トップ
>
難
>
にく
ふりがな文庫
“
難
(
にく
)” の例文
また、この不幸な老先輩の死を見すてるのも忍びないが、生きていよとは、なおさらすすめ
難
(
にく
)
い。当然、老先生は死ぬべき人である。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いえ」と女中は言ひ
難
(
にく
)
さうに一寸膝の上を見つめた。「
甚
(
はなは
)
だ申し兼ねますが、乃木さんのお手紙を二本ばかし戴かれますれば……」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
唯
(
たゞ
)
大地震直後
(
だいぢしんちよくご
)
はそれが
頗
(
すこぶ
)
る
頻々
(
ひんぴん
)
に
起
(
おこ
)
り、しかも
間々
(
まゝ
)
膽
(
きも
)
を
冷
(
ひや
)
す
程
(
ほど
)
のものも
來
(
く
)
るから、
氣味惡
(
きみわる
)
くないとはいひ
難
(
にく
)
いことであるけれども。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
それは
棺
(
かん
)
の
中
(
なか
)
は
空氣
(
くうき
)
が
侵入
(
しんにゆう
)
して
腐
(
くさ
)
り
易
(
やす
)
いが、
直接
(
ちよくせつ
)
に
土中
(
どちゆう
)
に
埋
(
うづ
)
める
時
(
とき
)
は
空氣
(
くうき
)
が
入
(
い
)
り
難
(
にく
)
いので、かへってよく
保存
(
ほぞん
)
されるのであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
がシカシ君の
事
(
こっ
)
たから今更
直付
(
じかづ
)
けに
往
(
い
)
き
難
(
にく
)
いとでも思うなら、我輩一
臂
(
ぴ
)
の力を仮しても宜しい、
橋渡
(
はしわたし
)
をしても宜しいが、どうだお
思食
(
ぼしめし
)
は
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
作品の世界にとらえ
難
(
にく
)
いと歎いているものはあながち海外でのみみられる日本人の人間としての成長の過程のあとづけばかりではなくて
文学の大陸的性格について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「怨まれもするわけだな。押しが強くて、人附き合ひが理詰めで、義理を
缺
(
か
)
かさないと來て居るから、こちとらには扱ひ
難
(
にく
)
いな」
銭形平次捕物控:316 正月の香り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「アハハ。さすがの目明良助どんもこの私の行方ばっかりは、わかり
難
(
にく
)
かったろうなあ。……ところでその用と言うのは何事かいな……」
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
壽阿彌が水戸家の
用達
(
ようたし
)
であつたと云ふことは、諸書に載せてある。しかし兩者の關係は必ず此用達の名義に盡きてゐるものとも云ひ
難
(
にく
)
い。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「電車のなかでは顔が見
難
(
にく
)
いが往来からだとかすれちがうときだとかは、かなり長い間見ていられるものだね」と云いました。
橡の花
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
僕は褒めたような
貶
(
けな
)
したような、祝うような悲しむような手紙を野口君に宛てた。書き
難
(
にく
)
くて一晩かゝったように覚えている。
首切り問答
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
然し幸ひなことに砂みちであるので、その仄白さと、踏めばサラサラと微かに音を立てるのとで、さう歩き
難
(
にく
)
い方ではない。
水と砂
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
庄「いや私こそ御無沙汰致しました、お母さん、少し御相談が有って来たんだがねえ、
些
(
ちっ
)
と申し
難
(
にく
)
い訳だから、一寸どんな小部屋でも有りア」
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それにも
滅気
(
めげ
)
ず
刎
(
は
)
ね起きてまたもや彼女は走り出したが、道は辷って歩き
難
(
にく
)
く、雨に濡れた体は
悪寒
(
おかん
)
に顫え、歩く足も次第によろめき出した。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
草
(
くさ
)
の
根
(
ね
)
が
邪魔
(
じやま
)
をして、
却々
(
なか/\
)
掘
(
ほ
)
り
難
(
にく
)
い。それに
日
(
ひ
)
は
當
(
あた
)
らぬ。
寒
(
さむ
)
くて
耐
(
たま
)
らぬ。
蠻勇
(
ばんゆう
)
を
振
(
ふる
)
つて
漸
(
やうや
)
く
汗
(
あせ
)
を
覺
(
おぼ
)
えた
頃
(
ころ
)
に、
玄子
(
げんし
)
は
石劒
(
せきけん
)
の
柄部
(
へいぶ
)
を
出
(
だ
)
した。
探検実記 地中の秘密:07 末吉の貝塚
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
「御橋も達者だ。しかし、先生、どうもあんまり
妾
(
めかけ
)
を大切にするのでつき合い
難
(
にく
)
いよ。あ
奴
(
いつ
)
も参木のような馬鹿者だね。」
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
鉄よりも数百年も早く、金が人間の注意を惹くやうになつた理由は、分り
