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ざんじ
ふりがな文庫
“
暫時
(
ざんじ
)” の例文
暫時
(
ざんじ
)
でも外国のことを目から離すと、とかくわが国の今日のありさまをもってすでに文明の極に達しているかのごとくに感じやすい。
民族の発展と理科
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
つまり
河流
(
かりゆう
)
と
上汐
(
あげしほ
)
とが
河口
(
かこう
)
で
暫時
(
ざんじ
)
戰
(
たゝか
)
つて、
遂
(
つひ
)
に
上汐
(
あげしほ
)
が
勝
(
かち
)
を
占
(
し
)
め、
海水
(
かいすい
)
の
壁
(
かべ
)
を
築
(
きづ
)
きながらそれが
上流
(
じようりゆう
)
に
向
(
むか
)
つて
勢
(
いきほひ
)
よく
進行
(
しんこう
)
するのである。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
「運座では、お戻りの遅いはず。ご主人のお帰りなさる間、こうしておるも所在ない。お仏壇へ
暫時
(
ざんじ
)
、
誦経
(
ずきょう
)
をおゆるし下さるまいか」
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雪吹に
逢
(
あひ
)
たる時は雪を
掘
(
ほり
)
身を其内に
埋
(
うづむ
)
れば雪
暫時
(
ざんじ
)
につもり、雪中はかへつて
温
(
あたゝか
)
なる
気味
(
きみ
)
ありて
且
(
かつ
)
気息
(
いき
)
を
漏
(
もら
)
し死をまぬがるゝ事あり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
「それですから今日はあの人が出て行ったので、わたしも
暫時
(
ざんじ
)
楽らくとしていられるというわけです」と、幽霊は語りつづけた。
世界怪談名作集:17 幽霊の移転
(新字新仮名)
/
フランシス・リチャード・ストックトン
(著)
▼ もっと見る
と言って畳の上に落ちつくとその儘横になりたがる団さんを促して、僕達は
暫時
(
ざんじ
)
休憩の後、例の通り俥を連ねて見物に出掛けた。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
わけを話して
詫
(
わ
)
びを入れ
暫時
(
ざんじ
)
待ってもらおうと、来にくいところを、今夜思いきって化物やしきの裏をたたいたのだったが——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
福山すなわち
松前
(
まつまえ
)
と
往時
(
むかし
)
は
云
(
い
)
いし城下に
暫時
(
ざんじ
)
碇泊
(
ていはく
)
しけるに、北海道には
珍
(
めず
)
らしくもさすがは旧城下だけありて
白壁
(
しらかべ
)
づくりの家など
眸
(
め
)
に入る。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
たとえば、惨劇の始まろうとする始めだけ見せ、ドアーの外へカメラと観客を追い出した後に、締まった扉だけを
暫時
(
ざんじ
)
見せる。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
実はまた一石願おうかと思って、参ったがな、御音読中でござったで、
暫時
(
ざんじ
)
あれへ控えておりました。何を御覧なさるか、結構なことじゃ。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此処
(
こゝ
)
に
婆
(
ばゞあ
)
が居っては……他聞を
憚
(
はゞか
)
ることじゃ……婆が聞いても
委
(
くわ
)
しいことは分るまいが……、婆嘉八とも
暫時
(
ざんじ
)
彼方
(
あっち
)
へ
退
(
の
)
いてくれ
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「いえ、こないだうちから国へ帰省していたもんですから、
暫時
(
ざんじ
)
中止の姿です。珠ももうあきましたから、実はよそうかと思ってるんです」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
悦ばせ
針
(
はり
)
ある魚は
汀
(
なぎさ
)
に寄る
骨肉
(
こつにく
)
なりとて油斷は成じ何とぞ一旦兩人の身を我が
野尻
(
のじり
)
へ退きて
暫時
(
ざんじ
)
身の
安泰
(
あんたい
)
を心掛られよと諫めければ傳吉は是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
善
(
よ
)
くも書かれたり、ゆるゆる
熟読
(
じゅくどく
)
したきにつき
暫時
(
ざんじ
)
拝借
(
はいしゃく
)
を
請
(
こ
)
うとありければ、その
稿本
(
こうほん
)
を翁の
許
(
もと
)
に
留
(
とど
)
めて帰られしという。
瘠我慢の説:01 序
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
院が
暫時
(
ざんじ
)
対のほうへ行っておいでになる時で、だれも宮のお居間にいない様子を見て、小侍従はそれを宮にお見せした。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
見れば、畳の上にハラハラと涙をこぼし、眼をこすりもしないで芝居がかった容子であるから、丸亀夫婦も舞台に立ったような思いいれを
暫時
(
ざんじ
)
した。
放浪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
暫時
(
ざんじ
)
は挨拶さえ出来ませんでしたが、その内にさっきミスラ君の言った、「私の魔術などというものは、あなたでも使おうと思えば使えるのです。」
魔術
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
