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粗
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あら
ふりがな文庫
“
粗
(
あら
)” の例文
茶店の
床几
(
しょうぎ
)
で
鼠色
(
ねず
)
羽二重
(
はぶたえ
)
の
襦袢
(
じゅばん
)
の
襟
(
えり
)
をした
粗
(
あら
)
い
久留米絣
(
くるめがすり
)
の美少年の姿が、ちらりと動く。今日は彼は茶店の卓で酒を
呑
(
の
)
んでいるのだ。
桃のある風景
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
が、そのほかの連中は、広間で細君たちと一緒に、前のほうの
粗
(
あら
)
ビロオドの椅子や、壁際の所に腰かけながら、踊りを見物していた。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
彼の上着には腰のあたりに
釦
(
ボタン
)
が二つ並んでいて、胸は
開
(
あ
)
いたままであった。霜降の
羅紗
(
ラシャ
)
も硬くごわごわして、極めて
手触
(
てざわり
)
が
粗
(
あら
)
かった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこらの草は、みじかかったのですが
粗
(
あら
)
くて
剛
(
こわ
)
くて
度々
(
たびたび
)
足を切りそうでしたので、私たちは河原に下りて石をわたって行きました。
鳥をとるやなぎ
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
狸には八文字があり、毛は軟かで爪はころころとしている。ムジナはこれに反して爪長く熊のごとく、毛は
粗
(
あら
)
くして綿毛が少ない。
狸とムジナ
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
手作りの
粗
(
あら
)
ツぽい書棚には、ラスキンの論文集、ツルゲヱネフの小説、それから森林生活の聖老ソローの全集、コンラツドの海の文集
亡びゆく森
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
エリサベツの子ヨハネは荒野に住み、身に
駱駝
(
らくだ
)
の
粗
(
あら
)
き毛衣を着、
蝗
(
いなご
)
と野蜜を食としたというから、彼はエッセネ派に近い人と思われる。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
そして、睫毛の黒さや、小麦色の
粗
(
あら
)
い皮膚。笑うと、虫の
蝕
(
く
)
っている味噌ッ歯の見える唇もとまでが、蝦夷萩と、そっくりである。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ところが新聞のあの
粗
(
あら
)
い網目では、拡大して見ると、点ばかり見えて、とても輪郭の差などが測れるわけのものでないことが直ぐ分った。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
山林の土中に棲み、眼至って小さく、両齶に歯あり、尾甚だ短く太く、斜めに
截
(
き
)
り取られたようで、その端円盾のごとく、その表面
粗
(
あら
)
し。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
あの
粗
(
あら
)
い髪を丁寧に
撫
(
な
)
でつけ額を光らせ
莫迦
(
ばか
)
に腰の低いところは大将にそっくりな若者が、あれが吉どんか、と思われるほどで
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
桐の葉は人も知る如く大きな
粗
(
あら
)
い葉で、それが桐の幹に
疎
(
まば
)
らについておるのであるが、その葉の落ちるときはぽくぽくともろく落ちやすい。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
楽屋にては小親の
緋鹿子
(
ひがのこ
)
のそれとは違い、黒き
天鵞絨
(
びろうど
)
の
座蒲団
(
ざぶとん
)
に、
蓮葉
(
はすは
)
に片膝立てながら、
繻子
(
しゅす
)
の襟着いたる
粗
(
あら
)
き
竪縞
(
たてじま
)
の
布子
(
ぬのこ
)
羽織りて
被
(
き
)
つ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
口吻
(
こうふん
)
がなんとなく尖って見え、唇の切れ目の上には鼠のような
粗
(
あら
)
い
髯
(
ひげ
)
が生えているところが鼠くさいと感じたことがあった。
軍用鼠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
獸骨器の
右
(
みぎ
)
に
畫
(
ゑが
)
きたるは魚骨器なり。
上端
(
じやうたん
)
の孔は糸を貫くに
適
(
てき
)
したり。
思
(
おも
)
ふに此骨器は
粗
(
あら
)
き物を
縫
(
ぬ
)
ひ合はする時に
針
(
はり
)
として用ゐられしならん。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
それは、母親たちの間をうろつき、不器用なからだつきで、
粗
(
あら
)
く
彫
(
ほ
)
った四本の棒切れのような脚を、ぶるぶる
顫
(
ふる
)
わせている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
どんなって、馬飼うような人だで、それはどうせ
粗
(
あら
)
いものせえ。それでも気は優しい人だった。今じゃ何でもよっぽどの
身上
(
しんしょう
)
を作ったろうえ。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ロミオ
此
(
この
)
賤
(
いや
)
しい
手
(
て
)
で
尊
(
たふと
)
い
御堂
(
みだう
)
を
汚
(
けが
)
したを
罪
(
つみ
)
とあらば、
面
(
かほ
)
を
赧
(
あか
)
うした
