したが)” の例文
其の時院のけしきかはらせ給ひ、汝聞け、帝位は人のきはみなり。人道にんだうかみより乱すときは、天のめいに応じ、たみのぞみしたがうて是をつ。
年頃になるにしたがつて、弥勒像の性格だ。二年前の話だが、十九の年に見合ひして、近村の豪農の息子と結婚することになつたのだ。
木々の精、谷の精 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
四十にしてまどわず。五十にして天命を知る。六十にして耳したがう。七十にして心の欲する所に従えどものりえずと。——為政篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
尊王攘夷の大趣意において間然かんぜんする所あらんや。その表面よりすれば言正しくしたがい、その裏面よりすれば、わざわい未測に陥らんとす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「昔、哲人は時にしたがって動き、智者は機を見て発す。今、天われを助け、不思議の功を与え給う、受けざるは、これ天に逆らうものぞ」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
コスタンティーンが鷲をして天の運行にさからはしめし(ラヴィーナをめとれる昔人むかしのひとに附きてこの鷲そのかみこれにしたがへり)時より以來このかた 一—三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
弟子たちははなはだしく怖れて、「先生はなんという人だろう、風も海もしたがうとは!」と、互いに語り合ったのであります(四の三五—四一)。
幾代の間北野家は大川村の宗家であることを村人の頭脳に浸み入らせるためにお光の祖先の意思にしたがって努力したことだろう。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
一にいはく、やはらぎを以て貴しとし、さかふこと無きをむねと為せ。人皆たむら有り、またさとれる者少し。これを以て、或は君父きみかぞしたがはずして隣里さととなりたがふ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
万事をその神の御思慮にしたがわせ奉らば、さてこともなかるべきを、いかなればかこの世のほかの憂懶ゆうらんおそれて、覚なき後の栄華を求めむずらむ
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
これにいたちの心臓を合せて犬に餌えばその犬すなわち極めて猛勢となって殺されても人にしたがわずと見ゆるがそんなものを
横川景三おうせんけいさん殿の弟子ぶんの細川殿も早く享徳きょうとくの頃から『君慎』とかいう書を公方にたてまつって、『君行跡しければ民したがはず』
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
毛氈まうせん老樹らうじゆもとにしきたばこくゆらせつゝ眺望みわたせば、引舟は浪にさかのぼりてうごかざるが如く、くだる舟はながれしたがふてとぶたり。行雁かうがん字をならべ帰樵きせう画をひらく。
私の地蔵堂は日を経るにしたがって立派になった。私は何処へ遊びに行くということもせずに、いつも庭へ出ていた。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
時をたゞし道にしたがひ、仰いで鳳鳴を悲み、俯して匏瓜を嘆ず、之をりてれざらんことを恐れ、之を藏めて失はんことを憂ふ、之れ正は即ち正なりと雖も
人生終に奈何 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
だが、彼は壮年近くなると漸く論争に倦み内省的になり、老子の自然にしたがって消極に拠る説に多く傾いて来た。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
よろこびは春の華の如く時にしたがつて散れども、かなしみは永久の皷吹をなして人の胸をとゞろかす、会ふ時のよろこびは別るゝ時のかなしみを償ふべからず。
哀詞序 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
われは運命にしたがふの人ならざるべからず。とても、とても、かくてかかる世なれば、われはた多くは言はじ。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
けだこの時に当って、元の余孽よけつなお所在に存し、漠北ばくほくは論無く、西陲南裔せいすいなんえいまたことごとくはみんしたがわず、野火やか焼けども尽きず、春風吹いて亦生ぜんとするのいきおいあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何でも娘の時分は我儘わがままな心と生意気なまいきな心をつつしんで老功者の教えにしたがうものと心掛けなければならん。老功者の唱える理想を実行するものと覚悟しなければならん。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そうしてその体験がみみしたがうの心境を準備したのである。文句通り素直に解するに何のさまたげがあろう。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
と。(二三)れいくだすこと流水りうすゐみなもとごとく、民心みんしんしたがはしむ。ゆゑ(二四)ろんひくうしておこなやすし。
ややもすれば兄をしのごうとするこの弟の子供をおさえて、何を言われても黙ってしたがっているような太郎の性質を延ばして行くということに、絶えず私は心を労しつづけた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一、日支の情勢、風俗相近く、したがい易し。事なかばにして功倍する事、之にすぐるものなし。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
進むにしたがって地盤が柔かくなり、ともすると長靴をずぶりと踏込んでしまう、そしていつか灌木をぬけて蘆の生えた湿しめりへ出たと思うと、急に眼前めのまえへ殺生谷の底無し沼が姿を現した。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
其ノ荊州けいしゆうヲ破リ、江陵ヲ下リ、流レニしたがツテ東スルヤ、舳艫じくろ千里、旌旗せいき空ヲおほフ、酒ヲソソイデ江ニのぞミ、ほこヲ横タヘテ詩ヲ賦ス、マコトニ一世ノ雄ナリ、而シテ今いづクニカ在ル哉
