やゝ)” の例文
ルネツサンス芸術の保護者であつた貴族メデイチの霊廟をサン・ロレンツオうてミケランゼロの建築にやゝ久しく陶然とした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かすひとの有べきやはて不思議なる事もあるものだどうした譯の金なるやとやゝしばらく考へしがて見れば一文貰ひの苦紛くるしまぎれにきやつ切取きりとり強盜がうたう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大井は酔人すゐじんを虎がねるやうに、やゝ久しく立ちすくんでゐたが、やう/\思ひ切つて、「やつ」と声を掛けて真甲まつかふ目掛めがけて切りおろした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
やゝしばしありて雪子は息の下に極めて恥かしげの低き聲して、最う後生お願ひで御座りまする、其事は言ふて下さりますな
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何に驚きてか、垣根の蟲、はたと泣き止みて、空に時雨しぐるゝ落葉る響だにせず。やゝありて瀧口、顏色やはらぎて握りし拳もおのづから緩み、只〻太息といきのみ深し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
自分じぶんより一人ひとりいてまへをとこつてつたときは、やゝしばらくしてから、わつとおほきなこゑが、おくはうきこえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見るだけにても気の毒なり、やゝありて目科は牢の戸を開かせつ余を引連れて内に入る、藻西太郎は泣止みて起直り、寝台の上に身を置きしまゝ目科の顔を仰ぎ見るさま
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
一同いちどうこれはとおそつゝしみけるに、やゝありて幸豐公ゆきとよぎみ御顏おんかほなゝめ見返みかへたまひ、「もくもく」とたまへば、はる末座まつざかたにて、いらへつ、白面はくめん若武士わかざむらひすこしくれつよりずりでたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
狭き谷の麦圃に沿ひ、北行ほくかうやゝ久しく、西日まばしく馬影ばえいなゝめに落つる頃、路の左にそびえ起る一千尺ばかりの山を見る。中腹石屏せきびやうを立てたる如き山骨さんこつあらはれ、赭禿あかはげの山頂に小き建物あり。
茫〻と暗路やみぢに物を探るごとく念想おもひを空に漂はすことやゝ久しきところへ、例の怜悧気な小僧こばうずいで来りて、方丈さまの召しますほどに此方へおいでなされまし、と先に立つて案内すれば
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
やゝひさしくして老女はおもて押しぬぐひつ、涙に赤らめるひとみを上げて篠田を視上げ視下ろせり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
得たれば久々ひさ/″\にて一ぱいのまふと或料理屋あるれうりや立入たちいり九郎兵衞惣内夫婦三人車座くるまざになりさしおさへ數刻すうこく酌交くみかはせしがやゝ戌刻過いつゝすぎやうやく此家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やゝしばしありて雪子ゆきこいきしたきはめてはづかしげのひくこゑして、もう後生ごしやうねがひで御座ござりまする、其事そのことふてくださりますな
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
榛軒は弟の面を凝視することやゝ久しく、言はむと欲する所を知らざるものの如くであつた。それは柏軒にして此ことをなすことを予期せなんだからである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あには打衝を受けた人の様に一寸ちよつと扇のおととゞめた。しばらくは二人ふたりともくちき得なかつた。やゝあつてあに
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
やゝとき乘客じようかくは、活佛くわつぶつ——いまあらたにおもへる——の周圍しうゐあつまりて、一條いちでう法話ほふわかむことをこひねがへり。やうや健康けんかう囘復くわいふくしたる法華僧ほつけそうは、よろこんでこれだくし、打咳うちしはぶきつゝ語出かたりいだしぬ。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
兄は弟の面を視、弟は兄の面を視て、ものいはぬことやゝ久し。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
おこし其夜家内は寢鎭ねしづまりやゝ丑刻半なゝつはんとも思ふころ不※ふと起出おきいかねて勝手は知りしゆゑ拔足ぬきあしさし足して奧へ忍び行き佛壇ぶつだんの下より三百五十兩の大金を盜みいだし是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お上さんは怪訝くわいがの目をみはつて聞いてゐた。そしてわたくしの語を解せざることやゝ久しかつた。無理は無い。かくの如き熱閙場裏ねつたうぢやうりに此の如き間言語かんげんぎよろうしてゐるのだから。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
代助は椅子の一つをゆびさした。三千代は命ぜられた通りに腰を掛けた。代助は其向そのむかふに席をめた。二人ふたりは始めて相対した。然しやゝ少時しばらくは二人ふたりとも、くちひらかなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其夜そのよ教師けうし用達ようたし出掛でかけて留守るすであつたから、やゝ落着おちついてみはじめた。やがて
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしは初め二世池田全安さんの手より此巻物を受けて披閲した時、京水の轗軻不遇の境界をおもひ遣つて、嗟歎することやゝ久しかつた。わたくしは借留数月にして、全文を手抄した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
屹度きつとうよ」とこたへながら、くらがりで團扇うちはをはた/\うごかした。宗助そうすけなにはずに、くびばして、ひさしがけあひだほそうつそらいろながめた。二人ふたり其儘そのまゝしばらくだまつてたが、やゝあつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれやゝいかりびて聲高こわだかになりぬ。旅僧たびそうすこしもさわがず
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれは今此書物のなかに、茫然としてすはつた。やゝあつて、これほど寐入ねいつた自分の意識を強烈にするには、もう少し周囲の物をうかしなければならぬと、思ひながら、へやなかをぐる/\見廻みまはした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さて捕方とりかたの事を言ひ付けると、三人共思ひも掛けぬ様子で、やゝ久しく顔を見合せて考へた上で云つた。平山がうつたへはいかにも実事じつじとは信ぜられない。例の肝積持かんしやくもちの放言をに受けたのではあるまいか。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かぜ一陣ひとしきりでて、ふね動搖どうえうやゝはげしくなりぬ。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
志村氏は嗟歎することやゝ久しかつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)