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潮
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さ
ふりがな文庫
“
潮
(
さ
)” の例文
曙の色は林の中まで追いついて、木膠や蔦の紅葉の一枚一枚に透き徹る明る味を
潮
(
さ
)
して、朝の空気は、醒めるように
凛烈
(
りんれつ
)
となった。
雪中富士登山記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
あなたの大きくみひらいた眼には、果てなき大空の藍色と見渡す草原の緑とが映り紅を
潮
(
さ
)
した
頬
(
ほお
)
には日の光と
微風
(
そよかぜ
)
とが知られた。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
われは手に
瓔珞
(
くびたま
)
を捧げて、心にこれをマリアに與へんことを願ひぬ。マリアの顏の紅を
潮
(
さ
)
せしは、我心を
忖
(
はか
)
り得たるにやあらん、
覺束
(
おぼつか
)
なし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
確かに順調ではなかった体の工合も、すっかりよくなって、毎晩恐ろしい夢に
魘
(
うな
)
されることもなく、青かった顔にもいい色に血が
潮
(
さ
)
して来た。
地は饒なり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
忽然
(
こつぜん
)
として眼が嬉しそうに光り出すかと思う間に、見る見る
耐
(
こら
)
えようにも耐え切れなさそうな微笑が
口頭
(
くちもと
)
に浮び出て、
頬
(
ほお
)
さえいつしか
紅
(
べに
)
を
潮
(
さ
)
す。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
僅かにあげた顏は、やゝ小さくて、蒼白さの中に紅を
潮
(
さ
)
したのも氣高く、わけても大きく開いた眼の雄辯さは非凡です。
銭形平次捕物控:289 美しき人質
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがて
接吻
(
キツス
)
の
音
(
おと
)
がした。
天幕
(
テント
)
にほんのりとあかみが
潮
(
さ
)
した。が、やがて
暗
(
くら
)
く
成
(
な
)
つて、もやに
沈
(
しづ
)
むやうに
消
(
き
)
えた。
魔
(
ま
)
の
所業
(
なすわざ
)
ではない、
人間
(
にんげん
)
の
擧動
(
ふるまひ
)
である。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
窪んだ頬の上に薔薇色の
紅
(
くれなゐ
)
が
潮
(
さ
)
してゐる。多くの町や広場を通り過ぎて、主従は大ぶ家を遠ざかつた。併し老人には主人がどこへ往くのだか分からない。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
未だ世馴れざる里の子の貴人の前に出しやうに
羞
(
はぢ
)
を含みて紅
潮
(
さ
)
し、額の皺の幾条の溝には
沁出
(
にじみ
)
し
熱汗
(
あせ
)
を湛へ、鼻の
頭
(
さき
)
にも珠を湧かせば腋の下には雨なるべし。
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
多く室内にゐて珍しく出かけて來たのであらう、日に
炒
(
い
)
りつけられた麥藁帽子の蔭の彼の顏は痛々しく蒼白く、微かに
紅
(
あか
)
みが
潮
(
さ
)
してゐるのがなか/\に哀れである。
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
目は
瞬
(
しばたた
)
きもやんだように、ひたと両の瞳を据えたまま、炭火のだんだん灰になるのを見つめているうちに、顔は火鉢の活気に
熱
(
ほて
)
ってか、ポッと赤味を
潮
(
さ
)
して涙も
乾
(
かわ
)
く。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
彼は
優
(
すぐ
)
れて美なり。
乳
(
ち
)
の如き色の顔は燈火に映じて
微紅
(
うすくれなゐ
)
を
潮
(
さ
)
したり。手足の
繊
(
かぼそ
)
く
裊
(
たをやか
)
なるは、貧家の
女
(
をみな
)
に似ず。老媼の
室
(
へや
)
を出でし跡にて、少女は少し
訛
(
なま
)
りたる言葉にて云ふ。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「それで今、その
女
(
ひと
)
は何うしているの?」お宮の
瞳
(
め
)
が冴えて、
両頬
(
ほお
)
に少し熱を
潮
(
さ
)
して来た。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ポッと紅味が
潮
(
さ
)
して来た。
瑪瑙
(
めのう
)
の仙女像が出来上がった。その仙女像は半透明であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これは肉づきのよい面にポッと紅を
潮
(
さ
)
