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世辞屋
さて
此世辞屋は
角店にして
横手の
方を
板塀に
致し、
赤松のヒヨロに
紅葉を
植込み、
石燈籠の
頭が少し見えると
云ふ
拵にして、
其此方へ
暖簾を
懸け
之を
潜つて
中へ
這入ると
エヽ
私は
歌舞伎座の
武田屋の
兼てえもんでがすが、
能く
姐さんに
叱られるんで、お
前のやうに
茶屋の
消炭をして
居ながら、さう
世辞が
無くツちやア
仕やうがねえから、
世辞屋さんへでも
行つて
実は
何御商法をなさるのかと
考へてゐました、
中には
彼れは
無職業さんや、ナニさうぢやない
質屋さんや
抔云うて
色々お
噂を
云うて
居やひやりましたが、
何うも
世辞屋さんとは
恐入つたもんです