うけたまわ)” の例文
大納言殿も来年は更に齢を加えられ、いよ/\八十路やそじに近くなられるとうけたまわるにつけても、縁につながるわれ/\共は慶賀に堪えない。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「恐れ……恐多おそれおおい事——うけたまわりまするも恐多い。陪臣ばいしんぶんつかまつつて、御先祖様お名をかたります如き、血反吐ちへどいて即死をします。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ついては、御親類様方御一統の思召しをうけたまわり、御異存がなければ明日にも公儀に届出の上、改めて世間へも披露いたしたいと存じます。
「われわれの旗下に加盟するからには、即ち、われわれの奉じる軍律に服さねばならん。今、それを読み聞かすゆえ、謹んでうけたまわれ」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其事の始末は、鬼の為に誘はれ、近く候山々経歴し見候みそうろう此外このほか二三人失せし者をもうけたまわり候へども、それらは某見候者にも無く候。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
が、やがて話が終ると、甚太夫はもうあえぎながら、「身ども今生こんじょうの思い出には、兵衛の容態ようだいうけたまわりとうござる。兵衛はまだ存命でござるか。」
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お旅立とうけたまわりながら、何かととりまぎれお留守お見舞もいたしませず、しかしおつつがなくお戻りなされて、喜ばしゅう存じます
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「信用するとか、しないとかいう問題ではありません。人の子の親として、一度、直接お会いしてうけたまわっておきたいのです。」
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
半熟卵とトーストパンとを保温箱から取出して卓上の定めの位置に置いていた白服のおきみは、わたくし達の注文をうやうやしくうけたまわって去りました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
呉一郎殿がまことの狂気かいつわりかが相判あいわかりますることが、罪人となられるか、なられぬかの境い目とうけたまわりますれば、何をお隠し申しましょう……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もうすまでもなく、うまれる人間にんげんにはかならず一人ひとり守護霊しゅごれいけられますが、これもみなうえ神界しんかいからのお指図さしずめられるようにうけたまわってります。
「大奥様、お便りは有難うございました。私はもううれしくて仕様がないのでございますよ、旦那様がお帰りだとうけたまわりましたものですから……」
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
経たりしに突然福地家の執事榎本破笠えのもとはりゅう子よりかねて先生への御用談一応小生よりうけたまわおくべしとの事につき御来車ありたしとの書面に接し即刻番地を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
うけたまわるのはいいですが、だいぶ多人数の意見を載せるつもりですから、かえってあとから削除さくじょすると失礼になりますから」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頼政よりまさおおせをうけたまわりますと、さっそく鎧胴よろいどうの上に直垂ひたたれ烏帽子えぼうしかぶって、丁七唱ちょうしちとなう猪早太いのはやたという二人ふたり家来けらいをつれて、御所ごしょのおにわにつめました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
御趣意の程、よくうけたまわりました。承ってみますると、私はそういうことを承らない方が仕合せであったという感じしか致さないのが残念でございます。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「冗談じゃないぜ」と熊城は思わず呆れ顔になって、「これが即死でないのなら、一つ君の説明をうけたまわろうじゃないか」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
尤もこの方は支那の本だから、私には読む学力もないので、本の名をうけたまわったというだけで敬遠せざるを得なかった。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
この不幸ふこうなからすだけは、みんなから、ややもするとおくれがちでした。けれど、殿しんがりうけたまわったからすは、このよわ仲間なかまを、後方こうほうのこすことはしなかった。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
先刻も戦争の話をうけたまわって思いましたが、今後また戦が起るかも知れない、その時には奉天旅順の戦争よりも一層危険であろう、一層惨酷であろうと思う。
教育家の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さてお話し致しますのは、自分が魚釣うおつりたのしんでおりました頃、ある先輩からうけたまわりました御話おはなしです。徳川期もまだひどく末にならない時分の事でございます。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すると人民は、もう十分にたくわえもできていましたので、お納物おさめものをするにも、使い働きにあがるのにも、それこそ楽々とご用をうけたまわることができました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「昨日も御来訪下すったそうですが、生憎あいにくで失礼をいたしました。……では御用件というのをうけたまわりましょうか」
