たけ)” の例文
旧字:
姥捨うばすてかんむりたけを右のほうに見ながら善光寺だいらを千曲川に沿って、二里ばかりかみのぼると、山と山の間、すべてひろい河原地へ出る。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こまたけふもと大湯村と橡尾とちを村の間を流るゝたに川を佐奈志さなし川といふ、ひとゝせ渇水かつすゐせし頃水中に一てんの光あり、螢の水にあるが如し。
「十津川をけて、あの釈迦しゃかたけの裏手から間道かんどうを通り、吉野川の上流にあたる和田村というに泊ったのが十九日の夜であった」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
僕は前に穂高山はもちろん、やりたけにも登っていましたから、朝霧のりた梓川の谷を案内者もつれずに登ってゆきました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宿屋の番頭はこれから三里の山道をば温泉うんぜんたけの温泉へ行かれてはと云つてくれたが、自分は馬か駕籠かごしか通はぬといふ山道やまみちの疲労を恐れて
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あいたけは大断崖を隔てて北に聳えている、北岳はここからは見えない、峻急な山頂の岩壁を峰伝いに北に向けて直下する。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
火に燃ゆる桜島さくらじまを後にし、右手に開聞かいもんたけの美しい姿が眼に入りますと、船は早くも広々とした海原うなばらに指しかかります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
十人ぐらいでやる時は一番愉快ゆかいだよ。甲州ではじめた時なんかね。はじめ僕がやつたけふもとの野原でやすんでたろう。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あたかも彼七本やりを以て有名なるしづたけ山下余吾湖をるにたり、陶然とうぜんとしては故山の旧盧きうろにあるが如く、こうとして他郷の深山麋熊の林中にあるをわす
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
こまたけをめぐる未開墾の火山灰地帯と大沼の風光をつきぬけて、噴火湾岸の森からオシャマンベまで、さしむき熱海あたみから藤沢までの天地自然の夕まぐれを
あおいで空を見ようともしない、この時に限らず、しずたけが、といって、古戦場を指した時も、琵琶湖びわこの風景を語った時も、旅僧はただ頷いたばかりである。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たまたまきこりにえばみちき、おに岩屋いわやのあるという千丈せんじょうたけひとすじにざして、たにをわたり、みねつたわって、おくおくへとたどって行きました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
織田家の宿将たる柴田勝家や滝川一益かずますは、心中甚だ平かでない。やがて勝家は、しづたけで秀吉と戦つたが惨敗し、越前の北庄きたのしやうの本城に逃げこみ、遂に滅亡した。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
で私共の坐って居る所からガラス障子しょうじを隔てて南を望みますと、月ノ峰、龍樹りゅうじゅたけ等の諸山高くそびえて呼べばまさにこたえんとする風情ふぜいい眺めでございます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
由槻ゆつきたけは巻向山の高い一峰だというのが大体間違ない。一首の意は、痛足河に河浪が強く立っている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そこで小諸こもろざい小原こはらというところにかわれている牛は、ご主人の牛乳屋さんに連れられ、牛小屋を出て、烏帽子えぼしたけのふもとにある牧場をさして骨休めに出かけました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
阪本天山翁、宝暦六年の『木曾きそこまたけ後一覧記のちのいちらんき』に、前岳まえだけの五六分目、はい松の中に一夜を明す。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「加賀の白山十二峰の一つ瑠璃るりたけの谷深く一本立てる大楠の木こそ彼の本身でござります」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それから佐野の舟橋を過ぎ信濃へ入ったところ、火をつ浅間の山の煙は濛々もうもう漠々として天を焦して居る。そこで「信濃なる浅間のたけは何を思ふ」と詠み掛けたりなぞしている。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
次に Koma(こまたけ), Kaimon, Kume(久米島くめしま), Kimpu(Kibô), Kampu, Kombu, Kamui を取れば m = 7 である。
火山の名について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
小屋の持主の老婆、手傳ひに來た中年の女と其の娘が火を燃しては私達に馳走するとて小鳥を燒いて呉れる。見晴らしは女貌から男體迄の主なる部分と、温泉ゆぜんたけの附近が見える。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
琵琶湖の水を前に如意にょいたけを背にした閑寂なところで、「采釣亭さいちょうてい」となづける屋敷構えも広かったから、同志の会合にもうってつけだし、幕吏の追捕をのがれる者にはいい隠れ場所だった。
日本婦道記:尾花川 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あのみねが、不動ふどうたけというので、いままでに、あのいただきへ、のぼりきったものは、何人なんにんもないとのはなしだ。」と、おじさんは、勇吉ゆうきちとならんでちながら、やまのほうをて、説明せつめいしました。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
白馬——唐松からまつ——五龍——鹿島槍かしまやり——はり——蓮華れんげ——烏帽子えぼし——野口のぐち五郎——三俣蓮華みつまたれんげ——黒部くろべ五郎——かみたけ——楽師やくし——鷲岳——雄山おやま——大汝おおなんじ——別山べっさん——剣……といったような計画を
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
