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喰
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た
ふりがな文庫
“
喰
(
た
)” の例文
娘は何か物を
喰
(
た
)
べかけていたらしく、
片袖
(
かたそで
)
の裏で口の中のものを仕末して、自分の忍び笑いで、自然に私からも笑顔を誘い出しながら
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「ゆっくり
喰
(
た
)
べなさいって」とりつ子が心配そうに云った、「少しずつ、ゆっくりって、お医者さんからよく云いつけられてるのよ」
おごそかな渇き
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
馬「
家
(
うち
)
でせえありゃア化物屋敷でもなんでも
宜
(
い
)
い、有難い、何か
喰
(
た
)
べられましょうか、腹が減って居るから何でも
好
(
い
)
い早く喰いたい」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
子供たちは
綿菓子
(
わたがし
)
を
喰
(
た
)
べながら、
稚児
(
ちご
)
さんが二つの扇を、眼にもとまらぬ速さでまわしながら、舞台の上で舞うのを見ていました。
狐
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
『じゃ、おじさんが代を払ってやるから、そばを喰いねえ』と、申しますと、商売物のそばを
喰
(
た
)
べると、
冥利
(
みょうり
)
がつきると申します。
奉行と人相学
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
お
腹
(
なか
)
空
(
す
)
いてたら早う薬
循
(
まわ
)
りますさかい、なるだけ余計
喰
(
た
)
べとことして、
孰方
(
どっち
)
も相手の御飯の数勘定して競争で詰め込みますのんで
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
飯を
喰
(
た
)
べながら、そんな話をしているうちに、銀子は気分が
釈
(
ほぐ
)
れ、それほど悲観したことでもないと、希望を取り返すのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
御馳走
(
ごちそう
)
がでて、みんながにぎやかに、面白く
喰
(
た
)
べたり、飲んだりして、話してゐるまつ最中、そこへあたふたと飛びこんで来たのは
燕
(
つばめ
)
でした。
虹猫の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
アッチもコッチもとお菓子を
慾張
(
よくば
)
って
喰
(
た
)
べこぼすのを野枝さんが一々拾って世話する処はやはり世間
並
(
なみ
)
のお母さんであった。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
見得
(
みえ
)
を
搆
(
かま
)
はず
豆
(
まめ
)
なり
栗
(
くり
)
なり
氣
(
き
)
に
入
(
い
)
つたを
喰
(
た
)
べて
見
(
み
)
せてお
呉
(
く
)
れ、いつでも
父樣
(
とゝさん
)
と
噂
(
うわさ
)
すること、
出世
(
しゆつせ
)
は
出世
(
しゆつせ
)
に
相違
(
さうゐ
)
なく、
人
(
ひと
)
の
見
(
み
)
る
目
(
め
)
も
立派
(
りつぱ
)
なほど
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
豚は
喰
(
た
)
べたくなかったが助手が向うに直立して何とも云えない恐い眼で上からじっと待っている、ほんとうにもう仕方なく
フランドン農学校の豚
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
蟻はすつかり
喰
(
た
)
べ酔つたが、それでも人間のやうに片手を
他
(
ひと
)
の鼻先で拡げて金を貸せとも言はないで、唯もう
蹣跚
(
よろ/\
)
と、
其辺
(
そこら
)
を這ひ廻つてゐた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
其
(
そ
)
の
晩
(
ばん
)
一
年中
(
ねんぢう
)
の
臟腑
(
ざうふ
)
の
砂拂
(
すなはらひ
)
だといふ
冬至
(
とうじ
)
の
蒟蒻
(
こんにやく
)
を
皆
(
みんな
)
で
喰
(
た
)
べた。お
品
(
しな
)
は
喰
(
そ
)
の
日
(
ひ
)
は
明日
(
あす
)
からでも
起
(
お
)
きられるやうに
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
物を
喰
(
た
)
べさせるのも、薬を飲ませるのもみんなわたしの手でするのでしょう。わたしの本を読んで聞かせる声に
賺
(
すか
)
されて、寝る時は寝るでしょう。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
自分の実の子(もっとも彼は
蟹
(
かに
)
の
妖精
(
ようせい
)
ゆえ、一度に無数の子供を卵からかえすのだが)を二、三人、むしゃむしゃ
喰
(
た
)
べてしまったのを見て、
仰天
(
ぎょうてん
)
した。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
わたくしは星野ニャン子と
申
(
もう
)
します 地球の
猫
(
ねこ
)
の
女
(
をんな
)
の子であります 仕事は
悪
(
わる
)
い
鼠
(
ねずみ
)
を
喰
(
た
)
べたり 追つたりいたします
小熊秀雄全集-22:火星探険―漫画台本
