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つぼみ
ふりがな文庫
“
蕾
(
つぼみ
)” の例文
『鶯邨画譜』の方に
枝垂
(
しだ
)
れ
桜
(
ざくら
)
の画があつてその木の枝を
僅
(
わず
)
かに二、三本画いたばかりで枝全体には
悉
(
ことごと
)
く小さな薄赤い
蕾
(
つぼみ
)
が附いて居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そうして、だんだんと指の間が離れてゆくのが、朝夕目立ってゆくうちに、このアマリリスの
蕾
(
つぼみ
)
が、ふっくらと
膨
(
ふくら
)
んでまいりました。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
枝さきに一ぱいに
蕾
(
つぼみ
)
をつけてゐる中に、半開から八分咲きの輪も混つてゐた。その花は媚びた唇のやうな紫がかつた赤い色をしてゐた。
小町の芍薬
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
障子
(
しやうじ
)
を細目に開けて見ると、江戸中の櫻の
蕾
(
つぼみ
)
が一夜の中に
膨
(
ふく
)
らんで、
甍
(
いらか
)
の波の上に黄金色の
陽炎
(
かげろふ
)
が立ち舞ふやうな美しい朝でした。
銭形平次捕物控:142 権八の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
場末の
旅籠
(
はたご
)
屋などで、食膳の漬け菜の中から、菜の花の
蕾
(
つぼみ
)
が交って出ることがあるが、偶然だけに、どんなにか私を悦ばすことだろう。
菜の花
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
▼ もっと見る
其処へ何も知らない乳母は、年の若い女房たちと、
銚子
(
てうし
)
や
高坏
(
たかつき
)
を運んで来た。古い池に
枝垂
(
しだ
)
れた桜も、
蕾
(
つぼみ
)
を持つた事を話しながら。……
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
又、まんまるにふくらんだ白い
蕾
(
つぼみ
)
が、内に燃える
発動
(
はつどう
)
を
萼
(
がく
)
のかげに
制御
(
せいぎょ
)
しながら、自分の爆発する時期を待っているのもいいものです。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
各
枝端
(
したん
)
に一花ずつ開き、直径はおよそ一二センチメートル内外もあろう。
花下
(
かか
)
に五
片
(
へん
)
の
緑萼
(
りょくがく
)
があるが、
蕾
(
つぼみ
)
の時には
円
(
まる
)
く閉じている。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
屍体の右手は、
蕾
(
つぼみ
)
のように固く、指を折り曲げていた。折井刑事はウンウン云いながら、それを小指の方から、一本一本外していった。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
籠
(
かご
)
の
中
(
なか
)
には、
青々
(
あを/\
)
とした
蕗
(
ふき
)
の
蕾
(
つぼみ
)
が一ぱい
入
(
はひ
)
つて
居
(
ゐ
)
ました。そのお
婆
(
ばあ
)
さんは、まるでお
伽話
(
とぎばなし
)
の
中
(
なか
)
にでも
出
(
で
)
て
來
(
き
)
さうなお
婆
(
ばあ
)
さんでした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
菅野
(
すがの
)
に移り住んでわたくしは早くも二度目の春に逢おうとしている。わたくしは今心待ちに梅の
蕾
(
つぼみ
)
の
綻
(
ほころ
)
びるのを待っているのだ。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
やがて枝々の先きが柔かく
膨
(
ふく
)
れて来て、すーツと新芽が延び出した。そしてその根元の
処
(
ところ
)
へ小さな
淡褐色
(
たんかつしよく
)
の
蕾
(
つぼみ
)
が幾つも群がつて現はれた。
夢
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
ここに内発的と云うのは内から自然に出て発展するという意味でちょうど花が開くようにおのずから
蕾
(
つぼみ
)
が破れて花弁が外に向うのを云い
現代日本の開化
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
流石
(
さすが
)
に物堅き重二郎も
木竹
(
きたけ
)
では有りませんから、心嬉しく、おいさの顔を見ますと、
蕾
(
つぼみ
)
の花の今
半
(
なか
)
ば
開
(
ひら
)
かんとする処へ
露
(
つゆ
)
を含んだ
風情
(
ふぜい
)
で
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「使い古されているのは、歌のほうの話でしょう。梅は年々新しい
蕾
(
つぼみ
)
を持つ、うぐいすは年
毎
(
ごと
)
に新しく生まれますよ、奥さん」
梅にうぐいす
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
巴紋
(
ともえもん
)
の旗は高く
翻
(
ひるがえ
)
らず、春は来るとも李華は
永
(
とこし
)
えにその
蕾
(
つぼみ
)
を封じるようである。固有の文化は日に日に遠く、生れ故郷から消え去ってゆく。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
桜も
蕾
(
つぼみ
)
がふくらんだとはいえ三月末の陽気は日暮の近づいた今、肌のしまる寒さであった。実枝は羽織も着ず、
四股
(
しこ
)
をふんだ。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
この北の海にも春らしい紫色の
