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夜陰
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やいん
ふりがな文庫
“
夜陰
(
やいん
)” の例文
夜陰
(
やいん
)
のこんな場所で、もしや、と思ふ時、
掻消
(
かきき
)
えるやうに音が
留
(
や
)
んで、ひた/\と小石を
潜
(
くぐ
)
つて響く水は、忍ぶ
跫音
(
あしおと
)
のやうに聞える。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ジュリアは
夜陰
(
やいん
)
に
乗
(
じょう
)
じてポントスの寝室を襲い、まずナイフで一撃を加え、それからあのレコードで『赤い苺の実』を鳴らしたんです。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「なんの、お慎みの折柄じゃ。まして
夜陰
(
やいん
)
にどこへお越しなさりょうぞ」と、家来は初めから問題にもしないように答えた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「さだめしお婆はたんのうしたろうが、
夜陰
(
やいん
)
、山の中へ連れ込んだところを見ると、最後の思いをはらそうというつもりだろう。
恐
(
こわ
)
いのう女は」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
或る人はまた、
夜陰
(
やいん
)
、小泉家から出た二挺の
駕籠
(
かご
)
が、
恵林寺
(
えりんじ
)
まで入ったということを見届けたというものもありました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
何故
(
なにゆえ
)
に女房の被衣などを着て、しかも、
夜陰
(
やいん
)
に曲者のように南縁の雨戸を開けて
戸外
(
そと
)
へ出るだろう、右大将家が決してこんなことをするはずがない。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は
挨拶
(
あいさつ
)
をして
格子
(
こうし
)
の外へ足を踏み出した。玄関と門の間にあるこんもりした
木犀
(
もくせい
)
の
一株
(
ひとかぶ
)
が、私の
行手
(
ゆくて
)
を
塞
(
ふさ
)
ぐように、
夜陰
(
やいん
)
のうちに枝を張っていた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうでなくとも堂々と押しかけてきて一門を承知させたことになっていて、大昔の神々のごとく
夜陰
(
やいん
)
密
(
ひそ
)
かに
通
(
かよ
)
ってきて後に露顕したものではなかった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そうして、騒ぎが静まるのを待ち、人知れず上陸して、
夜陰
(
やいん
)
に
乗
(
じょう
)
じて逃亡しようという企らみであったに相違ない。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
どの横町も灰色の
夜陰
(
やいん
)
に閉ぢられて
灯影
(
ほかげ
)
が
少
(
すくな
)
く、ゴルキイの「
夜
(
よる
)
の
宿
(
やど
)
」の様な物凄さを感じないでもない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
歳子が気にすると、それは近所の町の湯屋が
夜陰
(
やいん
)
に乗じて煙突の掃除をしてゐるのだと牧瀬はいつた。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
獄舎の庭では
夜陰
(
やいん
)
に無情の樹木までが
互
(
たがい
)
に悪事の
計画
(
たくらみ
)
を
囁
(
ささや
)
きはせぬかと疑われるので、
此
(
か
)
くは別々に遠ざけ
距
(
へだ
)
てられているのであろうというように見えてなりません。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
汝等
(
なんじら
)
審
(
つまびらか
)
に諸の
悪業
(
あくごう
)
を作る。
或
(
あるい
)
は
夜陰
(
やいん
)
を以て
小禽
(
しょうきん
)
の家に至る。時に小禽
既
(
すで
)
に終日日光に浴し、
歌唄
(
かばい
)
跳躍
(
ちょうやく
)
して
疲労
(
ひろう
)
をなし、
唯唯
(
ただただ
)
甘美
(
かんび
)
の
睡眠
(
すいみん
)
中にあり。汝等飛躍してこれを
握
(
つか
)
む。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
成親殿
(
なりちかどの
)
は
夜陰
(
やいん
)
にまぎれて毎夜賀茂の森まで通いました。大杉の
洞
(
ほら
)
の下の壇の前にぴたりとすわっていました。顔はまっさおでしかも燃えるような目で僧らの
所業
(
しょぎょう
)
を見ていました。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
それは
夜陰
(
やいん
)
の儀でござるで、誠にお馬場口や何か淋しくてならんから、彼に見廻りを申付ける
折
(
おり
)
に、大小を拝借致したいと申すから、それでは
己
(
おれ
)