して澄み渡った眼に竜之助の白く光る眠を真向うに見合せて、これも甲源一刀流名うての人、相立って両人の間にさほどの相違が認められません。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
これは肉づきのよい面にポッと
紅
(
べに
)
を
潮
(
さ
)
して、澄み渡った眼に、竜之助の白く光る眼を
真向
(
まっこう
)
に見合せて、これも甲源一刀流
名
(
な
)
うての人、相立って両人の間にさほどの相違が認められません。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
拍子
(
ひょうし
)
に胸の血はことごとく頬に
潮
(
さ
)
す。
紅
(
くれない
)
は云う、
赫
(
かっ
)
としてここに
躍
(
おど
)
り上がると。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
子供は
床
(
とこ
)
の中に
静
(
しずか
)
に
睡
(
ねむ
)
っている。母はルパンの手で長椅子の上に横に寝かされて身動きもしない。しかし段々と
呼吸
(
いき
)
も穏かになり、血の気もその頬に
潮
(
さ
)
して来て、ようやく回復の徴候が現れた。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
孔明の面は
淡紅
(
たんこう
)
を
潮
(
さ
)
している。言語は徐々、痛烈になってきた。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
枯燥
(
こさう
)
しつゝある
彼等
(
かれら
)
の
顏
(
かほ
)
にはどれでも
華
(
はな
)
やかな
紅
(
べに
)
を
潮
(
さ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
老
(
おい
)
の
頬
(
ほお
)
に
紅
(
くれない
)
潮
(
さ
)
すや濁り酒
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
薔薇
(
さうび
)
潮
(
さ
)
す
片頬
(
かたほ
)
にほてり
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
頬
(
ほ
)
に
紅
(
くれなゐ
)
の
色
(
いろ
)
潮
(
さ
)
すを
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
わざと
知
(
し
)
らず
顏
(
がほ
)
つくりながらも
潮
(
さ
)
す
紅
(
くれなゐ
)
の
我
(
われ
)
しらず
掩
(
おほ
)
ふ
袖屏風
(
そでびやうぶ
)
にいとゞ
心
(
こゝろ
)
のうちあらはれて
今更
(
いまさら
)
泣
(
な
)
きたる
事
(
こと
)
もあり
人
(
ひと
)
みぬひまの
手習
(
てならひ
)
に
松澤
(
まつざは
)
たかとかいて
見
(
み
)
て
又
(
また
)
塗隱
(
ぬりかく
)
すあどけなさ
利發
(
りはつ
)
に
見
(
み
)
えても
未通女氣
(
おぼこぎ
)
なり
同
(
おな
)
じ
心
(
こゝろ
)
の
芳之助
(
よしのすけ
)
も
射
(
ゐ
)
る
矢
(
や
)
の
如
(
ごと
)
しと
口
(
くち
)
にはいへど
待
(
ま
)
つ
歳月
(
としつき
)
はわが
爲
(
ため
)
に
弦
(
ゆづる
)
たゆみしやうに
覺
(
おぼ
)
えて
明
(
あ
)
かし
暮
(
く
)
らす
程
(
ほど
)
のまどろかしさよ
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
白花という名を
冠
(
かむ
)
らせるくらいだから白くはあるが、花冠の脊には、
岩魚
(
いわな
)
の皮膚のような、
薄紅
(
うすべに
)
の曇りが
潮
(
さ
)
し、花柱を取り巻いた五裂した花冠が
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
まだ世馴れざる里の子の
貴人
(
きにん
)
の前に出でしように
羞
(
はじ
)
を含みて
紅
(
くれない
)
潮
(
さ
)
し、額の皺の
幾条
(
いくすじ
)
の
溝
(
みぞ
)
には
沁出
(
にじみ
)
し
熱汗
(
あせ
)
を
湛
(
たた
)
え、鼻の
頭
(
さき
)
にも
珠
(
たま
)
を湧かせば
腋
(
わき
)
の下には雨なるべし。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
滿潮
(
まんてう
)
の
時
(
とき
)
は、さつと
潮
(
さ
)
してくる
浪
(
なみ
)
がしらに、
虎斑
(
とらふ
)
の
海月
(
くらげ
)
が
乘
(
の
)
つて、あしの
葉
(
は
)
の
上
(
うへ
)
を
泳
(
およ
)
いだほどの
水場
(
みづば
)
だつたが、
三年
(
さんねん
)
あまり
一度
(
いちど
)
もよしきりを
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
……
無論
(
むろん
)
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
