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へいぜい
ふりがな文庫
“
平常
(
へいぜい
)” の例文
ほんとうに、
平常
(
へいぜい
)
は、そんな
不安
(
ふあん
)
も
感
(
かん
)
じないほど、このへやの
中
(
なか
)
は
平和
(
へいわ
)
で、お
嬢
(
じょう
)
さんの
笑
(
わら
)
い
声
(
ごえ
)
などもして、にぎやかであったのです。
風の寒い世の中へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
また、家中の侍で、
平常
(
へいぜい
)
、巌流に師事している人々も、入り代り立ち代り、ここに詰めて、
明後日
(
あさって
)
の十三日を待っているのだった。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
愛は霊からはいったものでなければ本当でない、そして、正しい理智から出発したものでなければならないという、
平常
(
へいぜい
)
からの持論が拒んだ。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
……武士は
平常
(
へいぜい
)
護身用として、腰に両刀をたばさんでいる。で剣術さえ心得ていたら、まずもって体を守ることが出来る。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
真に志士の天職を、
全
(
まっと
)
うする者と、
暫
(
しば
)
し讃嘆の念に打たれしが、儂もまた、この
行
(
こう
)
決死せざれば、到底充分
平常
(
へいぜい
)
希望する処の目的を達する
能
(
あた
)
わず。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
▼ もっと見る
あれほど胸の
中
(
うち
)
は落ちついていたものをと云いたいくらいに、余は
平常
(
へいぜい
)
の心持で苦痛なくその夜を明したのである。——話がつい
外
(
そ
)
れてしまった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
兇行の後一旦
平常
(
へいぜい
)
に帰ったときは、たといはかり知れぬ憎悪のために殺したのであるとしても、眼前で、被害者の内臓をさらけ出されては、恐怖のために
三つの痣
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
彼に対する一種すが/\しい、痛快味のこもつた心持だつた。そしてわたしは
平常
(
へいぜい
)
の感情の吐け口を得たやうに、口をきはめてあの若者を
罵倒
(
ばたう
)
して聞かせた。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
と云う文治の
権幕
(
けんまく
)
を見ると、
平常
(
へいぜい
)
極
(
ごく
)
柔和の顔が、
怒
(
いかり
)
満面にあらわれて身の毛のよだつ程怖い顔になりました。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
能
(
よく
)
存
(
ぞん
)
じ
居
(
をり
)
候
先
(
さき
)
にも申上候通り
渠
(
かれ
)
は一
體
(
たい
)
實體
(
じつてい
)
なる者にて
平常
(
へいぜい
)
慈悲
(
じひ
)
深
(
ふか
)
く又女房と申候は
駿府
(
すんぷ
)
二丁町の
遊女
(
いうぢよ
)
なりしを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
器用な彼は、
平常
(
へいぜい
)
暇のあるごとに、色々な仕事を習い覚えていて、今度のような万一の場合には、すぐどんな職人にでも化けられるように訓練を積んであった。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と思ふと、
平常
(
へいぜい
)
の
四脚
(
よつあし
)
に
復
(
かえ
)
つて
飛鳥
(
ひちょう
)
の
如
(
ごと
)
くに往来へ逃げ去つた。私も続いて
逐
(
お
)
うたが、もう影も見せぬ。
雨夜の怪談
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
究竟
(
きうきやう
)
するに紅葉は実を写す特有の天才より移つて、佐太夫なる、或意味に於ての理想的伝記を画き出たるを以て、
平常
(
へいぜい
)
の細微巧麗なる紅葉の作を読み慣れたる眼には
「伽羅枕」及び「新葉末集」
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
平常
(
へいぜい
)
は
逢
(
あ
)
いたい
娘
(
むすめ
)
の
顏
(
かほ
)
も
見
(
み
)
ずに
居
(
ゐ
)
まする、
夫
(
そ
)
れをば
何
(
なん
)
の
馬鹿々々
(
ばか/\
)
しい
親
(
おや
)
なし
子
(
ご
)
でも
拾
(
ひろ
)
つて
行
(
い
)
つたやうに
大層
(
たいさう
)
らしい、
物
(
もの
)
が
出來
(
でき
)
るの
出來
(
でき
)
ぬのと
宜
(
よ
)
く
其樣
(
そん
)
な
口
(
くち
)
が
利
(
き
)
けた
物
(
もの
)
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
平野氏は
平常
(
へいぜい
)
から馬が好きで、アラブ種の
駿馬
(
しゅんめ
)
を三頭持っている。交通が不便な場所だし、軽馬車を一台造らせて、この馬をつけては折々のドライブを
娯
(
たのし
)
みにしていた。
天狗岩の殺人魔
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
渠らは豪放なる太夫の
平常
(
へいぜい
)
を
識
(
し
)
りければ、その言うままに捨て置きて立ち去りけるなり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「人殺しの種類がだよ」深山木はやっぱり考え考え、彼の
平常
(
へいぜい
)
に似ず陰気に答えた。「手提げがなくなったからと云って、ただの泥棒の
仕業
(
しわざ
)
でないことは、君も分っているだろう。 ...
