)” の例文
の一のかはをがれたために可惜をしや、おはるむすめ繼母まゝはゝのために手酷てひど折檻せつかんけて、身投みなげをしたが、それのちこと
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
青いペンキのげかかった木造の二階建になった長い長い洋館で、下にはたくさんの食糧品を売る店がごたごたと入口を見せていた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
血潮に汚された畳をがして、薄縁うすべりを敷いた四畳半の上がりかまちに腰を下ろして、そう言いながらも平次は、腰の煙草入を抜きました。
くりけた大根だいこうごかぬほどおだやかなであつた。おしなぶんけば一枚紙いちまいがみがすやうにこゝろよくなることゝ確信かくしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼らはみなくくりばかまのすはだしであったから、当然、騎馬にも兵にも見すてられ、たちまちその衣冠は野伏たちにぎとられていた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はそっと封筒をナイフの刃でがしてみた。その中からは新聞紙が出て来た。新聞紙を八等分したくらいの小さい形のものだった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
僕の生命からしばらくなりとも妻や子をぎ取っておくならば、僕はもう物の役に立たないものになるに違いないと思われるのだ。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
私は呆気あっけに取られた。きっと取り返されるのかも知れないと思った。それでも、仕方がないので、壁からがして来て彼に渡した。
再度生老人 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
白樺しらかばの皮、がして来たか。」タネリがうちに着いたとき、タネリのおっかさんが、小屋の前で、こならの実をきながら云いました。
そして、「お安さあもお安さあだ。これまで裸にがれてこの上何をぬぐ気だえ。黙って見てばかりいずと、ちっと言ってやらっし。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
房二郎はそれを突きとばし、木内の肩を掴んで文華から引きがした。刷り部屋はしんとしていて、人の声も聞えず物音もしなかった。
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
光子さんは観音さんのポーズするのに、なんぞ白衣びゃくえの代りになるような白い布がほしいいうのんで、ベッドのシーツがしました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
郊外の朝顔売りは絵にならない。夏のあかつきの薄いもやがようやくげて、一町内の家々が大戸おおどをあける。店を飾り付ける。水をまく。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そしてがれた皮はどこかのお寺へ納めたがよい、『それこそたいへんな参詣人で、さぞお賽銭もあがることだろうぜ』と言った。
追々薄紙はくしぐが如くにえ行きて、はては、とこの上に起き上られ、妾の月琴げっきんと兄上の八雲琴やくもごとに和して、すこやかに今様いまようを歌い出で給う。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
地面じべたである。しかも、いつか、龍に化している長たらしい全身から、鱗が一枚ずつげ落ちて、ウナギに似た無残さになっていた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
すがりつくのを五つ六つ続けうちにする。泣転なきころがる処を無理に取ろうとするから、ピリ/\と蚊帳が裂ける生爪ががれる。作藏は
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あわてて枕許まくらもとからがったおせんのに、夜叉やしゃごとくにうつったのは、本多信濃守ほんだしなののかみいもうとれんげるばかりに厚化粧あつげしょうをした姿すがただった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
里数にすれば三里近くもあるところを、いつの間にか瓢箪池ひょうたんいけの、あのペンキのげたベンチの一つへたどりついていたのである。
地図にない街 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
却説さて兎と熟兎は物の食べようを異にす、たとえば蕪菁かぶくらうるに兎や鼠は皮をいで地に残し身のみ食うる、熟兎は皮も身も食べてしまう。
初がつおに舌鼓したつづみを打ったのは、煮たのでも、焼いたのでもない。それは刺身さしみと決まっている。この刺身、皮付きと皮をぐ手法とがある。
いなせな縞の初鰹 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
あたい、もう丸ビルなんかに行かないわ、もうこりごりよ、けど、おじさまの顔みていると、だんだん怖いのががれて行くわ。
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
これはと大きに驚きあきれて、がさんと力をいだせど少しも離るることなければ、人を頼みて挽却ひきさらしめしも一向さらにその甲斐かいなし。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
薄くがれる黒い大きな岩を越えると、水際で、澄みわたった水は矢よりも早く流れてゆく、あたりには青い石も赤い石もある。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
ただ巨大な堆石が、現在見当らないのは、何分にも、氷河が小さく、谷の削り方も浅くて、「ぎ取り」が、深くかないためであろう。
