トップ
>
傍
>
そば
ふりがな文庫
“
傍
(
そば
)” の例文
「それっきりでございます。もっとも、私の秤は死骸の
傍
(
そば
)
にも見えませんでした。あわててどこかへ振り落したのでございましょう」
銭形平次捕物控:141 二枚の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ブラウンいわくこれは兎の雌雄ともに陰具の
傍
(
そば
)
に排泄物を出す特別の
腺
(
せん
)
その状
睾丸
(
こうがん
)
ごときあり、また肛門の辺に前に述べた数孔あり
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
城門の
傍
(
そば
)
まで立ちよつて中を見ることが出来るのでした、そして午後の五時になると、重い鉄の扉がガラガラと閉ぢてしまふのです。
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
と云いながら
傍
(
そば
)
へ寄って、源三の
衣領
(
えり
)
を
寛
(
くつろ
)
げて
奇麗
(
きれい
)
な指で触ってみると、源三はくすぐったいと云ったように頸を
縮
(
すく
)
めて
障
(
さえぎ
)
りながら
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
たちまち私の
傍
(
そば
)
を近々と横ぎって、左右に雪の
白泡
(
しらあわ
)
を、ざっと
蹴立
(
けた
)
てて、あたかも水雷艇の荒浪を切るがごとく猛然として進みます。
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
ある時、母は私の行く末を心配するあまりに、善教寺という寺の
傍
(
そば
)
に店を出していた怪しい
売卜者
(
うらないしゃ
)
のところへ私を連れて参りました。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
現にこの別荘のすぐ
傍
(
そば
)
に
錦鱗
(
きんりん
)
湖という池があるが、その池の岸辺にも温泉が湧出しておって、その岸辺の水は温かいとのことである。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
が、お久と云うものを
傍
(
そば
)
へ置くとき、父が何だか父らしくなく、浅ましい
爺
(
じじい
)
のように見えて来るのがこの上もなく不愉快なのである。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
傍
(
そば
)
の一人が僕に舞踏の社交上必要なわけを説明して、是非稽古をしろと云うと、今一人が舞踏を未開時代の遺俗だとしての観察から
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
紺足袋で駕籠から足袋はだしの儘つか/\と重三郎の
傍
(
そば
)
へ寄るより早く、粟田口の這入った箱へ手を掛けて無理に取ろうと致します。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
実は忠通にもかねてその
下心
(
したごころ
)
があったのであるが、自分の
傍
(
そば
)
を手放すのが惜しさに、自然
延引
(
えんいん
)
して
今日
(
こんにち
)
まで打ち過ぎていたのである。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
本堂は
傍
(
そば
)
に五重の塔を控えて、普通ありふれた仏閣よりも
寂
(
さび
)
があった。
廂
(
ひさし
)
の
最中
(
まんなか
)
から
下
(
さが
)
っている白い
紐
(
ひも
)
などはいかにも閑静に見えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
無調法な現代の科学応用の兇器みたように、音を立てたり血を流したりしないから、白昼の往来で
傍
(
そば
)
を通っている者でも怪しまない。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼の
電鈴
(
でんれい
)
を鳴して、火の
傍
(
そば
)
に寄来ると
斉
(
ひとし
)
く、唯継はその手を取りて
小脇
(
こわき
)
に
挾
(
はさ
)
みつ。宮は
懌
(
よろこ
)
べる気色も無くて、彼の為すに任するのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
障子が
段々
(
だんだん
)
眩
(
まぶ
)
しくなって、時々
吃驚
(
びっくり
)
する様な大きな
響
(
おと
)
をさしてドサリ
撞
(
どう
)
と雪が落ちる。机の
傍
(
そば
)
では
真鍮
(
しんちゅう
)
の
薬鑵
(
やかん
)
がチン/\云って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
とうとう腹を決めて、細君が
傍
(
そば
)
へ来ると口ぎたなく
罵
(
ののし
)
った。細君はその
辱
(
はずかし
)
めに堪えられないで、泣きながら死のうとした。景はいった。
阿霞
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
大鷲
(
おほとり
)
神社の
傍
(
そば
)
の田甫の白鷺が、一羽起ち二羽起ち三羽立つと、明日の酉の市の売場に新らしく掛けた小屋から二三
個
(
にん
)
の人がは
見
(
あら
)
はれた。
里の今昔
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
私は、窓の
傍
(
そば
)
に近づいて、戸を開けて見た。
裡
(
うち
)
