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凌
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しの
ふりがな文庫
“
凌
(
しの
)” の例文
僥倖
(
さいわい
)
に、白昼の出水だったから、男女に死人はない。二階家はそのままで、辛うじて
凌
(
しの
)
いだが、平屋はほとんど濁流の瀬に洗われた。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
畑
(
はたけ
)
を
越
(
こ
)
え、
牧場
(
ぼくじょう
)
を
越
(
こ
)
えて
走
(
はし
)
って
行
(
い
)
くうち、あたりは
暴風雨
(
あらし
)
になって
来
(
き
)
て、
子家鴨
(
こあひる
)
の
力
(
ちから
)
では、
凌
(
しの
)
いで
行
(
い
)
けそうもない
様子
(
ようす
)
になりました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
わが生ける間は我しきりに人を
凌
(
しの
)
がんことをねがひ、心これにのみむかへるが故に、げにかく
讓
(
ゆづ
)
るあたはざりしなるべし 八五—八七
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
その
辺
(
あたり
)
を打見ますと、
樵夫
(
きこり
)
の小屋か但しは僧侶が坐禅でもいたしたのか、家の形をなして、
漸
(
ようや
)
く
雨露
(
うろ
)
を
凌
(
しの
)
ぐぐらいの小屋があります。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
きものは暑さ寒ささえ
凌
(
しの
)
げばよいという実用面だけを強調する議論と同じでありまして、畢竟、無理解から起こる暴論でありましょう。
料理する心
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
▼ もっと見る
益〻このありがたさは痛切であって、恐らく私が年をとり生活の波浪を
凌
(
しの
)
ぐこと深ければ深いほど、いやまさる感謝と思われます。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
もしそんな金があったら、
仮令
(
たとえ
)
それが十銭であったにしろ、芋でも買って餓を
凌
(
しの
)
ぎ、玉島を殺す事は明日の問題にしたに違いないのだ。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
お蘭に取って、この言葉は一時
凌
(
しの
)
ぎの気休めであり、また四郎への励ましに使ったものに過ぎないけれども、四郎は永く忘れなかった。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼は少量の携帯食糧に
飢
(
うえ
)
を
凌
(
しの
)
いだが、襲い来った山上の寒気に我慢が出来なかった。仕方なく落下傘を少しずつやぶっては燃料にした。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
虎は
少時
(
しばらく
)
の間は僕と田鶴子さんの手を幾度か往復した。こんな簡単な玩具も相応退屈
凌
(
しの
)
ぎになった。僕達は何時の間にか大船に着いた。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
屋根の
窪
(
くぼ
)
みなどに、雨水が
溜
(
たま
)
るからだ。僕等は、それによって、
渇
(
かつ
)
を
医
(
い
)
やすことができ、雨水を呑んで、わずかに飢えを
凌
(
しの
)
ぐのだった。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
そこで一時の
凌
(
しの
)
ぎにと云って、伯父の出してくれた金の大部分は漢籍にしてしまった。それを持って国へ引込んで読むというのである。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だから、意識のあるうちは、当然手足をどこかで支えて
凌
(
しの
)
いでいたろうから、その間は重心が下腹部辺りにあるとみて差支えない。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それをぼつぼつと摘まんで食べたのは、客などのきたときのただの
慰
(
なぐさ
)
みであって、
飢
(
うえ
)
を
凌
(
しの
)
ぐというのは始めからの目的でなかった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
お葉は
折柄
(
おりから
)
の雨を
凌
(
しの
)
ぐ為に、
有合
(
ありあ
)
う獣の皮を頭から
引被
(
ひっかぶ
)
って、口には日頃信ずる
御祖師様
(
おそしさま
)
の題目を唱えながら、
跫音
(
あしおと
)
を
偸
(
ぬす
)
んで忍び出た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「今日よりはお
獄舎
(
ひとや
)
へ、夜の灯も、
火桶
(
ひおけ
)
(火鉢)も差し上げますゆえ、昼や
御寝
(
ぎょし
)
の座までも、充分お
凌
(
しの
)
ぎよいように、お用いください」
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然
(
しか
)
し
比較的
(
ひかくてき
)
に
※去
(
くわこ
)
の三
年
(
ねん
)
は
私
(
わたくし
)
の
爲
(
ため
)
には
凌
(
しの
)
ぎ
易
(
やす
)
かつたよ、イヤ、
其間
(
そのあひだ
)
には
隨分
(
ずゐぶん
)
、
諸君
(
しよくん
)
には
想像
