さっ)” の例文
いろよい返事へんじしたためたおせんのふみを、せろせないのいさかいに、しばしこころみだしていたが、このうえあらそいは無駄むださっしたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ねむるようにできているのですから、不承ふしょうもなりますが、けしさんや、河骨こうほねさんなどには、この生活せいかつは、さぞくるしいことだとおさっしします。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここに立ったふたりのようすからさっすると、いつか伊那丸もかれを了解りょうかいしているし、龍太郎も主君のごとくうやまっているようだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
カピはおそらくわたしの意中をさっしたのであろう。それでかれはその大きなりこうそうな目を、じつとわたしの日の上にすえてすわっていた。
そのようすからさっすると、そのひとは、いかめしいよろいかぶとを身につけた、戦場せんじょう武士ぶしのように思われました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
同じ車に乗っている他の人たちの中には、空気服を着はじめた者もあるから、正吉は、ははあとさっしたのである。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
皆さん、その夜、まあどんなにヒンドバッドのおかみさんや、子供たちがよろこんだか、おさっしください。
けれどもガドルフは、その風の微光びこうの中で、一本の百合が、多分とうとう華奢きゃしゃなそのみきられて、花がするどく地面にまがってとどいてしまったことをさっしました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
老人ろうじんは、なにごとものみこんでいるから、お政の心中しんちゅうさっし、なみだかべてむすめをさとすのである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おとうさんのそんな心持こころもちをさっしない世間せけんの人たちは、ひいさんがへんな姿すがたになったのをおもしろがって、「はちかつぎ、はちかつぎ。」と、あだんであざわらいました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
戦争中国内の有様ありさまさっすれば所在しょざい不平士族ふへいしぞくは日夜、けんして官軍のいきおい、利ならずと見るときは蹶起けっきただちに政府にこうせんとし、すでにその用意ようい着手ちゃくしゅしたるものもあり。
わたくしけっしてきみたいして立腹りっぷくいたさんので、病気びょうきなれば拠無よんどころないのです、おさっもうすですよ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
兎に角篠原良平の死と「寄生木」とが、さびしい将軍の晩年に於てまた一の慰藉いしゃとなったことは、さっするに難からぬ。篠原良平が「寄生木」をのこした目的の一は達せられたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もはやゆるされて家へ戻ったことでござろうが、それを思えば、おさっし下され、右近殿。喬之助、断腸だんちょうの思いでござる。妻にも会えば色いろと話もあるものをと、ま、これは愚痴じゃ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ハハハ……、やっとおわかりになったようですね。ご安心なさい。ぼくは、あなたのむすこの壮一君じゃありません。おさっしのとおり、あなた方が二十面相と呼んでいる盗賊です。」
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
問『まあそれはおどくなおうえ……わたくしきくらべて、こころからおさっいたします……。それにしても二十五さい歿なくなられたとのことでございますが、それまでずっとお独身ひとりみで……。』
動物を見てもすみやかに天意のどこにあるやはさっしられる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だが、岸本監督はすぐに様子をさっして皆を制した。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
ぼくは、ほかであたまってあそびにゆくと、なんだかがすまんのだもの。」といいました。するとおかあさんは、その心持こころもちをおさっしになって
すいれんは咲いたが (新字新仮名) / 小川未明(著)
まえさんが、どこまで出来できたかたいという。その心持こころもちァ、はらそこからさっしてるが、ならねえ、あっしゃァ、いま、人形にんぎょうってるんじゃァねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その声でさっすると、その女たちは、この高貴こうきなおやしきの、召使めしつかいであることがわかりました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ものはいわなかったけれど、目つきでもって、村人はおたがいにいいたいことをさっした。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのほお紅色べにいろや、瘠方やせかたさっするにかれにはもう肺病はいびょう初期しょきざしているのであろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ちっとはおれの苦しい心もさっして、気のどくに思うがいい。だからこれからごえを立てるたんびによけいに一つむちをくれることにするからそう思え。これもきさまらが悪いのだ。
相当そうとうながあいだこちらの世界せかいんで私達わたくしたちですらそうかんずるのでございますから、現世げんせ方々かたがたとしては尚更なおさらのことで、容易ようい竜神りゅうじん存在そんざいしんじられないはずだとおさっしすることができます。
いや、なにごとも時世時節ときよじせつ……こうおあきらめがかんじんじゃ。あのような水音にさえ、はッと心をおくお身の上、さだめしおつらかろうとおさっし申すが、またいつか天運のおめぐみもあろうでな。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやおさっし申しあげます、いかにもそりゃ……まことにおのどくな、しかし糟谷さんあまり無分別むふんべつなことをやってしまってはりかえしがつきませんよ、奥さんはよほど興奮こうふんしていらっしゃるから
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
先刻さっきから、おしょうさんが、なんでったろうかとおもったのが、ほぼさっせられると、地主じぬしは、先手せんてつつもりで
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうかさっしておやンなすって。おせんにしてりゃ、自分じぶんからふみいたなはじめての、いわば初恋はつこいとでももうしやしょうか。はずかしいうえにもはずかしいのが人情にんじょうでげしょう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あなたの現在げんざいのお身上みのうえもおさっいたしますが、すこしはわたくしうえさっしてくださいませ。わたくしひとつのきたしかばね、ただ一人ひとり可愛かわい子供こどもがあるばかりに、やっとこのきていられるのです。
さっしあれ——といったのでは、よく分らないかもしれないが、早くいえば、余は只今、ロイヤル・オーク号上に居るのではなく、スカパフロー軍港附属の地下病院の一室に横わっているのである。
沈没男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あかちゃんかられば、あなたは、やはりおねえさんでしょう。」と、おかあさんは、これにはなにか理由りゆうがあると、さっせられて、やさしく、いわれました。
お姉ちゃんといわれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
けっきょく、わりあい財産があって、のんきに暮らしている人ではあるまいかとさっせられた。そして東京の人ではなく、地方から上野駅でおりたばかりのところを、やられたのであろうと思われた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おかあさんからなの?」といって、かれむねなかよろこびをさっするごとく、自分じぶんまでうれしそうにはしゃぎました。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
返してしまわなければならないんですもの。ちょいとさっしてよ
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むら人々ひとびとは、牛女うしおんなをかわいそうにおもいました。どんなにいていった子供こどものことにこころらたろうと、だれしもふかさっして、牛女うしおんなをあわれまぬものはなかったのであります。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かんざしをりかえたやつは、それとさっしたものか、とっとっとみちいそいで、その姿すがたは、野原のはらのはてにかすんで、ちいさくえました。二人ふたりは、けんめいになってはしったのです。
お母さんのかんざし (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、まちがいなくおひめさまでありました。小鳥ことりはすぐに、おひめさまがくにかえりたいとおもっても、その方角ほうがくも、またみちもわからなくて、こまっていられるのをさっしたのでありました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのは、母親ははおや方々ほうぼう転々てんてんしたというから、これまでの生活せいかつが、さっしられますが、ほかにも子供こどもどうしで、あのはたべられそうだとか、あのくさてたべたら、おいしかろうとか
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)