)” の例文
ヒはヒノキで従来から通常檜の字がててあるがこれはあたっていなく、檜はイブキビャクシン(略してイブキという)の漢名である。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
殊に大新嘗には国中の公田くでん悠紀ゆき主基すき卜定ぼくていして、その所産をもって祭儀の中心たるべき御飯おんいいの料にてられることになっていた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
雲切の二字をこれにてたのは、東の雲取山に対照せしめたので、別に意味はない。頂上は三宝山よりも広く針葉樹が鬱蒼としている。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
しかるにかねてより斥候せきこうの用にてむためならきたる犬の此時このときをりよくきたりければ、かれを真先に立たしめて予は大胆だいたんにも藪にれり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
平三は二階の物置から机を下ろして自分の部屋にててある表の四畳に据ゑた。机は毎年夏から夏へかけて二階に片附けてあるのである。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
しかし書かれたものの分量があまりに多過ぎるので、一息ひといきにそこで読み通す訳には行かなかった。私は特別の時間をぬすんでそれにてた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
黄鶴楼の庭前に作った仮舞台かりぶたいと面して見物席にてたのは二タつづきの大広間であって、二、三百人のお客がギッシリつまった。
看よ看よいかにかの露国がその人民を鞭撻べんたつし、その膏血こうけつを絞るも、限りあるの財本はもって限りなきの経費につるあたわず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ただ麝、麝鼠、麝牛、霊猫、海狸ビーヴァー等の体より分泌する諸香に遠く及ばねど、諸獣の胆や頑石や牡具の乾物も多少その用にて得と言い置く。
しかもその間、主上には寺の食堂じきどうを政庁にてられ、寒日も火なく、炎日もおいこいなく、政務をおとり遊ばしていたとやら。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第二の歌にてし紙はやみなこゝに盡きたるがゆゑに、技巧の手綱にとゞめられて我またさきにゆきがたし 一三九—一四一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
月をえて枳園は再び遺骨を奉じて入府し、又榛軒の金を受け、又これを他の費途にて、又遺骨を奉じて浦賀に帰つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
陶器を焼いて生活の資にて、他にもたらすところ厚く、自らは乏しくつつましく暮し、謙虚さは失わなかった姿こそ、まことに日本女性のかがみであり
大田垣蓮月尼のこと (新字新仮名) / 上村松園(著)
毛糸編みの内職をして弟の学費にてるといったとサ。公債証書ももっているけれど。姉さんが少しも手をつけんとサ。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
たってん山、聖天山、弁才天山など、峰々の花をお眺め遊ばして、昔義経が暫く忍んでおりましたと云う吉水の城を御旅館におてなされました。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
また「弁事(十人)ハ公卿諸侯大夫士庶人ヲ以テコレニツ。権弁事モマタコレニならフ。内外ノ庶務ヲ受付シ官中ノ庶務ヲ糺判きゅうはんスルコトヲつかさどル。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
繁文縟礼はんぶんじょくれいを省こう、その費用をもっと有益な事にてよう、なるべく人民の負担をも軽くしよう——それがこの改革の御趣意じゃありませんかね。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
第六十九条 クヘカラサル予算ノ不足ヲおぎなためニ又ハ予算ノほかしょうシタル必要ノ費用ニツルためニ予備費ヲもうクヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
これに反し、得たるたから慈善的じぜんてき公共的その他の正当な使用につることをごろ念じながら夢をむすべば、おそらく宝船以上のたからの夢を得るであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これは適当の方法をもって必ず皆すましていただかねばなりません。私はそれを諸君全体に寄付して、向後の費途にてるよう取り計らうつもりでいます。
小作人への告別 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
の学ぶところは我が知らざるところを補い、我が知るところは彼の学ばざるところにて、もって相交換し、もって相討論して、しかしてその説を定む。
化学改革の大略 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
そして三四郎の書斎にてられた別室へ陣取ると、戸外おもての美木も呼び込んで、ひと通り事情を聴取しはじめた。
寒の夜晴れ (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
〔評〕南洲、顯職けんしよくに居り勳功くんこうふと雖、身極めて質素しつそなり。朝廷たまふ所の賞典しやうてん二千石は、こと/″\く私學校のつ。貧困ひんこんなる者あれば、のうかたぶけて之をすくふ。
校友の控所にてられたる階上の一室には、盛装せる丸髷まるまげ束髪そくはつのいろ/\居並びて、立てこめられたる空気の、きぬの香にかをりて百花咲ききそふ春ともいふべかりける
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その翌日から万葉集の講義が始まりましたが、その講義は良斎らの座敷を選ばず、名物の炬燵こたつを仲介することもなく、この炉辺をそのままてることになりました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
有名なる夜会の事とて一千有余名の来賓につるその献立の如何いか按配あんばいされ、厨人ちゅうじんの如何に苦心せしやは料理法に重きを置かるる者の等しく知らんと欲するところならん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
