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弔
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とむら
ふりがな文庫
“
弔
(
とむら
)” の例文
ここに草の
庵
(
いおり
)
を結んで、
謀叛
(
むほん
)
人と呼ばれた父の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
いながら、往き来の
旅人
(
たびびと
)
に甘酒を施していた。比丘尼塚の
主
(
ぬし
)
はこの尼であると。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
喪
(
も
)
を
弔
(
とむら
)
う——と称してきた者を
拒
(
こば
)
むわけにもゆかなかった。魯粛が迎えて対面した。しかし故人周瑜の部下や、呉の諸将も口々に
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は、いつのまにか静まり返って了った押入れの前に立って、
犠牲者
(
ぎせいしゃ
)
の死を
弔
(
とむら
)
う代りに、懐しい恋人のおもかげを描いているのだった。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一日でも半日でも縛られたら少しは
懲
(
こ
)
りもするだらう。せめては一度
契
(
ちぎ
)
つたお縫のために、精一杯の後世を
弔
(
とむら
)
つてやるが宜からう
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかれども忘れられたる古墳を尋ね
弔
(
とむら
)
はんには、秋の彼岸には
晷
(
ひあし
)
既に傾きやすく、やうやうにして知れがたき断碑を尋出して
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
「そうですとも、
弔
(
とむら
)
いはあんなにしてあるし、何も不足はないはずだが」
所天
(
ていしゅ
)
はこう云った
後
(
あと
)
で、傍にいる後妻のほうを見て
藍微塵の衣服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
喬は孝廉の家へいって、連城を
弔
(
とむら
)
ってひどく悲しむと共にそのまま息が絶えてしまった。孝廉はそれを
舁
(
かつ
)
がして喬の家へ送りとどけさした。
連城
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
いま自分たちを襲うた強敵が
脆
(
もろ
)
くも無惨な
最期
(
さいご
)
を遂げたことを
弔
(
とむら
)
うかのように鼬の
屍骸
(
しがい
)
を遠くから廻って、ククと鳴いているのであります。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
切られ
胴
(
どう
)
さへ見えぬ此
形容
(
かたち
)
何卒
(
なにとぞ
)
御情に御
弔
(
とむら
)
ひ下され度と涙ながらに頼みければ出家は
點頭
(
うなづき
)
其は心
易
(
やす
)
き事かな
早々
(
さう/\
)
生死の
迷
(
まよ
)
ひを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
しかしそれはもはやこの村からなくなっていたのです。私がその跡を
弔
(
とむら
)
った時、ただ一基の石塔が昔を語って
叢
(
くさむら
)
の中に捨ててあるばかりでした。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
旅行のついでに芭蕉はこのあわれなる歌人のあとを
弔
(
とむら
)
おうと思ったけれども、何分五月雨が降りしきって不本意ながらも行けなかったのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そして、
芦湖
(
あしのこ
)
の底ふかく沈んで行った。武士の情を知るわが武田博士は、『富士』の
舳
(
へさき
)
を下げて、敵勇士の最期を
弔
(
とむら
)
った。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
僕の東京を
弔
(
とむら
)
ふ気もちもこの一語を出ないことになるのでせう。「落つる涙は」、——これだけではいけないでせうか?
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
静の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
うために村の西生寺と云う寺へ
寄附
(
きふ
)
したが、今は
誰
(
だれ
)
の手に渡ったか、寺にもなくなってしまったとのこと。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
昨日
(
きのう
)
奈良
(
なら
)
より宇治に宿りて、平等院を見、扇の芝の昔を
弔
(
とむら
)
い、
今日
(
きょう
)
は
山科
(
やましな
)
の停車場より
大津
(
おおつ
)
の
方
(
かた
)
へ行かんとするなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
で龍樹ヶ岳から帰りましてその夜は龍樹ヶ岳に登るの
賦
(
ふ
)
を作り、それから
真妙純愛観
(
しんみょうじゅんあいかん
)
ならびに雪山にて亡き父を
弔
(
とむら
)
い
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
洗い
泄
(
ざら
)
い貴方の筆にかけて頂いて、妾の罪深い生涯を
弔
(
とむら
)
って頂こうと思って、そればっかりを楽しみにしていたのよ
けむりを吐かぬ煙突
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
村
(
むら
)
の
人
(
ひと
)
たちは、三
人
(
にん
)
の
坑夫
(
こうふ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うえ
)
を
憐
(
あわ
)
れに
思
(
おも
)
いました。その
