質屋しちや)” の例文
老人としより子供こどもだから馬鹿ばかにしておもふやうにはうごいてれぬと祖母おばあさんがつてたつけ、れがすこ大人おとなると質屋しちやさして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そしていつとなく青木さん夫婦ふうふは、かつてはゆめにも想像さうざうしなかつた質屋しちや暖廉のれんくぐりさへ度重たびかさねずにはゐられなくなつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
前に評釈した「飛弾山ひだやま質屋しちやとざしぬ夜半よわの冬」と同想であり、荒寥こうりょうとした寂しさの中に、或る人恋しさの郷愁を感じさせる俳句である。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
こつなどのは、質屋しちやのことを御存ごぞんじかな。』と、玄竹げんちく機智きちは、てき武器ぶきてきすやうに、こつな言葉ことばとらへて、こつなかほいろあかくさせた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
こたへてわたくし夫婦八ヶ年浪人の身の上ゆゑ油屋五兵衞方へ衣類いるゐ大小等だいせうとう質物しちもつあづおきし處約束の月切つきぎれに相成質屋しちやよりは度々たび/\催促さいそくなれども其品々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「急所を外れるからいけないんだ。例へばあの邊から江戸へかけて質屋しちやを張らせるとか、提灯屋を當つて見るとか」
薄暗いつるしランプの光がせこけた小作りの身体からだをばなお更にけて見せるので、ふいとこれが昔は立派な質屋しちやの可愛らしい箱入娘はこいりむすめだったのかと思うと
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
場所ばしょは、岡山市おかやまし郊外こうがいちかいMまちで、被害者ひがいしゃは、四ねんほどまえまで質屋しちやをやつていて、かたわら高利貸こうりかしでもあつたそうだが、目下もっか表向おもてむ無職むしょくであつて
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
かねて見当けんとうをつけておいた質屋しちやの蔵へ行って、その戸口で術をほどこしますと、不思議にも、戸と壁とのわずかな隙間すきまから、すーっと中にはいり込むことが出来ました。
泥坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
どうして喪服だけ質屋しちやに入れていなかったのか、着る物の何から何まで流してしまった生活の中で。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
浜町はまちょう細川邸ほそかわてい裏門前うらもんまえを、みぎれて一ちょうあまり、かど紺屋こうやて、伊勢喜いせきいた質屋しちやよこについてまががった三軒目げんめ、おもてに一本柳ぽんやなぎながえだれたのが目印めじるし
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
僕等は亀沢町かめざはちやうかどで円タクをおり、元町もとまち通りを両国へ歩いて行つた。菓子屋の寿徳庵じゆとくあんは昔のやうにやはり繁昌はんじやうしてゐるらしい。しかしその向うの質屋しちやの店は安田やすだ銀行に変つてゐる。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこでふと思いついて、冬の衣類を二、三枚風呂敷に包んで質屋しちや暖簾のれんをくぐった。
またまちへ、たびから役者やくしゃがきて芝居しばいってれば、そのあいだには質屋しちや隠居いんきょに、指物屋さしものやむすめよめにいったのであります。けれど、ペンキ主人しゅじん生活せいかつには、わりがありませんでした。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
じつ何御商法なにごしやうはふをなさるのかとかんがへてゐました、なかにはれは無職業しもたやさんや、ナニさうぢやない質屋しちやさんやなどうて色々いろ/\うはさうてやひやりましたが、うも世辞屋せじやさんとは恐入おそれいつたもんです
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「……あ、質屋しちやへ?」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
質屋しちやです」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
しかし、月きふの上る見込みこみもなかつたし、ボオナスもるばかりの上に、質屋しちやちかしい友だちからの融通ゆうづうもさうさうきりなしとはかなかつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「氣のきかねえ事を言ふな、何のために質屋しちや暖簾のれんを掛けて置くんだ。俺の着替きがへをそつくり持つて行きや——」
今日けふなに何箇いくつあるまでつてるのはおそらくれのほかにはるまい、質屋しちや兀頭はげあたまめおきやうさんにくびつたけで
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
せんと妻を奉公にいだし夫より不※ふと出來心にて質屋しちや夜盜よたうに入りし事あらはれ既に御仕置おしおきにも極まる由夫故御慈悲願おじひねがひをせんと存ずる處に又吉原より女郎初瀬留吉之助殿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あっしゃァ質屋しちやしちと、万金丹まんきんたんたんだけしきゃけやせんが、おせんは若旦那わかだんなのお名前なまえまで、ちゃァんと四かくけようという、水茶屋女みずぢゃやおんなにゃしいくらいの立派りっぱ手書てがき。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
女房にょうぼうは、質屋しちやってゆく品物しなものもつきて、子供こどものものまでってゆきました。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
玄竹げんちくさまは、わたくしがおのことをおしとつて、ひをしとなまるのをおわらひになりますが、御自分ごじぶんは、しをひとちがへて、失禮しつれいをひつれい、質屋しちやをひちおつしやいます。ほゝゝゝゝゝ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
飛弾山ひだやま質屋しちやとざしぬ夜半よわの冬
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
四十五六の一克者らしい男ですが、芝口に數代住み古りた質屋しちやで、愛嬌のないのは稼業柄かもわかりません。
思ひ出し給はば夫にてこゝろざしの程は知て居るなり夫に只今たゞいま質屋しちやよりながれ催促さいそくに來りしを聞れ斯樣の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひとでいい、ひとでいいからいたいとの、せつなるおもいのがたく、わざと両国橋りょうごくばしちかくで駕籠かごてて、頭巾ずきん人目ひとめけながら、この質屋しちやうらの、由斎ゆうさい仕事場しごとばおとずれたおせんのむねには
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かちんくにはらないよ、臺所だいどころ火消壺ひけしつぼからずみつてておまへ勝手かつていておべ、わたし今夜中こんやぢゆう一枚ひとつげねばならぬ、かど質屋しちや旦那だんなどのが御年始着ごねんしぎだからとてはりれば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのとき、ちょうどみやこから、このむらにきている質屋しちや主人しゅじん
海へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
あのときいらがつたら、横町よこてう横町よこてう趣向しゆかうがありませうなんて、おつなことひやがつて、正太しようたばかりきやくにしたのもむねにあるわな、いくらかねるとつて質屋しちやのくづれの高利貸かうりかしなんたらさま
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)