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そこで自然商売の方も店員任せにして自宅で床に就いていたが、
平常
(
へいぜい
)
でさえ肥っていたのに、素晴らしく腫れ上ってまるで、
洪水
(
おおみず
)
で流れて来たみたような色と形になってしまった。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
客は
平常
(
へいぜい
)
の通りやつて來ますが、さて風太郎らしいのは一人もありません。
銭形平次捕物控:003 大盗懺悔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
『今日は雨の後で濁つてますが、
平常
(
へいぜい
)
はよく澄んでるのですよ。』
村住居の秋
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
平常
(
へいぜい
)
の居間と寢室は大抵その儘に手をつけないで置いた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「それは、おまえが
平常
(
へいぜい
)
死
(
し
)
んだ
子供
(
こども
)
のことばかり
思
(
おも
)
っているから、
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たのだ。そんなことがあるものでない。」と、
夫
(
おっと
)
はいいました。
星の子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
質でありまた質の
研
(
みが
)
きによる。
平常
(
へいぜい
)
の修養鍛錬がものをいうことになると、王者と貧者とでも、この違いはどうにもならない。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
素
(
もと
)
より本國も
聢
(
しか
)
と相知申さず
平常
(
へいぜい
)
は然まで惡人とも心得ざりし處
追々
(
おひ/\
)
跡にて承まはるに一體
勾引
(
かどはかし
)
など致せし者との由なりと申ければ大岡殿コレ九郎兵衞八藏の申立を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
痩
(
や
)
せ我慢では無けれど
交際
(
つきあひ
)
だけは御身分相応に尽して、
平常
(
へいぜい
)
は逢いたい娘の顔も見ずにゐまする、それをば何の馬鹿々々しい親なし子でも拾つて行つたやうに大層らしい
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
お延の頭に
石火
(
せっか
)
のようなこの暗示が
閃
(
ひら
)
めいた時、彼女の意志も
平常
(
へいぜい
)
より倍以上の力をもって彼女に
逼
(
せま
)
った。彼女はついに自分を
抑
(
おさ
)
えつけた。どんな色をも顔に現さなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
客は
平常
(
へいぜい
)
の通りやって来ますが、さて風太郎らしいのは一人もありません。
銭形平次捕物控:003 大盗懺悔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
平常
(
へいぜい
)
と違ってひどくぞんざいな調子だけれど果して山野夫人の声だった。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
若
(
わか
)
いものたちは、
平常
(
へいぜい
)
、おじいさんが、この
年
(
とし
)
になるまで
働
(
はたら
)
いているのを、
感謝
(
かんしゃ
)
していましたから、みんなが、
口
(
くち
)
をそろえて
銅像と老人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「叔父というのは水泳
指南番
(
しなんばん
)
で、
赤組頭
(
あかぐみがしら
)
、
生島流
(
いくしまりゅう
)
の達人で、
平常
(
へいぜい
)
は船預かりという役名で四百石いただいている、海には苦労をしている人間だ」
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あたゝまるやうにと
言
(
い
)
ふて
呉
(
く
)
れし
時
(
とき
)
も
有
(
あり
)
し、
懷
(
なつ
)
かしきは
其昔
(
そのむか
)
し、
有難
(
ありがた
)
きは
今
(
いま
)
の
奧樣
(
おくさま
)
が
情
(
なさけ
)
と、
平常
(
へいぜい
)
お
世話
(
せわ
)
に
成
(
な
)
りぬる
事
(
こと
)
さへ
取添
(
とりそ
)
へて、
怒
(
いか
)
り
肩
(
かた
)
もすぼまるばかり
畏
(
かしこ
)
まりて
有
(
あ
)
るさまを
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
經
(
へ
)
て駿州
木綿島村
(
もめんじまむら
)
へ十月十五日に着たりける然るに
甚
(
じん
)
太夫は
平常
(
へいぜい
)
痰持
(
たんもち
)
にて急にせり
迫
(
つめ
)
けるが三四日の内に思ひの外
全快
(
ぜんくわい
)
し先
常體
(
つねてい
)
なれば夫婦は
早速
(
さつそく
)
對面なせしに甚太夫は兩人が
遠方
(
ゑんぱう
)
の所を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「今に御客さんが
来
(
き
)
たら、僕が
奥
(
おく
)
へ知らせに行く。其時挨拶をすれば
好
(
よ
)
からう」と云つて、矢っ張り
平常
(
へいぜい
)
の様な
無駄口
(
むだくち
)
を
叩
(
たゝ
)
いてゐた。けれども佐川の娘に関しては、一言も
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
らなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「こんな
小
(
ちい
)
さなねじでも、ないと
眼鏡
(
めがね
)
が
役
(
やく
)
にたたぬ。
使
(
つか
)
っているものは、
平常
(
へいぜい
)
そんなことを
考
(
かんが
)
えぬが。」と、おじいさんは、
笑
(
わら
)
われました。
小さなねじ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
いや、
平常
(
へいぜい
)
