かあ)” の例文
いままで、小学校時代しょうがっこうじだいに、なかよくあそんだともだちが、それぞれうえ学校がっこうへゆくのをると、うらやましく、おかあさんにはおもわれました。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
もなく、おんなのマリちゃんが、いまちょうど、台所だいどころで、まえって、沸立にえたったなべをかきまわしているおかあさんのそばへました。
かあさんは、そのことばをきいて、とてもうれしいんだよ。うちがびんぼうでも、おまえがいじけないでそだってくれるということがね。
小さな叫び声で「おっかあ、おめえつくばろうとしてるな。——おうい、とうちゃん!」と言い、そして、そういういつわりの警報を発してから
「明日いらッしゃるの? このお天気に!——でもおかあ様もお待ちなすッていらッしゃいましょうねエ。わたくしも行きたいわ!」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
だから、うちのもんがおじさんをいやだっていうんだ。かあさんなんか、ことにそうだ。おじさんのことを考えると、胸が悪くなるってさ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
私がどこへ行こうと、あなたたちはいつも私といっしょにいる。私をおぶってくれたおかあさん、私は今あなたを自分のうちにになっている。
われわれ自身が幼いころに言いなれたあのなつかしい「おとうさん」「おかあさん」という言葉をすてて、何を好んで、どんな理由があって
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
(お前は今日きょうからおれの子供だ。もう泣かないでいい。お前の前のおかあさんや兄さんたちは、立派りっぱな国にのぼって行かれた。さあおいで。)
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はらはらと ちる さくらの はなびらの したでは、おばあさんや おかあさんに つれられた どもたちが、あそびたわむれています。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
「やつぱし僕達に引越せつて譯さ。なあにね、明日あしたあたり屹度かあさんから金が來るからね、直ぐ引越すよ、あんなやつ幾ら怒つたつて平氣さ」
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
と、おかあさんはいいました。海蔵かいぞうさんは、せんだって利助りすけさんが、山林さんりんでたいそうなおかねもうけたそうなときいたことをおもいだしました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
しかし、すぐその音が止んだのは、おっかあと今呼んだ怖ろしく威張った息子のいうことを聞いて、すぐ仕事を片づけているものと思われた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂手島でのたのしい健康な生活を終えて四十幾日ぶりにおかあさんの家にお帰りになされ、このたびは静かな心持ちで家のなかにも安住でき
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
さいのやかましく言ふおかあ樣の會計も、是非おかあ樣にして貰はねばならぬのでは勿論ない。或は自分でする方がいかも知れぬ。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
アルマンが「可笑をかしなかあさんだこと。こんな物を眺めて、流行遅れの襤褸ぼろばかしぢやありませんか」と云ふと、マドレエヌは目に涙をうかべて
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その日は河内家かはちや総見そうけんがあつたので、肝腎のかあは皆と一緒に場に坐つて、惚々ほれ/″\吾児わがこの芸に見とれて、夢中になつてゐた。
丹「なに碌なものでもございませんが、少しも早くかあさまの御病気が御全快になればいと心配していますが、何うも御様子が宜くねえだね」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「僕もやる。うちのおかあちゃんがいったよ。防空壕ならうちでつくってもいいからよく見ておいでとさ。僕ここで手伝って、家でもつくるよ」
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『おうちかへつたら、とうさんやかあさんにておもらひなさい。おまへさんのほつぺたのあかいろもこのおばあさんのこゝろざしですよ。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「ウム、そうだったねえ。ほんとのちゃんやおっかあは、行方知れずでも、あたいには、こんな強い父ちゃんがあるんだったねえ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで五人はかけました。おかあさんにちゃんとお約束やくそくをしたので、五人だけでってもいいというおゆるしが出たのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
がおとうさんおかあさんのとしごろになると、いへ生活せいかつが、よくてもあしくても、なんだか社會的しやかいてきくらしといふものが、重荷おもにかんじられてるものです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
えやん、っちゃん、おかあん、はよおいでんか、あほめ、見えへんがな、すわらんか、などわいわいわめいている。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「お人好しなんていうのはおよしよ、与八さんは、ありゃお地蔵様の生れかわりだって、うちのおっかあがいってたよ」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とおかあさんはうれしいやらかなしいやらだった。三人寄ってたかって離れない。それからそれと話がつづく。正三君もそれがなによりのごちそうだ。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