死骸
(
しがい
)
を
山
(
やま
)
にうずめて、ねんごろに
弔
(
とむら
)
い、そこへ、三
本
(
ぼん
)
のなしの
木
(
き
)
を
植
(
う
)
えたのでありました。
金が出ずに、なしの産まれた話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
他
(
た
)
の囚徒と共にいろいろと慰めつつ、この上は一日も早く出獄して
良人
(
おっと
)
や子供の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
い給えなど力を添えつ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
両親に別れたんですから
現世
(
このよ
)
を
味気
(
あじき
)
なくぞんじ、また両親や
兄
(
あに
)
姉
(
あね
)
の冥福を
弔
(
とむら
)
わんために因果塚を
建立
(
こんりゅう
)
したいから、仏門に入れてくれと晋齋にせまります。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『その同じ時、あなた
比丘尼
(
びくに
)
となりましょう。一雄(
註
(
ちゅう
)
、長男)小さい坊主です。いかに可愛いでしょう。毎日経よむと墓を
弔
(
とむら
)
いするで、よろこぶの生きるです』
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
二つにはまた引取手のない無縁仏を拾いあげてねんごろに
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
ってやろうとの
侠気
(
きょうき
)
から、身内の
乾児達
(
こぶんたち
)
に命じて毎夜こんな風に見廻らしている
土左船
(
どざぶね
)
なのでした。
旗本退屈男:10 第十話 幽霊を買った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
しかのみならず、一片の碑だに、英雄の事蹟を誌し
弔
(
とむら
)
ふなきに於ては、誰かはそを憾みとせざらむ。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
そして火が消えるとすぐに、急いでお
弔
(
とむら
)
いの道具を持って、
泣
(
な
)
き
泣
(
な
)
きさがしにいらっしゃいました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
その時明融が言うには、「自分は老病で死ぬのも遠くない。しばらく入宋をのばして自分の老病を
扶
(
たす
)
け、冥福を
弔
(
とむら
)
ってほしい。入宋は自分の死後でも遅くはあるまい」
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
その代りには米屋には
他
(
ひと
)
一倍お経をたんと読んで
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
つてやつてもいいと思つてるらしかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
犬はこのお
告
(
つげ
)
に力を得て、さらば諸国の霊場を巡礼して、一は、自分が喰い殺したる姨の菩提を
弔
(
とむら
)
い、一は、人間に生れたいという未来の大願を
成就
(
じょうじゅ
)
したい、と思うて
犬
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
これは老人や妻子を
弔
(
とむら
)
うためだとは言ったが、実は
下人
(
げにん
)
どもに
臆病
(
おくびょう
)
の念を起させぬ用心であった。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
凡
(
およ
)
そこの種の人は
遁世
(
とんせい
)
出家
(
しゅっけ
)
して死者の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
うの例もあれども、今の世間の風潮にて
出家
(
しゅっけ
)
落飾
(
らくしょく
)
も
不似合
(
ふにあい
)
とならば、ただその身を社会の
暗処
(
あんしょ
)
に
隠
(
かく
)
してその生活を
質素
(
しっそ
)
にし
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
私
(
わたくし
)
はどこまでも
三崎
(
みさき
)
に
留
(
とど
)
まり、
亡
(
な
)
き
良人
(
おっと
)
をはじめ、一
族
(
ぞく
)
の
後
(
あと
)
を
弔
(
とむら
)
いたいのでございます……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
この上は心よく、親鸞影像を戻し返してつかわすのみか、他宗ながら忰源兵衛の菩提も、こなたで
弔
(
とむら
)
い追善供養。三密
瑜伽
(
ゆが
)
の加持力にて、安養成仏諸共に、即身成仏兼ね得させん。
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
丁度扇屋では人々が蓮太郎の
遺骸
(
なきがら
)
の
周囲
(
まはり
)
に集つたところ。親切な亭主の計ひで、焼場の方へ送る前に一応亡くなつた人の
霊魂
(
たましひ
)
を
弔
(
とむら
)
ひたいといふ。
読経
(
どきやう
)
は法福寺の老僧が来て勤めた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
訪問は見合せる事にしたが、
昨日
(
きのう
)
の新橋事件を思い出すと、どうも浩さんの事が気に掛ってならない。何らかの手段で親友を
弔
(
とむら
)
ってやらねばならん。
悼亡
(
とうぼう
)
の句などは出来る
柄
(
がら
)
でない。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
汚濁の古巣を焼き払い、笹谷峠のふもとの寺に行き老僧に向って
懺悔
(
ざんげ
)
しその
衣
(
ころも
)
の
裾
(
すそ
)