は暗くて、人の住んでいる気はいもない。物の腐れた臭いが激しく鼻を衝いて来る。
抜髪
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「あのおばあさんだよ。ああして向う向いていながら、後に目があるんじゃアないか、と思うんだ、」と耳の
傍
(
そば
)
でいっている時に
でたらめ経
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
その時、赤彦君のうしろに猫がうづくまつて
咽
(
のど
)
を鳴らしてゐた。これは赤彦君がいつも猫を可哀がるので
傍
(
そば
)
に来てゐるのであつた。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
高手小手に縛り上げて、裏の中二階に転がし放しにして、其
傍
(
そば
)
でお鉄はやけからの茶碗酒を
呷
(
あお
)
りながら、さも口惜しそうに口を切った。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
(板を壁にがたりと寄せ掛く。さてチョッキのみになりたるに心付き、
床
(
ゆか
)
の上にある上着を取上げ着る。娘、
傍
(
そば
)
に寄る。)なんだ。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
すぐ
夫
(
をつと
)
は
傍
(
そば
)
から
松葉
(
まつば
)
を
拾
(
ひろ
)
ひ
上
(
あ
)
げて
穴
(
あな
)
の
中
(
なか
)
をつつ
突
(
つ
)
いた。と、
蜂
(
はち
)
はあわてて
穴
(
あな
)
から
出
(
で
)
て
來
(
き
)
たが、
忽
(
たちま
)
ち
松葉
(
まつば
)
に
向
(
むか
)
つて
威嚇的
(
ゐかくてき
)
な
素振
(
そぶり
)
を
見
(
み
)
せた。
画家とセリセリス
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
やっとのことで
傍
(
そば
)
まで来ても、もし客が黙って既買の切符を示せば、制服の老人はちょっと帽子をとって汗を拭き、そのまま直ぐ
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
すると、だんだん板に吸われていく疲労の快感に心は初めて空虚になった。彼はもう
傍
(
そば
)
にいる子のことも妻のことも考えなかった。
比叡
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
旗男はこわごわ
傍
(
そば
)
へよってみた。道路の上に倒れている人数は、一人や二人ではなかった。誰もみな、身体をつっぱらして死んでいた。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
可哀
(
かわい
)
そうな
子家鴨
(
こあひる
)
がどれだけびっくりしたか!
彼
(
かれ
)
が
羽
(
はね
)
の
下
(
した
)
に
頭
(
あたま
)
を
隠
(
かく
)
そうとした
時
(
とき
)
、一
匹
(
ぴき
)
の
大
(
おお
)
きな、
怖
(
おそ
)
ろしい
犬
(
いぬ
)
がすぐ
傍
(
そば
)
を
通
(
とお
)
りました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
男はこう
云
(
い
)
って女の手を取って自分の
傍
(
そば
)
へ並ばせた。それから片手を差し伸べて、景色を指さして、「あれがみんなだ」と云った。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
「はア、私は南條新子と申します。どうぞよろしく。」と、新子がすっかり親愛の度を深めた微笑で、答えると、小太郎が
傍
(
そば
)
から
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ちょうど
山姥
(
やまうば
)
がもう少しで上がるところで、銀子はざっと
稽古
(
けいこ
)
をしてもらい、
三味線
(
しゃみせん
)
を
傍
(
そば
)
へおくかおかぬに、いきなり切り出してみた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
逃げて行く二人を追いながら玄関まで主馬之介は走り出たが
傍
(
そば
)
の半弓を押っ取るや、
鏃
(
やじり
)
を抜き取った矢を
交
(
つが
)
えて討手の勢へ声を掛けた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その
傍
(
そば
)
で、警部や警察医や刑事達に取囲まれた一人の下男が、不気味な屍体を見まいとして、自分の顔へ手を
翳
(
かざ
)
しながら、話をつづけた。
見開いた眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
愚助は不思議に思ひながら、お父さまの
傍
(
そば
)
へ近よりますと、お父様は、いきなり愚助の
頬
(
ほほ
)
つぺたを、ぴしやりと
殴
(
なぐ
)
りつけました。
愚助大和尚
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
でも、困つたのよ、安いのを買はうとすると、
傍
(
そば
)
から、三輪さんの奥さんが、こつちがいゝつて、高いのを
撰
(
よ
)
るんですもの……。
屋上庭園
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
お別れするのはいや、考えちがいして宮仕もするのもいや、みやこにのぼることもいや、あなたのお
傍
(
そば
)
にただいとうございます。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
