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さと
ふりがな文庫
“
郷
(
さと
)” の例文
武蔵野原を北に歩んで尽くところ、北多摩の山の尾根と、
秩父
(
ちちぶ
)
連峰のなだれが
畳合
(
たたみあ
)
っている辺に、
峡谷
(
きょうこく
)
の
郷
(
さと
)
が幾つもあるそうです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家の者は驚き疑って、もう宋公が神になっているのを知らないから、走っていって
郷
(
さと
)
の者に
訊
(
き
)
いて呼びもどそうとしたが、もう影も形もなかった。
考城隍
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
懐
(
なつか
)
しい故国も最早遠い空のかなたにのみある夢想の
郷
(
さと
)
ではなくて、一日々々と近づいて行こうとする実際の陸であった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
板倉と
撫川
(
なずかわ
)
の
郷
(
さと
)
の、中を行く芳野の川の、川岸に
幾許
(
ここら
)
所開
(
さける
)
は、
誰
(
たが
)
栽
(
うえ
)
し梅にかあるらん、
十一月
(
しもつき
)
の月の始を、早も
咲有流
(
さきたる
)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
翁が
祖父
(
おほぢ
)
の其の祖父すらも
生
(
うま
)
れぬはるかの
往古
(
いにしへ
)
の事よ。此の
郷
(
さと
)
に
一五二
真間
(
まま
)
の
手児女
(
てごな
)
といふいと美しき
娘子
(
をとめ
)
ありけり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
▼ もっと見る
あれは
横笛
(
よこぶえ
)
とて近き頃
御室
(
おむろ
)
の
郷
(
さと
)
より
曹司
(
そうし
)
しに見えし者なれば、知る人なきも
理
(
ことわり
)
にこそ、
御身
(
おんみ
)
は名を聞いて何にし給ふ
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
り候この地はとにかく読書にも創作にも不適当なるぶるじよあじいの国にて御話にならぬ
無聊
(
ぶりょう
)
の
郷
(
さと
)
に候唯この頃はルウィエといふ
伊東
(
いとう
)
さんのお嬢さんを
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
旦暮
(
たんぼ
)
に死するも
亦
(
また
)
瞑目
(
めいもく
)
すと言ふべし。
雨後
(
うご
)
花落ちて
啼鳥
(
ていてう
)
を聴く。
神思
(
しんし
)
殆
(
ほとん
)
ど
無何有
(
むかう
)
の
郷
(
さと
)
にあるに似たり。即ちペンを走らせて「わが家の古玩」の一文を
艸
(
さう
)
す。
わが家の古玩
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「東山道、みちのくの末、信濃の国、十郡のその内に、つくまの
郡
(
こほり
)
、新しの
郷
(
さと
)
といふ所に、不思議の男一人はんべり、その名を物臭太郎ひぢかずと申すなり……」
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
朝光
(
あさかげ
)
よ
雲居
(
くもゐ
)
立ち立ち、
夕光
(
ゆふかげ
)
よ
潮
(
うしほ
)
満ち満つ。げにここは
耶馬台
(
やまと
)
の国、
不知火
(
しらぬひ
)
や筑紫潟、我が
郷
(
さと
)
は善しや。
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その扇には、吹けば飛ぶ吹かずば飛ばぬ奥の
郷
(
さと
)
の千本林を
右手
(
めて
)
に見て、ひいろろ川に架けた腐れぬ橋を渡って会いにきてほしいというような文句の歌が書かれてあった。
東奥異聞
(新字新仮名)
/
佐々木喜善
(著)
こは火山の所爲にて、この
郷
(
さと
)
の空氣の惡しくなれるならん。ヱズヰオの噴火は次第に
熾
(
さかん
)
なり。熔巖の流は早く
麓
(
ふもと
)
に到りて、トルレ、デル、アヌンチヤタの方へ向へりと聞く。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
娘
(
むすめ
)
は、とうとう
旅
(
たび
)
の
人
(
ひと
)
につれられて、あちらの
郷
(
さと
)
へお
嫁
(
よめ
)
にゆくことになったのであります。
海ぼたる
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
人
(
ひと
)
も
無
(
な
)
き
古
(
ふ
)
りにし
郷
(
さと
)
にある
人
(
ひと
)
を
愍
(
めぐ
)
くや
君
(
きみ
)
が
恋
(
こひ
)
に
死
(
し
)
なする 〔巻十一・二五六〇〕 作者不詳
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
追放
(
やらは
)
れた為に、人間が
苦痛
(
くるしみ
)
の
郷
(
さと
)
、涙の谷に住むと云ふのは可いが、そんなら何故神は、人間をして更に幾多の罪悪を犯さしめる機関、即ち肉と云ふものを人間に与へたのだらう?