(
さうざう
)
も
出來
(
でき
)
ない
程
(
ほど
)
、
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
も
澤山
(
たくさん
)
あつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
さし當つての急場の
凌
(
しの
)
ぎに
財布
(
さいふ
)
を差出して、
金切聲
(
かなきりごゑ
)
にも、ヒステリイにも、嘆願にも、抗議にも、
痙攣
(
けいれん
)
にも一切とり合ひませんでした。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
友達はそれを
質
(
しち
)
に入れて一時を
凌
(
しの
)
いだ。都合がついて、質を
受出
(
うけだ
)
して
返
(
かへ
)
しに
来
(
き
)
た時は、肝心の
短銃
(
ピストル
)
の主はもう死ぬ気がなくなつて居た。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
浅二郎は多度津へ来て、藩政の一般にざっと眼を通しただけで、とても急場を
凌
(
しの
)
ぐ策など建てられる筈がないという事を知った。
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
無理に三杉さんの御次男を迎へたら、三日經たないうちに、お孃さんは
自害
(
じがい
)
をするに違ひない。急場の
凌
(
しの
)
ぎが付いたら又何んとかならう。
銭形平次捕物控:109 二人浜路
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「やい、つかせてやれ、開いちゃ悪いぜ、まきり直して乗り落すようにしねえと
凌
(
しの
)
ぎがよくねえや、そのつもりでやってくれ、いいかい」
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「亀と兎の競争の話」はこの物語に出た諸話の中もっとも名高い物で根気
能
(
よ
)
く辛抱して励めば非常の困難をも
凌
(
しの
)
いで事業を成就し得る事を
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
どうやら
凌
(
しの
)
ぎをつけてゐたので、彼女の働きがなかつたら、母親なぞがいくら威張つてもどうにもなりはしなかつたではないか。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ことに、
裸馬
(
らば
)
を駆る技術に至っては
遙
(
はる
)
かに陵を
凌
(
しの
)
いでいるので、李陵はただ
射
(
しゃ
)
だけを教えることにした。
左賢王
(
さけんおう
)
は、熱心な弟子となった。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
今や彼らの手もとには、この冬を
凌
(
しの
)
ぐべき糧食の貯えもなくなっていた。どんなによい地味であっても、冬にみのらせることは出来ない!
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
殊
(
こと
)
に冬の寒い時に酒を飲むのは非常の害があるので一時は寒気を
凌
(
しの
)
ぐようでもその
跡
(
あと
)
が一層寒気を感じて
凍
(
こご
)
えたり病気を起したりします。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
ただ雨を
凌
(
しの
)
ぐだけのもので、漆喰もなく煙突もなく、四壁は荒けずりの風雨にさらされた板で、大きな隙間さえあり夜は風通しが良かった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
玉木さんは煙草を
服
(
の
)
むことさえ不本意だが、退屈
凌
(
しの
)
ぎに少しはやるという顔付で、短い
雁首
(
がんくび
)
の
煙管
(
きせる
)
で一服吸付けながら答えた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
恵那峡の
幽邃
(
ゆうすい
)
はともすると日本ラインの
豪宕
(
ごうとう
)
を
凌
(
しの
)
ぐ。ここまで
上
(
のぼ
)
って来なければ木曾川の綜合美は解せられない。すばらしい、すばらしい。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
或
(
ある
)
ひは
一一二
山
賤
(
がつ
)
の
椎柴
(
しひしば
)
をおほひて雨露を
凌
(
しの
)
ぎ、
終
(
つひ
)
に
擒
(
とら
)
はれて此の嶋に
謫
(
はぶ
)
られしまで、皆
義朝
(
よしとも
)
が
姦
(
かだま
)
しき
計策
(
たばかり
)
に
困
(
くるし
)
められしなり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
夜寒を
凌
(
しの
)
ぐために借著をした、それが茶縮緬だったというのであろう。借著はして見たが、何となく身にそぐわぬような感じが現れている。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
それは
丸太
(
まるた
)
を
切
(
き
)
り
組
(
く
)
んで
出来
(
でき
)
た、やっと
雨露
(
うろ
)
を
凌
(
しの
)
ぐだけの、
極
(
きわ
)
めてざっとした
破屋
(
あばらや
)
で、
広
(
ひろ
)
さは
畳
(
たたみ
)
ならば二十
畳
(
じょう
)
は
敷
(
し
)
ける
位
(
くらい
)
でございましょう。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
庫裡
(
くり
)
の、上りがまちに、腰を下ろして、いずれ、
