「それですから今日はあの人が出て行ったので、わたしも暫時楽らくとしていられるというわけです」と、幽霊は語りつづけた。
世界怪談名作集:17 幽霊の移転 (新字新仮名) / フランシス・リチャード・ストックトン(著)
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
院が暫時対のほうへ行っておいでになる時で、だれも宮のお居間にいない様子を見て、小侍従はそれを宮にお見せした。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
「あいや、お暇は取らせぬ、暫時お待ち下されたい。して御貴殿方はどなたでござるか、お名乗りを承りたい」
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談) (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まずそれまでは、偶然に燃え出す一時の火、火災の余炎があるばかりで、それはただ輝いた暫時の光を発しては、そのまま燃料がなくて消えてゆくのだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
イグアノドンの唄:――大人のための童話―― (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
妻が帰って来ては事面倒ですから、暫時にして私は家に入りました。再び暖い着物をきせて、自分はゴロリと横になりながら、何くわぬ顔をして妻の帰りを待っていたのです。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
頭を戸棚にぶつけたり机につまずいたり、そのために彼は暫時の間一切の動きと思念を中絶させて精神統一をはかろうとするが、身体自体が本能的に慌てだして滑り動いて行くのである。
一人二人を除いては、初対面の人許りなので、私は暫時の間名刺の交換に急がしかつたが、それも一しきり済んで、莨に火をつけると、直ぐ、真黒な腮鬚の男は未だ来て居ないと気がついた。