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この狸の形せる物は、玩具といはんよりの小判、蘇民将来そみんしょうらいの類にて神守りの一つなりと思へり。(大正十四年五月『鳩笛』第三号)
江戸の玩具 (新字旧仮名) / 淡島寒月(著)
「はやの刻に及び候。茶臼山の敵陣次第にかさみ見えて候。速かに戦いを取り結びて然るべし、と大御所に伝えよ」と怒鳴った。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
十二支というのは、子、うしとら、卯、たつうまひつじさるとりいぬの十二で、午の年とか酉の年とかいうあの呼び方なのです。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その上、死骸の耳の下に傷を拵へて、お玉の黒子ほくろを誤魔化したが、二の腕の(蛇)の彫物ほりものをお關に見られて、たくらみに龜裂ひびが入つた。
時刻は、この頃、すでにこく(十時)——。敵の旗幟きしが目のまえの山々に見え出してから、はやくも二時間ちかく経過している。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この法は、晴天のの時に、白胡麻ごまの油を手の甲、指、額に塗り、日輪に向かいてらしめ、手合わさしてわが口のうちにて
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
石工いしやが入って、のみなめらかにして、狡鼠わるねずみを防ぐには、何より、石の扉をしめて祭りました。海で拾い上げたのがの日だった処から、巳の日様。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雨乞いの祈祷はの刻(午前十時)を過ぎても何の効験しるしも見えなかった。壇のまわりには北面ほくめんの侍どもが弓矢をとって物々しく控えていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「さっきここを出てから、の時に涇陵へ行って、うまの時に戦って、帰りに九天へ行って、上帝にその訳を訴えてきました」
柳毅伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「なんだか天気がちっとばかりおかしいけれど、明日の朝のはんごろには木更津へ着くって言いますから、案じるがものはありますまいねえ」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかるに天保てんぽう四年みずのととし十二月二十六日のの刻すぎの事である。当年五十五歳になる、大金奉行おおかねぶぎょう山本三右衛門さんえもんと云う老人が、ただ一人すわっている。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いぶかって懐中に手を入れてみると、ある、ある、出てきたのは背裏に、律と書いた年の男、二十一歳のわら人形と、金づちと、三寸くぎです。
搖上ゆりあ搖下ゆりおろ此方こなたたゞよひ彼方へゆすれ正月四日のあさこくより翌五日のさるこくまで風は少しもやま吹通ふきとほしければ二十一人の者共は食事しよくじもせす二日ふつか二夜ふたよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
例えば、という字とおのれという字との違い、これなどは紛れやすいから、きっとこんなのを試験に出すのだろう、よく覚えて置こう、と思うのである。
入学試験前後 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あくやうや下刻げこくになつて、ちやんと共揃ともぞろひをした武士ぶしあらためて愚老ぐらうむかへにえましたが、美濃守樣みののかみさまはもうまへごろ御臨終ごりんじうでござりまして。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「ながらへばとらたつやしのばれん、うしとみし年今はこひしき。」それをばあたかも我が身の上をえいじたもののように幾度いくたび繰返くりかえして聞かせるのであった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
明け方からすさまじい南の風が吹き荒れておりましたが、その朝のの刻なかばに、お屋敷のすぐ南、武者の小路のかみの方に火の手があがったのでございます。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
何はともあれ、というふうに、彼は恭順から借りて来た友人の日記を机の上にひろげて、一通りざっと目を通した。「東行日記、五月、蜂谷香蔵」とある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「木更津はの方角ですから、ちょうどこうした見当で御座います。海上九里と申しますが、風次第でじきに行かれます」と娘は手甲に日を受けながら指示さししめした。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
十二月は前にいう水こぼし正月の他に、さらに第一のの日を巳正月、または巳午みうま正月という例もある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
繰ってゆくと、足助の云ったとおり一年おきで、初めのほうはどしとうまどしと続いてい、巳どしには松倉屋十吉という者といっしょであり、翌年には独りで泊っていた。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
うしとらたつ、——と、きゃくのないあがりかまちにこしをかけて、ひとり十二じゅん指折ゆびおかぞえていた、仮名床かなどこ亭主ていしゅ伝吉でんきちは、いきなり、いきがつまるくらいあらッぽく
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
山川野辺のけしきこよなかるべしとつづみうつ頃より野遊のあそびに出たりき、三橋といふ所にいたる、中根師質なかねもろただあれこそ曙覧の家なれといへるを聞て、にわかにとはむとおもひなりぬ
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
右に依れば、さと落命致し候は、私検脈後一時ひとときの間と相見え、の上刻には、篠既に乱心の体にて、娘死骸を掻き抱き、声高こわだかに何やら、蛮音ばんいんの経文読誦どくじゆ致し居りし由に御座候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