難
(
にく
)
い事ではない。金は決して錆ないからなのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
あの老人程
舵
(
かじ
)
の取り
難
(
にく
)
い人はないから貴所が
其所
(
そこ
)
を巧にやってくれるなら
此方
(
こっち
)
は又井下伯に頼んで十分の手順をする、何卒か宜しく
御頼
(
おたのみ
)
します。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
さて、地獄で天女とも思いながら、年は取っても見ず知らぬ御婦人には
左右
(
そう
)
のうはものを申し
難
(
にく
)
い。なれども、いたいけに
児
(
こ
)
をあやしてござる。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
第一あの真に迫った脅迫状の筆蹟が、私の妄想した様に六郎氏の偽筆だったというのは、甚だ考え
難
(
にく
)
いことではないか。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
路はぬかつて歩き
難
(
にく
)
かつた。解けかかつてグシヨグシヨした雪路は、気が
急
(
せ
)
いてゐても、なかなか
捗
(
はかど
)
らなかつたのだ。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
『左様、根治とはマア行き
難
(
にく
)
い病気ですが、……何卒。』と信吾の莨を一本取り乍ら、『
撒里矢爾酸曹達
(
さるちるさんさうだ
)
が
尊母
(
おつか
)
さんのお体に合ひました様で……。』
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
光沢
(
つや
)
のある
頬
(
ほお
)
の色は
紅味勝
(
あかみが
)
ちな髪の毛と好く調和して、一層この人を若々しく見せた。小竹には、岸本はもっと親しみ
難
(
にく
)
いような人を想像していた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私は私の用件を話したかったが、どうも固くなって話し
難
(
にく
)
かった。でも私はやっとのことでぎごちなく口を切った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
聞きとれ
難
(
にく
)
いほど低い声で、こう相良は唸った。私はポケットから調書をとり出すと彼の耳のところで、しっかりした
言調
(
ごちょう
)
を選んでよみ聞かせてやった。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
小山君、モー一つ僕の言う事を聞いてくれ給え、西洋料理にも今のような生理の原則はあるが
素人
(
しろうと
)
に解り
難
(
にく
)
い。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
阿父
(
おとつ
)
さんや、
阿母
(
おつか
)
さんに会ふ度に、今度は話さう、今度は話さうと思ひながら、私の口からは何と無く話し
難
(
にく
)
いやうで、実は今まで言はずにゐたのだけれど
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
細いのか丸いのか判別も出来
難
(
にく
)
かつた彼女の眼には巧な隈どりがほどこされて涼し気に光り、尖つたやうな頤のかたちが反つて凜としたおもむきを添へてゐた。
街角
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
お鳥は、兄のところを拔けて來る場合が見付かり
難
(
にく
)
かつたとて、四日目にやつて來た。そして直ぐ入院した。持つて來た行李までも運び込まうとしたので、義雄は
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
自分も
巴里
(
パリイ
)
で
時時
(
とき/″\
)
其
(
その
)
床屋へ行く。其れは髪の毛が一本でも
散
(
ちら
)
ばつて居ないのを
礼
(
らい
)
とする
此処
(
ここ
)
では自分で手際よく髪を持ち扱ひ
難
(
にく
)
いからである。
髪結
(
かみゆひ
)
は多く男である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
もう古くなっている階段は一番人に歩かれた真ん中の所だけがすり切れていてとても歩き
難
(
にく
)
い
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それから源三はいよいよ分り
難
(
にく
)
い山また山の中に入って行ったが、さすがは山里で人となっただけにどうやらこうやら「勘」を付けて上って、とうとう雁坂峠の絶頂へ出て
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
次にわれ等の教に反対する者の中で、最も取り扱い
難
(
にく
)
いのは、実にかの
似而非
(
えせひ
)
科学者である。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
暗い
足許
(
あしもと
)
には泥土質の
土塊
(
つちくれ
)
や
水溜
(
みずたま
)
りがあって、歩き
難
(
にく
)
かったが、奥へ奥へと進んで行くと、向側の入口らしい仄明りが見えて来た。人々はその辺で一かたまりになって
蹲
(
うずくま
)
った。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「親父は来なかったかね」と、考えて、「そこで、
些
(
ちっ
)
と云い
難
(
にく
)
いことだが、折角ここまで来たもんだから、念の為に窟の中を一応調べさして貰いたいんだが、
何
(
ど
)
うだろうね。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
