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臥
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ね
ふりがな文庫
“
臥
(
ね
)” の例文
十三になる子守り娘のワーリカが、赤んぼの
臥
(
ね
)
ている揺りかごを揺すぶりながら、やっと聞こえるほどの声で、つぶやいている。——
ねむい
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「お前ら行ってしまったら、おっ母さんは店へ来て
臥
(
ね
)
る。何かことが起ったら、大きい声してたけりゃ、前の家からも来て呉れよう」
その年
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その間僕は炉のそばに
臥
(
ね
)
そべっていたが、人々のうちにはこの
家
(
うち
)
の若いものらが
酌
(
く
)
んで出す
茶椀酒
(
ちゃわんざけ
)
をくびくびやっている者もあった。
鹿狩り
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ある
時
(
とき
)
は、
隣室
(
りんしつ
)
に
臥
(
ね
)
てゐるKの
夫人
(
ふじん
)
に
搖
(
ゆす
)
り
起
(
おこ
)
されて
眼
(
め
)
を
覺
(
さ
)
ましたが、
彼女
(
かのぢよ
)
にはそれが
單
(
たん
)
に
夢
(
ゆめ
)
とばかり、
打
(
う
)
ち
消
(
け
)
すことができなかつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
と、吉野は手早く新坊の濡れた着衣を脱がせて、砂の上に仰向に
臥
(
ね
)
せた。そして、それに跨る樣にして、
徐々
(
そろ/\
)
と人工呼吸を遣り出す。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
もう、二三ヶ月前から心臓病で
臥
(
ね
)
ているのであるが、この二三日はめっきり衰えて、近所の人々は寄れば、その人の噂をしている。
夜の喜び
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「病人が
臥
(
ね
)
ているから、上っては困ります。どういう御用事ですか。」と頻りに
押止
(
おしと
)
める様子が、
却
(
かえ
)
って二人に疑惑の念を抱かしめた。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
ただし足最も寒き故自身の諸部をなるべく縮める、かくして全夜安眠し得べし、外套だけ被って足を伸ばし
臥
(
ね
)
ては束の間も眠られぬと。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
或
(
ある
)
ひは
娘共
(
むすめども
)
が
仰向
(
あふむけ
)
に
臥
(
ね
)
てゐる
時分
(
じぶん
)
に、
上
(
うへ
)
から
無上
(
むしゃう
)
に
壓迫
(
おさへつ
)
けて、つい
忍耐
(
がまん
)
する
癖
(
くせ
)
を
附
(
つ
)
け、
難
(
なん
)
なく
強者
(
つはもの
)
にしてのくるも
彼奴
(
きゃつ
)
の
業
(
わざ
)
。
乃至
(
ないし
)
は……
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
例えば『
浮草
(
うきくさ
)
』の如き丁度関節炎を憂いて
足腰
(
あしこし
)
が
起
(
た
)
たないで
臥
(
ね
)
ていた最中で、病床に
腹這
(
はらんばい
)
になって病苦と闘いながらポツポツ訳し
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そう言って帰りかけたが、父は額に
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を当て
臥
(
ね
)
そべっており、母はくどくどと近所の
噂
(
うわさ
)
をしはじめ、またしばらく腰を卸していた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その間に平中は装束を解いて
臥
(
ね
)
て待っていたが、たしかにカタリと懸金を掛ける音がしたのに、どう云う訳か女はなか/\戻って来ない。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
さて子舎へ這入ッてからお勢は
手疾
(
てばや
)
く
寐衣
(
ねまき
)
に着替えて床へ這入り、暫らくの間
臥
(
ね
)
ながら今日の新聞を
覧
(
み
)
ていたが……フト新聞を取落した。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
さもなかつたら、木魂姫が
臥
(
ね
)
てゐる其の洞穴が裂くる程に、また、あの姫の
空
(
うつろ
)
な声が
予
(
わし
)
の声よりも嗄るゝ程に、ロミオ/\と呼ばうものを。
文章その他
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
宿では、三畳ばかりのところに二人乃至三人づつ、
相部屋
(
あひべや
)
するので、私は随分と色んな種類の、見知らぬ男たちと枕をならべて
臥
(
ね
)
たものだ。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
深く酔った家従たちは皆夏の夜を板敷で仮寝してしまったのであるが、源氏は眠れない、一人
臥
(
ね
)
をしていると思うと目がさめがちであった。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