の
積
(
つもり
)
で廻るが
宜
(
よ
)
いと申付けましたので
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『世を隔てたる
此庵
(
このいほ
)
は、
夜陰
(
やいん
)
に訪はるゝ
覺
(
おぼえ
)
なし、恐らく
門違
(
かどちがひ
)
にても候はんか』。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
彼等は
夜陰
(
やいん
)
に墓を掘り終え、小さな棺が来るのを待って居たのである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
も
厭
(
いと
)
はず自身に
夕
(
ゆふ
)
申刻過
(
なゝつすぎ
)
より右の寺へ參る其夜
亥刻近
(
よつどきちか
)
き頃
宅
(
たく
)
へ
戻
(
もど
)
り來る途中
下
(
しも
)
伊呂村の河原にて死人に
跪
(
つまづ
)
きたれども
宵闇
(
よひやみ
)
なれば物の
文色
(
いろ
)
も
分
(
わか
)
らず殊に
夜陰
(
やいん
)
の事故氣の
急
(
せく
)
まゝ早々
宿
(
やど
)
へ戻りて其夜は
打臥
(
うちふし
)
翌朝
門
(
かど
)
の戸を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
声とともに一発の
銃声
(
じゅうせい
)
が
夜陰
(
やいん
)
の空気をふるわした。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
夜陰
(
やいん
)
に
跳梁
(
ちょうりょう
)
する群盗の一
味
(
み
)
!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼は
抜荷
(
ぬけに
)
買いというもので、
夜陰
(
やいん
)
に船を沖へ乗り出して外国船と密貿易をするのであった。密貿易は厳禁で、この時代には海賊と呼ばれていた。
心中浪華の春雨
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
絶えて久しい主人が、こうして
夜陰
(
やいん
)
にブラリと尋ねて来たものですから、一学も最初は
妖怪変化
(
ようかいへんげ
)
ではないかとさえ驚きあやしみ、且つ喜びました。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
きっと貴公へ
討手
(
うって
)
のかからぬよう引きうける。貴公は、
夜陰
(
やいん
)
にまぎれて、ここを逃げ落ちてください。——それがしの身にかまわず、どうぞ安心して!
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
傍
(
かたへ
)
に一
本
(
ぽん
)
、
榎
(
えのき
)
を
植
(
う
)
ゆ、
年經
(
としふ
)
る
大樹
(
たいじゆ
)
鬱蒼
(
うつさう
)
と
繁茂
(
しげ
)
りて、
晝
(
ひる
)
も
梟
(
ふくろふ
)
の
威
(
ゐ
)
を
扶
(
たす
)
けて
鴉
(
からす
)
に
塒
(
ねぐら
)
を
貸
(
か
)
さず、
夜陰
(
やいん
)
人
(
ひと
)
靜
(
しづ
)
まりて
一陣
(
いちぢん
)
の
風
(
かぜ
)
枝
(
えだ
)
を
拂
(
はら
)
へば、
愁然
(
しうぜん
)
たる
聲
(
こゑ
)
ありておうおうと
唸
(
うめ
)
くが
如
(
ごと
)
し。
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
汝等
(
なんじら
)
審
(
つまびらか
)
に諸の悪業を作る。
或
(
あるい
)
は
夜陰
(
やいん
)
を以て
小禽
(
しょうきん
)
の家に至る。時に小禽
既
(
すで
)
に終日日光に浴し、
歌唄
(
かばい
)
跳躍
(
ちょうやく
)
して疲労をなし、
唯唯
(
ただただ
)
甘美
(
かんび
)
の
睡眠
(
すいみん
)
中にあり、汝等飛躍してこれを
握
(
つか
)
む。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
濃い
夜陰
(
やいん
)
の色の中にたった一つかけ離れて星のように光っているのです。私の顔はその灯火の方を向いていました。兄さんはまた
浪
(
なみ
)
の来る海をまともに受けて立ちました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夜陰
(
やいん
)
の
森中
(
もりなか
)
に、
鬼火
(
おにび
)
の燃える
鼎
(
かなえ
)
の中に
熱湯
(
ねっとう
)
をたぎらせて、
宗盛
(
むねもり
)
に似せてつくった
藁
(
わら
)
人形を
煮
(
に
)
ました。悪僧らはあらゆる悪鬼の名を呼んで、
咒文
(
じゅもん
)
を唱えつつ
鼎
(
かなえ
)
のまわりをまわりました。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
夜陰
(
やいん
)
に主人の寝息を伺って、いつ脅迫暗殺の
白刄
(
はくじん
)
が畳を
貫
(
つらぬ
)
いて
閃
(
ひらめ
)
き
出
(
いず
)
るか計られぬと云うような
暗澹
(
あんたん
)
極まる疑念が、
何処
(
どこ
)
となしに時代の空気の中に漂って居た頃で、私の
家
(
うち
)
では、父とも母とも
