)” の例文
一は仮時的テンポラルなり、他は永遠にして三世さんぜに亘るなり。仮時的テンポラルなる者は一時の現象を対手とし、永遠なる者は人世の秘奥をて対手とす。
始終私どもの講義を聞いて、ここにはじめて神の正しく儼存げんぞんたまううえは、至誠しせいってこれを信じその道を尽し、その法を修めんには
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
長吉ちやうきちは月のに連れられて来た路地口ろぢぐちをば、これはまた一層の苦心、一層の懸念けねん、一層の疲労をつて、やつとの事で見出みいだし得たのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
漢文で、「慷慨こうがい憂憤の士をって狂人と為す、悲しからずや」としてある。墨のあと淋漓りんりとして、死際しにぎわに震えた手で書いたとは見えない。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ひとはしるもの汽車きしやず、ぶものとりず、およぐものうをず、なるもの廂髮ひさしがみざるゆゑて、ちくらがをきとなすなかれ。
怪談会 序 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
中央の太き柱は薬玉くすだまおよび小旗をって飾られ、無数の電灯は四方あたりに輝きて目映まばゆきばかり。当夜の料理は前壁に対せし一列の食卓に配置さる。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
隅田川とは隅田すだを流るゝをて呼ぶことなれば、隅田村以上千住宿あたりを流るゝをば千住川と呼び、それより以上をば荒川と呼ぶ習ひなり。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
圧制あっせい偽善ぎぜん醜行しゅうこうたくましゅうして、ってこれをまぎらしている。ここにおいてか奸物共かんぶつども衣食いしょくき、正義せいぎひと衣食いしょくきゅうする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
木刀をって打つやら突くやら無慙至極むざんしごくな扱い、その折柄おりから何十人という多くの人立でございましたが、只気の毒だ、可愛相だというばかりで
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
芝区赤羽町一番地、白石生。太宰治大先生。或る種の実感をって、『大先生』と一点不自然でなく、お呼びできます。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
見物が前を通ると仕掛けで首を上げる、うらめしそうな顔をして、片手には短刀をって咽喉のどを突いてる、血がポタポタれそうな仕掛になっている。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
たまたま家族の者に諫言かんげんでも加えるには、かつ夏目漱石なつめそうせき氏の評された、氏の漫画の特色とする「苦々しくない皮肉」のあじわいをっておもむろに迫ります。
また「高皇産霊神たかみむすびのかみ大物主神おおものぬしのかみに向ひ、汝若いましもし国つ神をて妻とせば、われなおうとき心りとおもはん」と仰せられた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
宮は何時いつまでここに在らん、我は例のひとりなり。思ふに、彼の悔いたるとは誠ならん、我の死をゆるさざるも誠なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
夫はしきりに傑作やいいましたが、とにかくわたしが絵エいうもん習い始めてから、これほど一所懸命に、興味って画いたことはあれしませなんだ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どうちまして。生れつき口不調法でござりますゆえ、なんと申してお詑びしたらよいやら分らぬのでござります。それに主人の御用向きで、少しく先を
どんなに明々白々な論拠をって臨んでも、まるで暖簾のれんと腕押しをすると同じで、さっぱり手ごたえがないのだ。
亢旱かうかんにして夏に至るまで雨ふらず。百川水を減じて五穀ややしぼめり。まことに朕が不徳をて致す所なり。百姓何の罪ありてか、憔萎せうゐせる事の甚しき。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
すべてが、意外だった。瑠璃子夫人の華奢きゃしゃなスラリとした、身体の代りに、其処そこに十人に近い男性が色々な椅子いすに、いろいろな姿勢でって陣取っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この時を始として、余と少女とのまじはり漸く繁くなりもて行きて、同郷人にさへ知られぬれば、彼等は速了そくれうにも、余をて色を舞姫の群にぎよするものとしたり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
湯殿の脱衣室の鏡ね、あの大きな厚い鏡を、主人は椅子いすってメチャメチャに叩き割ってしまいましたのよ。きっと何かの影がそこに写ったからですわ。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その当時、彼は一種の妬みの眼をってその人を見ていたのであるが、今となっては、彼はあわれみの眼を以ってその人を見なければならないようになった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「四分の一ならってめいすべしさ。それに大学を卒業させて貰っている。苦情を言うのは少し慾だろうぜ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この境遇に処せしむるに小心なる臆病なる慈悲心ある——勇気なく独立心に乏しき一個の人物をつてし、以て此の地位と彼の境遇との関係を発揮したるものなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
