みんな)” の例文
という鄭重ていちょうな辞令に接した。しまったと思ったが、もう追っ着かない。親しい同僚はみんな同情して、その代表者が見舞いに来てくれた。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それは春のことで。夏になると納涼すずみだといって人が出る。秋は蕈狩たけがりに出懸けて来る、遊山ゆさんをするのが、みんな内の橋を通らねばならない。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
萬一まさかとき心配しんぺえだからねえ、あともの厄介やくけえりてえつちなみんなおんなじだんべぢやねえか、ねえこつちのおとつゝあんさうでがせう
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どうも大変なことになったもんだが、一体、どうすれば好いのか、まあ、そのつもりでみんなで注意するだけは注意しなくちゃなりませんね
何故なぜと言ッて見給え、局員四十有余名と言やア大層のようだけれども、みんな腰の曲ッた老爺じいさんあらざれば気のかないやつばかりだろう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
俺にも餘程天理教の有難え事が解つて來た樣だな。耶蘇は西洋、佛樣は天竺、みんな渡來物わたりものだが、天理樣は日本で出來た神樣だなッす?
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「今度はあたしが人間で三人犬にならないか。私がお菓子や何かを投げてやるから、みんな四つ這いになって其れを喰べるのさ。ね、いゝだろ」
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「急には雇えません。二十四時間以内の積込つみこみですからね。明日あしたになら合うかも知れませんが……みんなモウ……ヘトヘトなんで……」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
みんな血走ちはしツてゐるか、困憊つかれきツた連中れんぢうばかりで、忍諸まご/″\してゐたらあご上がらうといふもんだから、各自てん/″\油斷ゆだんも何もありやしない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
元々行李も書き附けもみんなお前の物なんだから取って悪いというじゃないが、何故欲しいなら欲しいといって俺に明かせてくれなかった。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
政「長さん、珍しく今夜は御機嫌だねえ…お前さんの居る所が知れないと云って、おとっさんやみんな何様どんなに心配をしていたか知れないよ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
だから、希臘人といふ希臘人はみんなあかまみれで、そばへ寄つてみると、(考古学者だつて、たまにはきた人間の側に寄らないとも限らない)
日暮方に、南町へ電話をかけて置いて、帰ろうとしたら、清が「今夜みんな金春館こんぱるかんへ行こうって云うんですがね。一しょにきませんか。」
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、ひよいと其處に湧いた空虚の感じと、寂しさの意識が、みんなの奧底にある果敢ない氣持を起させたことだらうと思ひます。
S中尉の話 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「部屋は密閉しているものですから、少し位の物音は聞えないのです。みんなに尋ねて見ましたが誰も気のついたものはない様です」
忙しがる小野を無理に都合させて、かぬ人込へわざわざ出掛けるのもみんな自分が可愛いからである。済まぬ事には人込は自分も嫌である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「宗教なんてものにろくなものは無い、そんなものを信じる奴は馬鹿ばかりだ、天理教だの日蓮にちれん宗だの耶蘇やそ教だのみんなきちがいのやることだ」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「いや。……」と私は頭に手をやり乍ら、それでも晴々した気持になつて、そろつてゐるみんなの顔を見渡し乍ら、うれしさうに其処そこの座についた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
「お餅も貰って来ておるが、朝みんなが起きた時にいっしょにやる、私と赤ちゃんとは奥のへやへ往って寝るから、お前たちは此処で寝るが好い」
白い花赤い茎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お島は母親を威圧するように、今日もみんなそろっている前で言ったが、小野田はそれを裏切らないように、口裏を合せることを忘れなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「兎に角、お店へ行つて、みんなに引き合せて貰ひませう。その上間取りの具合でも見たら、また何か氣が付くかも知れません」
ごまかせるものじゃねえよ。そこでみんなして、彼奴が松尾から手に入れた金を捲き上げてやるか、彼奴をひっぱたいてやるか、まあどっちかだね。
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
第一の童子 この寺の方丈様はうぢやうさまは、おらはまだ見ないが、みんなのいふて居ることにや、髪の毛が鼠の毛で、手の爪が熊の爪ぢや。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
一人が先ず始めてみんながそれにつれられて働き出した「喧嘩」は一人がいやになると皆もいつとはなしにする気がなくなって仕舞うものである。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
五百年ごひやくねん千年せんねんまへうたほうが、自分じぶんたちのものよりはるかにあたらしく、もつと/\熱情ねつじようこもつてゐるといふことに、みんなこゝろづくようになりました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ピツコロ 「よけいなことを言ふな。だけどみんなおれの顔をみて笑つてる。少し恥かしいな。では、横丁へいつて泣かう。」