知らぬげに
臥
(
ね
)
てゐる彼を冷やかな心になつて考へながら、子供の仕打ちを胸の奥底では justify してゐるらしく彼には考へられた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
給銀を倍にして前払いでやっと承知をしたのが権八ひとりで、それも「親が病気で
臥
(
ね
)
ているから夜だけ看病にゆかせて貰う」
風流化物屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
復一はボートの中へ
仰向
(
あおむ
)
けに
臥
(
ね
)
そべった。空の
肌質
(
きじ
)
はいつの間にか夕日の
余燼
(
ほとぼり
)
を
冷
(
さ
)
まして
磨
(
みが
)
いた銅鉄色に
冴
(
さ
)
えかかっていた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
臥
(
ね
)
ようとすると、蒼白い月光が隈なく
羅
(
うすもの
)
を敷たように仮の
寝所
(
ふしど
)
を照して、五歩ばかり先に何やら黒い大きなものが見える。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
そればかりでは無い、久しい年月の間、病気と戦って
臥
(
ね
)
たり起きたりしていた細君の床がすっかり畳んで片付けてあった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
万客
(
ばんきゃく
)
の
垢
(
あか
)
を
宿
(
とど
)
めて、夏でさえ冷やつく名代部屋の夜具の中は、冬の夜の
深
(
ふ
)
けては氷の上に
臥
(
ね
)
るより耐えられぬかも知れぬ。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
病院にはいるのを嫌がるものですから、家に
臥
(
ね
)
かして看護婦をつけました。そして僕も出来るだけ看護したつもりです。
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その方角にはかなりに高い山が牛を
臥
(
ね
)
かしたように横たわっていて、人車はそれを目標にして行くように思われました。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
離間者の一言で
起
(
お
)
こしも
臥
(
ね
)
かしも出来るもんだと云ふことを発表しようとするのか——我々の周囲には日夜探偵の居ることを注意し給へ——
否
(
い
)
な
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
宝石で作ったような真紅のつぼみとビロードのようにつやのある緑の葉とを、
臥
(
ね
)
ながら灰色の壁に投射して見ると全く目のさめるように美しかった。
病室の花
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そう言って、彼女は、持っていた団扇で二人を
煽
(
あお
)
いだ。次郎は、
臥
(
ね
)
ていては悪いような気がして、斜めに体を起した。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
『して
此等
(
これら
)
は
何者
(
なにもの
)
か?』
女王樣
(
ぢよわうさま
)
は
薔薇
(
ばら
)
の
木
(
き
)
の
周
(
まは
)
りに
平伏
(
ひれふ
)
してゐた三
人
(
にん
)
の
園丁
(
えんてい
)
どもを
指
(
ゆびさ
)
して
申
(
まを
)
されました、
何故
(
なぜ
)
と
云
(
い
)
ふに、
彼等
(
かれら
)
は
俯伏
(
うつぶ
)
せに
臥
(
ね
)
てゐるし
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
と、薄ぼんやりと蔭った
凹
(
くぼ
)
みの
間
(
ま
)
に
臥
(
ね
)
ている一人の老人の顔が見えた。その老人は口を半開きにして、両眼をかっと見開いたまま彼の方を睨みつけていた。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「八、その野郎を捕まえろ。
臥
(
ね
)
ている人間の首を半分斬落した恐ろしい力だぞ、手負いだと思って油断するな」
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
気がつくと、
瑜伽
(
ナル・ヨル
)
、
秘密修験
(
サン・ナク
)
の大密画のある、うつくしい部屋に
臥
(
ね
)
かされていた。黄色い絹の天蓋に、
和闐
(
ホータン
)
の
絨緞
(
じゅうたん
)
。一見して、
活仏
(
げぶつ
)
の部屋であるのが分る。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
けれどきょうは
朋輩
(
ほうばい
)
が病気で
臥
(
ね
)
ていて自分が看護してやらねばならない時にはどうするか? 朋輩をほっておいて夢中になって会いに行くのが普通の恋だ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
そこの神社の境内の奥まったところに、赤い
涎
(
よだれ
)
かけをかけた石の牛が一ぴき
臥
(
ね
)
ていた。私はそのどこかメランコリックな
目
(
まな
)
ざしをした牛が大へん好きだった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
下の方には海の色が真青に見えていて、そのずっと向うに、紫色に
煙
(
けむ
)
って、丁度牛の
臥
(
ね
)
た形で、どこかの
陸
(
おか
)
