同伴つれ)” の例文
やがてお引けということに成っても元より座敷はふさがって居りますから、名代部屋へ入れられ、同伴つれもそれ/″\収まりがつきました。
といつて、なみだだかあせだか、帽子ばうしつてかほをふいた。あたまさらがはげてゐる。……おもはずわたしかほると、同伴つれ苦笑にがわらひをしたのである。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お同伴つれはまだ気を失っておるようじゃの。まあ、こんなところだが、ゆるゆる逗留とうりゅうして、からだの回復をお待ちなせえ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私の同伴つれも私と一緒に帰る筈であったですがその尊者のいわれるには、今日は私に対して話があるから待って居れという。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
と大きな声で同伴つれの男に言った。或はからかったのでなくて、本当にういう疑問が起ったのかも知れない。或日、母親が
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
翌朝になると早速さっそくに、前夜の同伴つれの男と一緒に、昨夜の場所に行ってみると、そのところから少し離れたくさむらの中に、古狐が一匹死んでいたとの事であった。
月夜峠 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
こんな享楽場で同伴つれを待つということは、相手が誰であるにしても、とかく神経質になりがちなものだが、この場合の庸三は特にも観劇気分が無残にき乱された。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
同伴つれはおもしろし、別して月も宵にはあるべし、この夜の清興を思へば、涼風ちて車上にあり。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
梯子段はしごだんを登り来る足音の早いに驚いてあわててみ下し物平ものへいを得ざれば胃のの必ず鳴るをこらえるもおかしく同伴つれの男ははや十二分に参りて元からが不等辺三角形の眼を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
それを折か何かに詰めて、それから酒を買て、およそ十四、五人も同伴つれがあったろう、弁当を順持じゅんもちにして桃山に行て、さん/″\飲食いしてい機嫌になって居るその時に
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
事情を訊いたり、また同伴つれの男が面白くない人物で何か訴えたいなら密かに其の機会を与えようとしたのだが、それでも女は、巡査を避けたい様子で、低声に叫んでいるだけだった。
土から手が (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
この一事のほかは人目をくべき点も無く、彼は多く語らず、又はさわがず、始終つつましくしてゐたり。終までこの両個ふたり同伴つれなりとは露顕せざりき。さあらんには余所々々よそよそしさに過ぎたればなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
聞いて見ると、蓮太郎は赤倉の温泉へ身体を養ひに行つて、今其帰途かへりみちであるとのこと。其時同伴つれの人々をも丑松に紹介した。右側に居る、何となく人格の奥床おくゆかしい女は、先輩の細君であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
春日かすがが電話に接して、助手兼秘書の渡邊わたなべ同伴つれて新田家を見舞ったのは第二の脅迫状の着いた間もなくで主人は二人を客間に通して、つぶさに昨夜以来の出来事を語り、証拠の書状二通をも渡して見せた
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
また不幸ふしあはせ同伴つれこのみ、是非ぜひともほか不幸ふしあはせ同伴つれだってねばならぬなら、「チッバルトがなしゃれた」というたつぎに、とゝさまとか、はゝさまとか、乃至ないし二人ふたりもろともとか、乳母うば何故なぜひをらぬ。
私のような、向う見ずに女に目のくらんだものに取っては、電燈の暗いのなんぞちっとも気にはならないがね、同伴つれの男は驚きましたぜ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今夜はこれきり寝転ねこかしかとは思っていますが、同伴つれの手前もあることで、帰るとも申しにくいのでもじ/\いたしている。
これは、後から来た親分の同伴つれと、すっかり思い込んでいるので、与助などは、背後からぺこぺこお辞儀をしながら
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その翌日も同様頭陀行の出来るところは乞食こじきをして、それで夜はいつもお説教です。そのお説教がなかなか同伴つれの人らの心を和らげる利き目がある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「寄らないで行くと後で怒るかも知れないが、この通り同伴つれがあるから仕方がない。それから警察署長は矢っ張り以前もとの男がやっているだろうね?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昨夜同伴つれが二人できて、栄子は或る日本ものゝ映画の試写を見に行きに、小森をも誘つた。
女流作家 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「お前は、今頃何処どこへ行くのだ」とたずねると、女房は、「急に用事が出来たから、△村まで行って来ます」と答えたが、そば同伴つれの男が、見詰みつめていると、女はそういいながら、眼を異様に光らして
月夜峠 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
発矢はっしの二三十もならべてたたかいたれどその間に足は記憶おぼえある二階へあがり花明らかに鳥何とやら書いた額の下へついに落ち着くこととなれば六十四条の解釈もほぼ定まり同伴つれの男が隣座敷へ出ている小春を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
婦人おんな同伴つれの男にそう言われて、時に頷いたが、かたわらでこれを見た松崎と云う、かすりの羽織で、鳥打をかぶった男も、共に心に頷いたのである。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが私の同伴つれの人達はそこへ参詣する、私は留守番ということになりましたから、その人達が参詣して来る二日程の間は坐禅ばかりやって居りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