二人
(
ふたり
)
の
巡禮
(
じゅんれい
)
、
此
(
この
)
唇
(
くちびる
)
めの
接觸
(
キッス
)
を
以
(
もっ
)
て、
粗
(
あら
)
い
手
(
て
)
の
穢
(
よご
)
した
痕
(
あと
)
を
滑
(
なめら
)
かに
淨
(
きよ
)
めませう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
テーヴェロとアルノの間の
粗
(
あら
)
き巖の中にて最後の印をクリストより受け、
二年
(
ふたとせ
)
の間これを己が身に
帶
(
お
)
びき 一〇六—一〇八
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
人間の手にふれない土はすさんできめが
粗
(
あら
)
いが、人の手にふれるごとに土はきめをこまかくするし、そしてつやをふくんで美しく練れて来るのだ。
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
学ぼう、学ぼうと思いながらも、悟空の
雰囲気
(
ふんいき
)
の持つ
桁違
(
けたちが
)
いの大きさに、また、悟空的なるものの
肌合
(
はだあ
)
いの
粗
(
あら
)
さに、恐れをなして近づけないのだ。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
があ/\騷ぎ立てる鵞鳥と鋭い鷹との差——おとなしい羊と毛の
粗
(
あら
)
い、鋭い眼をした見張りの犬との差と云つても甚だしすぎることはないと思ふ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
粒の
粗
(
あら
)
い今のゼラチン乾板ではおそらく不成効であったであろうが、タンニン、蛋白、塩化コロジオンを使う古い方法が丁度適当であったのである。
レーリー卿(Lord Rayleigh)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
こゝのあらたへのといふのは、やはり
枕詞
(
まくらことば
)
です。たへは
着物
(
きもの
)
といふことで、
手觸
(
てざは
)
りの
粗
(
あら
)
いものが、あらたへなのです。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
そのまま
旧
(
もと
)
の空洞に納めまして、頭蓋骨を冠せて、皮と髪毛をクルリと
蔽
(
おお
)
うて、針と糸を迅速に
捌
(
さば
)
き働かせつつ、
粗
(
あら
)
っぽく縫い合せてしまいました。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
帶
(
おび
)
は
一重
(
ひとへ
)
で
左
(
ひだり
)
の
腰骨
(
こしぼね
)
の
處
(
ところ
)
でだらりと
結
(
むす
)
んであつた。
兩方
(
りやうはう
)
の
端
(
はし
)
が
赤
(
あか
)
い
切
(
きれ
)
で
縁
(
ふち
)
をとつてある。
粗
(
あら
)
い
棒縞
(
ぼうじま
)
の
染拔
(
そめぬき
)
でそれは
馬
(
うま
)
の
飾
(
かざ
)
りの
鉢卷
(
はちまき
)
に
用
(
もち
)
ひる
布片
(
きれ
)
であつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
あんな
粗
(
あら
)
い感情で文学などをやる気が知れぬと思った。それに引きかえて、自分の感情のかくあざやかに新しい思潮に触れ得るのをわれとみずから感謝した。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
剥
(
は
)
げかかったお白粉が
肌理
(
きめ
)
の
粗
(
あら
)
いたるんだ頬の皮へ
滲
(
し
)
み着いて居るのを、鏡に映して凝視して居ると、
廃頽
(
はいたい
)
した快感が古い
葡萄酒
(
ぶどうしゅ
)
の酔いのように魂をそそった。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
栗の毬は
粗
(
あら
)
い、けれども鮮かだ、純緑だ、一本一本が鍼のやうに細い。栗の
果
(
み
)
は固い、けれども噛めば噛むほど滋味が出る、純白だ。栗の果は君の魂だ、君の詩だ。
愛の詩集:02 愛の詩集のはじめに
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
垣根はほんの型ばかりに
粗
(
あら
)
く結ってあるので、誰でも自由にくぐり込むことを長次郎は知っていた。
半七捕物帳:24 小女郎狐
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大崎停車場は軌道の枕木を黒く焼いて拵えた
粗
(
あら
)
っぽい
柵
(
さく
)
で囲まれている。その柵の根には目覚むるような
苜蓿
(
クロバー
)
の葉が青々と茂って、白い花が
浮刻
(
うきぼり
)
のように咲いている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
明治期の美女は感じからいって、西鶴の注文よりはずっと
粗
(
あら
)
っぽくザラになった(身にほくろ一つもなき)というに反して、西洋風に額にほくろを描くものさえ出来た。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
すっかり着こむと、彼は見違えるほどシャンとして、気持が、その
粗
(
あら
)
い縞のズボンのように明るくなってしまった。階下にいる家内にちょっと見せてくる、と彼が言った。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
御重役でも榊原様では
平生
(
へいぜい
)
は余り
好
(
よ
)
い
形
(
なり
)
はしない御家風で、下役の者は内職ばかりして居るが、なれども
銘仙
(
めいせん
)
の
粗
(
あら
)
い縞の小袖に
華美
(
はで
)
やかな帯を
〆
(
し
)
めまして、文金の
高髷
(
たかまげ
)
で
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
