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拭
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ぬぐ
ふりがな文庫
“
拭
(
ぬぐ
)” の例文
しかるときは赤ペンキは
忽
(
たちま
)
ち自動車をベタベタに染め、運転手が驚きて
拭
(
ぬぐ
)
わんとすれども中々おちぬところに新種ペンキの特長あり。
発明小僧
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
病女
(
びょうじょ
)
の
怨
(
うら
)
めしげな、弱った吐息を吹きかけて、力なく
拭
(
ぬぐ
)
った鏡のように、底気味の悪い、淋しいうちに、厭らしい光りを落していた。
夜の喜び
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
大体の構想に痕跡の
拭
(
ぬぐ
)
うことのできないものはあるが、その他は
間然
(
かんぜん
)
する
処
(
ところ
)
のない独立した創作であり、また有数な傑作でもあって
怪譚小説の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その諦めもほんの
上
(
うわ
)
っ
面
(
つら
)
のもので、衷心に存する不平や疑惑を
拭
(
ぬぐ
)
い去る力のあるものではない。しかたがないからという諦めである。
序に代えて人生観上の自然主義を論ず
(新字新仮名)
/
島村抱月
(著)
お濱の
眼
(
め
)
——
訴
(
うつた
)
へるやうに平次を仰ぐ黒い眼は、夕立を浴びたやうにサツと濡れて、ハラハラと
拭
(
ぬぐ
)
ひもあへぬ涙が膝にこぼれました。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
眼を空にして、
割烹衣
(
かっぽうい
)
の端で口を
拭
(
ぬぐ
)
っているときお千代は少し顔を
赭
(
あから
)
めた。お絹は姉の肩越しに、アンディーヴの鉢を覗き込んだが
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大臣も不承不承慎んで馬の糞を金箕で
承
(
う
)
ける役を勤めたとあらば、定めて垂れ流しでもあるまじく、
蜀江
(
しょっこう
)
の錦ででも
拭
(
ぬぐ
)
うたであろう。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
看護婦がアルコールをしませた脱脂綿を持ってくると、俊夫君はそれを受け取って、死体の顔の右の頬にある
黒子
(
ほくろ
)
の上を
拭
(
ぬぐ
)
いました。
紫外線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
壁の裏が
行方
(
ゆくえ
)
であらう。その
破目
(
やれめ
)
に、十七日の月は西に傾いたが、
夜
(
よる
)
深く照りまさつて、
拭
(
ぬぐ
)
ふべき霧もかけず、雨も風もあともない。
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いや、大阪もひどいにはひどいが……」岩田氏は鼻の先の汗を邪慳に
手帛
(
ハンケチ
)
で押し
拭
(
ぬぐ
)
つた。「しかし、東京よりはましのやうです。」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
女等
(
をんなら
)
は
皆
(
みな
)
少時
(
しばし
)
の
休憩時間
(
きうけいじかん
)
にも
汗
(
あせ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ふには
笠
(
かさ
)
をとつて
地上
(
ちじやう
)
に
置
(
お
)
く。
一
(
ひと
)
つには
紐
(
ひも
)
の
汚
(
よご
)
れるのを
厭
(
いと
)
うて
屹度
(
きつと
)
倒
(
さかさ
)
にして
裏
(
うら
)
を
見
(
み
)
せるのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「もとよりのこと。仰せのごとき暴をなせば、
上下
(
しょうか
)
の
怨嗟
(
えんさ
)
をうけ、諸方の敵方に乗ぜられ、末代、殿の悪名は
拭
(
ぬぐ
)
うべくもおざるまい」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
気丈な母ですから、懐剣を抜いて
溢
(
あふ
)
れ
落
(
おち
)
る血を
拭
(
ぬぐ
)
って、ホッ/\とつく息も絶え/″\になり、
面色
(
めんしょく
)
土気色に変じ、息を絶つばかり
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
第六
毎日
(
まいにち
)
一度
(
いちど
)
は
冷水
(
ひやみづ
)
或
(
あるひ
)
は
微温湯
(
ぬるゆ
)
にて
身體
(
からだ
)
を
清潔
(
きれい
)
に
拭
(
ぬぐ
)
ひとり、
肌着
(
はだぎ
)
を
着替
(
きかへ
)
べし。
入浴
(
ふろ
)
は六七
日目
(
にちめ
)
毎
(
ごと
)
に
成
(
なる
)
たけ
熱
(
あつ
)
からざる
湯
(
ゆ
)
に
入
(
い
)
るべき
事
(
こと
)
。
養生心得草
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
涙
(
なみだ
)
は
各自
(
てんで
)
に
分
(
わけ
)
て
泣
(
な
)
かうぞと
因果
(
いんぐわ
)
を
含
(
ふく
)
めてこれも
目
(
め
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ふに、
阿關
(
おせき
)