にすがってあけくれ念仏を称え、これまであやめた旅人の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
ったとは
頗
(
すこぶ
)
る殊勝に似たれども
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
先祖や亡くなった兄姉の
菩提
(
ぼだい
)
をも
弔
(
とむら
)
おうという末っ子二人の思いつきなのである。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
棺は死人を
弔
(
とむら
)
うにふさわしく、支那式に、蛇頭や、黒い布でしめやかに飾られていた。喪主らしい男は、一人だけ粗麻の喪帽をかむり、泣き女はわんわんほえながらあとにつゞいていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
かかる心をもっていしかと責めては後にて
弔
(
とむら
)
われん、一度はどうせ捨つる身の捨て処よし捨て時よし、仏寺を汚すは恐れあれどわが建てしもの
壊
(
こわ
)
れしならばその場を一歩立ち去り得べきや
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
雲飛
(
うんぴ
)
は石を
奪
(
うば
)
はれて
落膽
(
らくたん
)
し、其後は
家
(
うち
)
に
閉籠
(
とぢこも
)
つて外出しなかつたが、
石
(
いし
)
が
河
(
かは
)
に
落
(
おち
)
て
行衞
(
ゆくへ
)
不明
(
ふめい
)
になつたことを
傳
(
つた
)
へ
聞
(
き
)
き、
或朝
(
あるあさ
)
早
(
はや
)
く家を出で石の
落
(
お
)
ちた
跡
(
あと
)
を
弔
(
とむら
)
ふべく
橋上
(
けうじやう
)
に
立
(
たつ
)
て下を見ると、
河水
(
かすゐ
)
清徹
(
せいてつ
)
石清虚
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
父に遇ひたい、が恐るべき病人と一つ家に居るのは、——あゝ思うても慄然とする、苦痛だ、気が晴れぬ、——京都へ行け、姉が居る、死んだ伯父の跡を
弔
(
とむら
)
ひたい、色々の人と色々の話をしたい。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
皆さんのお
心委
(
こころまか
)
せとし、いまや太平洋を征服し、東洋民族の
盟主
(
めいしゅ
)
として仰がれることになりました新日本の
光輝
(
こうき
)
ある
黎明
(
れいめい
)
を迎えるに当り、その
尊
(
とうと
)
き犠牲となったわが戦士と不幸な市民たちを
弔
(
とむら
)
い
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
父の
弔
(
とむら
)
いに大願寺を建て、一生孤独で終わろうとしたのだったが、その並みならぬ容色にこがれて言いよる若者のうちで、ひときわ熱烈なひとりの情にほだされて、
河内
(
かわち
)
の
禁野
(
きんや
)
の里に
嫁
(
か
)
したのです。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
悲しみのうちに、お
弔
(
とむら
)
いもすみました。
金の目銀の目
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
『同じ死ぬなら、城受取りのよせ手をうけて、思うさまの
弔
(
とむら
)
い合戦をやり、赤穂にも、骨のある人間はいたといわれて死にたいぞ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
翌る日は燒跡の片付けや、與八郎の
弔
(
とむら
)
ひで、多勢の人が出入りし、親類の若者多見治が、女主人に代つて、何彼の指圖役に廻つて居ります。
銭形平次捕物控:249 富士見の塔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
かの股引の一件があってから半年ほどの後に、蛇吉の母は頓死のように死んで、村じゅうの人々からねんごろに
弔
(
とむら
)
われた。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
濡れた
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
と枯枝とに
狼藉
(
ろうぜき
)
としている庭のさまを生き残った
法師蝉
(
ほうしぜみ
)
と
蟋蟀
(
こおろぎ
)
とが雨の
霽
(
は
)
れま霽れまに嘆き
弔
(
とむら
)
うばかり。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「そうとはゆめにも知らなんだ、それをきくからは此の世になんのみれんがあろう、ちゝうえの
弔
(
とむら
)
いがっせんをしていさざよくおあとを追うばかりだ」
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
木魚をたたきたたきその児の
後生
(
ごしょう
)
を
弔
(
とむら
)
ってまわった。……それ程にその児は美しく清らかに育っていたのであった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
なし七日々々の
追善
(
つゐぜん
)
供養
(
くやう
)
も
最
(
いと
)
念頃
(
ねんごろ
)
に
弔
(
とむら
)
ひ兄弟
喪
(
も
)
にぞ
籠
(
こも
)
りける然るに半四郎は
豫
(
かね
)
ての孝心ゆゑ親の
亡後
(
なきあと
)
は兄の半作を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
加藤武雄
(
かとうたけを
)
様。東京を
弔
(
とむら
)
ふの文を作れと云ふ
仰
(
あふ
)
せは正に拝承しました。又おひきうけしたことも事実であります。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
弔
常用漢字
中学
部首:⼸
4画
“弔”を含む語句
弔詞
御弔
弔辞
弔問
弔文
弔慰
弔儀
弔旗
弔合戦
弔歌
弔鐘
弔問客
追弔紀念
往弔
弔辭
弔鐘形
弔香爐
弔魂碑
弔魂祭
弔供養
...