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塗
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まみ
ふりがな文庫
“
塗
(
まみ
)” の例文
引き
卸
(
おろ
)
させてみると、汚い風こそしておりますが、さすがに娘になる年配で、
埃
(
ほこり
)
と
垢
(
あか
)
とに
塗
(
まみ
)
れながらも、不思議に美しさが輝きます。
銭形平次捕物控:009 人肌地蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼血に
塗
(
まみ
)
れつゝかの悲しき林を出づれば、林はいたくあれすたれて今より
千年
(
ちとせ
)
にいたるまで再びもとのさまにかへらじ。 六四—六六
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
で何事に依らず
氣疎
(
けうと
)
くなツて、
頭髪
(
かみ
)
も埃に
塗
(
まみ
)
れたまゝにそゝけ立ツて、一段と
瘻
(
やつれ
)
が
甚
(
ひど
)
く見える。そして
切
(
しきり
)
と故郷を戀しがツてゐる。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
亭主物うき事に思い歎くと、大黒天その夢に現じて、宵の鼠のうどん粉に
塗
(
まみ
)
れ出でたるも、汝に富貴の道を教ゆべき方便であった。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
植物共の生命が私の指先を通して感じられ、彼等のあがきが、私には歎願のように応える。血に
塗
(
まみ
)
れているような自分を感じる。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
それは、泥
塗
(
まみ
)
れになった片側を、十四郎が喜惣に当てたことで、喜惣はまたむきになって、無傷のほうを自分のものに主張するのだった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
暴力は一時世を支配しようとも、暴力自体の自壊作用によりて
瓦壊
(
がかい
)
する。真理は一度地に
塗
(
まみ
)
れようとも、神の永遠の時は真理のものである。
二・二六事件に就て
(新字新仮名)
/
河合栄治郎
(著)
彼の眼の前には見覚えのある線路の継目と、節穴の在る枕木と、その下から噴き出す白い土に
塗
(
まみ
)
れた砂利の群れが並んでいた。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
網に掛かって
揚
(
あが
)
ったのは、余の双眼鏡で見た所では大きな不恰好な風呂敷包みの様な物である、勿論多少は泥に
塗
(
まみ
)
れて居るが
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
処女の神聖を
涜
(
け
)
がさん為めに準備せられた此の建物が、野獣の
汚血
(
をけつ
)
に
塗
(
まみ
)
れたのは、定めて浅念なことでせう——
傷
(
きずつ
)
けるものの為めには医師を
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そして、右手で、肩を
掴
(
つか
)
んで
真向
(
まむ
)
けに転がすと、半分眼を開いて血に
塗
(
まみ
)
れた口を、大きく開けて死んでいたが、顔には、何処も傷が無かった。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
とちやほや、貴公子に対する
待遇
(
もてなし
)
。
服装
(
みなり
)
もお聞きの通り、それさえ、汗に染み、
埃
(
ほこり
)
に
塗
(
まみ
)
れた、
草鞋穿
(
わらじばき
)
の旅人には、過ぎた扱いをいたしまする。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これと
対
(
むか
)
い合ッているのは四十前後の老女で、これも着物は葛だが柿染めの古ぼけたので、どうしたのか
砥粉
(
とのこ
)
に
塗
(
まみ
)
れている。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
彼等
(
かれら
)
が
幾夜
(
いくよ
)
も
踊
(
をど
)
つて
不用
(
ふよう
)
に
歸
(
き
)
した
時
(
とき
)
には、それが
彼等
(
かれら
)
の
歩
(
ある
)
いた
路
(
みち
)
の
傍
(
はた
)
に
埃
(
ほこり
)
に
塗
(
まみ
)
れながら
到
(
いた
)
る
處
(
ところ
)
に
抛棄
(
はうき
)
せられて
散亂
(
さんらん
)
して
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
るのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そこでこの不潔な市街、
汚穢
(
おわい
)
極まる人民、年中垢の中に
塗
(
まみ
)
れて居る人間もそんなに病気を受けないのだろうと思います。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
髪は霜に打たれし
蓬
(
よもぎ
)
の如く、衣は垢に
塗
(
まみ
)
れて臭気高し。われは爾時、晩食を喫了して戸外に出で、涼を
納
(
い
)
れて散策す。
客居偶録
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
垢に
塗
(
まみ
)
れて破れ裂け、補給の道もなく、皮膚は一年有余にわたる灼熱の太陽に
燬
(
や
)
かれてアンゴラ土人となんの変わりもないくらいにこげ切っていた。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
だがしかし、足は既に窓から離れ、身体は一直線に落下して居る。地下には固い鋪石。白いコンクリート。血に
塗
(
まみ
)
れた
頭蓋骨
(
ずがいこつ
)
! 避けられない決定!