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
「皆んな其處で
御膳
(
ごぜん
)
喰
(
た
)
べてえ——。」と、京子は自分の枕から見えるところに、一同の膳を持ち出さして、
可味
(
うま
)
さうに喰べるのを喜ばし氣に見てゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
即ち極少量注射したら
瀕死
(
ひんし
)
の病人が生き返るというようなものではなくて、実際は米かパンのようなもので、毎日
喰
(
た
)
べていて栄養のとれるものなのである。
科学と文化
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
脚を開いて少し前かがみになったなり、落ち着き払って大きなカステラの一片を
喰
(
た
)
べながら、粉を受けるために掌をくぼませて、顎の下にあてがっている。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
箸
(
はし
)
にはかならず精霊様の
麻稈
(
おがら
)
を折って用い、めいめいが
喰
(
た
)
べる前にまず辻々で無縁ぼとけを祭り、または少しずつ近所の家に配ってまわるという例も多い。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あの位好きな先生を苦しめたかと思うと僕は本当に悪いことをしてしまったと思いました。
葡萄
(
ぶどう
)
などは
迚
(
とて
)
も
喰
(
た
)
べる気になれないでいつまでも泣いていました。
一房の葡萄
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
大名華族からは又うどんかけの振舞いがあり、駄菓子屋と仕立屋と彼は
喰
(
た
)
べたが、隣人は固く拒み、結局駄菓子屋と仕立屋がそれを半分ずつ分けて
平
(
たい
)
らげた。
遺産
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そして飾窓の大きな白い婚礼菓子は見る人に何となく縁の遠いようにも見えまた自分に満足を与えるようにも見えた。ちょうど北極はすべて
喰
(
た
)
べるにいいように。
見えざる人
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
『
禁盃
(
きんぱい
)
の寺内に於いて、
御酒
(
ごしゅ
)
を
頂戴
(
ちょうだい
)
いたしては如何と思いますが、せっかくの
御芳志
(
ごほうし
)
、又、この中には嫌いが少い事でもあれば、お志に甘えて、存分に
喰
(
た
)
べ申す』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お前さんの好きな作者の書いた小説ばかり読ませられている。お前さんの好きなお
数
(
かず
)
ばかり
喰
(
た
)
べさせられている。お前さんの好きな飲みものばかり飲ませられている。
一人舞台
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
喰
(
た
)
べ
飽
(
あ
)
きると、
密林
(
みつりん
)
の
上
(
うへ
)
を
高
(
たか
)
く
気侭
(
きまま
)
に
飛
(
と
)
ぶのが
好
(
す
)
きで、またその
飛行振
(
ひかうぶ
)
りが
自慢
(
じまん
)
の
種
(
たね
)
でもあつた。
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
「だってねエ、理想は
喰
(
た
)
べられませんものを!」と言った上村の顔は
兎
(
うさぎ
)
のようであった。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
先刻
(
さっき
)
、君は私の手料理になる
栄螺
(
さざえ
)
を、
鱈腹
(
たらふく
)
喰
(
た
)
べてくれたね。ことに君は、×××××、
箸
(
はし
)
の
尖端
(
さき
)
に摘みあげて、こいつは
甘味
(
うまい
)
といって、嬉しそうに食べたことを覚えているだろうね。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
大いに感謝してむしゃむしゃ
喰
(
た
)
べながら、またゴルフをつづける。僕は、たった六回で穴にいれた。きょうのレコードだった。浜の子供が四人、いつのまにやら、僕たちについて歩いている。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この有様を家畜となった牛に比すればどうであろう。乳牛の如き各自の小舎に
餌
(
か
)
われあるいは牧場で草を
喰
(
た
)
べる時の有様は、怪しげなる者が来ても更に怖るるの
風
(
ふう
)
なく安んじてその所を得ている。
デモクラシーの要素
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
わが家の熟睡にある同人連は
夥
(
おびただ
)
しい迷惑を
蒙
(
こうむ
)
り、翌朝それがために寝坊を余儀なくされ、そして僕は朝飯が待ち切れずに停車場の待合室へ
赴
(
おもむ
)
いて汽車売の弁当を
喰
(
た
)
べなければならなくなったりする。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
「娘さんの後ろ姿を伏し拝むようにして
喰
(
た
)
べてましたよ」
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
父親
(
ちゃん
)
は何事もないが、
何故
(
なぜ
)
魚を
喰
(
た
)
べないのだろう。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
遣
(
や
)
ろ。帰ち
喰
(
