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欄干
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らんかん
ふりがな文庫
“
欄干
(
らんかん
)” の例文
時には赤い裏のきたない布団が、二階の
欄干
(
らんかん
)
にほしてあった。一緒に行った姉に
訊
(
き
)
いても、汚い家だといって教えてはくれなかった。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
入口の
襖
(
ふすま
)
をあけて
椽
(
えん
)
へ出ると、
欄干
(
らんかん
)
が四角に曲って、方角から云えば海の見ゆべきはずの所に、中庭を
隔
(
へだ
)
てて、表二階の
一間
(
ひとま
)
がある。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
橋の
欄干
(
らんかん
)
に
凭
(
よ
)
り
掛
(
かか
)
って、私はただ涙ながらに時の経つのを待っていた。大時計の上には澄み渡った空に星が二つ三つきらめいていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
欄干
(
らんかん
)
の赤い扱帯こそは、かつて恋仲だった頃のお絹が、万事上首尾という意味を、川を隔てて染五郎に言い送る合図だったのです。
銭形平次捕物控:137 紅い扱帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
二階の一間の
欄干
(
らんかん
)
だけには日が当るけれど、
下座敷
(
したざしき
)
は茶の間も共に、外から
這入
(
はい
)
ると人の顔さえちょっとは見分かぬほどの薄暗さ。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
が、その中でも目についたのは、
欄干
(
らんかん
)
の
外
(
そと
)
の見物の間に、芸者らしい女が
交
(
まじ
)
っている。色の蒼白い、目の
沾
(
うる
)
んだ、どこか妙な憂鬱な、——
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
爀
(
かツ
)
と
眞黄色
(
まつきいろ
)
な
目
(
め
)
を
光
(
ひか
)
らしたが、ギヤツと
啼
(
な
)
いて、ひたりと
欄干
(
らんかん
)
を
下
(
した
)
へ
刎返
(
はねかへ
)
る、と
橋
(
はし
)
を
傳
(
つた
)
つて
礫
(
つぶて
)
の
走
(
はし
)
つた
宿
(
やど
)
の
中
(
なか
)
へ
隱
(
かく
)
れたのである。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
昼間の
雑沓
(
ざっとう
)
に引きかえて橋の上にはほとんど人影がなく、鉄の
欄干
(
らんかん
)
が長々と見えていた。時々自動車が橋を揺すって通り過ぎた。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
米友ではとても人の上から覗き込むことはできないから、人の腰の下から
潜
(
もぐ
)
るようにして見ると、橋の
欄干
(
らんかん
)
へ板札が結び付けてあります。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
吹針
(
ふきばり
)
の蚕婆は、ちょうどその時、三重の塔のいただきへのぼって、
朱
(
しゅ
)
の
欄干
(
らんかん
)
から向こうをみると、今しも、竹童ののった
大鷲
(
おおわし
)
が
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
發言者は進み出て
欄干
(
らんかん
)
にもたれた。彼は、一言々々を明瞭に、
穩
(
おだ
)
やかに、確固たる調子で、しかし大聲ではなく續けて云つた——
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
坊
(
ばう
)
は
谿間
(
たにあひ
)
の崖に臨むで建てかけた
新建
(
しんたち
)
で、崖の中程からによつきりと
起
(
お
)
きあがつて、
欄干
(
らんかん
)
の前でぱつと両手を
拡
(
ひろ
)
げたやうな
楓
(
かへで
)
の古木がある。
茸の香
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
縁側の
欄干
(
らんかん
)
に
手拭
(
てぬぐい
)
を、こうひろげて掛けるね。それから、君のうしろにそっと立って、君の眺めているその同じものを
従順
(
おとな
)
しく眺めている。
雌に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼はその握り飯を食い、木の葉の着物をつけ、橋の
欄干
(
らんかん
)
につかまって立ち上がりました。もうこれから泥坊なんかはよそうと決心しました。
泥坊
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
と言って、天井の板の
柾目
(
まさめ
)
を仰いだり、裏小路に向く
欄干
(
らんかん
)
に手をかけて、直ぐ向い側の小学校の夏季休暇で生徒のいない窓を眺めたりした。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
欄干
(
らんかん
)
もやはり木で拵えてある、そういう具合にして三町幅の川を向うへ渡れるようになって居るですがこの川の名はツァンチュといいます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
水上にさし出したる
桟敷
(
さじき
)
などの上に居るか、または水に臨む
高楼
(
こうろう
)
の
欄干
(
らんかん
)
にもたれて居るか、または三条か四条辺の橋の欄干にもたれて居るか
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
彼は
欄干
(
らんかん
)