嫋
(
しなや
)
かではあるが
粗
(
あら
)
い手で私の
全身
(
からだじゅう
)
を
擦
(
さす
)
っている。その快い触覚が疲労と苦痛とで麻痺している私の
肉体
(
からだ
)
を
労
(
いた
)
わってくれる。私の意識は次第次第に恢復するように思われた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何故及ばないかといふに、この表情美の線が甚だ以て
粗
(
あら
)
いからだ。フランス製の香水の表情の線を処女のうぶ毛とすれば、その他の外国製品は、極細の絹糸ぐらゐのものだ。
「香水の表情」に就いて:――漫談的無駄話――
(新字旧仮名)
/
大手拓次
(著)
丘の上に草を
食
(
は
)
んでる二匹の
山羊
(
やぎ
)
の鈴の音、彼が寝ころがってるすぐそばの細い小さな木立を過ぎる風の音、そういうものが、海綿のように
粗
(
あら
)
い柔軟な彼の考えを浸していた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
粗
(
あら
)
い衣を
纏
(
まと
)
ひ
麤
(
あら
)
い
詞
(
ことば
)
を使ひ、面白くなく、
鄙
(
いや
)
しく、行詰つた、
凄
(
すさま
)
じい、これを絵画にして象徴的に現はせば
餓鬼
(
がき
)
の草子の中の生物のやうな、或は小説雑話にして空想的に現はせば
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は船から這い上ると、泥の中に崩れ込んでいる
粗
(
あら
)
い石垣を伝って道へ出た。彼はそこで、上衣とズボンを脱ぎ捨てて
襯衣
(
シャツ
)
一枚になると、一番手近なお杉の家の方へ歩いていった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
拙
(
つた
)
なき器具や
粗
(
あら
)
き素材。売らるる場所とても狭き
店舗
(
てんぽ
)
、または路上の
蓆
(
むしろ
)
。用いらるる個所も散り荒さるる室々。だが摂理は不思議である。これらのことが美しさを器のために保障する。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ちょっと見には小石のように波の作用でできたものとも考えられるが、いちばん小さいものも半インチの長さの同じ
粗
(
あら
)
い材料からできており、一年のうちの一つの時期にだけ作られる。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
これにくらべると『黒手組曲輪達引』の序幕のほうのものは単純で且
粗
(
あら
)
ッぽい。
上野界隈
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
今さらのようにあの
粗
(
あら
)
い肌が連想され、僕自身の身の毛もよだつと同時に、自分の心がすでに毛深い畜生になっているので、その鋭い鼻がまた別な畜生の尻を
嗅
(
か
)
いでいたような気がした。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
また、その編目は
粗
(
あら
)
く、なかの顔は透いて見えるけれど、大次郎は生死の血戦を経たあとで、
蹣跚
(
よろめ
)
きそうに弱っているのである。笠の中の相手の顔になど注意を
凝
(
こ
)
らす余裕は、なかった。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
戸より入りて見れば、新に大理石もて
彫
(
ゑ
)
り成せる大いなる馬二頭地上に据ゑられ、
青艸
(
あをくさ
)
はほしいまゝに長じて
趺石
(
ふせき
)
を掩はんと欲す。
四邊
(
あたり
)
には既に刻める柱頭あり、
粗
(
あら
)
ごなししたる石塊あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
特にここに述べたところは単に
粗
(
あら
)
い点線で、われらの考えの輪廓を画いただけに過ぎず、例外とみなすべき場合はことごとく省き、親子間に現われる利他心のごときも全く略しておいたゆえ
人道の正体
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
と首をひねってタヌの様子をうかがうところ、どうやらこれは並々ならぬ災難の前兆、悪運の先駆けと思わざるを得ないというのは、
粗
(
あら
)
い毛織りの服を着たタヌの胸が優しげな溜息をもらし
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そして女のベッドが空なのは、女がおれのものであり、窓ぎわのあの女、
粗
(
あら
)
くて重い布地の黒ずんだ着物を着た、あの豊満でしなやかで
温
(
あたた
)
かい肉体が、まったくただおれのものであるからなのだ。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
と
粗
(
あら
)
い
皺
(
しわ
)
のできた、短い、しかし形のいい指先で数字を指し示した。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
すぐ眼の前に隣家の小さな土蔵が見え、屋根近くその白壁の一ところが
剥脱
(
はくだつ
)
していて
粗
(
あら
)
い
赭土
(
あかつち
)
を露出させた寂しい眺めが、——そういう
些細
(
ささい
)
な部分だけが、昔ながらの面影を
湛
(
たた
)
えているようであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
“粗”の解説
魚肉の部位
粗(あら)は、魚の下ろし身を取った後に残る頭部、骨、エラ、ヒレやそれらに付着した肉である。通常は「魚のアラ」と呼ばれ、食材となる。
魚類であるサメのヒレは、ふかひれがメインの利用目的であり、アラとは呼ばない。
(出典:Wikipedia)
粗
常用漢字
中学
部首:⽶
11画
“粗”を含む語句
粗忽
粗暴
粗々
粗略
粗雑
粗野
粗木
粗布
粗造
粗剛
粗末
粗相
粗匇
粗鬆
粗羅紗
粗朶
粗笨
粗漏
粗壁
粗忽者
...