……「おかあさん。」と相手を呼び掛けて、さも親しげに無邪氣らしいことが今樣の言文一致で書き並べられてゐた。
母と子 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
そだちのいい家鴨あひるはそのおとうさんやおかあさんみたいに、ほら、こうあしひろくはなしてひろげるもんなのだ。さ、くびげて、グワッってって御覧ごらん
頼みのかあさん、南辺みなみへんに賃仕事して裏家住み。死んだあとでは袖乞非人そでごいひにんえ死にをなされようかと、それのみ悲しさ
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
右等の事情より自然未熟なる妻の不注意をはなはだ気にしたもうという次第しかるに妻はまた『かあさまそれは「母の務め」の何枚目に書いてありました』
初孫 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかし、私と兵さんがうちへかえった時は、四郎次のおっかあが来ていた。そして背の低いけちんぼうの四郎次の阿母おふくろは、兵さんと私を見るとニヤリとした。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
『まァおえらいこと……。しかし時々ときどきはおとうさまやおかあさまにおいしたいでしょう。いつかおいしましたか?』
「手荒い事でもして、おかあが血の道を起すか癪でも起したりすると、私がいれば」いいけれど、もう私が家にいないのだから、阿父おとっさん、後生だからお前
かあさんは一人でお夕飯も欲しくない。早く片附けてお留守をしましょう。一人だと見て取ると、村の人がうるさいから、月はし、灯を消して戸をしめて。——
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おや、それは御親切ごしんせつに、有難ありがとうはござんすが、あたしゃいまももうしますとおり、風邪かぜいたおかあさんと、お見世みせへおいでのお客様きゃくさまがござんすから。——」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いま云つたイライザやジョンやヂョウジアァナは、もう客間で、おかあさんのリード夫人の周圍まはりに集つてゐた。
三人の子どもたちにとってもだいじなおかあさまなのですから、いかれてしまうと、それこそたいへんでした。
湖水の女 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ひかるが叔母さんの前ですることがかげなら、かあさんの前ですることもやはりかげで、そんなにいヽと思ふこともして居ないと私はおつやさんに云ひたかつたのですが
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かあさんはもう草臥くたびれちやつたよ。どら、この辺でちよつと休ましておくれ。そうら、噴水が見えるでせう。
職業(教訓劇) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
きみちやんや、かあさんがするからもういゝかげんにしておき、にいさんがはいれたさうだよ、よかつたねえ。』と、あとは自分自身じぶんじしんにいふやうに調子てうしおとして
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ではみんなよ、はやおおきくなつて、きみたちも勇敢ゆうかんなプロレタリアの鬪士とうしとなつて、きみたちやきみたちのおとうさんおかあさんをくるしめてゐるやつらをたゝきのめしてくれ!
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「おかあさん、手塚の家の天井てんじょう格子こうしになって一つ一つに絵をってあります、絹にかいたきれいな絵!」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
甚三 おかあ、木津の藤兵衛の家じゃもう食物くいものが尽きたけに、来年の籾種にまで、手を付けたというぞ。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
より江が庭でほうせんの赤い花をとって遊んでいると、店の土間で自転車を洗っていたおかあさんが
(新字新仮名) / 林芙美子(著)
「おッかあ、酒一ぱいつけろ!」っちから、つけてやると、それを旨そうに飲んで、急にご機嫌になっちまってね、どれ、姉さん、手の筋見てやっぺ……なんて、こう
沼畔小話集 (新字新仮名) / 犬田卯(著)
ねえや、このおじさんは行者じゃねえが、千里も万里も先が見える目玉が二つあるからな。きっとかあの居どころを見つけてやるぞ。泣かいでもいい、泣かいでもいい。
「そうか。じゃあ、きょうはまあこの位でよかろう。おっかあにもあんまり心配するなと云って置け」
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「何でおかあちゃん、姉ちゃんを呼んだげへなんだの。今日のことは先月から分ってたんやないの」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かあさまが何處どこくにしろばうかならずいてはかない、わたしものわたしのだとてほゝひますとなんともはれぬけるやうな笑顏ゑがほをして、莞爾々々にこ/\とします樣子やうす可愛かあいこと
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分で考えたことはなくとも、おとうさんやおかあさんから教えてもらったことはあるでしょう。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)