の便船がないだけに、こういう場合は、いっそう人が混むのかも知れない。何しろかなり多くの頭数であった。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鞠
(
まり
)
なげ、
繩
(
なわ
)
とびの
遊
(
あそ
)
びに
興
(
きやう
)
をそへて
長
(
なが
)
き
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
るゝを
忘
(
わす
)
れし、
其折
(
そのをり
)
の
事
(
こと
)
とや、
信如
(
しんによ
)
いかにしたるか
平常
(
へいぜい
)
の
沈着
(
おちつき
)
に
似
(
に
)
ず、
池
(
いけ
)
のほとりの
松
(
ま
)
が
根
(
ね
)
につまづきて
赤土道
(
あかつちみち
)
に
手
(
て
)
をつきたれば
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「今に御客さんが来たら、僕が奥へ知らせに
行
(
ゆ
)
く。その時挨拶をすれば好かろう」と云って、やっぱり
平常
(
へいぜい
)
の様な無駄口を
叩
(
たた
)
いていた。けれども佐川の娘に関しては、
一言
(
いちごん
)
も口を切らなかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女
(
かのじょ
)
にくらべて、
友
(
とも
)
だちの
娘
(
むすめ
)
は、
平常
(
へいぜい
)
、はすっぱといわれるほどの、
快活
(
かいかつ
)
の
性質
(
せいしつ
)
でありましたから、これをきくと、すぐに
海のまぼろし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
里民へ徳をほどこしても、
平常
(
へいぜい
)
、威がなければ、善政もあたりまえに思い、感謝のうすいもの。……まずこの辺は、新右衛門にまかせておいても安心じゃろ
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
春季の大運動会とて
水
(
みづ
)
の
谷
(
や
)
の原にせし事ありしが、つな引、
鞠
(
まり
)
なげ、縄とびの遊びに興をそへて長き日の暮るるを忘れし、その折の事とや、信如いかにしたるか
平常
(
へいぜい
)
の
沈着
(
おちつき
)
に似ず
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
おじいさんは
平常
(
へいぜい
)
犬
(
いぬ
)
や
猫
(
ねこ
)
や
鳥
(
とり
)
が
大好
(
だいす
)
きであったから、きっとその
犬
(
いぬ
)
をつれて、いまごろは、
極楽
(
ごくらく
)
の
路
(
みち
)
を
歩
(
ある
)
いていなさるのだ。
おじいさんの家
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
俄然、
平常
(
へいぜい
)
、直胤の一派を支持している者と、ひそかに、それへ反感を抱いている者との感情が、環の一投石に依って、露骨な
波瀾
(
はらん
)
をよび起したのであった。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ほかの
道具
(
とうぐ
)
たちこそ、
怠
(
なま
)
けたり、ぼんやりして
遊
(
あそ
)
んでいたり、
平常
(
へいぜい
)
はなんの
役
(
やく
)
にもたたなくていばっているのだから、しゃくにさわってしまう。
人間と湯沸かし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
新陰流の古勢「
逆風
(
さかかぜ
)
」の太刀を
平常
(
へいぜい
)
から得意としていたので、その働きぶりは、殊にものものしかったとある。彼の従者の森地五郎八も、よく戦って
斃
(
たお
)
れた。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これも、
小僧
(
こぞう
)
たちが、
平常
(
へいぜい
)
小舎
(
こや
)
の
中
(
なか
)
をきれいに
片
(
かた
)
づけておかないからだと、
小僧
(
こぞう
)
たちまでしかられたのであります。
森の中の犬ころ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
平常
(
へいぜい
)
、道場の会計や、また奥向きの経済のやりくりは、
祇園藤次
(
ぎおんとうじ
)
が用人役として、切り盛りしていたのであるが、そのかんじんな藤次は数日前に、旅先で寄せた金を持ったまま
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
主人
(
しゅじん
)
は
平常
(
へいぜい
)
自慢
(
じまん
)
をしていました。その
鳥
(
とり
)
がいなくなってから
主人
(
しゅじん
)
は、どんなに
落胆
(
らくたん
)
をしたことでありましょう。
こまどりと酒
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
だがお米の
平常
(
へいぜい
)
を思うと、血の
病
(
みち
)
を起こして泣いたり、わがままをいって飛びだしたり、平気で帰ったりすることは、阿波にいた頃からありがちで、それに、こんな手紙をよこして
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二軒並んでいる一軒は、
平常
(
へいぜい
)
戸を閉めて
女房
(
かみさん
)
は畑に出ていない。夫というのは旅商人で、海岸を歩いて隣の国の方まで旅をして多くは家にいなかった。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
平常
(
へいぜい
)
の鍛錬を、ここぞと思う間際に当って、一
穂
(
すい
)
の明りを仰ぐと、なにか、暗夜に光でも見つけたように、欣しげに心は揺れ、手はわれを忘れて、この
鰐口
(
わにぐち
)
の鈴を振り鳴らそうとしている。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“平常”の意味
《名詞・形容動詞》
平 常(へいじょう)
いつもと同じであること。変わったことや例外が無いこと。
(出典:Wiktionary)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
常
常用漢字
小5
部首:⼱
11画
“平常”で始まる語句
平常着
平常衣
平常服
平常帯
平常底
平常心
平常穿
平常著
平常通
平常遣