貞「これ、お隅、何かえ、お前誰か同伴つれがありますかい、大勢連れてお出でかい、角力取は来ましたのかい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
果たして、良人おっとおぼしき女の同伴つれが飛んで来て、礼よりさきにどしんと一つ与吉を突きとばしたのは駒形の兄哥あにい一代の失策、時にとってのとんだ茶番であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
御覧に供しようかねと撃て放せと向けたる筒口俊雄はこのごろみ覚えた煙草のけぶりに紛らかしにっこりと受けたまま返辞なければ往復端書はがきも駄目のことと同伴つれの男はもどかしがりさてこの土地の奇麗のと言えば
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
ここを入って行きましょうと、同伴つれが言う、私設の市場の入口で、外套氏は振返って、そのししの鼻の山裾やますそを仰いで言った。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若「はい、東京のものですが、訳あって此の神奈川へ参るみち、品川の停車場ステーション同伴つれにはぐれ難儀をしているところへ、悪者にけられまして此処こゝまでも跡を追って来て」
この娘! この娘! この娘なんだ! どうしてくれようとちらと横眼で見ると恋と妬心としんに先を急ぐ弥生は、同伴つれのお藤が何者であろうといっさい頓着とんじゃくないもののように
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
風鈴屋ふうりんやでもとほことか。——振返ふりかへつた洋館やうくわんをぐわさ/\とゆするがごとく、貨物車くわもつしやが、しか二臺にだいわたしをかばはうとした同伴つれはう水溜みづたまりみこんだ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わしは鴻の巣までけえるものでござえますが、駕籠を雇ってあとけえっても、十四五丁へいらねえばなんねえが、う少しけば鴻の巣だ、五丁半べえの処だアから、同伴つれでもえて
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
俗にいう梯子はしごという酒癖さけぐせで、留めるのもかず途中暖簾のれんとさえ見れば潜ったものだから、十軒店近くで同伴つれと別れ、そこらまで送って行こうというのを喧嘩するように振り切って
……大方その同伴つれは、列車の何処かに知合とでも話しているか、後架はばかりにでも行ってるのであろうが、まだ、出て来ません。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「京都のほうは、まだ先のことです。その前に、片瀬かたせ龍口寺りゅうこうじへおまいりして来ようと思っておりますが、同伴つれができましてねえ。大久保おおくぼ様の奥さまが、いっしょに行きたいといい出したのですよ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
同伴つれが殖えたから点けやすべえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さ、出よう、遅い遅い。」悪くすると、同伴つれに催促されるまで酔潰よいつぶれかねないのが、うろ抜けになって出たのである。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同伴つれひとは、面白そうににっこりして
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
はなしまぎれて、友造ともざうは、こゝに自分じぶんたちが不意ふいにめぐりあはうとして、れがために同伴つれなかからくるまをはづして引込ひきこんだものとおもつてしまつたらしい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そしてまた同伴つれを顧みて
以前にも両三度聞いた——かれの帰省談の中の同伴つれは、その容色きりょうよしの従姉いとこなのであるが、従妹はあいにく京の本山へ参詣おまいりの留守で、いま一所なのは
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同伴つれがあると道は早い。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
はやく、まちはなれてつじれると、高草たかくさ遥々はる/″\みちすぢ、十和田わだかよふといたころから、同伴つれ自動車じどうしやつゞかない。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……同伴つれのなじみのはかも、まゐつてれば、ざつとこのていであらうとおもふと、生々なま/\しろ三角さんかくひたひにつけて、鼠色ねずみいろくもかげに、もうろうとつてゐさうでならぬ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
同伴つれかへつたらうね。』といたとき雪枝ゆきえ間違まちがひことしんじながら、なんだかむねがドキ/\した。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小商人こあきんど風の一分別ありそうなのがその同伴つれらしい前垂掛まえだれかけに云うと、こちらでは法然天窓ほうねんあたまの隠居様が、七度ななたび捜して人を疑えじゃ、滅多な事は謂われんもので、のう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みづつたとはこと停車場ステエシヨンわりしづかで、しつとりと構内こうない一面いちめんれてる。赤帽君あかばうくん荷物にもつたのんで、ひろところをずらりと見渡みわたしたが、約束やくそく同伴つれはまだない。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
容子ようすは似つかわしく外国語で行こう、ヤングゼントルマンというのが、その同伴つれの、——すらりとして派手に鮮麗あざやかな中に、扱帯しごきの結んだ端、羽織の裏、つまはずれ、目立たないで
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だがね、家元の弥次郎兵衛どの事も、伊勢路では、これ、同伴つれの喜多八にはぐれて、一人旅のとぼとぼと、棚からぶら下った宿屋を尋ねあぐんで、泣きそうになったとあるです。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)