濛靄
(
もや
)
が沖に立ちこめ、日和山の桜の
梢
(
こずえ
)
にも
蕾
(
つぼみ
)
らしいものが芽を吹き、頂上に登ると
草餅
(
くさもち
)
を売る茶店もあって
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
北国
(
ほっこく
)
の暗い空も、一皮
剥
(
むけ
)
たように明るくなった。春雨がシトシトと降る時節となった。
海棠
(
かいどう
)
の花は
艶
(
つやっ
)
ぽく
綻
(
ほころ
)
び、八重桜の
蕾
(
つぼみ
)
も柔かに朱を差す。
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
波打つ八畳蚊帳の下に、泣くとも叫ぶともつかない声も圧し伏せられて、
蕾
(
つぼみ
)
の花は、狂児のあやしい
戯
(
たわむ
)
れにかき散らされた。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お君はチラホラと咲いている梅の木の花や
蕾
(
つぼみ
)
を、米友に向って指し示すのを、米友は見向きもせずに、お君の
面
(
おもて
)
をじっと見つめていましたが
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
午食前
(
ひるめしまえ
)
に、夫妻鶴子ピンを連れて田圃に
摘草
(
つみくさ
)
に出た。田の
畔
(
くろ
)
の猫柳が
絹毛
(
きぬげ
)
の
被
(
かつぎ
)
を脱いで
黄
(
きい
)
ろい花になった。
路傍
(
みちばた
)
の
草木瓜
(
くさぼけ
)
の
蕾
(
つぼみ
)
が
朱
(
あけ
)
にふくれた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
はもう
蕾
(
つぼみ
)
はどうしても
日
(
ひ
)
のいふこと
聽
(
き
)
いて
動
(
うが
)
かないので、
暑
(
あつ
)
いさうして
乾燥
(
かんさう
)
の
烈
(
はげ
)
しい
日
(
ひ
)
がそれを
憎
(
にく
)
んで
硬
(
こは
)
い
下葉
(
したば
)
をがさ/\に
枯
(
か
)
らした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
十年も遠のいていると、全然忘れていて、習った言葉は
蕾
(
つぼみ
)
のままで開いてくれない。修治さんはフランス語を、と仰言る。
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
乳緑の葉っぱ、茎、枝、みな水々しく、そして毛ばだっている。咲きかけの折り目のついた紅い
蕾
(
つぼみ
)
がそれらの
頂辺
(
てっぺん
)
にある。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
こんな光でもしかし、彼の赤い
蕾
(
つぼみ
)
を養ふには役立つた。さうして三十分ほど照してゐたがもう当らなくなつてしまつた。
のんしやらん記録
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
私はふと空いっぱいの灰色はがねに大きな床屋のだんだら棒、あのオランダ伝来の
葱
(
ねぎ
)
の
蕾
(
つぼみ
)
の形をした店飾りを見る。これも随分たよりないことだ。
秋田街道
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
いまもまだほかの梅は
蕾
(
つぼみ
)
がかたいのに、ここではもう
梢
(
こずえ
)
のあちらこちら、やわらかくほころびかかっているのがみえた。
日本婦道記:梅咲きぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
飯島では、まだ
百日紅
(
さるすべり
)
の花が咲いているというのに、北鎌倉の
山曲
(
やまたわ
)
では
芒
(
すすき
)
の穂がなびき、日陰になるところで、
山茶花
(
さざんか
)
の
蕾
(
つぼみ
)
がふくらみかけている。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
闇に燃え出した火の色は、
天鵞絨
(
びろうど
)
の上へ
芍薬
(
しゃくやく
)
の
蕾
(
つぼみ
)
を、ポッツリ一輪置いたようであった。パチパチと音を立てるのは、屋根板の燃える音であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其間
(
そのあいだ
)
も彼は山椿の枝を放さなかった。紅い
蕾
(
つぼみ
)
は
疾
(
と
)
くに砕けて
了
(
しま
)
ったが、恋しき女の
魂魄
(
たましい
)
が宿れるもののように、彼は
其
(
そ
)
の枯枝を大事に抱えていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それでも小砂利を敷いた
壺
(
つぼ
)
の広い中に、
縞笹
(
しまざさ
)
がきれいらしく、すいすいと
藺
(
い
)
が伸びて、その
真青
(
まっさお
)
な蔭に、昼見る蛍の朱の映るのは
紅羅
(
がんび
)
の花の
蕾
(
つぼみ
)
です。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は毎日ひそかに桜の森へでかけて
蕾
(
つぼみ
)
のふくらみをはかっていました。あと三日、彼は出発を急ぐ女に言いました。
桜の森の満開の下
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
姉をお
勢
(
せい
)
と言ッて、その頃はまだ十二の
蕾
(
つぼみ
)
、
弟
(
おとと
)
を
勇
(
いさみ
)
と言ッて、これもまた袖で
鼻汁
(
はな
)
拭
(
ふ
)
く
湾泊盛
(
わんぱくざか
)
り(これは当今は某校に入舎していて宅には居らぬので)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
挙動
(
そぶり
)
言語
(
ことば
)
が変って来まする。これをシコタマ掴んだお医者に。