するとあくる二十八にちのの刻ごろに、織田どのゝおんつかい不破河内のかみどのが三度目におこしになりまして、いま一ぺんかんがえなおして降人に出る気はないかと
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それはうるう二月の一日であったが、この日宮家には蔵王堂の御座ぎょざに、赤地の錦の鎧直垂よろいひたたれに、こくばかりの緋縅ひおどしの鎧——あさひの御鎧おんよろいをお召しになり、竜頭たつがしら御兜おんかぶとをいただかれ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「辰? ほう、いい干支えとだ。おれは、の年だから、蛇を入れたが、兄ちゃんなら、ピシャリ、りゅうだなあ。彫りあがったら、惚れぼれするぞ。おれのは、こんなに、汚ねえが……」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
それは生国魂いくたま神社の境内の、さんがんでゐるといはれてこはくて近寄れなかつたくすの老木であつたり、北向八幡の境内の蓮池にはまつた時に濡れた着物を干した銀杏いちやうの木であつたり
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
この時は二度受けたので、初度は正月二十八日いぬの刻から始めて、四月八日うまの刻まで七十日あまりで終り、再度は六月十二日の刻から七月二十五日巳の刻まで四十日余で成就した。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
亀の年という甘いお酒(瀬戸物の大きなかめのかたちの器にはいっていた)をのませたのでその名をよく覚えてしまって、ある時、お前はの年、お前はの年と年寄りが言っていたらば
戦いの刻限を告げしっかり食事して働いてくれと頼んで去った、七人木で庵を造りやじりなどいで弓弦ゆづるくくって火いて夜を明かし、朝に物よく食べての時になりて敵来るべしといった方を見れば
「ふうむ、それじゃわしの方が上か? 俺はの七十だ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今年は三月の一日にの日があった。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
隔年かくねんうしひつじとり
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
文政十月十日
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
豊臣秀吉が、川中島の合戦を批評して、「卯の刻より辰の刻までは、上杉の勝なり、辰の刻よりの刻までは武田方の勝なり」
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
今暁らい、六波羅には武士の参集が続々のぞまれ、五条大橋は、朝のこく以降、一般に往来止メの札立ふだだてとなっている事実。
不忍の弁天に参詣しての日の御まもりをうけて来た者は、その禍いを逃がれることが出来るなどと、まことしやかに説明する者もあらわれた。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
上半身に十二支の内、うしとらたつうま、の七つまで、墨と朱の二色で、いとも鮮やかに彫ってあるのでした。
かくてん雪催ゆきもよひ調とゝのふと、矢玉やだまおとたゆるときなく、うしとらたつ刻々こく/\修羅礫しゆらつぶてうちかけて、霰々あられ/\また玉霰たまあられ
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
明け方からすさまじい南の風が吹き荒れてをりましたが、その朝のの刻なかばに、お屋敷のすぐ南、武者の小路のかみの方に火の手があがつたのでございます。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
来たる英国公使参内の当日には、繩手通り、三条通りから、堺町の往来筋へかけて、こくより諸人通行留めの事とある。左右横道の木戸は締め切りの事とある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まず、その小風呂敷に目がつくと、紫縮緬むらさきちりめんのまだこくなのに、五七の桐が鮮かに染め抜いてあります。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
本人はの刻、実父又は実子のあるものは、その実父、実子も巳の刻半に出頭すべしと云うのである。南会所では目附の出座があって、下横目が三箇条の達しをした。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一つの扉にはあおいもんがあって、中に「贈正一位大相国公尊儀」と刻し、もう一つの方は梅鉢うめばちの紋で、中央に「帰真 松誉貞玉信女霊位」とり、その右に「元文げんぶん二年年」
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
持出て次右衞門に向ひ越前守より申こされし段上樣へ申上候處御滿足まんぞく思召おぼしめし明日の刻に越前役宅へ參るべしとの上意じやういなり是は余が所持しよぢの品如何敷いかゞはしく候へども其方へつかはすとて一かたな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その療法中、白胡麻ごまの油を塗ることあり。油は空中に浮かびたる塵毛を引きとどむるに便なるものなり。晴天の時、日輪に向かいて座するは、塵毛の目に触れやすきときなるによる。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
十六日の刻頃、少斎石見の両人、再び霜に申され候は、唯今治部少かたより表向きの使参り、是非とも秀林院様をおん渡し候へ、もしおん渡し候はずば、押し掛けて取り候はんと申し候間
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
(中略)の刻に、仁田四郎忠常、人穴より出でて帰参す、往還一日一夜を経たり、此洞狭うしてきびすめぐらすあたはず、意のままに進み行かれず、又暗うして、心神を痛ましむ、主従各松明たいまつを取る
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
九月大高源吾
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)