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
夜陰
(
やいん
)
でございますが
金目貫
(
きんめぬき
)
が光りますから抜いて見ると、
彦四郎貞宗
(
ひこしろうさだむね
)
。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
未だ十七歳なれど
家老職
(
からうしよく
)
にて
器量
(
きりやう
)
人
(
ひと
)
に
勝
(
すぐ
)
れしかば中納言樣の御意に入りて今夜も
御席
(
おんせき
)
に
召
(
めさ
)
れ
御酒
(
ごしゆ
)
頂戴
(
ちやうだい
)
の折から御取次の者右の通申上ければ中納言樣の御意に越前
夜陰
(
やいん
)
の推參何事なるか主税其方
對面
(
たいめん
)
致
(
いた
)
し委細承まはり參るべしとの御意に山野邊主税之助は
表
(
おもて
)
へ
出來
(
いできた
)
り越前守に對面して申けるは拙者は
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
夜陰
(
やいん
)
、間道をとっては、奇襲に出た。風のごとく襲っては風のごとく返り、そのたびに大きないたでを敵に与えた。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汝等
審
(
つまびらか
)
に諸の
悪業
(
あくごう
)
を作る。
或
(
あるい
)
は
夜陰
(
やいん
)
を以て
小禽
(
しょうきん
)
の家に至る。時に小禽
既
(
すで
)
に終日日光に浴し、
歌唄
(
かばい
)
跳躍
(
ちょうやく
)
して疲労をなし、
唯唯
(
ただただ
)
甘美
(
かんび
)
の
睡眠
(
すいみん
)
中にあり、汝等飛躍してこれを
握
(
つか
)
む。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
夜陰
(
やいん
)
屋敷へ来てするように罵ったり、石を投げたりする者はなく、ただ一種異様の眼を以て見送っているうちに、
馬蹄
(
ばてい
)
の音は消えて、一行は早くも甲府の城下を去ってしまいました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と
遥
(
はる
)
かに
犬
(
いぬ
)
が
長吠
(
ながぼえ
)
して、
可忌
(
いまは
)
しく
夜陰
(
やいん
)
を
貫
(
つらぬ
)
いたが、
瞬
(
またゝ
)
く
間
(
ま
)
に、
里
(
さと
)
の
方
(
はう
)
から、
風
(
かぜ
)
のやうに
颯
(
さつ
)
と
来
(
き
)
て、
背後
(
うしろ
)
から、
足代場
(
あじろば
)
の
上
(
うへ
)
に
蹲
(
うづくま
)
つた——
法衣
(
ころも
)
の
袖
(
そで
)
を
掠
(
かす
)
めて
飛
(
と
)
んだ、トタンに
腥
(
なまぐさ
)
い
獣
(
けもの
)
の
香
(
にほひ
)
がした。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
むかしの説に、
野狐
(
のぎつね
)
の名は
紫狐
(
しこ
)
といい、
夜陰
(
やいん
)
に尾を
撃
(
う
)
つと、火を発する。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
清浄を
嫉視
(
しっし
)
する
夜陰
(
やいん
)
の尼なる魔界の天使。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
およそ
忍術
(
にんじゅつ
)
というものも
夜陰
(
やいん
)
なればこそ
鼠行
(
そぎょう
)
の
法
(
ほう
)
もおこなわれ、木あればこそ
木遁
(
もくとん
)
、火あればこそ
火遁
(
かとん
)
の
術
(
じゅつ
)
もやれようが、この
白昼
(
はくちゅう
)
、この
試合場
(
しあいじょう
)
のなかで
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忽
(
たちま
)
ち
幽怪
(
いうくわい
)
なる
夜陰
(
やいん
)
の
汽笛
(
きてき
)
が
耳
(
みゝ
)
をゑぐつて
間
(
ま
)
ぢかに
聞
(
きこ
)
えた。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
するとこの
夜陰
(
やいん
)
、おくの
曲輪
(
くるわ
)
にあたって、にわかにジャラン! ……と
妖異
(
ようい
)
な
鐘
(
かね
)
のひびきがゆすりわたった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何とか、筑前どのへ、お
取做
(
とりな
)
しをもって、主人成政の一命、お救い上げねがわしゅう存じまする。そのため、
夜陰
(
やいん
)
に
乗
(
じょう
)
じ、恥をしのんで、おすがりに参った次第で……」
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“夜陰”の意味
《名詞》
夜の暗闇。
夜。夜間。
(出典:Wiktionary)
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
陰
常用漢字
中学
部首:⾩
11画
“夜”で始まる語句
夜
夜半
夜更
夜中
夜叉
夜具
夜鷹
夜寒
夜明
夜業