もない。
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
忽ち
車主
(
エツツリノ
)
の一聲の
因業
(
マレデツトオ
)
を叫びて、我等に馳せ近づくを見き。手形の中、不明なるもの一枚ありとの事なり。われはその一枚の必ず我劵なるべきを思ひて、滿面に紅を
潮
(
さ
)
したり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
粒太
(
つぶふと
)
き雨は車上の二人が
衣
(
きぬ
)
を打ちしが、
瞬
(
またた
)
くひまに繁くなりて、湖上よりの横しぶき、あららかにおとづれ来て、
紅
(
べに
)
を
潮
(
さ
)
したる少女が
片頬
(
かたほお
)
に打ちつくるを、さし
覗
(
のぞ
)
く巨勢が心は
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
と、つとせき上げて來たと見えて見張つた瞳には既う涙が
潮
(
さ
)
して居る。
姉妹
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
潮
(
さ
)
して
彼
(
かれ
)
は
婆
(
ばあ
)
さんにいはれたことが
嬉
(
うれ
)
し
相
(
さう
)
に
見
(
み
)
えるのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
私の顔は熱して、
頬
(
ほお
)
には
紅
(
くれない
)
が
潮
(
さ
)
してきた。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
紅を
潮
(
さ
)
してゐる、日は少し西へ廻つたと見えて、崖の影、
峯巒
(
ほうらん
)
の影を、深潭に
涵
(
ひた
)
してゐる、
和知川
(
わちがは
)
が西の方からてら/\と河原を
蜒
(
うね
)
つて、天竜川へ落ち合ふ。
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
名工のひき刀が線を青く刻んだ、小さな雪の
菩薩
(
ぼさつ
)
が一体、くるくると二度、三度、六地蔵のように廻る……濃い
睫毛
(
まつげ
)
がチチと瞬いて、
耳朶
(
みみたぶ
)
と、
咽喉
(
のど
)
に、薄紅梅の血が
潮
(
さ
)
した。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一望
茫
(
ぼう
)
として、北氷洋が
凝
(
こお
)
ったように雲は硬く結んでいる、東方甲斐の
白峰
(
しらね
)
を先頭とせる赤石山系のみは、水の中に潜んでもいるように藍を
潮
(
さ
)
した、我が一脈の日本アルプスは
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
と藤色の緒の
表附
(
おもてつき
)
の
駒下駄
(
こまげた
)
を、
紅
(
べに
)
の
潮
(
さ
)
した
爪先
(
つまさき
)
に
引掛
(
ひっか
)
けながら、私が
退
(
の
)
いた後へ手を掛けて、格子から外を
覗
(
のぞ
)
いた、
門
(
かど
)
を出てからで
可
(
よ
)
さそうなものを、やっぱり雨に
閉籠
(
とじこも
)
った処を
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ヒューと
呻
(
うな
)
って、耳朶を
掠
(
かす
)
めて行くのだ、無論荒ッぽい風に伴って来るのである、私はその風を避けて面を伏せようとして、岩の
罅
(
か
)
け目に、
高根薔薇
(
アルペン・ローズ
)
が、紅を
潮
(
さ
)
して咲いているのを発見した
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
褐色
(
かばいろ
)
に薄く
蒼味
(
あおみ
)
を
潮
(
さ
)
して、はじめ志した方へ
幽
(
かすか
)
ながら見えて来た。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
朝は日を受けて柔和な桃色を
潮
(
さ
)
し、昼は冴えた空に反映して、
燧石
(
すいせき
)
のようにキラキラ
晃
(
きら
)
めき、そのあまりに純白なるために、傍で見ると空線に近い大気を黒くさせて、眼を痛くすることがある。
高山の雪
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
少年の
瞼
(
まぶた
)
は
颯
(
さっ
)
と血を
潮
(
さ
)
した。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
赤い
天鵝絨
(
ビロード
)
色が
潮
(
さ
)
しはじめた。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
“潮”の意味
《名詞》
(しお)海の水、 潮汐、 うしお。
(しお)海面の満ち引き。
(しお)物事をする、やめるのに丁度良いとき。しおどき。
(出典:Wiktionary)
潮
常用漢字
小6
部首:⽔
15画
“潮”を含む語句
紅潮
高潮
潮騒
満潮
海潮
血潮
潮水
潮風
干潮
黒潮
潮吹
滿潮
新潮
潮沫
潮干
退潮
上潮
渦潮
風潮
潮漚
...