開聞かいもんたけも此処から見える筈ですが……」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「やあ、やつたけだ。やつがたけだ。」
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
御嶽おんたけ乗鞍のりくらこまたけ
県歌 信濃の国 (新字新仮名) / 浅井洌(著)
こまたけふもと大湯村と橡尾とちを村の間を流るゝたに川を佐奈志さなし川といふ、ひとゝせ渇水かつすゐせし頃水中に一てんの光あり、螢の水にあるが如し。
仰向けに寝ながら毎日見ていたわしたけである。彼は何となくこの山を見ると闘志を感じるのだった。征服慾を駆り立てられるのであった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お雪は、竜之助が棒の如く立って、凝視ぎょうししている、その越中のつるぎたけの半面に向って、同じように、凝視の眼を立てました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのまたまるい天窓の外には松やひのきが枝を張った向こうに大空が青あおと晴れ渡っています。いや、大きいやじりに似たやりたけの峯もそびえています。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
丁度、白峰山脈からいえば、農鳥山の支峰の下で、河原から、赤石山脈のあいたけとは、真面まともに向き合っている。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
なから舞いたりしに、御輿みこしたけ愛宕山あたごやまかたより黒雲にわかに出来いできて、洛中らくちゅうにかかると見えければ、——
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
岩代の燧岳ひうちたけ、越後のこまたけ、八海山等皆巍然ぎぜんとして天にてうし、利根水源たる大刀根岳は之と相拮抗きつこうして其高きをあらさふ、越後岩代の地方に於てはけつしてゆきを見ざるに
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
あしひきの山河やまがはるなべに弓月ゆつきたけくもわたる 〔巻七・一〇八八〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
歴史好きな人なれば、川中島の古戦場でこの国をしのぶでしょう。近頃の若い人たちには飛騨ひだ山脈、木曾きそ山脈、赤石山脈、やつたけ山脈などの名で親しまれているかも知れません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
音にきゝたるちごたけとは今白雲に蝕まれ居る峨〻がゞと聳えしあの峯ならめ、さては此あたりにこそ御墓みしるしはあるべけれと、ひそかに心を配る折しも、見る/\千仭せんじんの谷底より霧漠〻と湧き上り
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
南牧みなみまき北牧きたまき相木あいきなどの村々がちらばっていまして、金峯山きんぷさん国師こくしたけ甲武信こぶしたけ三国山みくにやまの高くそびえたかたちを望むこともでき、また、甲州にまたがったつがたけの山つづきには
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
龍樹りゅうじゅたけに登る ことを許された。龍樹ヶ岳の光景は詳しく言う必要はない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それから三にんのおじいさんはさきって、千丈せんじょうたけのぼって行きました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
『おもろ草紙』の中にはこの三つの名は見えぬようだが、国のオトヂヤという言葉はあり、またワカイキョがありワライキョというのもあって、そのワライキョは二、三の地のたけの神でもあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
近郷きんごうの者すら何もしらないまに、六波羅の兵が三、四百人も桟敷さじきたけや雲ヶ畑から入りこんで、僧正ヶ谷をつつんだのである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何処どこの山から来た木の葉か?——今日けふの夕刊に出てゐたのでは、木曾きそのおんたけの初雪も例年よりずつと早かつたらしい。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ここが有名な白馬はくばたけのお花畑でございます、まあ、この美しいとも何とも言いようのない花の色をごらんなさい」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やうぢやな。)といつたばかりでべつめず、あふいでそらやうともしない、此時このときかぎらず、しづたけが、といつて古戦場こせんぢやうしたときも、琵琶湖びはこ風景ふうけいかたつたとき
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
痛足河あなしがは河浪かはなみちぬ巻目まきむく由槻ゆつきたけ雲居くもゐてるらし 〔巻七・一〇八七〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あいたけは白銀のすじを入れている、間の岳は、登って見て解ったのであるが、全山裸出の懸崖と、絶壁とより成り、その上に一髪の山稜が北へと走っているので、焼刃の乱れたように
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
臼田に稲荷山いなりやま公園というところがあって、公園前の橋のたもとあたりから望んだ千曲川のながめは実にいい。あれから八つがたけ山脈のふもとへかけて、南佐久の谷が目の前にひらけています。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
けだし北越奇談ほくゑつきだん会津あひづとなこまたけ深谷しんこくに入ること三里にして化石渓くわせきたにと名付る処あり、虫羽ちゆうう草木といへどもたにに入りて一年をればみな化して石となる。その川甚苦寒くかんにして夏もわたるべからざるが如し。
見るとそれは秘命をおびて、伊那丸いなまるの本陣あまたけをでた奔馬ほんば項羽こうう」。——上なる人はいうまでもなく、白衣びゃくえ木隠龍太郎こがくれりゅうたろうだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)