無意識むいしき)” の例文
おくさんははり無意識むいしきなやうにひざに休めて、ほの白んだ、硬つたかほを青木さんのはうに向けながら、眞劍しんけんこゑでいつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わたくし場合ばあいには、この無意識むいしき期間きかんが二三にちつづいたと、あとかみさまからおしえられましたが、どちらかといえば二三にちというのはみじか部類ぶるい
坊主ばうず自分じぶんむかつておなことたのを、フト思出おもひだしたのが、ほとんど無意識むいしき挙動ふるまひた。トすくなからず一同いちどうおどろかして、みなだぢ/\とつて退すさる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ與吉よきち無意識むいしき告口つげぐちからひどかなしく果敢はかなくなつてあとひとりいた。憤怒ふんぬじやうもやすのにはかれあまりつかれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あく役所やくしよると、みんなから病氣びやうきはどうだとかれた。なかにはすこせたやうですねとふものもあつた。宗助そうすけにはそれ無意識むいしき冷評れいひやう意味いみきこえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と、湯穴ゆあなのフチにしいてある楯の上に腰かけ、りょうの足だけを、ダラリとなかへブラさげていた。そしてときどき無意識むいしきにジャブリジャブリとさせながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女かのじょは、無意識むいしきのうちに、「わたしまれた、北国ほっこくでは、とてもほしひかりつよく、あおえてよ。」といった、わか上野先生うえのせんせい言葉ことば記憶きおくのこっていて、そして、いつのまにか
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ああ物質ぶっしつ新陳代謝しんちんたいしゃよ。しかしながら不死ふし代替だいたいもって、自分じぶんなぐさむるとうことは臆病おくびょうではなかろうか。自然しぜんにおいておこところ無意識むいしきなる作用さようは、人間にんげん無智むちにもおとっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ながいにせよ、またみじかいにせよ、かくこの無意識むいしきからをさましたときが、わたくしたちの世界せかい生活せいかつはじまりで、舞台ぶたいがすっかりかわるのでございます。
そのときまでは、ほとん自分じぶんなにをするかに心着こゝろづいてないやう、無意識むいしきあひだにしてたらしいが、フトめて、俯向うつむいて、じつとて、またこずゑあふいで
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おつぎはあと退去すさつた。おつぎはほとんど無意識むいしき土手どてみなみはしつた。處々ところ/″\だれかゞ道芝みちしばしばあはせていたので、おつぎは幾度いくたびかそれへ爪先つまさきけてつまづいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どすん! とわらの山に腰をついたが、無意識むいしきに、ウヌ、とばかり竹童の足にしがみついてりまわしたので、かれのからだも梁のうえから落とされて、藁のなかにころげちる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、あがりざま、をつとたか笑聲わらひごゑとともに不意ふい無意識むいしきにそんなことつぶやいた。そして、兩方りやうはう夏繪なつゑ敏樹としき自分じぶんからだはうめるやうにしながら、にはあひだをアトリエのはうあるした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しかしながら不死ふし代替だいたいもつて、自分じぶんなぐさむるとこと臆病おくびやうではなからうか。自然しぜんおいおこところ無意識むいしきなる作用さようは、人間にんげん無智むちにもおとつてゐる。なんとなれば、無智むちには幾分いくぶんか、意識いしき意旨いしとがある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しな蒲團ふとんなかでも滅切めつきりあたゝかくつたことをかんじた。時々とき/″\まくらもたげて戸口とぐちからそとる。さうしては麥藁俵むぎわらだはらそばいた蒟蒻こんにやく手桶てをけをどうかすると無意識むいしきつめる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はじめから其處そこつて備附そなへつけられたもののやうに、無意識むいしき煙草たばこつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
だれかが枕辺まくらべいたり、さけんだりするときにはちょっと意識いしきもどりかけますが、それとてホンの一しゅんあいだで、やがてなにすこしもわからない、ふかふか無意識むいしき雲霧もやなかへとくぐりんでしまうのです。
竹童の手は、無意識むいしきに、般若丸はんにゃまるつかをかたくにぎりしめていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驚駭おどろきのあまり青年わかものは、ほとん無意識むいしきに、小脇こわきいだいた、一襲ひとかさねの色衣いろぎぬを、ふねむかつてさつげる、とみづへはちたが、其処そこにはとゞかず、しゆながしたやうにかげ宿やどうきくさたゞよふて、そであふ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)