御代みよ)” の例文
さて、明治の御代みよもいや栄えて、あの時分はおもしろかったなどと、学校時代の事を語り合う事のできる紳士がたくさんできました。
あの時分 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
式場用の物のおおい、敷き物、しとねなどの端を付けさせるものなどに、故院の御代みよの初めに朝鮮人がささげたあやとか、緋金錦ひごんきとかいう織物で
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
明治の御代みよのなかごろに、大和田建樹おおわだたてきさんという国文の先生が、日本全国の手毬歌を集めて、大きな本にして出されたことがある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きっと見上げる上から兄は分ったかとやはり見下みおろしている。何事とも知らず「埃及エジプト御代みよしろし召す人の最後ぞ、かくありてこそ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その風采から眺めますと、平和な御代みよ流行はやらない軍学者のすたりものみたいな男ですが、それにしても、ことばが少し下卑ている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今のところ昔の伏波ふくは将軍の如く極めて健康で若い時と余り変りはありません、いつか「眼もよい歯もよい足腰達者うんと働ここの御代みよに」
この天皇の御代みよには、新羅しらぎの国の人がどっさりわたって来ました。武内宿禰たけのうちのすくねはその人々を使って、方々に田へ水を取る池などをりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
僅かに馬士歌まごうたの哀れを止むるのみなるも改まる御代みよに余命つなぎ得し白髪のおうな囲炉裏いろりのそばに水洟みずばなすゝりながら孫玄孫やしゃごへの語り草なるべし。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三十三代推古帝の御代みよというから、西暦五九二年。今からざっと千三百三十三年前、摂州西の宮の生まれで三郎というから三男であったろう。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
もしあの本居宣長のような人がこの明治の御代みよを歩まれるとしたら、かつてシナインドの思想をその砥石といしとせられたように
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
………太平の御代みよの有り難さと云おうか、桃源とうげんの国と云おうか、久しぶりに浮世を離れたのんびりとした心持になって
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
此故このゆゑなまぐさにほひせて白粉おしろいかをりはな太平たいへい御代みよにては小説家せうせつか即ち文学者ぶんがくしやかず次第々々しだい/\増加ぞうかし、たひはなさともあれど、にしん北海ほつかい浜辺はまべ
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
おもふにがごとき賤農せんのうもかゝるめでたき 御代みよに生れたればこそ安居あんきよしてかゝる筆もとるなれ。されば千年の昌平しやうへいをいのりて鶴のはなしに筆をとゞめつ。
えらむべきの第一也三代將軍しやうぐん御代みよより大猷公たいいうこう嚴有公げんいうこうの兩君にまたがりて板倉いたくら伊賀守同周防守すはうのかみ内膳正ないぜんしやうまこと知仁ちじん奉行ぶぎやうなりと萬民ばんみんこぞつて今に其徳そのとく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「忍術は知らぬ他国の敵の陣中へも忍び込む術を教えるのだ。泰平の御代みよの大名屋敷へ入るなどは物の数でもない」
わづか三十一みそひと文字を以てすら、目に見えぬ鬼神おにがみを感ぜしむる国柄なり。いはんや識者をや。目に見えぬものに驚くが如き、野暮なる今日の御代みよにはあらず。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
四十五年の御代みよ長く、事しげき代の御安息みやす無く、六十路むそぢあまり一年ひととせ御顔みかおに寄する年の波、御魂みたましたふ西の京、吾事終へつとうそむきて、君きましぬ東京に。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
玉だすき 畝火うねびの山の 橿原かしはらの 日知ひじりの御代みよゆ あれましし 神のことごと つがの木の いやつぎつぎに あめの下 知ろしめししを そらみつ やまとを
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
農は粗服を用い粗食をくらい汗を流し耕作をかせぎ、工はその職を骨折り、商人は御静謐せいひつ御代みよどもに正路の働きにて、かたじけなくも御国恩を忘れざるよう致すべきの処
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
揺るぎ無い御代みよは枝を吹く風のも静かに明け暮れて、徳川の深い流れに根をひたした江戸文明の巨木には、豪華艶美えんびを極めた花房はなぶさが、今をさかりに咲き盛かり
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
芝田しばたさんは、このおさまった御代みよに、おいはぎなどが、やたらにいるものではないことをきかせました。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
宮廷におかせられては、御代みよ御代の尊い御方に、近侍した舎人とねりたちが、その御宇ぎょう御宇の聖蹟を伝え、その御代御代の御威力を現実に示す信仰を、諸方に伝播でんぱした。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「これを見れば延喜えんぎ御代みよに住む心地する」といって、明暮あけくれに源氏を見ていたというが、きまりきった源氏を六十年もそのように見ていてまなかったところは
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
仁明の御皇みかど御代みよでありましたが、羽田玄喜という医師がありまして、この里に住居すまいして居りました。
真間の手古奈 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昔英国はジョージ三世の御代みよにサンドウイッチ伯爵という貴族があって、毎日博奕ばくちばかり打っていた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「イヤ。太平の御代みよとは申せ、お互いも油断なりませぬでの。つまるところは、お家安泰のためじゃ」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