が見えるのです。私、時々思うことがありますわ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼はそれを聞き入りながら、ついそれの口真似を口のなかでして、その上、
臥
(
ね
)
てゐる自分の体を少し浮き上がらせる心持にして、体全体で拍子をとつてゐた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
早速近所の医者を呼んで一時の苦痛は療治してもらったがまだなかなか
本復
(
ほんぷく
)
せんでこの通り
臥
(
ね
)
ている次第さ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
大悪魔は、だいぶ働いたので、すつかり疲れ、ぐつたりとして道端に
臥
(
ね
)
てゐましたが、ふと気がついて驚いたのは、自分の強い尾がなくなつてゐることでした。
悪魔の尾
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
この穢れし霊の一騒ぎがあった後、イエスは会堂を出られたその足で、すぐにシモン、アンデレ兄弟の家に入られたところ、シモンの
姑
(
しゅうとめ
)
が熱を病んで
臥
(
ね
)
ていた。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
その夜
臥
(
ね
)
てから奇妙な夢を見た、と見れば、自分は娘と二人でどこかの
山路
(
やまじ
)
を、道を失ッて、迷ッている。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
たとい最も悪い場合を想像してみても、われわれは氷を横切って陸に近づくことも出来る。
海豹
(
あざらし
)
の貯蔵のなかに
臥
(
ね
)
ていれば、春まではじゅうぶん生きてゆかれる。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
四辺
(
あたり
)
は
夕暮
(
ゆうぐれ
)
の
色
(
いろ
)
につつまれた、いかにも
森閑
(
しんかん
)
とした、
丁度
(
ちょうど
)
山寺
(
やまでら
)
にでも
臥
(
ね
)
て
居
(
い
)
るような
感
(
かん
)
じでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
丘の所に大きな
猪
(
ゐのしし
)
が
一疋
(
いつぴき
)
の可愛い坊やと一緒に
臥
(
ね
)
てゐました。おツ母さんは、坊やの
背
(
せなか
)
を
叩
(
たた
)
きながら
熊と猪
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
その前に
臥
(
ね
)
ている二匹の黒い獅子もある。子供の時分、彼はこれがこわかったものである。獅子は相変らず、今にもくさめをしそうな顔つきで、互いに見合っている。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
今度は仰向けになって体をながながと伸ばし、低い木製の
枠組
(
わくぐみ
)
のようなものの上に
臥
(
ね
)
ていた。その枠に馬の上腹帯に似た長い革紐でしっかりと縛りつけられているのだ。
落穴と振子
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
向
(
むこう
)
の隅に、
雛
(
ひな
)
の
屏風
(
びょうぶ
)
の、小さな二枚折の蔭から、友染の
掻巻
(
かいまき
)
の
裾
(
すそ
)
が
洩
(
も
)
れて、
灯
(
ともしび
)
に風も当たらず
寂莫
(
せきばく
)
としてもの寂しく
華美
(
はで
)
な死体が
臥
(
ね
)
ているのは、蝶吉が
冊
(
かしず
)
く人形である。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
風早は
独
(
ひと
)
り
臥
(
ね
)
つ起きつ安否の
気遣
(
きづかは
)
れて苦き
無聊
(
ぶりよう
)
に堪へざる折から、
主
(
あるじ
)
の妻は
漸
(
やうや
)
く茶を持ち来りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
これは、
後
(
あと
)
で聞いたのでございますが、
死骸
(
しがい
)
は、鼻から血を少し出して、頭から砂金を浴びせられたまま、薄暗い隅の方に、
仰向
(
あおむ
)
けになって、
臥
(
ね
)
ていたそうでございます。
運
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お定は気分のよい時など背中を起してちょぼんと坐り、退屈しのぎにお光の足袋を縫うてやったりしていたが、その年の暮からはもう
臥
(
ね
)
たきりで春には医者も手をはなした。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
石造のチャモロの家の前に印度素馨が白々と香り、其の蔭に、ゆつたりと牛が一匹
臥
(
ね
)
てゐる。牛の傍にいやに大きな犬が寢てゐるなと思つて、よく/\見たら山羊であつた。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
二寸三寸の
手斧傷
(
ちょうなきず
)
に
臥
(
ね
)
て居られるか居られぬか、破傷風が
怖
(
おそ
)
ろしいか仕事のできぬが怖ろしいか、よしや片腕
奪
(
と
)
られたとて一切成就の暁までは
駕籠
(
かご
)
に乗っても行かではいぬ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
臥
漢検準1級
部首:⾂
8画
“臥”を含む語句
臥床
仰臥
横臥
草臥
病臥
起臥
酔臥
俯臥
添臥
臥榻
臥龍梅
伏臥
安臥
打臥
臥牛
臥龍
突臥
臥房
寝臥
臥居
...