やはりあなた
方
(
がた
)
にはわかり
難
(
にく
)
い
興味
(
きようみ
)
かも
知
(
し
)
れませんが、わらはすみするなどの
歌
(
うた
)
は、ぢっくりと
落
(
お
)
ちついた、そしてなんともいへない
心
(
こゝろ
)
のはづんでゐるのが
感
(
かん
)
じられるものです。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
あとを追う高倉祐吉は半分は無我夢中であった。暑さと歩き
難
(
にく
)
さのためにぼーッとなり、手に触れるものは何でも手あたり次第に
縋
(
すが
)
りついた。
漕
(
こ
)
ぐようにして身体を押し進めた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
けれども榎の根もとの岩蔭の自分は彼の眼には入り
難
(
にく
)
い。餘程起き出でて彼を呼ばうかとも思つたが、彼の姿を見てゐては何とも言へぬ一種の壓迫を感じて
急
(
には
)
かに聲をも出しがたい。
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
真正面から刃物で相手を刺し殺す場合に、其の右胸部を突くという事は犯人が左利でない限り、一寸やり
難
(
にく
)
い仕事です。これは決して小説ばかりでなく事実問題として重大な事です。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
「もうちつとパラソルをそちらへやつて貰ひませう。歩き
難
(
にく
)
くつてしやうがない。」
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
が、それ程までに別れ
難
(
にく
)
いものなら、何故、別の女と結婚するのだろうか、千恵造の真意は補捉しがたいものがあった。結局、両手に花のつもりだろうか。賀来子が承知せぬ筈だ。——
俗臭
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そんなことを
申
(
まう
)
されると、
尚更
(
なおさら
)
談話
(
はなし
)
がし
難
(
にく
)
くなって
了
(
しま
)
います。
修行未熟
(
しゅぎょうみじゅく
)
な、
若
(
わか
)
い
夫婦
(
ふうふ
)
の
幽界
(
ゆうかい
)
に
於
(
お
)
ける
初
(
はじ
)
めての
会合
(
かいごう
)
——とても
他人
(
ひと
)
さまに
吹聴
(
ふいちょう
)
するほど
立派
(
りっぱ
)
なものでないに
決
(
きま
)
って
居
(
お
)
ります。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
私は
先達
(
せんだッ
)
て台湾に三月ばかり行ッていて、十日前に京都へ帰ッて、外国人に会ッて英語をしゃべるのに、平生でもそう
流暢
(
りゅうちょう
)
にしゃべるのではないが、
特
(
こと
)
にしゃべり
難
(
にく
)
かッた、そんなもので
人格の養成
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
彼は決心したらしく
傍目
(
わきめ
)
も振らずにズンズンと歩き出した。彼は表門を出て坂を下りかけてみたが、
先刻
(
さっき
)
は何の苦もなくスラスラと登って来た坂が今度は大分下り
難
(
にく
)
い。彼は二三度
踉
(
よろ
)
めいた。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
それでは文芸とは
如何
(
いか
)
なるものぞと文芸の定義を下すと云うことは、又
些
(
ち
)
っと
難
(
むず
)
かしいことで、とてもおいそれとそんな手早く出来ることではない。
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
斯
(
こ
)
う云う問題は答えるに些っと答え
難
(
にく
)
い。
文芸は男子一生の事業とするに足らざる乎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
してみると
目方
(
めかた
)
がなければ
怪物
(
ばけもの
)
だとは
一寸
(
ちょっと
)
云い
難
(
にく
)
くなる。
大きな怪物
(新字新仮名)
/
平井金三
(著)
いい
難
(
にく
)
そうに伝兵衛がいうと、お
那珂
(
なか
)
は、畳へ手をついて、何かいうつもりなのが、そのまま、泣きじゃくって、
俯
(
う
)
っ
伏
(
ぷ
)
してしまった。
旗岡巡査
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そんな者がある筈もありません。親の口からは申し
難
(
にく
)
いことですが、伜は何處から何處までよく出來た男で、誰にでも立てられました」
銭形平次捕物控:216 邪恋の償ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
近づき
難
(
にく
)
くて近づき易いと云う事が肇の大変徳な性質になって会う人毎に自分を高く保つ事が何の
苦
(
く
)
もなく出来る事だった。
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ところが俗にも死人
担
(
かつ
)
ぎは三人力という位で、強直の取れたグタグタの屍体は、重量の中心がないから、ナカナカ担ぎ上げ
難
(
にく
)
いものだそうな。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“難”の意味
《名詞》
(ナン)災難。
(ナン)欠点、難点。
(出典:Wiktionary)
難
常用漢字
小6
部首:⾫
18画
“難”を含む語句
難有
困難
有難
気難
災難
難波津
難波
非難
患難
難渋
難所
危難
為難
艱難
苦難
難波江
出難
事難
出来難
小難
...