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朽木
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くちき
ふりがな文庫
“
朽木
(
くちき
)” の例文
肘
(
ひぢ
)
へ一つ、頬へ一つ、ひるむところを、飛込んだ平次は、猛烈に體當りを一つくれると、淺井朝丸の身體は
朽木
(
くちき
)
の如く庭へ落ちます。
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
三
方
(
ぱう
)
は、
大巌
(
おほいは
)
夥
(
おびたゞ
)
しく
累
(
かさな
)
つて、
陰惨冥々
(
いんさんめい/\
)
たる
樹立
(
こだち
)
の
茂
(
しげみ
)
は、
根
(
ね
)
を
露呈
(
あらは
)
に、
石
(
いし
)
の
天井
(
てんじやう
)
を
蜿
(
うね
)
り
装
(
よそほ
)
ふ——こゝの
椅子
(
いす
)
は、
横倒
(
よこたふ
)
れの
朽木
(
くちき
)
であつた。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
わたくしは
朽木
(
くちき
)
三助と云ふ人の
書牘
(
しよどく
)
を得た。朽木氏は備後国
深安郡
(
ふかやすごほり
)
加茂村
粟根
(
あはね
)
の人で、書は今年丁巳一月十三日の裁する所であつた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
不破小四郎を取り囲んで、
朽木
(
くちき
)
三四郎、加島
欽哉
(
きんや
)
、山崎
内膳
(
ないぜん
)
、桃ノ井
紋哉
(
もんや
)
、四人の若
武士
(
ざむらい
)
が話しながら、こっちへ歩いて来るのであった。
血ぬられた懐刀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それは去年の春、彼の所へ弟子入りをしたいと云つて手紙をよこした、
相州
(
さうしう
)
朽木
(
くちき
)
上新田
(
かみしんでん
)
とかの
長島政兵衛
(
ながしままさべゑ
)
と云ふ男である。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
朽木
(
くちき
)
の根から、
滴々
(
てきてき
)
と落ちている清水に
喉
(
のど
)
をうるおそうとして、ふと、
苔
(
こけ
)
や木の葉に埋もれている道しるべの石をみると
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あゝ斯かる身は枯れても折れても
野末
(
のづゑ
)
の
朽木
(
くちき
)
、
素
(
もと
)
より物の數ならず。只〻
金枝玉葉
(
きんしぎよくえふ
)
の御身として、定めなき世の
波風
(
なみかぜ
)
に
漂
(
たゞよ
)
ひ給ふこと、御痛はしう存じ候
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
実に北海道の夏は、日中は最も炎熱甚しく、依て此厚着にて労働するが為めには実に
労
(
つか
)
るる事多し。且つ畑の
傍
(
かたわら
)
にて
朽木
(
くちき
)
を集めて焼て小虫を散ずるとせり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
その材料は土地ごとに甚だ
区々
(
まちまち
)
で、
蒲
(
がま
)
や
芒
(
すすき
)
の穂の枯れたものも使えば、或いは
朽木
(
くちき
)
の腐りかけた部分を取ってきて、少し火に
焦
(
こ
)
がして貯えて置く者もあったが
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
古ぼけた
朽木
(
くちき
)
のような潜戸の間から出たおせいの顔は、額縁にはめられた肖像画のように美しかった。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
躯じゅうの力がなくなっていたから、
朽木
(
くちき
)
の折れるような倒れかたで、床板を叩く額の音が大きく聞え、彼はそのままのびて、いまにも死にそうに、絶え絶えに
喘
(
あえ
)
いだ。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
三日間というものを、私は働かされましたよ。考えてもみて下さい、女に限りいいつけられる雑用を美女の傍近くで三日間相勤めたんですからね。身は
朽木
(
くちき
)
にあらずです。
奇賊は支払う:烏啼天駆シリーズ・1
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人心が
萎
(
な
)
え、屋台骨が傾いておりますから、気勢に於て、すでに西南に圧倒されて、あとは
朽木
(
くちき
)
を押すばかりとなっているとは申しますが、関東だからと申しましたとて
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あんまり
痩
(
や
)
せてすくんでるので、よく見ますと、胸のところが、大きくはれ上つてゐます。調べてみると、そこに、
朽木
(
くちき
)
の
刺
(
とげ
)
がさゝつて、まはりがぶよぶよにうんでゐます。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「そして、そんな
