重荷おもに)” の例文
わしはきょうまでかくしていたことを話してしまおう。わしはひとりでこの重荷おもにを心に負うているのにもはやえきれなくなった。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
あゝ願はくは正義と慈悲速かに汝等の重荷おもにを取去り、汝等翼を動かして己が好むがまゝに身を上ぐるをえんことを 三七—三九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かかる人を父とした者は真に不憫ふびんなものであり、また父たるその人もゆるりとくつろぐ場所も時間もなく、さなきだに重荷おもにになう人生において
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
一桶の重量十六貫とすれば、六桶も挽けば百貫からの重荷おもにだ。あまり重荷を挽くので、若者の内には眼を悪くする者もある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
がおとうさんおかあさんのとしごろになると、いへ生活せいかつが、よくてもあしくても、なんだか社會的しやかいてきくらしといふものが、重荷おもにかんじられてるものです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それゆゑに重荷おもになど持たるは、たとへ武家たりとも一足ひとあし踏退ふみのきて(ふみのくべきあとはあり)道をゆづるが雪国のならひ也。
四人のうちで、比較的やさしげな、銀縁眼鏡の黒江氏が、重荷おもにそうな口調でだいたいのところをうちあけてくれた。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「文一も駄目だ駄目だと言いますから、重荷おもにに小づけですが、この間から土曜講習へ入れましたよ。あなたは?」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おもことに一せん融通ゆうづうかなふまじく、いはゞたからくら番人ばんにんにておはるべきの、らぬつままでとは彌〻いよ/\重荷おもになり、うき義理ぎりといふしがらみのなくば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は、やっと重荷おもにをおろして、せいせいしました。そして、にこにこしながら、海べの方へ歩いて行きました。
ふたりは道すがら話もせずに、はらのうちでねりにねってきたのである。どうやら見苦みぐるしくもなくあいさつがすんだので、ふたりは重荷おもにをおろしたようである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
武村兵曹たけむらへいそうわたくしとは、じつ双肩さうけん重荷おもにおろしたやう心地こゝちがしたのである。じつに、うれしい、うれしい、うれしい。
マーキュ なんぢゃ、壓伏おしつける? あのこひ重荷おもにを? さりとは温柔やさしいもの慘酷むごたらしうあつかうたものぢゃ。
、充分得ますよ、ジエィン。しかし、神かけて、役にも立たぬ重荷おもには求めないで下さい。毒を欲しがらないで——私のところで、イヴその儘の女にならないで下さい——
第三の惨劇さんげきもコックの春吉の手で行われたが、それは鈴江への脅迫材料になると共に、又自分の重荷おもににもなってしまった。二人はおたがいの行動について極度の注意を払った。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
... 直々ぢき/\御訴訟ごそしようおそさふらふが、此儀このぎひら御免ごめんくださるべくさふらふ」と辭退じたいすれば、老公らうこう、「謙讓けんじやうもものにぞよる、きみよりめいぜられたる重荷おもにをば、してになはじとするはちうにあらず、 ...
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かくこれではじめて重荷おもにりたようにかんじ、自分じぶんもどってくつろぎますが、ただ現世げんせちがうのは、それからとこいてるでもなく、たったひとりでなつかしいむかしおもふけって
渡河瀕死ひんしの難、雪峰凍死の難、重荷おもに負戴ふたいの難、漠野ばくや独行の難、身疲しんぴ足疵そくしの難等の種々の苦艱くげんもすっぱりとこの霊水に洗い去られて清々として自分を忘れたような境涯に達したです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「おとうさん、だいぶくらしもくるしくなってきましたね。わたしはおとうさんの重荷おもにになるばかりです。いっそ、家をでて、じぶんでなんとかしてパンをかせぐようにしたいと思います。」
重荷おもに小附こづけ、——がくれに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
うれい重荷おもにうて直下すぐしたに働いて居る彼爺さん達、彼処あち此処こちに鳶色にこがれたけやきの下かしの木蔭に平和を夢みて居る幾個いくつ茅舎ぼうしゃ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わしらの間にはもう平和へいわは失われた。いっしょに暮らすことは互いの重荷おもにになった。もはや何のなぐさめもはげましも互いに期待することはできないのか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
かの田中の者一人の武士にゆきあひ重荷おもにながらもこなたより一足ふみのきたるに、武士はこゑをあらゝげわきよれといふ。
なんらかの事由じゆうのために各自の重荷おもには十貫目をえてはならぬ規定のある場合には、十一貫目以上をになえとはすすめぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そは我にともなふこの者、アダモの肉のころも重荷おもにあるによりて、心いそげど登ることおそければなり。 四三—四五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さしもあやふくおもひしことりとはことなしにおはりしかと重荷おもにりたるやうにもおぼゆれば、産婦さんぷ樣子やうすいかにやとのぞいてるに、高枕たかまくらにかゝりて鉢卷はちまきにみだれがみ姿すがた
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あたかも人質に取られた形——可哀かわいや、おしゅうの身がわりに、恋の重荷おもにでへし折れよう。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、私は改革することが出來る——私にはまだその力がある——もし——だがそんなことを考へたつて何になるんだ、足械あしかせをはめられ、重荷おもにを負はされ、呪はれた私のやうなものに。
ロミオ 彼奴あいつ箭先やさきかゝってゐるゆゑ、はねりたとてもかけられぬわい、とびからすのやうにもべず、かなしいおもひにつながれてゐるゆゑ、たかのやうにたかうもべぬ。こひ重荷おもに壓伏おしつけらるゝばかりぢゃ。
斯く己と我等のためにさち多き旅を祈りつゝ、これらの魂は、人のをりふし夢に負ふごとき重荷おもにを負ひ 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
くらもちぬしにかへ長途ちやうと重荷おもにひとにゆづりて、れは此東京このとうけうを十ねんも二十ねんいますこしもはなれがたきおもひ、そは何故なにゆえひとのあらばりぬけ立派りつぱひわけの口上こうじようもあらんなれど
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もっとも平和な時でさえも、わしはあまり陰気だったから。あなたがたには、長い歳月としつきの間さぞわしががた重荷おもにだったろう。でもわしをきらってくださるな。わしはあまりにさびしい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
むろんこれがために迷惑めいわくを受け、他人より多く笑われ、他人より一層多く非難されることもある。しかし常に心に戸閉とじまりし、つねにかくさんとする重荷おもにがないだけ気軽で、大なる利益がある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
取留とりとめもなくわらつた拍子ひやうしに、くさんだ爪先下つまさきさがりの足許あしもとちからけたか、をんなかたに、こひ重荷おもにかゝつたはう片膝かたひざをはたとく、トはつとはなすと同時どうじに、をんな黒髪くろかみ頬摺ほゝずれにづるりとちて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
引手ひきて馬方うまかたもない畜生ちくしやうが、あの大地震おほぢしんにもちゞまない、ながつらして、のそり/\と、大八車だいはちぐるまのしたゝかなやつを、たそがれのへい片暗夜かたやみに、ひともなげにいてしてる。重荷おもにづけとはこのことだ。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)