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは兎も角福田氏の警護をうけたまわった二郎青年と巡査某とは、二階の客用寝室に、ベッドを並べて、横になった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けれども今日うけたまわって仏法のありがたい事を知りましたといってよろこんで居りました。それでチベットの中等以下の僧侶がいかに仏教を知らぬかが分るでしょう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
うけたまわっているうちに、私の老いの五体はわなわなと震え、いや、本当の事でございます、やがて恋を打ち明けられたる処女の如く顔が真赤に燃えるのを覚えまして
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
小山も仔細しさいを知らずして主人に質問し「中川君、今日は正式の御馳走とうけたまわったが食卓てーぶるの御様子では西洋料理の御馳走らしい。しかるにこの割箸はどういう訳だね」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
初めてうけたまわった、侍が犬の供を召連めしつれて歩くという法はあるまい、犬同様のものなら手前申受もうしうけて帰り、番木鼈まちんでも喰わしてろう、何程なにほど詫びても料簡は成りません
車で一緒いっしょに都を一巡いちじゅんしながら色々話をうけたまわろうと云う。孔子は欣んで服を改め直ちに出掛けた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
将軍家第一の御宝刀は、本庄正宗のお刀と洩れうけたまわっておりますが、元この刀は酒田の臣、右馬助とやら申す者の佩刀で、この刀で右馬助が上杉の本庄殿へ斬りつけましたもの。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ポルジイはこれをうけたまわって、乱暴にも、「それでは肥料車こえぐるま積載つみおろしの修行をするのですな」
実に申し上げにくい事でございますが、先生が理学博士でいらっしゃるとうけたまわりまして、お泊りを願うことが出来ましたら、それを伺って見たいと存じておりましたのでございます。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
(悲し気に。)それではわたしがうけたまわっていましても、お邪魔にだけは成りませんのね。
ソコで清水はその挨拶をうけたまわって薩人に報告すると、重野が、とてもこりゃむずかしそうだ、かくに自分達がみずから談判して見ようといって、ついに薩英談判会を開き、種々しゅじゅ様々問答の末
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今や善き人の仰せをうけたまわって十字架を負わずしてこの大願を成就する不思議なる道を示されたとはいえ、われらが真にその道の上に立ちその道を安定して歩むことを得るに至るまでには
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そういう時は、徳蔵おじは、いつもかしこまって奥様の仰事おおせごとうけたまわっているようでした。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
この女は俺の説でもうけたまわろうとするがいいんだ。そんな抽象論で引きさがるかい。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
お蔭で熊本の話は三輪さんの叔父さんが神風連じんぷうれんに加わったことまでうけたまわった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
うけたまわりますれば私の大切な八人の小供はフランスの政府にお預けになったとのこと、私はこれからフランスの政府にゆき、談判いたしましてぜひとも子供たちを引き取って来るつもりでございます。
片肌かたはだぬぎに團扇うちわづかひしながら大盃おほさかづき泡盛あはもりをなみ/\とがせて、さかなは好物こうぶつ蒲燒かばやき表町おもてまちのむさしへあらいところをとのあつらへ、うけたまわりてゆく使つかばん信如しんによやくなるに、そのやなることほねにしみて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わかさま、さあおっしゃい。役目やくめとしてうけたまわらなければなりません」
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ええうけたまわりました。もうよっぽど進んだそうでございますね。」
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「御病気とうけたまわりましたが、如何いかがでございますか」
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「で、どんな夢でしたか。うけたまわりましょう。」
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
それであたしもっぱら案内役をうけたまわったんで、何か御覧になりたいものはって云ったら、阪神間の代表的な奥さんに会わせろってっしゃるの
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「俊寛法師の鹿ししたに山荘にも、ひそかに、行幸みゆきましまして、このたびの盟約には、ひとしお、お力を入れているようにうけたまわりまする」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……うけたまわりますればその絵巻物は、一郎殿の御乱心ののち行衛ゆくえが知れませぬとの事で、これもまた、不思議の一つで御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは、あのうけたまわりますと、昔から御領主の御禁山おとめやまで、滅多めったに人をお入れなさらなかった所為せいなんでございますって。御領主ばかりでもござんせん。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「金だろう。僕に相当の御用ならうけたまわってもいい。しかしここには一文も持っていない。と云って、また外套がいとうのように留守るすへ取りに行かれちゃ困る」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしういうものでございますが、現世げんせりましたときからふかくあなたさまをおしたもうし、こと先日せんじつ乙姫おとひめさまから委細いさいうけたまわりましてから、一層いっそうなつかしく