朽木
(
くちき
)
が
蕾
(
つぼみ
)
の
忍冬
(
すゐかつら
)
にその朽目を若々しさで蔽へと命ずる何の權利があらう?」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しかし
蒲鉾
(
かまぼこ
)
の種が
山芋
(
やまいも
)
であるごとく、
観音
(
かんのん
)
の像が一寸八分の
朽木
(
くちき
)
であるごとく、
鴨南蛮
(
かもなんばん
)
の材料が烏であるごとく、下宿屋の
牛鍋
(
ぎゅうなべ
)
が馬肉であるごとくインスピレーションも実は逆上である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが、ゆるい
勾配
(
こうばい
)
をもって、また一つ先の小山のほうへ、渡り板をさしかけたように、坂になっているのだった。ところどころに、
朽木
(
くちき
)
が横倒しに置かれて、足がかりの段になっていた。
あの顔
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
息子は、今度は
朽木
(
くちき
)
のようなものを
抱
(
かか
)
え上げて、電灯の下で振り廻しながら
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
比良
(
ひら
)
の山裏に
朽木
(
くちき
)
があります。昔から盆や片口や椀などに特色のある漆器を出しました。今は細々と仕事を続けているに過ぎませんが、昔の力を取戻したら再び名物となるでありましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
知死期
(
ちしご
)
のうめきが洩れて、やがて、上半身がうしろにのけぞったと思うと、腰がくだけて、ドタリと横ざまに
朽木
(
くちき
)
のように仆れたが、それと間髪をいれず、今一人の、生きのこりが、われにもなく
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ふとこそ、
荒
(
あ
)
れし
夕庭
(
ゆふには
)
の
朽木
(
くちき
)
の
枝
(
えだ
)
に
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
ほのかなる
朽木
(
くちき
)
の
香
(
かを
)
り
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
朽木
(
くちき
)
を出でて日に
障
(
さや
)
る
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
名もしらぬ
朽木
(
くちき
)
に
信姫
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
肘
(
ひじ
)
へ一つ、頬へ一つ、ひるむところを、飛込んだ平次は、猛烈に体当りを一つくれると、浅井朝丸の身体は
朽木
(
くちき
)
のごとく庭へ落ちます。
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
丁度
(
ちやうど
)
私
(
わたし
)
の
居
(
ゐ
)
た
汀
(
みぎは
)
に、
朽木
(
くちき
)
のやうに
成
(
な
)
つて、
沼
(
ぬま
)
に
沈
(
しづ
)
んで、
裂目
(
さけめ
)
に
燕子花
(
かきつばた
)
の
影
(
かげ
)
が
映
(
さ
)
し、
破
(
やぶ
)
れた
底
(
そこ
)
を
中空
(
なかぞら
)
の
雲
(
くも
)
の
往來
(
ゆきき
)
する
小舟
(
こぶね
)
の
形
(
かたち
)
が
見
(
み
)
えました。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
道ばたの
朽木
(
くちき
)
柳に腰をかけ、一行が近づいて来ると、俄に、脱いでいた
市女笠
(
いちめがさ
)
をかぶッて、その
顔容
(
かんばせ
)
を隠していた。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして隔意なく彼と一しょに、
朽木
(
くちき
)
の幹へ腰を下して、思いのほか
打融
(
うちと
)
けた世間話などをし始めた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
手を放すと、肥満した女の
骸
(
むくろ
)
が、
朽木
(
くちき
)
のように、自分の足もとに倒れたことを知りました。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
依て土人に手をひかれて歩するに、深さ膝を過ぎ、泥水中に
朽木
(
くちき
)
を踏みて既に危く倒れんと欲するあり。或は
大
(
おおい
)
なる流材ありて、此れを
跨
(
またが
)
りて越えるあり。或は畑の溝にて深き所ありて股を浸すあり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
「それではいっそ野宿と決めて、
朽木
(
くちき
)
の
洞
(
ほら
)
でも探がしましょうか」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
朽木
(
くちき
)
の棚にすゑられて