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
そこなどは色もすっかりげている上、大きな亀裂が稲妻形にできている部分で、そういうところもそっくりそのままに模写しているのだ。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
僕はあきれて立って見ていると、𣵀麻が手真似で掛けさせた。円顔の女である。物を言うと、薄い唇の間から、鉄漿かねがした歯が見える。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
床をがすことに決心して、すでにその職人とも約束しておいたから、わたしの指定の日から工事に着手するというのであった。
お前はわたしにだまされたと言うか言わない時に、一番はしに伏していたわにがわたくしをつかまえてすつかり着物きものいでしまいました。
……僕はあのときパッとぎとられたと思った。それからのこのこと外へ出て行ったが、剥ぎとられた後がザワザワ揺れていた。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
東京から西の郊外へ出て見ると、手が取れたり顔の胡粉ごふんげたりした雛人形が、路の辻の小祠の付近に出してあるものをよく見かける。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
反絵はんえは閉された卑弥呼ひみこの部屋の前に、番犬のようにかがんでいた。前方の広場では、兵士つわものたちが歌いながら鹿の毛皮をいでいた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
なるほど眺めていると、すすけたうちに、古血のような大きな模様がある。緑青ろくしょうげたあとかと怪しまれる所もかすかに残っている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
現実界に触れて実感をると、他愛もなくげて了う、げて木地きじあらわれる。古手の思想は木地を飾っても、木地を蝕する力に乏しい。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「これ、二つでたった五十銭さ。なに、これでも不断ふだんめていちゃすぐげるけど、着更えした時だけだったらちょっとだまかせるからね」
裸身の僕は、單に——人類の罪を覆うてゐる、キリスト教の血に染んだ上衣うはぎいで了へば——冷酷な野心やしんに富んだ男に過ぎないのです。
と、浮気ぽい根性がうずかゆく動いて来た。眼をあげると、女はペンキのげたドアにもたれて、っと媚を含んだ眼をこちらに向けていた。
苦力頭の表情 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
崖からぎ取られたようにすっと落ちた。途中で絶壁の老樹の枝にひっかかった。枝が折れた。すさまじい音をたててふちへたたきこまれた。
魚服記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
所々げた蝋鞘ろざやの大小を見栄もなくグッタリと落とし差しにして、長く曳いた裾でかかとを隠し泳ぐようにスースーと歩いて来る。
日置流系図 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お前は古い唐画たうぐわの桃の枝に、ぢつと止つてゐるがい。うつかり羽搏はばたきでもしようものなら、体の絵の具がげてしまふから。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
で三百の歸つた後で、彼は早速小包の横を切るのももどかしい思ひで、包裝をぎ、そしてそろ/\と紙箱のふたを開けたのだ。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
外まはりの漆喰しっくいは青ずんで、ところどころげ落ちてゐる。ポーチを支へてゐる石の円柱も、風雨にさらされて黒ずんでゐる。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
げちょろの大小を、落し差しにした、この府内には、到るところにうようよしている、お定まりの、扶持ふち離れのならずざむらいだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
生馬いきうまの眼を抜き、生猿いきざるの皮をぎ、生きたライオンの歯を抜くていの神変不可思議の術を如何なる修養によって会得して来たか。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
上って来たお雪はすぐ窓のある三畳の方へ行って、染模様のげたカーテンを片寄せ、「此方こっちへおいでよ。いい風だ。アラまた光ってる。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「殺されているんですよ。顎から胸にかけて、黒いものが一杯流れています。血です。裸体はだかがれて、惨殺された女ですよ」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
竜之助は、ついついそこに待ち構えて、も一人、通行の人を嚇して着物をぎ取った、いま身にまとうているしまあわせがそれです。
栗色に塗られたペンキはげて、窓の硝子ガラスも大分こはれ、ブリキ製の烟出けむだし錆腐さびくさツて、見るから淋しい鈍い色彩の建物である。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
これはまむし、はぶ、こぶらの三毒蛇を生きながら皮をぎとり、肉をそぎ身にして細かく叩き、かなえにかけた鍋のなかへ投ずる。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
湯煮上った処でザラザラした厚皮をいで別にバターで粉をいためて牛乳をして塩胡椒で味をつけた白ソースを拵えます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)