た
)
びい」
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
莓
(
いちご
)
の
初熟
(
はつなり
)
が
喰
(
た
)
べたいと
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
石の
竈
(
かまど
)
に備えつけの
鍋
(
なべ
)
で持って来た
糒
(
ほしいい
)
をもどし、干味噌をまぜた雑炊を作って
喰
(
た
)
べた。そしてひと休みするとすぐにまた出発した。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
母「
喰
(
た
)
べんと云ったら喰べん、
文五右衞門
(
ぶんごえもん
)
殿の亡い
後
(
のち
)
は
私
(
わし
)
が
親父様
(
おとっさま
)
の代りでございます、武士に二言はない、決して勧めるときかんぞ」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と、西洋料理を
奢
(
おご
)
らせて、たらふく
喰
(
た
)
べて帰ったり、そうかと思うと雨の降る晩に遅くやって来て、寝室の戸をトントンと
叩
(
たた
)
いて
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一年間も何も
喰
(
た
)
べずにゐたのだから、虫が死ぬのは当りまへだと思つて、武士は虱の
死骸
(
しがい
)
を掌にのせた。そしてじつと眺めた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
既
(
すで
)
に同一感情と生活意識の上に立って生きて居るとしますれば一つのものを
喰
(
た
)
べ、同じ所を
視
(
み
)
、なるべく同じ所に居たいのはあたりまえです。
家庭愛増進術:――型でなしに
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
仕方なく/\御飯の代りに西瓜を
喰
(
た
)
べて、孫から言ひつけられるとほりに歌を唄ひ、あぢきない日を送つてをりました。
漁師の冒険
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
緑雨が一日私の下宿で暮す時は下宿の
不味
(
まず
)
いお膳を平気で
喰
(
た
)
べていた。シカモ
鰍
(
いなだ
)
の味噌煮というような下宿屋料理を小言
云
(
い
)
い云い奇麗に平らげた。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ずうっと下の方の野原でたった一人
野葡萄
(
のぶどう
)
を
喰
(
た
)
べていましたら馬番の理助が
欝金
(
うこん
)
の切れを首に巻いて
木炭
(
すみ
)
の空俵をしょって
大股
(
おおまた
)
に通りかかったのでした。
谷
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
午餐
(
ひる
)
に
家
(
うち
)
の
者
(
もの
)
は
田
(
た
)
から
戻
(
もど
)
つて
其
(
そ
)
の
飯
(
めし
)
を
喰
(
た
)
べた。ちつとはどうだとお
袋
(
ふくろ
)
に
勸
(
すゝ
)
められても
勘次
(
かんじ
)
は
唯
(
たゞ
)
俯伏
(
うつぶし
)
に
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
だが、
喰
(
た
)
べ馴れて来ると、そんな臭味でさへ
堪
(
たま
)
らなく懐しくなつて来るさうで、ヅリヤンが市場に出盛る頃には、
女郎屋町
(
ぢよろやまち
)
でさへが不景気になるといふ事だ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
新吉と
差向
(
さしむかい
)
で晩飯を
喰
(
た
)
べ、日がかげると
俄
(
にわ
)
かに涼しくなる頃の縁側で、虫の声の外には何の物音もしない広い庭から、崖の下の町に灯のともる景色を見ていると
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
親子
(
おやこ
)
三人
口
(
くち
)
おも
湯
(
ゆ
)
も
滿足
(
まんぞく
)
には
呑
(
の
)
まれぬ
中
(
なか
)
で
酒
(
さけ
)
を
買
(
か
)
へとは
能
(
よ
)
く
能
(
よ
)
くお
前
(
まへ
)
無茶助
(
むちやすけ
)
になりなさんした、お
盆
(
ぼん
)
だといふに
昨日
(
きのふ
)
らも
小僧
(
こぞう
)
には
白玉
(
しらたま
)
一つこしらへても
喰
(
た
)
べさせず
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
もっとも日本人が脂肪質を沢山
喰
(
た
)
べ、毛織物を一般に用いるようになったためかとも考えられる。
雪の話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
、一
樽
(
たる
)
開けてみたところ、よい色に漬かっているわの。じゃが、
其方
(
そなた
)
が
箸
(
はし
)
をつけぬうちは、誰にも、
喰
(
た
)
べさす事ができぬによって、一箸、喰べてみておくれ。——余りそう精を
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを
喰
(
た
)
べろというので、なかを見ると、うまそうな中華そばが入っていた。
大空魔艦
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
喰
漢検準1級
部首:⼝
12画
“喰”を含む語句
漆喰
喰付
馬喰
喰込
喰物
大喰
酒喰
面喰
馬喰町
喰切
喰止
何喰
喰屍鬼
出喰
喰違
虫喰
漆喰壁
買喰
喰殺
喰気
...