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
塵埃
(
じんあい
)
に
塗
(
まみ
)
れた、草や、木が、風雨を恋うるように、生活に疲れた人々は、清新な生命の泉に
渇
(
かっ
)
するのであります。
『小さな草と太陽』序
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
無残やな、振仰ぐ宮が
喉
(
のんど
)
は血に
塗
(
まみ
)
れて、
刃
(
やいば
)
の
半
(
なかば
)
を貫けるなり。彼はその手を放たで苦き
眼
(
まなこ
)
を
睜
(
みひら
)
きつつ、男の顔を
視
(
み
)
んと為るを、貫一は気も
漫
(
そぞろ
)
に
引抱
(
ひつかか
)
へて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
背には
風呂敷
(
ふろしき
)
包み、紺の
脚絆
(
きゃはん
)
も長旅の塵埃に
塗
(
まみ
)
れて、いかにも疲れ果てたというふうであったが——立ち留まって、あとを追いかけてきた田舎娘を待った。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
正道はなぜか知らず、この女に心が
牽
(
ひ
)
かれて、立ち止まってのぞいた。女の乱れた髪は
塵
(
ちり
)
に
塗
(
まみ
)
れている。顔を見れば
盲
(
めしい
)
である。正道はひどく哀れに思った。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
不動のごとく血の炎に
塗
(
まみ
)
れさった……と思いのほか
刹那
(
せつな
)
! 燐光一線縦にほとばしって、ガッ! と兵衛の
伸剣
(
しんけん
)
を
咬
(
か
)
み返したのは自源流でいう鯉の滝昇り
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
母は血に
塗
(
まみ
)
れた父の上半身を自分の膝の上に抱いて、その上に蔽ひ被ぶさるやうに身を曲げ、顔を寄せて父の顔を見入つてゐた。私も近よつて父の顔を見た。
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
しかし、
寂寞
(
せきばく
)
とした広間の中で彼の見たものは、
御席
(
みまし
)
の上に血に
塗
(
まみ
)
れて倒れている父の一つの死骸であった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
木曾
義仲
(
よしなか
)
の場合でも分るし、尊氏の最初の京都入りの場合でも分るのだから、正成の献策が容れられたならば、尊氏は再敗地に
塗
(
まみ
)
れたかも分らないのである。
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
汗
(
あせ
)
ばんで転がるたびに砂
塗
(
まみ
)
れになってゆく、上原の肉体も、額に髪が
絡
(
から
)
みついた顔も、だんだん紅潮してゆくに従って、筋肉の線に、
膨
(
ふく
)
らみもでて来て美しく
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「国祖孫堅将軍以来、重恩をこうむって、いま三代の君に仕え奉るこの老骨。国の為とあれば、たとい
肝脳
(
かんのう
)
地に
塗
(
まみ
)
るとも、恨みはない。いや本望至極でござる」
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
情けないほどのせせらぎにさえ仕掛けた水車を踏む百姓の足取りは、疲れた車夫の様に力が無く、裸の脊を流れる汗は夥しく増えた埃りに
塗
(
まみ
)
れて
灰汁
(
あく
)
の様だった。
十姉妹
(新字新仮名)
/
山本勝治
(著)
五本の指、
掌
(
たなごころ
)
、
前膊
(
ぜんはく
)
、
上膊
(
じょうはく
)
、肩胛骨、その肩胛骨から発した肉腫が頭となって、全体が
恰
(
あだか
)
も一種の生物の死体ででもあるかのように、血に
塗
(
まみ
)
れて横たわって居た。
肉腫
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
この際誰れがこれを疑ぐろう? 彼は血に
塗
(
まみ
)
れておる。彼は書記殺しの兇賊二名を
捕
(
とら
)
えたのだ。十数名の人々は彼が兇賊と猛烈な挌闘を演じておる様を目撃した。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
發したるは我手中の銃にして、黒く數石を染めたる血に
塗
(
まみ
)
れて我前に横れるは我友なり。われは喪心者の如く凝立して、
拘攣
(
こうれん
)
せる五指の間に
牢
(
かた
)
く拳銃を
攫
(
つか
)
みたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
憎しと思う
輩
(
やから
)
の心
傷
(
やぶ
)
れ
腸
(
はらわた
)
裂け骨
摧
(
くじ
)
け脳
塗
(
まみ
)
れ生きながら死ぬ光景をながめつつ、快く一杯を過ごさんか。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
勇気を出して三発目に頭の
後
(
うしろ
)
の方を射ち抜いたので、ドスン! と音がして、与兵衛の立つてゐた二間ばかり上の方へ、大きな親猿が血に
塗
(
まみ
)
れて落ちて来たのでした。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
従って機関部の人たちに遇うことは殆どなかった。石炭と灰と油に
塗
(
まみ
)
れて
船底
(
ダンビロ
)
に
蠢
(
うごめ
)
いている彼らを、何かと言えば軽蔑する風習が
何
(
ど
)
の船の
甲板
(
デッキ
)
部員をも支配していた。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
