しづ)” の例文
旧字:
不審に思つてづ封を切つて見ると驚くまいことか彼が今の妻と結婚しない以前に関係のあつたしづといふ女からの手紙である。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
今より二九七雄気をとこさびしてよく心をしづまりまさば、此らの邪神あしきかみやらはんに翁が力をもかり給はじ。ゆめゆめ心を静まりませとて、まめやかにさとしぬ。
美禰子は二重瞼ふたへまぶたほそくして高い所をながめてゐた。それから、そのほそくなつた儘のしづかに三四郎の方に向けた。さうして
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
誠にしづまりかへつて兵士へいしばかりでは無い馬までもしづかにしなければいかないとまうところが、馬は畜生ちくしやうの事で誠に心ない物でございますから、じれつたがり
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かる黒髪くろかみそよがしにかぜもなしに、そらなるさくらが、はら/\とつたが、とりかぬしづかさに、花片はなびらおとがする……一片ひとひら……二片ふたひら……三片みひら……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぎんのすすきのなみをわけ、かゞやく夕陽ゆふひながれをみだしてはるかにはるかにげてき、そのとほつたあとのすすきはしづかなみづうみ水脈みをのやうにいつまでもぎらぎらひかつてりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
山の根の木立こだちくろくしてしづけきを家いで来つつふることあり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
吹かれつつはうぬぎすててかきつばたしづもる獄庭にはの花となりたり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
かなしくもしづかにも見ひらき給ふ青きはな——少女をとめひとみ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
びやう人だからしづかにのせて下さい
その音に耳をしづめて。
まよわし (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
しづかにこぎやれ 勘太殿かんたどの
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
みづしづかなる江戸川の
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『僕もよひめかゝつて寒くなつて来た。しづちやんさへさしつかへ無けれアかどの西洋料理へ上がつてゆつくり話しませう。』
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
彼は三十分と立たないうちに、吾家わがいへ門前もんぜんた。けれどももんくゞる気がしなかつた。かれは高いほしいたゞいて、しづかな屋敷町やしきまちをぐる/\徘徊した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
随意まゝにさつしやりませ。すつとこかぶりをした天狗様てんぐさまがあつてろかい。しづめさつしやるがい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかき日のなまめきのそのほめきしづこころなし。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しづい、しづい』と彼は心に繰返くりかへしながら室内をのそ/\歩いて居たが、突然ソハの上に倒れて両手を顔にあてゝあふるゝ涙をおさへた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あに洋卓てえぶるうへの手紙をつて自分でき始めた。しづかな部屋のなかに、半切はんきれおとがかさ/\つた。あにはそれをもとごとくに封筒に納めて懐中した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見送みおくるとちいさくなつて、一大山おほやま背後うしろへかくれたとおもふと、油旱あぶらでりけるやうなそらに、やまいたゞきから、すく/\とくもた、たきおとしづまるばかり殷々ゐん/\としてらいひゞき
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかき日のその靄にひゞく、しづこころなし。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「自然は宝石を作るに幾年の星霜を費やしたか。又此宝石が採掘の運に逢ふ迄に、幾年の星霜をしづかにかゞやいてゐたか」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
旦那だんな、はて、お前様めえさまなにはつしやる。うさつしやる……しづめてくらつせえよ。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かくしてもののしづやかにひとときあまり。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
からんとしたひろい座敷へあさみどりにはからし込んで、すべてがしづかに見えた。戸外そとかぜは急に落ちた様に思はれた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
婦人をんな衣紋えもん抱合かきあはせ、ちゝしたでおさへながらしづかに土間どまうまわきへつゝとつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しづかな五ぐわつひる湯沸サモワルからのぼる湯気ゆげ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
厭味いやみのある言ひかたではなかつた。たゞ三四郎にとつて自分は興味のないものとあきらめた様にしづかな口調であつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あれが、かあ/\いてひとしきりしてしづまると其姿そのすがたえなくなるのは、大方おほかた其翼そのはねで、ひかりをかくしてしまふのでしやう、おほきなはねだ、まことにおほきつばさだ、けれどもそれではない。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いと高くいと深くいとしづにいとしめやげる
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのとなりなるくるまは、づゝとながとほつたあをへやで、人数にんず其処そこすくない。が、しかし二十にんぐらゐはつてた。……たゞそれも、廻燈籠まはりどうろえて、あめやぶれて、寂然しんしづまつたかげぎない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつとほみ、かつ近み、しづこころなし。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うろこひかつても、それ大蛇だいじやでも、しづかなあめでは雷光いなびかり憂慮きづかひはない。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あはれ、こはものしづかなる幽潭いうたん
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「……おしづかに、おしづかに、やうなら……」
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しづかにすゝむとき
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ものしづかで、沁々しみ/″\さびしい。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大地たいちしづかにふしまろび
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
九百九町くひやくくちやうしづまりに
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)