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
驚破
(
すわ
)
といふ時、
綿
(
わた
)
の
条
(
すじ
)
を
射切
(
いき
)
つたら、胸に
不及
(
およばず
)
、
咽喉
(
のんど
)
に
不及
(
およばず
)
、
玉
(
たま
)
の
緒
(
お
)
は
絶
(
た
)
えて媼は
唯
(
ただ
)
一個
(
いっこ
)
、
朽木
(
くちき
)
の像にならうも知れぬ。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
朽木
(
くちき
)
のような細い体は、とたんに、黒髪を重そうにして、仰向けに、倒れた。——
蝋
(
ろう
)
より白い死の顔は——その唇は、
鬼灯
(
ほおずき
)
をつぶしたような血の
塊
(
かたまり
)
を含んでいた。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次の論告の前に、主人孫右衞門は、床の上へ、ヘタヘタと
崩折
(
くづを
)
れました。これが起き出して、窓から曲者を引入れたとは思へないほどの、
朽木
(
くちき
)
のやうな哀れな姿です。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
山の
朽木
(
くちき
)
に
焦色
(
こげいろ
)
の
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
折
(
をり
)
から
来合
(
きあ
)
はせた
権七
(
ごんしち
)
に
見
(
み
)
せると、
色
(
いろ
)
を
変
(
か
)
へ、
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らせ、
目
(
め
)
を
光
(
ひか
)
らせて
視
(
なが
)
めたが、
其
(
そ
)
の
面
(
つら
)
は
烏
(
からす
)
にも
成
(
な
)
らず、……
脚
(
あし
)
は
朽木
(
くちき
)
にも
成
(
な
)
らず、
袖
(
そで
)
は
羽
(
はね
)
にも
成
(
な
)
らぬ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
山番の者がそれを
繕
(
つくろ
)
いにこないうちに、かれはその
朽木
(
くちき
)
を引き入れて、草むらの中に隠しておいた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この燃え立つ
朽木
(
くちき
)
のやうな、
執念
(
しふねん
)
だけで生きてゐる老人を相手に、ヒタヒタと詰め寄るのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
灯
(
とも
)
りきれた灯皿の燈芯のように、精神力が
枯渇
(
こかつ
)
を告げると、肉体はそのままでも——刃や他の何の力を加えないでもバタと
朽木
(
くちき
)
のように
斃
(
たお
)
れて終ってしまいそうであった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
縁前
(
ゑんまへ
)
のついその
森
(
もり
)
に、
朽木
(
くちき
)
を
啄
(
ついば
)
む
啄木鳥
(
けらつゝき
)
の、
青
(
あを
)
げら、
赤
(
あか
)
げらを二
羽
(
は
)
視
(
み
)
ながら、
寒
(
さむ
)
いから
浴衣
(
ゆかた
)
の
襲着
(
かさねぎ
)
で、
朝酒
(
あさざけ
)
を。——
当時
(
たうじ
)
、
炎威
(
えんゐ
)
猛勢
(
もうせい
)
にして、九十三
度半
(
どはん
)
といふ、
真中
(
まなか
)
で
談
(
だん
)
じたが
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と、いったとき、半兵衛の胸は、
朽木
(
くちき
)
の折れるように、前へ曲った。それを支えるべく、細い手を、畳へ落したが、手にも、すでにその力さえなく、がばと、
莚
(
むしろ
)
の上へ顔を
俯
(
う
)
つ伏せてしまった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
友
(
とも
)
は
心
(
こゝろ
)
強
(
がう
)
にして、
小夜
(
さよ
)
の
螢
(
ほたる
)
の
光
(
ひかり
)
明
(
あか
)
るく、
梅
(
うめ
)
の
切株
(
きりかぶ
)
に
滑
(
なめら
)
かなる
青苔
(
せいたい
)
の
露
(
つゆ
)
を
照
(
てら
)
して、
衝
(
つ
)
と
消
(
き
)
えて、
背戸
(
せど
)
の
藪
(
やぶ
)
にさら/\とものの
歩行
(
ある
)
く
氣勢
(
けはひ
)
するをも
恐
(
おそ
)
れねど、
我
(
われ
)
は
彼
(
か
)
の
雨
(
あめ
)
の
夜
(
よ
)
を
惱
(
なや
)
みし
時
(
とき
)
、
朽木
(
くちき
)
の
燃
(
も
)
ゆる
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
朽
常用漢字
中学
部首:⽊
6画
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
“朽木”で始まる語句
朽木倒
朽木橋
朽木仆
朽木船
朽木谷
朽木宣綱