの拍手に迎えられて、起ちあがった。
遁走
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
石之助
(
いしのすけ
)
とて山村の総領息子、母の違ふに
父親
(
てておや
)
の愛も薄く、これを養子に
出
(
いだ
)
して
家督
(
あと
)
は
妹娘
(
いもとむすめ
)
の
中
(
なか
)
にとの相談、十年の昔しより耳に
挟
(
はさ
)
みて面白からず、今の世に勘当のならぬこそをかしけれ
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
これは両方を散らさぬ先に引き分けるが
上分別
(
じょうふんべつ
)
とは思い浮んだけれども、あまりによく気合が満ちているので、行司の自分も釣り込まれそうで、なんと合図の
挟
(
はさ
)
みようもないくらいです。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
挟
常用漢字
中学
部首:⼿
9画
“挟”を含む語句
挟撃
引挟
板挟
文挟
紙挟
挟間
手挟
挟箱
差挟
脇挟
挟箱担
物干挟
鳥毛挟箱
鬢挟
髱挟
身挟桃花坂
虎挟
前挟
物挟
懐紙挟
...