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
伊賀の国は柳生の
郷
(
さと
)
の生れとだけで、
両親
(
ふたおや
)
の顔も名も知らない、まったくの親なし千鳥。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
この森より西南の方へ、三里あまり参りましたところに、青塚と申す
郷
(
さと
)
がござる。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
唯彼猿はそのむかしを
忘
(
わす
)
れずして、猶亜米利加の山に
栖
(
す
)
める妻の
許
(
もと
)
へふみおくりしなどいと
殊勝
(
しゅしょう
)
に見ゆる
節
(
ふし
)
もありしが、この男はおなじ
郷
(
さと
)
の人をも
夷
(
えびす
)
の如くいいなして
嘲
(
あざけ
)
るぞかたはら
痛
(
いた
)
き。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
自分は、螢の頃にさへなると、毎晩水の
郷
(
さと
)
をうろついて
夜
(
よ
)
を
更
(
ふ
)
かしてゐた。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
参知政事の
梁粛
(
りょうしゅく
)
は、若い時にこの
郷
(
さと
)
の
※馬嶺
(
けんばれい
)
というところに住んでいた。
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
濃州郡上の
郷
(
さと
)
八幡城
(
やわたじょう
)
三万八千八百石の城主、
金森兵部少輔頼錦
(
かなもりひょうぶしょうゆうよりかね
)
の御嫡、同じく
出雲守頼門
(
いずものかみよりかど
)
後に
頼元
(
よりもと
)
が、ほんの五六人の家臣を
召連
(
めしつ
)
れて、
烏帽子
(
えぼし
)
岳に狩を催した時、思わぬ手違いから家来共と別れ
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
死んでも誰にも祭られず……故郷では
影膳
(
かげぜん
)
をすえて待ッている人もあろうに……「ふる
郷
(
さと
)
に
今宵
(
こよひ
)
ばかりの命とも知らでや人のわれをまつらむ」……露の底の松虫もろとも
空
(
むな
)
しく
怨
(
うら
)
みに
咽
(
むせ
)
んでいる。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
千代 今日は最勝寺さまの御会式ぢやさかいに、死んだ娘と、この子の
父御
(
ててご
)
の
供養
(
くやう
)
しておぢやつた。
郷
(
さと
)
の
母様
(
かかさま
)
が
強
(
きつ
)
う止めるゆゑ、
竟
(
つい
)
遅うなつて、只今帰るところぢや。してお前は何処からぢやえ。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
ある宵われ
牕
(
まど
)
にあたりて横はる。ところは海の
郷
(
さと
)
、秋高く天朗らかにして、よろづの
象
(
かたち
)
、よろづの物、
凛乎
(
りんこ
)
として我に迫る。
恰
(
あたか
)
も我が真率ならざるを笑ふに似たり。恰も我が
局促
(
きよくそく
)
たるを嘲るに似たり。
一夕観
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
あなたは默し さうして桃や李やの咲いてる夢幻の
郷
(
さと
)
で
定本青猫:01 定本青猫
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
*オポスの
郷
(
さと
)
に光榮のその子連れんと約せしも。
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
風は明るしこの
郷
(
さと
)
の、
士
(
ひと
)
はそゞろに
吝
(
やぶさ
)
けき。
文語詩稿 一百篇
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
沈默
(
しゞま
)
の
郷
(
さと
)
の
偶座
(
むかひゐ
)
は
一
(
ひと
)
つの
香
(
かう
)
にふた
色
(
いろ
)
の
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
ふる
郷
(
さと
)
も、山の
彼方
(
かなた
)
に遠い。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『
追懷
(
おもひで
)
』のすむ
郷
(
さと
)
ならじ。
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
隔たりて遠き/\
郷
(
さと
)
にあり
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この
郷
(
さと
)
に つばくら來り
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
この
郷
(
さと
)
は、いずこの国か
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
海の
郷
(
さと
)
離
(
か
)
れて
山國
(
やまぐに
)
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
立去り
美濃國
(
みのゝくに
)
各務郡
(
かゞみごほり
)
谷汲
(
たにくみ
)
の
郷
(
さと
)
長洞村
(
ながほらむら
)
の日蓮宗にて百八十三箇寺の本寺なる常樂院の