桓武天皇かんむてんのう御代みよ巍石鬼ぎせっきという鬼が有明山に登って、その山腹なる中房山なかぶさやまに温泉の湧くのを発見し、ここぞ究竟くっきょうのすみかと、多くの手下を集めて、自ら八面大王と称し
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
アヽ華族くわぞくいへうまれたが、如何いか太平たいへい御代みよとはまうせども、手をそでにして遊んでつてはまぬ、えわが先祖せんぞ千軍萬馬せんぐんばんばなか往来わうらいいたし、きみ御馬前ごばぜんにて血烟ちけむり
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
寛永十八年妙解院殿存じ寄らざる御病気にて、御父上に先立さきだち、御卒去遊ばされ、当代肥後守殿光尚ひごのかみどのみつひさ公の御代みよと相成り候。同年九月二日には父弥五右衛門景一死去いたし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いかに質素が三河以来の御家風とは申しながら、いず方の屋敷にもそれ相当の格式がある。殊にかような太平の御代みよとなっては、いつもいつも陣中のような暮しもなるまい。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
道中の胡麻ごまの灰などは難有ありがた御代みよの事、それでなくっても、見込まれるような金子かねも持たずさ、足も達者で一日に八里や十里の道は、団子をかじって野々宮高砂たかさごというのだから
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はっ、近年はまた殊のほかの御繁昌にて、それもみな上様の御代みよ御泰平のみしるし、恐れながら土州めも、わがことのように喜ばしゅう存じあげておりまする儀にござります。
推古天皇の御代みよ上宮太子じょうぐうたいし摂政せっしょうとして世を治めておられた飛鳥の頃は、私にとって最もなつかしい歴史の思い出である。私ははじめ史書によってこの時代を学んだのではなかった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
天皇すめろぎ御代みよさかえむとあづまなるみちのくやま金花くがねはなく 〔巻十八・四〇九七〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そうしてこれを歴史的に見ますと、平安朝に入るとその例外がますます多くなって来て、そうして醍醐だいご村上むらかみ御代みよになりますと、かような区別のあった痕迹も見えないのであります。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
まして九つより『栄華えいが』や『源氏げんじ』手にのみ致し候少女は、大きく成りてもます/\王朝の御代みよなつかしく、下様しもざま下司げすばり候ことのみつづり候今時いまどきの読物をあさましと思ひ候ほどなれば
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
むかし後深草天皇ごふかくさてんのう御代みよに、玄翁和尚げんのうおしょうというとくたかぼうさんがありました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
るにても幾千代重ねん殿が御代みよなるに、など然ることの候はんや』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
現に延喜えんぎ御門みかど御代みよには、五条あたりの柿の梢に、七日なのかの間天狗が御仏みほとけの形となって、白毫光びゃくごうこうを放ったとある。また仏眼寺ぶつげんじ仁照阿闍梨にんしょうあざりを日毎にりょうじに参ったのも、姿は女と見えたが実は天狗じゃ。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御代みよの栄えを 讃へゆく
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
欽明天皇の御代みよでも差支ない気がする。応神天皇や称武天皇では決してないと思ふ。三四郎はたゞ入鹿いるかじみた心持こゝろもちを持つてゐる丈である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
また院の御代みよの最後の桜花の宴の日の父帝、えんな東宮時代の御兄陛下のお姿が思われ、源氏の詩をお吟じになったことも恋しく思い出された。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さて、明治の御代みよとなってみますと、栗本先生たちが新しい日本のためにいろいろしたくをしておいたことが、あとになってわかってきました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おもふにがごとき賤農せんのうもかゝるめでたき 御代みよに生れたればこそ安居あんきよしてかゝる筆もとるなれ。されば千年の昌平しやうへいをいのりて鶴のはなしに筆をとゞめつ。
それはかならずしも明治の御代みよのおわりに近く、政府の手で行なわれた神社合祀じんじゃごうしによって、始まったことではない。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この天皇の御代みよには、はやりやまいがひどくはびこって、人民という人民はほとんど死に絶えそうになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
殿様も、長直公の御代みよなかばまでは、常陸ひたちの笠間城にいらっしゃいました。私たちの祖父良欽よしかね、曾祖父の良勝、みんな常陸から移って来たお方だと聞いています。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは御存ごぞんじの醍醐天皇だいごてんのう御代みよ出來できたもので、普通ふつう天子てんしおほせでつくつた歌集かしゆう第一番だいゝちばんのものだといふことになつてゐます。かうした歌集かしゆう敕撰集ちよくせんしゆうといひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
後伏見院の御代みよだということだから、十年や二十年の昔ではあるまい、まさかお前さんが、重清入道や、朝霧官女の身よりの者という次第でもなかろう、世が世ならば当然
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
徳若とくわか御万歳ごまんざいと、御代みよも栄えまします、ツンテントン、愛敬あいきょうありける新玉あらたまの、………」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)