其間
傍
(
そば
)
にゐる若いのは、ちつともわたしの方を見ません。一度も見ません。多分アンチオツフス王の事をでも考へて立つてゐたのでせう。
尼
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
彼は手記の中に書いている「このすばらしい自然の風光を眺めながら私の心は
漲
(
みなぎ
)
り溢れる。しかも私の
傍
(
そば
)
に彼女はいない!」と。
ベートーヴェンの生涯:02 ベートーヴェンの生涯
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その縄を解いて電話機の
傍
(
そば
)
まで転がって行って、受話器を口に
啣
(
くわ
)
えて床の上に下ろし、それからアンジアンの電話局へ救助を叫んだのだ。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
窓から覗くと、直ぐ
傍
(
そば
)
のバナナ畑の下草をマリヤンが刈取つてゐるのだ。島民女に時々課せられる此の町の勤勞奉仕に違ひない。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
帰る時、誰やらが
後
(
うしろ
)
から外套を
被
(
か
)
けて呉れた様だつたが、賑やかに送り出されて、
戸外
(
そと
)
へ出ると、菊池君が私の
傍
(
そば
)
へ寄つて来た。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
柳行李
(
やなぎかうり
)
から云はれた物を出して居るのは妹の
乳母
(
うば
)
でした。私はまた
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか蚊帳を出て、
定七
(
さだしち
)
の火事装束をする
傍
(
そば
)
に立つて居ました。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
この恵那峡は木曾川の中流である中津川駅の
傍
(
そば
)
から大井町に至る水程三里の間にあって、
岐蘇
(
きそ
)
渓谷中の最勝の奇景であるといわれている。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
致す事なかれ
無禮
(
ぶれい
)
は許す
傍
(
そば
)
近
(
ちか
)
く參るべし我は
忝
(
かたじ
)
けなくも當將軍家
吉宗公
(
よしむねこう
)
の
御落胤
(
ごらくいん
)
なり當山中に赤川大膳といふ
器量
(
きりやう
)
勝
(
すぐ
)
れの浪人の有るよしを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
小猫は肉の香を嗅ぎつけて新聞紙包の
傍
(
そば
)
へ鼻を押しつけ、亭主に
叱
(
しか
)
られた。やがて私達の後を廻って遠慮なくW君の膝に上った。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
風呂桶
(
ふろをけ
)
の
傍
(
そば
)
では四十五十に
成
(
な
)
る
百姓
(
ひやくしやう
)
も
居
(
ゐ
)
て
一同
(
みんな
)
が
愉快相
(
ゆくわいさう
)
にどよめいた。おつぎが
手桶
(
てをけ
)
を
持
(
も
)
つた
時
(
とき
)
勘次
(
かんじ
)
は
裏戸
(
うらど
)
の
垣根口
(
かきねぐち
)
にひよつこりと
出
(
で
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その
傍
(
そば
)
にはまだ五六人の仲間がいて潰した
皮粕
(
かわかす
)
を
円
(
まる
)
めて
笊
(
ざる
)
の中へ入れたり、散らばっている
樹
(
き
)
の皮を集めてその
手許
(
てもと
)
に置いてやったりした。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
達手
(
だて
)
で自由で
宜
(
よ
)
い、と私は
傍
(
そば
)
で思いました。いかにも文明国の、そして自由な新時代の女性としての公平なポーズ(
姿態
(
したい
)
)だと思いました。
女性の不平とよろこび
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
理事席の
傍
(
そば
)
に二、三人の書記官の席があって、理事の参考に供する。また事務局の人々も出席していて、各種の質問に応ずる。
国際聯盟とは如何なものか
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
左手の前方には、墨黒々と
不細工
(
ぶさいく
)
な書院風の窓が描かれ、同じ色の
文机
(
ふづくえ
)
が、その
傍
(
そば
)
に角度を無視した描き方で、据えてあった。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
や、
巡査
(
じゅんさ
)
が
徐々
(
そろそろ
)
と
窓
(
まど
)
の
傍
(
そば
)
を
通
(
とお
)
って
行
(
い
)
った、
怪
(
あや
)
しいぞ、やや、また
誰
(
たれ
)
か
二人
(
ふたり
)
家
(
うち
)
の
前
(
まえ
)
に
立留
(
たちとどま
)
っている、
何故
(
なぜ
)
黙
(
だま
)
っているのだろうか?
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
傍
常用漢字
中学
部首:⼈
12画
“傍”を含む語句
近傍
路傍
傍若無人
傍人
傍観
其傍
片傍
傍目
傍輩
傍聞
傍題
傍眼
両傍
傍岡
直傍
傍見
御傍
傍聴
傍視
傍々
...