はわつと
泣
(
な
)
いて
夫
(
そ
)
れでは
離縁
(
りゑん
)
をといふたも
我
(
わが
)
まゝで
御座
(
ござ
)
りました
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「ええ」と
領
(
うなず
)
きながら、ぼくはふいと目頭が熱くなったのに、自分で
驚
(
おどろ
)
き、汗を
拭
(
ぬぐ
)
うふりをすると、
慌
(
あわ
)
てて船室に駆け降りました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
語り來つて石本は、痩せた手の甲に涙を
拭
(
ぬぐ
)
つて
悲氣
(
かなしげ
)
に自分を見た。自分もホッと息を
吐
(
つ
)
いて涙を拭つた。女教師は
卓子
(
テーブル
)
に打伏して居る。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
背を向けて横に成った岸本は針医のすることを見ることは出来なかったが、アルコオルで
拭
(
ぬぐ
)
われた後の快さを自分の背の皮膚で感じた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ユーザ・サヨ・サマーレとは、当地の言葉にて「神々よ! 汝の手により涙を
拭
(
ぬぐ
)
いたまいて」という慰めの意味だそうであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そういう
酷
(
ひど
)
い勢いが一時間経たぬ中にパッとやんでしまいまして、後は洗い
拭
(
ぬぐ
)
うたごとくマンリーの雪峰が以前のごとくに姿を現わし
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
私はこの事件の直後、
拭
(
ぬぐ
)
い去ろうとしても拭い去ることの出来ない憂鬱症のために、
逐
(
お
)
われるようにしてこのX市を立ち去った。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
そして、手の甲で唇と舌とを横撫でして、おまけにその手の甲を何で
拭
(
ぬぐ
)
おうとするでもなく、そのまま頭を掻いたり
肴
(
さかな
)
をつまんだりした。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
といつて、此時涙を
拭
(
ぬぐ
)
ひながら其おもちやを片づけ升た。銀貨と銅貨はまだ残つて居り升たが、黄金機会はモウおしまひでした。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
連呼しながら、僕は、
両頬
(
りょうほお
)
に伝う熱い涙を感じたが、それを
拭
(
ぬぐ
)
おうともせず、なおも石油ポンプの把手を、力のかぎり、根かぎり押した。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
それは嵐のような拍手を
惹
(
ひ
)
き起した。手を夢中にたたきながら、眼尻を太い指先きで、ソッと
拭
(
ぬぐ
)
っている中年過ぎた漁夫がいた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
貴婦人は差し向けたる手を
緊
(
しか
)
と据ゑて、目を
拭
(
ぬぐ
)
ふ間も
忙
(
せはし
)
く、なほ心を留めて望みけるに、
枝葉
(
えだは
)
の
遮
(
さへぎ
)
りてとかくに思ふままならず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
一度で得た記憶を二
返目
(
へんめ
)
に
打壊
(
ぶちこ
)
わすのは惜しい、
三
(
み
)
たび目に
拭
(
ぬぐ
)
い去るのはもっとも残念だ。「塔」の見物は一度に限ると思う。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今は主君と先祖の恩恵にて
飽食
(
ほうしょく
)
暖衣
(
だんい
)
し、妻子に
驕
(
おご
)
り家人を
責
(
せめ
)
つかい、
栄耀
(
えいよう
)
にくらし、槍刀はさびも
拭
(
ぬぐ
)
わず、
具足
(
ぐそく
)
は土用干に一度見るばかり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
その晩の煩わしい会合の記憶は、海綿ででも
拭
(
ぬぐ
)
い去られるように消えていった。もう何にも残らなかった。ライン河の声がすべてを浸した。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
倫敦
(
ロンドン
)
市中にも無論に多く見られるのですが、わたしが先ず軽蔑の眼を
拭
(
ぬぐ
)
わせられたのは、キウ・ガーデンをたずねた時でした。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
青白い顔の若い男が三、四人の者に、青い作業服の腕を
掴
(
つか
)
まれて立っていた。その
傍
(
そば
)
で、商人風の背の小さな男が鼻血を
拭
(
ぬぐ
)
ってもらっていた。
街頭の偽映鏡
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「小説を書いたのです。十枚ばかり。そのあとがつづかないのです。」煙草を指先にはさんだままてのひらで両の鼻翼の油をゆっくり
拭
(
ぬぐ
)
った。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ぬるぬると
脂
(
あぶら
)
の湧いた
掌
(
てのひら
)
を、髪の毛へなすり着けたり、
胸板
(
むないた
)
で押し
拭
(
ぬぐ
)
ったりしながら、己はとろんとした眼つきで、
彼方此方
(
あっちこっち
)