悪徒
(
しれもの
)
らしいかごかきを相手に、これも寒さ
凌
(
しの
)
ぎの、冷酒をかぶっていた、がに股の吉が——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
見るさえまばゆかった雲の
峰
(
みね
)
は風に
吹
(
ふ
)
き
崩
(
くず
)
されて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様の
傾
(
かたむ
)
くに連れてさすがに
凌
(
しの
)
ぎよくなる。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
鰹節
(
かつおぶし
)
や生米を
噛
(
かじ
)
って露命を
繋
(
つな
)
ぎ、
岩窟
(
いわや
)
や樹の下で、雨露を
凌
(
しの
)
いでいた幾日と云う長い間、彼等は一言も不平を
滾
(
こぼ
)
さなかった。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それほどひとの反感を買う
質
(
たち
)
でもないのだが。また稽古には身を入れる方だったが、他を
凌
(
しの
)
ごうという気性は本来イエにはないものだったし。
前途なお
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
例へば雪みぞれの
廂
(
ひさし
)
を打つ時なぞ
田村屋好
(
たむらやごの
)
みの
唐桟
(
とうざん
)
の
褞袍
(
どてら
)
に
辛
(
から
)
くも身の
悪寒
(
おかん
)
を
凌
(
しの
)
ぎつつ消えかかりたる
炭火
(
すみび
)
吹起し
孤燈
(
ことう
)
の
下
(
もと
)
に煎薬煮立つれば
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そもそも、鶴は
凡禽
(
ぼんきん
)
凡鳥ならず。一挙に千里の雲を
凌
(
しの
)
いで日の下に鳴き、常に百尺の
松梢
(
しょうしょう
)
に住んで世の
塵
(
ちり
)
をうけぬ。泥中に
潜
(
せん
)
してしかも
瑞々
(
ずいずい
)
。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
……叔父は先年ある事業に関係して祖先の遺産を失ってからは、後に残った書画骨董類を売喰いして
凌
(
しの
)
いでいるのであった。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
家屋の目的は
雨露
(
うろ
)
を
凌
(
しの
)
ぐので、人を
拒
(
ふせ
)
ぐのでないと云ふのが先生の哲学だ、戸締なき家と云ふことが、先生の共産主義の立派な証拠ぢやないか
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
貪りて谷へ轉げ落ちしにあらずや此谷に落たるを救ひ上げんには三人の帶を繋ぐとも屆くまじ
如何
(
いかゞ
)
はせんと谷底を覗き見ながら雨を
凌
(
しの
)
ぎて
上
(
のぼ
)
る
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
途中で寒さ
凌
(
しの
)
ぎに一パイ飲んで、夕方になって、やっと
自宅
(
うち
)
へ帰りついた文作は着のみ着のまま、物も云わずに、蒲団を冠って寝てしまった。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
緩るい船脚を続けながら
支那船
(
サンパン
)
を
凌
(
しの
)
いで行き過ぎたが、ほんの五、六間行き過ぎた時一つの不思議が行われた。と云うのはそれは他でもない。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
艇長の責任がある
窪田
(
くぼた
)
は困った。敵手の農科はことにメンバアが
揃
(
そろ
)
っていて、一カ月も前から法工医の三科をさえ
凌
(
しの
)
ぐというような勢いである。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
之が一等
支出
(
めり
)
が立た無くて好いのだが、只此風に、
耐
(
こた
)
える。煎餅屋の
招牌
(
かんばん
)
の蔭だと、大分
凌
(
しの
)
げる。少し早目に出掛けよう。
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
天下の衆生をして悉く愛山生の如き平民論者ならしめば、山東家の小説は
凡
(
すべ
)
ての他の小説を
凌
(
しの
)
ぐことを得べきこと必せり。
人生に相渉るとは何の謂ぞ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
或は倒れてゐるのもあれば、長い間の風雨を平気で
凌
(
しの
)
いで来たらしいのもある。中にはその墓石の表面に仏像が刻まれてあるものなどもあつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
本多子爵によれば、体格も西洋人を
凌
(
しの
)
ぐばかりで、少年時代から何をするのでも、精力抜群を以て知られてゐたと云ふ。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
晩飯と、どこの軒下でもいい、一夜の寒さを
凌
(
しの
)
ぐ場所を求めたいと思うと、俄に気が焦ってきた。思いきって、そこの小学校の校長先生を訪れた。
酒徒漂泊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
凌
漢検準1級
部首:⼎
10画
“凌”を含む語句
凌辱
凌霄花
凌霄
凌駕
凌雲閣
一時凌
清凌織
寒凌
凌宵花
凌虐
退屈凌
凌統
凌轢
凌雲閣上
凌雲院
凌夷
浅草凌雲閣
朱凌谿
御凌
凌圧
...