の方へ飛びのいて(なぜ歩道でなく、車道になっている橋のまんなかを歩いていたのか、それはまるでわからない)
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
彼は久し振りに新温泉のなかに入ってみる楽しさを想像しながら、橋の
欄干
(
らんかん
)
から身を起して、またブラブラ歩いていった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
欄干
(
らんかん
)
からこちらの庭を見下した露子さんの視線と、座敷の障子を一パイに開いたまま勉強していた三太郎君の視線とが
卵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
といいながら、
欄干
(
らんかん
)
に
片足
(
かたあし
)
をかけて一の
矢
(
や
)
をつがえて、一ぱいに
引
(
ひ
)
きしぼって、
切
(
き
)
って
放
(
はな
)
しました。
矢
(
や
)
はまさしくむかでのみけんに
当
(
あ
)
たりました。
田原藤太
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
彼
(
かれ
)
は、
独
(
ひと
)
り、
橋
(
はし
)
の
欄干
(
らんかん
)
にもたれて、
水
(
みず
)
の
流
(
なが
)
れを
見
(
み
)
ながら
考
(
かんが
)
えていました。もう
秋
(
あき
)
で、あちらの
木立
(
こだち
)
は、
色
(
いろ
)
づいて、
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
に、
葉
(
は
)
が
散
(
ち
)
っていました。
銀のつえ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
絣
(
かすり
)
の
単衣
(
ひとえ
)
一枚に、二日分の握飯を腰へ
結
(
ゆわ
)
えつけた田舎青年は、このデッキの
欄干
(
らんかん
)
にツカまって…………
唄
(
うた
)
ったものだが。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
……その風
薫
(
かを
)
る橋の
上
(
うへ
)
、ゆきつ、もどりつ、
人波
(
ひとなみ
)
のなかに交つて見てゐると、
撫子
(
なでしこ
)
の花、
薔薇
(
ばら
)
の
花
(
はな
)
、
欄干
(
らんかん
)
に溢れ、
人道
(
じんだう
)
のそとまで、瀧と溢れ出る。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
その銀貨一つを子供に喜ばせかたがた預けておいたら、子供のことだから、それを橋の
欄干
(
らんかん
)
に置き棄てて遊んでる間に他の子供に取られてしまった。
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
馬鹿広い幅の、青銅いろの
欄干
(
らんかん
)
をもったその橋のうえをそういってもとき/″\しか人は通らない。白い服を着た巡査がただ退屈そうに立っている。
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
夕方二階の
欄干
(
らんかん
)
から海を見下ろして居ると、海岸に連つた家々の屋根の上を汽船の檣だけが通つて居る所であつた。
海郷風物記
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
この舞台を正面に見る池の中央には
欄干
(
らんかん
)
のついた華やかな壇があって、大きい弥陀を中央に三十七尊が控えている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
そっと片手で
庇
(
かば
)
うように押えて、残った片手で、橋の
欄干
(
らんかん
)
をコツコツと
叩
(
たた
)
き
乍
(
なが
)
ら、行くでもなく止まるでもなく、ふわふわと、
凧
(
たこ
)
のようにゆれていった。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
私たちは川風に吹かれながら橋の
欄干
(
らんかん
)
にもたれて、
鐘
(
かね
)
ヶ
淵
(
ふち
)
の方からきた蒸気船が小松島の発着所に着いてまた
言問
(
こととい
)
の方へ向かって動き出すまで見ていた。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
二人は陸橋のところまで来て、白い石の
欄干
(
らんかん
)
に
凭
(
もた
)
れて暫くそこへ立つてゐた。橋の下を
轟々
(
ぐわうぐわう
)
と電車が走つて行く。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
温泉宿
(
をんせんやど
)
の
欄干
(
らんかん
)
に
倚
(
よ
)
つて
外
(
そと
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
る
人
(
ひと
)
は
皆
(
み
)
な
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
しさうな
顏付
(
かほつき
)
をして
居
(
ゐ
)
る、
軒先
(
のきさき
)
で
小供
(
こども
)
を
負
(
しよつ
)
て
居
(
ゐ
)
る
娘
(
むすめ
)
は
病人
(
びやうにん
)
のやうで
背
(
せ
)
の
小供
(
こども
)
はめそ/\と
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
その
欄干
(
らんかん
)
の両側には黒い影が並んで、涼しい風を楽んでいるものや、人の顔を
覗
(
のぞ
)
くものや、
胴魔声
(
どうまごえ
)
に歌うものや、手を引かれて断り言う女連なぞが有った。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ホテルの庭の南に向いた岡の端は、石を
欄干
(
らんかん
)