を見廻して居た。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
草を苅る如く人を切ったのでさすがに数馬も
疲労
(
つか
)
れたらしくホッと深い溜息をしたが、やがて静かに太刀を
拭
(
ぬぐ
)
いパチリと
鞘
(
さや
)
に納めてしまった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかし何しろ秋の夜の空は
拭
(
ぬぐ
)
った様に晴れ渡って、月は
天心
(
てんしん
)
に
皎々
(
こうこう
)
と冴えているので、
四隣
(
あたり
)
はまるで昼間のように明るい。
死神
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
と、涙をお
拭
(
ぬぐ
)
いになりながら東宮へ後事をお頼みになるのであった。母君の女御にも信じ切ったようにして院は女三の宮のことを仰せになった。
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
給仕する
僕
(
しもべ
)
の黒き
上衣
(
うわぎ
)
に、白の前掛したるが、何事をかつぶやきつつも、卓に倒しかけたる椅子を、引起して
拭
(
ぬぐ
)
ひゐたり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
今秋マサニ鎌倉移住ノ命アラントス。都ニ出デゝ三日
奄然
(
えんぜん
)
トシテ寂セリ。(中略)
哀
(
かなし
)
イカナ。戊午晩秋十三夜月明ノ
窓下
(
そうか
)
ニ涙ヲ
拭
(
ぬぐ
)
ヒ
敬
(
つつし
)
ンデ書ス。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
千円の顕微鏡を雪の露天に放り出して置いても、乾いた布で
拭
(
ぬぐ
)
うだけの注意をしていれば何の故障も起らないのである。
雪雑記
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
しかも五月の空は
拭
(
ぬぐ
)
った如く藍色に晴れ、微風は子燕の羽をそよそよと
撫
(
な
)
でていたが、歌麿の心は北国空のように、重く曇ったまま晴れなかった。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
差さるる盃を女は黙って受けたが、一口附けると下に置いて、口元を
襦袢
(
じゅばん
)
の袖で
拭
(
ぬぐ
)
いながら、「金さん、一つ相談があるが聞いておくれでないか?」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
涙で顔中ぬらぬらと
濡
(
ぬ
)
れてくるのを
拭
(
ぬぐ
)
はうともしずに、馳け出してみたり、馬鹿らしくなつて歩いてみたりしてゐた。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
茶碗に
拭
(
ぬぐ
)
いをかけるやら、炭を
煽
(
あお
)
ぎはじめるやら、ここはお
爺
(
とっ
)
さんが車輪になって八人芸をつとめる幕となりました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼女が二度目に悲しい
溜息
(
ためいき
)
を吐いたのは、ヘレンのためだつた。ヘレンのために、彼女は頬の涙を
拭
(
ぬぐ
)
つたのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
だが色鍋島そのものに対する不満を語らずとも、その仕事の
拭
(
ぬぐ
)
い難い欠点は、単なる繰返しに過ぎないということである。それも摸写というに
止
(
とどま
)
ろう。
北九州の窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そこは東北地方の風景といふ先入觀念を完全に
拭
(
ぬぐ
)
ひとるに足る明るい澄んだ、そして又おとなしい
畫面
(
ぐわめん
)
である……。
地方主義篇:(散文詩)
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
暇があると
拭
(
ぬぐ
)
いをかけたり
粉
(
こな
)
を打ったりして、いつまでもあきずに眺めていた。
磨
(
とぎ
)
に出したりするのも好きだった。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そして、ハンカチを取り出して額の汗を
拭
(
ぬぐ
)
った。それから再び腰をおろしたが、それは前に坐っていたところでなく、反対側の壁ぎわの
床几
(
しょうぎ
)
であった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
要するに東京の尻を田舎が
拭
(
ぬぐ
)
う。田舎でも金もちが吾儘をして、貧しい者が
後尻
(
あとしり
)
を拭うにきまって居る。何処までも不浄取りが貧しい農の運命である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
記し終りて
確
(
かた
)
く
封
(
ふう
)
じ枕元なる
行燈
(
あんどう
)
の臺に
乘置
(
のせおき
)
稍
(
やゝ
)
しばし又も
泪
(
なんだ
)
に暮たりしが斯ては果じ我ながら
未練
(
みれん
)
の泪と氣を
取直
(
とりなほ
)
し袖もて
拭
(
ぬぐ
)
ひ立上り母の
紀念
(
かたみ
)
の
懷劍
(
くわいけん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
拭
常用漢字
中学
部首:⼿
9画
“拭”を含む語句
手拭
拭掃除
濡手拭
払拭
西洋手拭
手拭掛
一拭
押拭
古手拭
拭布
手拭地
置手拭
尻拭
白手拭
掛手拭
汗拭
半拭
靴拭
拭込
拭巾
...