「去年は
倭奴
(
わど
)
上海を
劫
(
おびや
)
かし、今年は
繹騒
(
えきそう
)
姑蘇
(
こそ
)
に
臨
(
のぞ
)
む。
横
(
ほしいまま
)
に双刀を飛ばし、
乱
(
みだ
)
りに
箭
(
や
)
を使う、城辺の野草、人血
塗
(
まみ
)
る」。これ明の詩人が
和寇
(
わこう
)
を
詠
(
えい
)
じたるものにあらずや。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
髪は
塵埃
(
ほこり
)
に
塗
(
まみ
)
れて
白
(
しら
)
け、面は日に焼けて
品格
(
ひん
)
なき
風采
(
ようす
)
のなおさら品格なきが、うろうろのそのそと感応寺の大門を入りにかかるを、門番
尖
(
とが
)
り声で何者ぞと怪しみ
誰何
(
ただ
)
せば
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
老管理者は
途
(
みち
)
で金物屋に寄つて、
金槌
(
かなづち
)
を一
挺
(
ちやう
)
買つて帰つた。そして
図書庫
(
としよぐら
)
に入ると、
手垢
(
てあか
)
と
塵埃
(
ほこり
)
とに
塗
(
まみ
)
れた書物を一冊づつ取り出しては、いやといふ程叩きつけたものだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
鷲郎は急ぎ
抱
(
いだ
)
き起しつ、「こや阿駒、怎麼にせしぞ」「見れば
面
(
おもて
)
も血に
塗
(
まみ
)
れたるに、……また猫にや追はれけん」「
鼬
(
いたち
)
にや襲はれたる」「
疾
(
と
)
くいへ
仇敵
(
かたき
)
は討ちてやらんに」
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
ある者は
摧
(
くじ
)
いて
髄
(
ずい
)
を吸い、ある者は砕いて地に
塗
(
まみ
)
る。歯の立たぬ者は横にこいて
牙
(
きば
)
を
磨
(
と
)
ぐ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
坂口は
喫驚
(
びっくり
)
して馳寄った。女は黒っぽい着物の裾を泥
塗
(
まみ
)
れにして、敷石の上に
蹲
(
うずくま
)
っていた。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
形相を変えた土幕民達がぞろぞろ並んで来る中に、一人の労働者風の男が背中に血
塗
(
まみ
)
れになった男を担いでいる。不吉な予感がさっと脳裡をかすめ、爺は反射的に駆け上った。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
兎に角、この電車問題では支倉の策戦が破れて、一敗地に
塗
(
まみ
)
れたものと云わねばならぬ。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
EH? 何だって? 馬が腹をやられた?
角
(
つの
)
にかかって?——あ! そうだ、数条のはらわたがぶら下って地に這って、砂に
塗
(
まみ
)
れて、馬脚に
絡
(
から
)
んで、馬は、邪魔になるもんだから
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
と血に
塗
(
まみ
)
れたる両手を
合
(
あわ
)
せ、涙ながらに頼みます恩愛の
情
(
じょう
)
の
切
(
せつ
)
なるに、重二郎と清次と顔を見合わせて
暫
(
しばら
)
く
黙然
(
もくねん
)
といたして居りますと、蔵の外より娘のおいさが、網戸を
叩
(
たゝ
)
きまして
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
かれの半身はなま血に
塗
(
まみ
)
れて、そこらに散っている俳諧の巻までも
蘇枋
(
すおう
)
染めにしているので、惣八は腰がぬけるほどに驚いた。かれは這うように表へ逃げ出して、近所の人を呼び立てた。
半七捕物帳:36 冬の金魚
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
泥に
塗
(
まみ
)
れたまままた危い一歩を踏み出そうとした。とっさの思いつきで、今度はスキーのようにして滑り下りてみようと思った。身体の重心さえ失わなかったら滑り切れるだろうと思った。
路上
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
この向島も全く昔の
俤
(
おもかげ
)
は失われて、西洋人が讃美し憧憬する広重の
錦絵
(
にしきえ
)
に見る、隅田の美しい流れも、現実には
煤煙
(
ばいえん
)
に汚れたり、自動車の
煽
(
あお
)
る
黄塵
(
こうじん
)
に
塗
(
まみ
)
れ、殊に震災の
蹂躙
(
じゅうりん
)
に全く荒れ果て
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
全欧州を征服した人々も一敗地に
塗
(
まみ
)
れて、何ら言葉を発する
術
(
すべ
)
もなく、何らなすべき
術
(
すべ
)
もなく、ただ影のうちに恐ろしきもののあるのを感じた。それは運命のしからしむるところであった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
血に
塗
(
まみ
)
れた肩先を片手で
確
(
しっか
)
り抑えながら、権九郎は体をもがいたものである。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“塗”の意味
《名詞》
(ぬり)塗ること。また、塗った物。
(ぬり)漆塗り。
(出典:Wiktionary)
塗
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“塗”を含む語句
朱塗
塗籠
塗抹
血塗
蝋塗
泥塗
塗料
糊塗
上塗
丹塗
塗師
漆塗
蝋塗鞘
塗香
塗付
塗板
紅殻塗
黒塗
溜塗
白塗
...