当時は世間でも随分騒ぎ、警察方面でも可成かなり熱心に、そうして勿論同情をって、手を尽くして八方捜索しましたが、行衛を知ることが出来なかったそうです。
ここに天つ神もろもろみことちて伊耶那岐いざなぎの命伊耶那美いざなみの命の二柱の神にりたまひて、この漂へる國を修理をさめ固め成せと、あめ沼矛ぬぼこを賜ひて、言依ことよさしたまひき
邪悪よこしまにして慾深ければ、奉納のあげ豆腐をて足れりとせず。われから宝珠を棄てて、明神の神祠みやしろを抜け出で、穴も定めぬ野良狐となりて、彼の山に漂泊さまよひ行きつ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
正義の為に富豪を罰する我が団体の名を断りなくかたりて、私欲の為に肉身をあざむく、その罪大なり。すみやかなんじの得たる金を差出せ、然らずんば我等は暴力をって汝に臨まん。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
同学鞍作得志くらつくりのとくし、虎をて友として、そのばけを学び取れり。あるいは枯山からやまをして変えて青山にす。
社会は、この最も弱いものを同情するよりは、しばしば一種の白眼はくがんってみる。
菊世は手をって快庵を制するようにしていった。
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
全くって何とも言い得ぬ哀れな出来事であった。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
今怠慢の故をて劣れる賞を取るあらば
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
白「わたくし陰陽おんようって世を渡り、未来の禍福を占って人の志を定むる事は、私承知して居りますけれども、こればかりは気が付きませなんだ」
としめやかに朱唇しゆしんうごく、とはなさゝやくやうなのに、恍惚うつとりしてわれわすれる雪枝ゆきえより、飛騨ひだくに住人じゆうにんつてのほか畏縮ゐしゆくおよんで
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここテ相逢フゴトニ先生ノ文ト翁ノ学トヲ追称ス。交誼こうぎただニ門ヲ同ジクスルノミニアラズ。このこロソノ青年ノ所著『親灯余影』ナル者ヲ示サル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかれども其諷刺の原料として取る所の、重に文躰にありしをて見れば、善く罵りしのみにして、未だ敵を塵滅するの力あらざりしを知るに足らむ。
壓制あつせい僞善ぎぜん醜行しうかうたくましうして、つてこれまぎらしてゐる。こゝおいてか奸物共かんぶつども衣食いしよくき、正義せいぎひと衣食いしよくきうする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
のち戦功をって累進して将となり、しょくを征し、雲南うんなんを征し、諸蛮しょばんを平らげ、雄名世にく。建文元年耿炳文こうへいぶんに従いて燕と戦う。炳文敗れて、成とらえらる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
証書は風早の手に移りて、遊佐とその妻と彼とむつの目をて子細にこれを点検して、その夢ならざるをあきらめたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それは前ってちゃんと頼み込んであるのだ。エ、お前がそのアリバイを勤めたのかって、イヤ、違う違う。
一人二役 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その地獄とも醍醐味だいごみともいえるところに静かにあぐらをかき、守り本尊を念じつつ微笑をって仕事する、そういう職人気質こそ私の理想とする人格なのだ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
いや、私は暴に報いるに、暴をってしません。たゞ、国の公正なる法律に、あなたの処分をまかせる丈です。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
私の貧弱な語彙ごいってしては、ちょっと見つかりそうもありませんから、ただ、私の赤貧の生立ちと比較して軽く形容しているのだと解して、おしのび下さい。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
玩具及び人形は単に一時の娯楽品や、好奇心を満足せしむるをってやむものでない事は、人類最古の文明国たりし埃及エジプト時代にすでに見事なものが存在したのでも知られる。
土俗玩具の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
左門に逢ったなら「我の一をって敵の二に応じ」よう。すなわち、攻撃的に出て、機先を制しようなどと考えていた頼母は、相手の構えを見ただけで、萎縮してしまった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
然れども吾人詩学的のがんつて之をるときは、キリストと雖も明白なる罪過あるなり。彼はユダヤ人の気風習慣にさかひ、時俗に投ぜざる、時人の信服を買ふ能はざる説を吐けり。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
私達はマホメットの宗教を信じ剣をって邪を払い、詩を以って心を養います
ガルスワーシーの家 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
諸君蒐集しゅうしゅうの民謡はいつも大なる興味をって拝見していますが、その中には今はもう歌わないもの、ある老人がわずかに記憶していたもの、意味の不明で誤写だろうかと思うものなどがあって
ここでお前がうっかりしたことをすると、あれ見ろ、あいつは悪い事をした申し訳なさに自滅したと、かえって理をって非に陥るようなことになる。くれぐれも無分別なことをしてくれるなよ
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)