雑誌もすで売品ばいひんつた以上いじやうは、売捌うりさばき都合つがふなにやで店らしい者が無ければならぬ、そこ酷算段ひどさんだんをして一軒いつけんりて、二階にかい編輯室へんしうしつ、下を応接所おうせつしよけん売捌場うりさばきぢやうてゝ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
北海道では今、群來の二字をてるが、古は漏の字を充てゝゐる。にしんのくきる時は漕いでゐる舟の櫂でも艫でも皆、かずの子を以てかずの子鍍金めつきをされてしまふ位である。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「北海道では今、群来の二字をてるが、古は漏の字を充てている。にしんのくきる時はいでいる舟のかいでもでも皆かずの子を以てかずの子鍍金めっきをされてしまう位である」
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
その頃彼の父は彼に農業の趣味を養うために郷里で豚を飼わせ、その収入を彼の小使銭にてた。この銭は多くは化学材料を買うために費やされ、ある時はりんで指を焼いた。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
其金それでカルカッタの大宮さんから借りた百五十ルピーをかえし、なお帰国の船賃にてました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
陵戸不足の場合は百姓を以てこれにて、その徭役を免じて三年交替の制を立てられた。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
彼女は刑場にてられた「塔の芝生タワ・グリイン」へ入らうとして、思ひがけず、丁度ちょうど広場から礼拝堂へ運び入れられる夫の血まみれのしかばねに行き会はなければならなかつた。彼女は夫を見た。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
これを以て今回計画中の費用につるあたわず、ただ有志士ゆうしし奔走費ほんそうひ位に充つるほどなりしゆえ、儂は種々砕心粉骨さいしんふんこつすといえども、悲しいかな、処女の身、如何いかんぞ大金を投ずる者あらんや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
相変らず内部に様々の秘密な構造が有ると言い伝えられて居る、此の言い伝えさえなくば叔父が自分の居室とする所で有ったが叔父は秘密などのある室は否だとて到頭書斎にてたのだ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その中から五円をいて一人の弟子の生活費にてるとして、次第上がりに月給が殖えても、三年目に五円位のものですから、その割に弟子も一人二人と殖え、幾分給料が多くなったとしても
拝啓はいけい益々ます/\御壮健ごさうけん奉慶賀候けいがたてまつりさふらふしたがつて貴君きくん御来京ごらいきやうおもむき御座候得共ござさふらえどもじつ御存ごぞんじのとほ御大喪ごたいさうにて、当地たうちは普通のいへにても参列者さんれつしやのためにふさがり、弊屋へいをく宿所しゆくしよてられ、ことよるのものとうれなく
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこはわしと家内との住居すまいてているのです。ところが家内は私を出迎えません。わしは家内の部屋へ行ってみました。家内はそこにも見えません。いろいろ探しましたが影も形もありません。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
岩角に触れて怒号する音轟々ごうごうとして、一月中僅かに二、三日を除くのほか昼夜止むことなし、したがって飲料につべき氷雪の収拾等の外出容易ならず、加うるに門口かどぐちの戸氷結して、容易たやすく開くこと能わず
その日から、彼も早目に夕食をえては、そこへ出掛けて行った。その学校も今では既に兵舎にてられていた。燈の薄暗い講堂の板の間には、相当年輩の一群と、ぐんと若い一組が入混っていた。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
札はお前のだが、もしあれがこの俺のなら、俺は勿論もちろんまず第一着に、二万五千ほど投げ出して何か地所といったような不動産を買い込むね。それから一万はそれにくっついてくる色んな費用にてる。
富籤 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
更に健全な国内の壮丁九十万人を国境と沿海戦の守備にてた。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ゆえにふるくからこれにて用いている梓の字はこのアズサから取り除かねばならぬのである。つまりアズサは梓ではないのである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ススケはササワケの転訛であろうか。或は元からススケ峰(ススケ峰)と唱えているのを殊更に笹分と漢字をてたものかも知れぬ。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その古来の表現は誠に千変万化でまた若干はこれにてたる漢語の鬼の字によって、世上の解説を混乱せしめている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
わたくしはかみに児玉旗山の書を見て、重て関の氏にして、五郎の二字の通称なるべきことを言つた。今此封筒はこれが反証につべきが如くである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ジャワでは虎人を苦しめぬ内は祖父じじまた老紳士と尊称してこれをあがめる、多くの村に村虎一頭あり、村の某が死んで虎になったとその人の名をてる
しか労力らうりよく仕払しはらふべき、報酬はうしうりやう莫大ばくだいなるにくるしんで、生命いのちにもへて最惜いとをし恋人こひびとかりうばふて、交換かうくわんすべき条件でうけんつる人質ひとじちたに相違さうゐない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かねてから猫の産月うみづきが近づいたので、書斎の戸棚とだな行李こうり準備よういし、小さい座蒲団を敷いて産所にてていたところ
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
下流の方のは「葛」の字をて、上流の方のは「国栖」の字を充てて、あの飛鳥浄見原天皇あすかのきよみはらのすめらみこと、———天武てんむ天皇にゆかりのある謡曲ようきょくで有名なのは後者の方である。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)