而
(
さう
)
して
程
(
ほど
)
なく
或人
(
あるひと
)
の
世話
(
せわ
)
で
郡立學校
(
ぐんりつがくかう
)
の
教師
(
けうし
)
となつたが、
其
(
そ
)
れも
暫時
(
ざんじ
)
、
同僚
(
どうれう
)
とは
折合
(
をりあ
)
はず、
生徒
(
せいと
)
とは
親眤
(
なじ
)
まず、
此
(
こゝ
)
をも
亦
(
また
)
辭
(
じ
)
して
了
(
しま
)
ふ。
其中
(
そのうち
)
に
母親
(
はゝおや
)
は
死
(
し
)
ぬ。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それから
暫時
(
ざんじ
)
人払いをした上、その席上で内蔵助から最後の打合せがあった。そして、後刻を約して散会になった。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「切腹を仰せ付けられたからは、一応
尤
(
もっと
)
もな申分のように存ずる。
詮議
(
せんぎ
)
の上で沙汰いたすから、
暫時
(
ざんじ
)
控えておれ」
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして沈黙
暫時
(
ざんじ
)
の後ヨブは第十章の語を発して神に訴うる処あったのである。前述せし如く、九章前半の彼の語は友の神観の不備を指摘したものである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
睡眠中といへども
暫時
(
ざんじ
)
も苦痛を離れる事の出来ぬこの頃の容態にどうしてこんな夢を見たか知らん。(八月十日)
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「あいや、お暇は取らせぬ、
暫時
(
ざんじ
)
お待ち下されたい。して御貴殿方はどなたでござるか、お名乗りを承りたい」
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「呉羽之介どの、実は密々にて少しく申上げたい儀がござる。
暫時
(
ざんじ
)
これなる酌人を遠ざけ願われますまいか」
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
今は延々すべきときに
非
(
あら
)
ずと心得られ候まま、汗顔平伏、お耳につらきこと開陳、
暫時
(
ざんじ
)
、おゆるし
被下度
(
くだされたく
)
候。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あまりの意外に紋太夫は、驚きの眼を見張ったまま
暫時
(
ざんじ
)
茫然と
佇
(
たたず
)
んでいたが、忽ち煙硝を分け、二人の少年が現われたのを見ると、さらに驚きを二倍にした。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
まずそれまでは、偶然に燃え出す一時の火、火災の余炎があるばかりで、それはただ輝いた
暫時
(
ざんじ
)
の光を発しては、そのまま燃料がなくて消えてゆくのだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
暫時
(
ざんじ
)
室内
(
しつない
)
はシンとなると、
此時
(
このとき
)
何處
(
いづく
)
とも
知
(
し
)
れず「
君
(
きみ
)
が
代
(
よ
)
」の
唱歌
(
せうか
)
が
靜
(
しづ
)
かなる
海濱
(
かいひん
)
の
風
(
かぜ
)
につれて
微
(
かす
)
かに
聽
(
きこ
)
える。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
散々御
辞儀
(
じぎ
)
をして、
斯
(
こ
)
う/\
云
(
い
)
う
訳
(
わ
)
けですから
暫時
(
ざんじ
)
百五十両
丈
(
だ
)
けの
御振替
(
おふりかえ
)
を願いますと
極
(
ごく
)
手軽に話をすると、家老は
逸見志摩
(
へんみしま
)
と云う誠に正しい気の
宜
(
い
)
い人で
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
畑
(
はたけ
)
の
仕事
(
しごと
)
が
暫時
(
ざんじ
)
極
(
きま
)
りがついて
百姓
(
ひやくしやう
)
の
家
(
いへ
)
には
盆
(
ぼん
)
が
來
(
き
)
た。
其
(
そ
)
の
日
(
ひ
)
も
晝過迄
(
ひるすぎまで
)
仕事
(
しごと
)
をして
居
(
ゐ
)
た
勘次
(
かんじ
)
はそれでも
慌
(
あわたゞ
)
しく
庭
(
には
)
へ
箒
(
はうき
)
を
入
(
い
)
れて
目
(
め
)
に
立
(
た
)
つ
草
(
くさ
)
は
鎌
(
かま
)
の
刄先
(
はさき
)
で
掻
(
か
)
つ
切
(
き
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「近頃立身致し候。紙幣は障子を張る程
有之
(
これあり
)
諸君も尊敬
仕
(
つかまつり
)
候。研究も今一足故
暫時
(
ざんじ
)
不便を御辛抱願候。」
革トランク
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
僕はこれを見てなるほど彼は勇気精力に富むと感心した。彼が独りで
暫時
(
ざんじ
)
議論したのち、僕にむかい
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ところがその五千万年
乃至
(
ないし
)
一億年以前の魚が、突如として
南阿
(
なんア
)
の一角に出現し、
暫時
(
ざんじ
)
ではあったが、現にこの太陽の光の下で、その生命を見せてくれたのであるから
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
赤目の女は
暫時
(
ざんじ
)
扉の隙から見守っていたが、容易に翁が身動きもせずに