〈ピツコロさん〉 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
ともかくも歌の言葉があまりに古風なものだから、何処どこでもそれを知っていた女たちはみんないなくなって、近年の採集にはもれたものと思われる。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
王様を始めみんなは、鶉が来たので大変およろこびになりましたが、その声が、いかにも悲しさうなので、不審に思ひました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
あのときのオリムピック応援歌おうえんかげよ日の丸、緑の風に、ひびけ君が代、黒潮越えて)その繰返しリフレインで、(光りだ、はえだ)と歌うべきところを、みんな
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そしてこの天幕のうちを、夢の姿を以て満しましょう。みんなに重い悲哀をかつがせて、よろよろと行き悩ませてやりましょう。
そこで、赤彦君はみんなに茶を饗することを命じた。その間に赤彦君は冷水を音させながら飲干のみほして、『実にうまい。これが一等です』などとも云つた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
あの別品さんがそれをると云ふのは評判ですよ。金窪かなくぼさん、鷲爪わしづめさん、それから芥原あくたはらさん、みんなその話をしてゐましたよ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さて、わたしもくつろがう、明日あす明後日あさつて、早速大磯に移ることにして、それからみんなで真黒に丈夫になる競争をしよう。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「大變な手紙ですね」「これ? も一卷あるのですよ。みんなあの人からよこしたのと、こちらからやつたのとですよ」
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
そのがわみんながトントントンと鎧戸を落とす。硝子戸までガタガタとやる。反対の側のも二、三人は立ち上って来た。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
みんなはその家の前で勢揃せいぞろいをすると、もと来た道を帰りました。二郎次も、逃げようとすればすぐにも殺されそうなので、恐る恐るあとから附いて帰りました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「老爺さん、こんどこそはひとつモノにして下さい、なにしろ君にいためられたみんなが浮かばないよ。こっちのうちだって、なんだかんだって大変だあね。」
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「ねえみんな喜んでおくれ、いよいよお正月の下席から青山久保本で私の真打だ。多分もうハッキリとまるだろう」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
みんな学問は出来ないのがおおいというと。御同前の田へ水を引くようだ。アハハハ。それだから葦男さんも。官員なんぞという文字は脳中にないようにして。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
頭痛がするで遅くなりましたとみんな怠惰なまけられるは必定、其時自分が休んで居れば何と一言云ひ様なく、仕事が雨垂拍子になつて出来べきものも仕損ふ道理
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
まづ始には女目付をんなめつけのバルバラがつぶやくやう、あのピエロオの拔作め、氣のかないのも程がある、カサンドル樣の假髮かづらの箱をおとして、白粉おしろいみんないて了つたぞ。
胡弓 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
をとこみんなあんなものおほいからとおふくわらすに、わるあてこすりなさる、みゝいたいではいか、れはえても不義理ふぎり土用干どようぼしこと人間にんげん
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ロミオ わしまたいつまでもうして此處こゝってゐよう、そもじにもわすれさせ、自分じぶん此家こゝことほかみんなわすれて。
室内しつないには螺旋ねぢゆかめられた寐臺ねだい數脚すうきやく其上そのうへにはあを病院服びやうゐんふくて、昔風むかしふう頭巾づきんかぶつてゐる患者等くわんじやらすわつたり、たりして、これみんな瘋癲患者ふうてんくわんじやなのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「あれで中々女が好きでね、女なんかゞ一人で物を持って往ってやるといけないって、みんなが云ってました」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かアさんが生きてれば家へ帰って堅気で暮すんだけれど、わたし、あんたも知ってる通り、父さんも母さんもみんな死んでしまって、今じゃほんとの一人ひとりぼっちだからさ。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ちょっと見た娘の一目は儼然げんぜんとして言われた父の厳命より剛勢だ、自分は娘の意に従いすぐに室を出たが、それでも今室へはいッた時ちらりとみんなの風が目に止ッた。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
これは父祖代々五代にわたって受け継いで来た長い歴史のために破損したのであって、ここに彫り込まれた三人目の漁夫は、大祖父によく似ているとみんなが評判すること。
手にした折詰を見ると、こは如何いかに、底は何時いつしかとれて、内はからんからん、ついに大笑いをして、それからまた師匠のうちへ帰っても、さかんみんなから笑われたとの事だ。
今戸狐 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
出稼ぎして諸方を彷徨うろついてゐた方が、ひもじいおもひをしない、寝泊ねどまりする処にも困らない。生れた村には食物くひもの欠乏たりなくてみんな難渋なんじふしてゐるけれど、余処よそ其程それほどでもない。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)