にした見晴し台になっていて、そこにはささやかなる泉があった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ある日、そんな風にやっとの努力で渡って行った轍の音をききながら、ほっとして
欄干
(
らんかん
)
をはなれようとすると、
一人
(
ひとり
)
の男が寄ってきた。
貧乏
(
びんぼう
)
たらしく薄汚い。
馬地獄
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
かれは二階の
欄干
(
らんかん
)
にひたと
身体
(
からだ
)
を添えて顔をかくしている手塚の姿を見た、はっと思ったがすぐ思い返した、いまここで彰義隊に知らしたら大さわぎになる。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
父と子とはその鉄橋の中ほどで立ちどまると、
下手
(
しもて
)
向きの白い
欄干
(
らんかん
)
に寄り添って行った。
隆太郎
(
りゅうたろう
)
は一所懸命に爪立ち爪立ちした。
頤
(
あご
)
が欄干の上に届かないのだ。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
青年は、そう言いながら
欄干
(
らんかん
)
を離れた。青年の態度は、平生の通りだった。優しいけれども、冷静だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
白い大理石の
欄干
(
らんかん
)
の四隅には大きな
花鉢
(
ヴェース
)
が乗っかって、それに
菓物
(
くだもの
)
やら花がいっぱい盛り上げてあった。
夢
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と、その時案内の車夫は、橋の
欄干
(
らんかん
)
から川上の方を
指
(
ゆび
)
さして、旅客の
筇
(
つえ
)
をとどめさせる。かつて私の母も橋の中央に
俥
(
くるま
)
を止めて、
頑是
(
がんぜ
)
ない私を
膝
(
ひざ
)
の上に
抱
(
だ
)
きながら
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その白い
岩
(
いわ
)
になったところの入口に、〔プリオシン
海岸
(
かいがん
)
〕という、
瀬戸物
(
せともの
)
のつるつるした
標札
(
ひょうさつ
)
が立って、向こうの
渚
(
なぎさ
)
には、ところどころ、
細
(
ほそ
)
い
鉄
(
てつ
)
の
欄干
(
らんかん
)
も
植
(
う
)
えられ
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
杉を磨いた丸柱の前に
団
(
かた
)
まって、移庁論の影弁慶が、南部だとか北部だとか、鮭の鑑定でもないことを云って居るのがあれば、その後を
環
(
めぐ
)
る
椽
(
えん
)
の
欄干
(
らんかん
)
に
凭
(
もた
)
れかゝって
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
川には
欄干
(
らんかん
)
のついた大きな板橋がかかっており、そのむこうにはこんもりと繁った杉林があった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
お島は死場所でも捜しあるいている宿なし女のように、橋の
袂
(
たもと
)
をぶらぶらしていたが、時々
欄干
(
らんかん
)
にもたれて、争闘に
憊
(
つか
)
れた体に
気息
(
いき
)
をいれながら、ぼんやり
彳
(
たたず
)
んでいた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
プールの
外囲
(
そとがこひ
)
の
欄干
(
らんかん
)
をくぐり出て、
藤棚
(
ふぢだな
)
の下で着物を着かゝると、突然、ワツといふ叫び声と、パチパチと手を
叩
(
たた
)
く音とが、プールの内と外とから、一度にあがりました。
プールと犬
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
佐原屋の二階の、おもて
欄干
(
らんかん
)
に腰かけていた武林唯七が、感心したような大きな声を上げた。
口笛を吹く武士
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
秀夫は
凭
(
もた
)
れるともなしに新京橋の小さなとろとろする鉄の
欄干
(
らんかん
)
に凭れて、
周囲
(
まわり
)
の電燈の
燈
(
ひ
)
の
映
(
うつ
)
った水の上に眼をやった。
重
(
おも
)
どろんだ水は電燈の燈を大事に抱えて動かなかった。
牡蠣船
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
張が起きて
厠
(
かわや
)
へゆくと、夜は三更を過ぎて、世間に人の声は絶えていたが、月は大きく明るいので、張は
欄干
(
らんかん
)
によって暫くその月光を仰いでいると、たちまち水中に声あって
中国怪奇小説集:16 子不語(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
五六十歩往って小さな
石橋
(
いしばし
)
を渡り、東に折れて百歩余往ってまた大きな方の田川に架した
欄干
(
らんかん
)
無しの石橋を渡り、やがて二つに
分岐
(
ぶんき
)
して、直な方は人家の木立の間を村に
隠
(
かく
)
れ
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
すると三枝が立って私の傍に来て、
欄干
(
らんかん
)
に
倚
(
よ
)
って墨田川を
見卸
(
みおろ
)
しつつ、私に話し掛けた。
余興
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
“欄干”の意味
《名詞》
欄干(らんかん)
転落を防ぐために橋やベランダの外側に設置された手すり高の柵。
(出典:Wiktionary)
欄
常用漢字
中学
部首:⽊
20画
干
常用漢字
小6
部首:⼲
3画
“欄干”で始まる語句
欄干越
欄干橋
欄干下
欄干外
欄干摺
欄干近