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『王代記』というちょっとした本によれば、彼らは寛文の頃まで大明の衣冠をつけていたが、寛文三年清国の使が琉球に来た時、断然片髪かたかしらを結んで国俗にしたがったということであります。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
天にしたがって道を行なう。こういう意味だそうでございます。つまり彼らの標語なので。「関開路現かんをひらきみちをあらわす」こんな標語もございます。そうしてこれを隠語で記せば「並井足玉へいせいそくぎょく」となりますそうで」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ことに葉石の無情をうらみしなり、生きて再び恋愛のやっことなり、人の手にて無理に作れる運命に甘んじしたがうよりは、むしろいさぎよく、自由民権の犠牲たれと決心して、かくも彼の反省を求めしなるに
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「……私もう覺悟してゐてよ。初めは祖母さんなぞのことを思ひ出して泣いて暮してゐたけれど、今では覺悟してるの。これも運命なんですつてね。運命には敵はないから大人しくしたがふものだつて。」
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
そんなら、のそのそ歩くか、あるいはまぐろの切身をくわえてけ出す事と考えるかも知れんが、ただ四本の足を力学的に運動させて、地球の引力にしたがって、大地を横行するのは、あまり単簡たんかんで興味がない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その自動車は隣字の小さな温泉場に春なかばから秋なかばの半年だけ三四台たむろしてゐる、勿論中産以下の、したがつて村大半の百姓には雇へない。
禅僧 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
そも/\人は、その限りあるによりて、あがなひをなす能はざりき、そは後神にしたがひ心をひくうしてくだるとも、さきに逆きて 九七—
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
横川景三おうせんけいさん殿の弟子ぶんの細川殿も早く享徳きょうとくの頃から『君慎』とかいふ書を公方にたてまつつて、『君行跡しければ民したがはず』
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
毛氈まうせん老樹らうじゆもとにしきたばこくゆらせつゝ眺望みわたせば、引舟は浪にさかのぼりてうごかざるが如く、くだる舟はながれしたがふてとぶたり。行雁かうがん字をならべ帰樵きせう画をひらく。
故人曰く「達人よく明了。すべて天地の勢にしたがう」と。実にしかり。ただこの天地の勢いに順うにあるなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
子曰く、われ十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にしてまどわず、五十にして天命を知る、六十にして耳したがう、七十にして心の欲する所に従ってのりえず。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
この已来このかた秋稼しうかに至り風雨ついでしたがひて五穀豊かにみのれり。此れすなはち誠をあらはし願をひらくこと、霊貺りやうきやう答ふるが如し。すなはおそれ、載ち惶れて以てみづかやすみするとき無し。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
でも、ようやく、三軍が揃って、大宝八幡の社前から、蜿々えんえんと、四陣の兵が、じょしたがって、ゆるぎだしたときは、もう春らしい朝の陽が、大地にこぼれ出していた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渠を支配する生命の法は、即ち我を支配する生命の法なり。渠と我との間に「自然」の前に立ちて甚しき相違あることなし。法は一なり。法にしたがふものも亦た一なり。
万物の声と詩人 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
悲しみ気遣いながら抵抗せず、予のまましたがいしはうたた予をして惻隠そくいんの情に堪えざらしめた。
かつて預言者エレミヤはき無花果と腐った無花果と二かごを並べて、神の聖意にしたがう者をば佳き無花果、不信仰の者を腐った無花果にたとえたことがありますが(エレミヤ二四)
日頃やさしく父につかへて孝養怠りなかりしが、月日のつは是非なきことにてその父やうやく老いにければ、国法にしたがはむには山にもせよ野にせよ里はなれたるところへ棄つべくなりぬ。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
その子の哀慕に感じてかえるも、また天理にしたがい、生々不息と相合せることわりなり
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
てうるや、(三九)きみこれおよべばすなは(四〇)げんたかくし、これおよばざればすなは(四一)おこなひたかくす。くにみちればすなは(四二)めいしたがひ、みちければすなは(四三)めいはかる。
夜光虫の活動は益々さかんになって、海面は見渡す限り、波の動きにしたがって明滅する蛍光で青白く輝き、観測鏡で覗くとさらにその濃淡強弱の交錯がまるで無数の宝玉の砕片を振撒ふりまくかの様に見える。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「なにせ医学といふもんはたいしたものでな。わしらに理解のつくことでない。偉い先生のお言葉にはしたがはねばならんもんぢや」
村のひと騒ぎ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
彼が心に期していたものは、自己の戦闘による運命の打開でなく、天にしたがうことだったらしい。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
極力噛み付いたので虎大いに驚き吼え走ってその人のがるるを得た、またいわく胡人虎を射るにただ二壮士を以て弓をき両頭より射る、虎を射るに毛に逆らえば入り毛にしたがえば入らず
北条氏のほかに、まだ一かたまりの結ぼれがあって、工合好く整理の櫛の歯にしたがって解けなければ引ッコ抜かれるか扯断ひっちぎられるかの場合に立っているのがあった。伊達政宗がそれであった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)