當住
(
たうぢう
)
天忠上人
(
てんちうしやうにん
)
と聞えしは藤井紋太夫が
弟
(
おとゝ
)
にて大膳が爲には
實
(
じつ
)
の
伯父坊
(
をぢばう
)
なれば大膳は此長洞村へ尋ね來り
暫
(
しばら
)
く此寺の
食客
(
しよくかく
)
となり居たりしが元より不敵の者なれば
夜々
(
よな/\
)
往還
(
わうくわん
)
へ出て旅人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「あれが八
相
(
そう
)
山
(
やま
)
、
宮部
(
みやべ
)
ノ
郷
(
さと
)
、小谷から横山まで三里のあいだを、
鹿垣
(
ししがき
)
、
柵
(
さく
)
をもって
遮断
(
しゃだん
)
すれば、敵の出ずる道はもう一方しかありません」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
明
(
あけ
)
の日
二八八
大倭
(
やまと
)
の
郷
(
さと
)
にいきて、翁が
二八九
恵
(
めぐみ
)
を
謝
(
かへ
)
し、
且
(
かつ
)
二九〇
美濃絹
(
みのぎぬ
)
三疋
(
みむら
)
、
二九一
筑紫綿
(
つくしわた
)
二屯
(
ふたつみ
)
を
遺
(
おく
)
り来り、
猶
(
なほ
)
此の
妖災
(
もののけ
)
の
二九二
身禊
(
みそぎ
)
し給へとつつしみて願ふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
わが呱々の声を揚げた礫川の僻地は、わたくしの身に取っては何かにつけてなつかしい追憶の
郷
(
さと
)
である。
巷の声
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大野郡、
久具野
(
くぐの
)
の
郷
(
さと
)
が位山のあるところで、この郷は南は美濃の国境へおよそ十六里、北は
越中
(
えっちゅう
)
の国境へ十八里、東は信濃の国境へ十一里、西は美濃の国境へ十里あまり。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それでこの
郷
(
さと
)
の人々は、それらの人々を接待することを、習慣としているほどであって、それらの人々には慣れきってい、それらの人々の修行の大小や、人物の高下を見抜くことにも
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あの、最初に婿入りの引出物として、伊賀の暴れん坊が柳生の
郷
(
さと
)
から持ってきたあれも、果たして本当のこけ猿? もしあれが真のこけ猿の茶壺でないとすれば、本物はまだ柳生家にあるのか?——
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
水の
郷
(
さと
)
と
謂
(
い
)
はれた位の土地であるから、實に川の多い村であツた。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
西八條の
屋方
(
やかた
)
に花見の
宴
(
うたげ
)
ありし時、人の
勸
(
すゝ
)
めに
默
(
もだ
)
し難く、舞ひ終る一曲の春鶯囀に、
數
(
かず
)
ならぬ身の
端
(
はし
)
なくも人に知らるゝ身となりては、
御室
(
おむろ
)
の
郷
(
さと
)
に靜けき
春秋
(
はるあき
)
を
娯
(
たの
)
しみし身の
心
(
こゝろ
)
惑
(
まど
)
はるゝ事のみ多かり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
神母テチスも亦さなり、我この
郷
(
さと
)
に命終へん。
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
沈黙
(
しじま
)
の
郷
(
さと
)
の
偶座
(
むかひゐ
)
は一つの
香
(
こう
)
にふた色の
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「
追懷
(
おもひで
)
」のすむ
郷
(
さと
)
ならじ。
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
川島の
郷
(
さと
)
はおろか、阿波の要所、探り廻らぬところはない。まだ誰に話したこともないが、徳島城の殿中にまで、わしの足跡が
印
(
しる
)
してある。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此の後も
仇
(
あた
)
をもて報い給はば、君が御身のみにあらじ、此の
郷
(
さと
)
の人々をもすべて苦しきめ見せなん。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
青塚と申す
郷
(
さと
)
へいで、そこの
郷長
(
さとおさ
)
佐原嘉門、この
仁
(
じん
)
の屋敷へおいでくだされ。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
アカイア軍を*イーリオス
郷
(
さと
)
に導き率ゐたる
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
“郷”の意味
《名詞》
(ゴウ)律令制下の地方行政組織の一つで、郡の下位に属するもの。
(ゴウ)さと。故郷。
(出典:Wiktionary)
“郷”の解説
郷(ごう、きょう、さと)とは田舎または里を意味し、地方行政の単位(村の集合体)である。
(出典:Wikipedia)
郷
常用漢字
小6
部首:⾢
11画
“郷”を含む語句
故郷
郷愁
郷里
郷土
帰郷
郷士
近郷
他郷
古郷
郷人
俵藤太秀郷
思郷病
上郷
本郷
在郷
同郷
異郷
家郷
同郷人
郷村
...