熟
(
じっ
)
としているので、その
儘
(
まま
)
音を盗んで扉を閉めて、自分等の室に歩みを返して
眠
(
ね
)
てしまったという。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
定めし
験
(
げん
)
があるであろうな、
試
(
ため
)
しに此の粥を観じて見せよ、と云うと、男は
折敷
(
おしき
)
を取って粥の上に
蓋
(
ふた
)
をして、
暫時
(
ざんじ
)
眼を閉じて観念を凝らしていたが、やがて蓋を開けると
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
妻が帰って来ては事面倒ですから、
暫時
(
ざんじ
)
にして私は家に入りました。再び暖い着物をきせて、自分はゴロリと横になりながら、何くわぬ顔をして妻の帰りを待っていたのです。
途上の犯人
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
その決心は此間から出来てゐて、これから
暫時
(
ざんじ
)
の後に実行する筈になつてゐるのである。
不可説
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
私、四、五年
前
(
ぜん
)
世界一周いたしましたる時、支那日本という国に
暫時
(
ざんじ
)
滞在いたしました。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
雪崩
(
なだれ
)
⁈ と思ったとき氷塊を飛ばし、どっと、雲のような雪煙があがったのである。とたんに視野はいちめんの白幕に包まれた。折竹は、
暫時
(
ざんじ
)
その場で気をうしなっていたのだ。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
僕らもそこで
暫時
(
ざんじ
)
休んだ。遍路は昨日のと違って未だ若い青年である。先ほど見た一人の
旅人
(
たびびと
)
はこの遍路であったのだから、遍路はかれこれ三十分も
此処
(
ここ
)
に休んでいるのであった。
遍路
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
しかし彼は、なおも
暫時
(
ざんじ
)
、沈思しているようであったが、ついに決心の色をうかべ
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
一度
(
ひとたび
)
その家の
学婢
(
がくひ
)
たりしかど、同女史より漢学の益を受くる
能
(
あた
)
わざるを知ると共に、女史が
中島信行
(
なかじまのぶゆき
)
氏と結婚の約成りし際なりしかば、
暫時
(
ざんじ
)
にしてその家を辞し坂崎氏の門に入りて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
暫時
(
ざんじ
)
沈思黙考していた氏が、ああ! お待ちなさい、いいことがある! と傍らの
珈琲
(
コーヒー
)
店の食卓ですらすらと
認
(
したた
)
めてくれた一通の紹介状、これを持っていらっしゃいという、見ると
踊る地平線:04 虹を渡る日
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
霞
(
かすみ
)
のごとくに思われたので、どうかすると悲しくなッて来て、時々泣き出したこともあッたが,なに、それだとて
暫時
(
ざんじ
)
の間で、すぐまた飛んだり
躍
(
は
)
ねたりして、夜も相変らずよく
眠
(
ねぶ
)
ッた。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
頭を戸棚にぶつけたり机につまずいたり、そのために彼は
暫時
(
ざんじ
)
の間一切の動きと思念を中絶させて精神統一をはかろうとするが、身体自体が本能的に慌てだして滑り動いて行くのである。
白痴
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
一人二人を除いては、初対面の人許りなので、私は
暫時
(
ざんじ
)
の間名刺の交換に急がしかつたが、それも一しきり済んで、莨に火をつけると、直ぐ、真黒な腮鬚の男は未だ来て居ないと気がついた。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
世の言葉にすら五日目の風、十日目の雨、めぐり来ればその月日には変化の
捌
(
さば
)
きが振り向いて来るのが順当、巡って来なかったらおてんとさまが
暫時
(
ざんじ
)
怠業
(
たいぎょう
)
してるのだと思えと言っております。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうして、彼の片眼は、
暫時
(
ざんじ
)
の焦燥に揺られながらも次第に獣的な決意を
閃
(
ひらめ
)
かせて卑弥呼の顔を
覗
(
のぞ
)
き始めると、彼女は飛び立つ鳥のように身を跳ねて、足元に落ちていた反絵の剣を拾って身構えた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
これより左折
暫時
(
ざんじ
)
小柴と悪戦して、山側を東北に回り十丁ばかりで、斑岩の大岩小岩が
筮木
(
ぜいぼく
)
を乱したように崩れかかっている急渓谷、これが又四郎谷「信濃、又四郎谷、嘉門次」、やや下方に、ざあ
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
いとしき
妻
(
つま
)
夫
(
おっと
)
、愛児の臨終にさえ、いろ/\な事情や境遇のために、居合わさぬ事もあれば、間に合わぬ事もあるのに、ホンの三十分か四十分の
知己
(
しりあい
)
、ホンの
暫時
(
ざんじ
)
の友人、云わば路傍の人に過ぎない
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
暫
常用漢字
中学
部首:⽇
15画
時
常用漢字
小2
部首:⽇
10画
“暫時”で始まる語句
暫時前
暫時間