診
(
み
)
せてしまえばこっちのものだよ。静養させるは
表面
(
うわべ
)
の口実。花の
蕾
(
つぼみ
)
が開かぬまんまに。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
然
(
し
)
かし山木、君もナカ/\
酷
(
ひど
)
い男ぢやぞ、
何
(
どう
)
ぢや、ぽん子は相変らず
奇麗
(
きれい
)
ぢやろナ、今を
蕾
(
つぼみ
)
の花の見頃と云ふ所を
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
あやめの数は二人の男の通う同じ日取りの同じ数をかぞえていて、株のわかれめに
莢
(
さや
)
ほどの
蕾
(
つぼみ
)
の用意を見せ、緑は葉並を走ってすくすく伸び上っていた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
おそい
蕾
(
つぼみ
)
もあった。蕾は、むすめの乳首のようだ。お高は、その
薪
(
まき
)
のような梅の木にも、そんな
萠
(
も
)
える力があるのかと何だか恥ずかしいような気がした。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
やがて麦の
根元
(
ねもと
)
は
黄
(
き
)
ばみ、
菖蒲
(
あやめ
)
の
蕾
(
つぼみ
)
は出で、
樫
(
かし
)
の花は散り、にわやなぎの花は咲いた。
蚕
(
かいこ
)
はすでに
三眠
(
さんみん
)
を過ぎた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
花や
蕾
(
つぼみ
)
をつけた自然の
蔓薔薇
(
つるばら
)
の
垣根
(
かきね
)
からなる部屋で、隣席が葉に
遮
(
さえぎ
)
られて見えず、どの客も中央の楽団から演奏されて来る音楽だけを
愉
(
たの
)
しむ風になっていた。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
これに反して誤った傾向に生徒を導くような事があっては生徒の科学的の研究心は
蕾
(
つぼみ
)
のままで無惨にもぎ取られるような事になりはしないかと恐れるのである。
物理学実験の教授について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
どこへ行っても
野薔薇
(
のばら
)
がまだ小さな
硬
(
かた
)
い白い
蕾
(
つぼみ
)
をつけています。それの咲くのが待ち遠しくてなりません。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼の空想の魔杖の一振りに、真白な
百合
(
ゆり
)
のような大きな花がみるみる
蕾
(
つぼみ
)
の弱々しさから日輪のようにかがやかしく開いた。清逸は香りの高い
蕊
(
しべ
)
の中に顔を埋めてみた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その腕環を信じてはいけません。もう少し我慢なさい。きっと自由の身になれます。どうぞあなたの薔薇の
蕾
(
つぼみ
)
のような口をあいて、あなたの居どころを教えてください
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
山にかこまれているだけに気温が高く、谷合いの道には紅梅の花の
蕾
(
つぼみ
)
がふくらみかけていた。月のうつくしい晩である。黒い影が竹藪の中のほそい道をのぼってきた。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
探
(
さぐ
)
ることも
發見
(
みいだ
)
すことも
出來
(
でき
)
ぬ
有樣
(
ありさま
)
——それが
身
(
み
)
の
爲
(
ため
)
にならぬのは
知
(
し
)
れてあれど——
可憐
(
いたい
)
けな
蕾
(
つぼみ
)
の
其
(
その
)
うるはしい
花瓣
(
はなびら
)
が、
風
(
かぜ
)
にも
開
(
ひら
)
かず、
日光
(
ひ
)
にもまだ
照映
(
てりは
)
えぬうちに
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
東京
(
とうきよう
)
では
一月
(
いちがつ
)
中旬
(
ちゆうじゆん
)
に
蕾
(
つぼみ
)
を
開
(
ひら
)
き
初
(
はじ
)
め、
二月
(
にがつ
)
に
至
(
いた
)
つて
滿開
(
まんかい
)
し、
三月
(
さんがつ
)
の
上旬
(
じようじゆん
)
まで
花
(
はな
)
を
開
(
ひら
)
きつゞけてゐます。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
一つ試してみようじゃないか、というわけで舟を蓮の花の側に止めさせて、今にも開きそうな
蕾
(
つぼみ
)
を三人で見つめた。その蕾はいっこう動かないが、近辺で何か音がする。
巨椋池の蓮
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
まだ
裾
(
すそ
)
の短かい服を着て、
綻
(
ほころ
)
び
初
(
そ
)
めぬ
蕾
(
つぼみ
)
の花といった
風情
(
ふぜい
)
でね、赤くなって、朝焼けのようにぱっと燃え立つんですよ(もちろん、もうちゃんと言い聞かせてあるんで)
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
丸、四角、扇形などさまざまの形をしたちいさい曲げ物に、紅、淡紅、白と、主に梅、桃、李などの花や
蕾
(
つぼみ
)
を
巧
(
たくみ
)
に按配して入れたもので、木曾の宿では大抵売りに来ました。
木曾御岳の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
“蕾”の解説
蕾(つぼみ、莟)とは、まだ開いていない状態の花のことである。転じて、前途有望な若者をいうこともある。
(出典:Wikipedia)
蕾
漢検1級
部首:⾋
16画
“蕾”を含む語句
蓓蕾
蓮蕾
蕾付
蕾合戦