其通そのとほ)” の例文
おなひとですら其通そのとほり、いはんやかつこひちかられたことのないひと如何どうして他人たにんこひ消息せうそくわからう、そのたのしみわからう、其苦そのくるしみわからう?。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
つちをなめてもれを立身りつしん手始てはじめにしたきわがひと、れながらくもへたるうそにかためて、名前なまへをも其通そのとほり、當座たうざにこしへらて吾助ごすけとかひけり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ロミオ されば明白はっきりはうが、わしはカピューレットのあのうつくしいむすめまた戀人こひゞとめてしまうた。わしめたれば先方むかうもまた其通そのとほりにめたのでござる。
しかるに二時ふたときしのぶをず、なみだながしてきううつたへ、只管ひたすらかごでむとわぶ、なんぢすら其通そのとほりぞ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また今更いまさらかんがへれば旅行りよかうりて、無慘々々むざ/\あたら千ゑんつかてたのは奈何いかにも殘念ざんねん酒店さかやには麥酒ビールはらひが三十二ゑんとゞこほる、家賃やちんとても其通そのとほり、ダリユシカはひそか古服ふるふくやら、書物しよもつなどをつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
のがれん爲吉三郎がこしらへ事にて候如何に菊吉三郎と密通みつつういたしおぼえなきならば其通そのとほり早く申上よと急立せきたちけるにお菊は生れしよりはじめて奉行所ぶぎやうしよへ呼出され大勢の中にて吉三郎がいましめられやつれたるを見て涙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小六ころく其通そのとほりを通知つうちして、御前おまへさへそれで差支さしつかへなければ、おれがもう一ぺん佐伯さへきつて掛合かけあつてるがと、手紙てがみあはせると、小六ころく郵便いうびんいたばん、すぐあめなかを、からかさおとてゝつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
乳母 はれ、いおひとや、ほんに其通そのとほまうしましょわいな。ほんに、ま、何樣どのやうよろこばッしゃらう。
たせてきてもかりしを供待ともまちちの雜沓ざつたふ遠慮ゑんりよして時間じかんはやめに吩咐いひつけかへせしものなんとしての相違さうゐぞやよもやわすれてぬにはあらじうちにても其通そのとほ何時いつまでむかさずにはかれまじ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
妻子へ下し置れ候むね其節そのせつおほせ渡され候と申立ければ越前守殿御聞有て成程其調べの儀は此越前守が取調べても其通そのとほりなり然るに忠兵衞と申者八箇年打過うちす只今たゞいまと成て右樣の儀申出ると言ふは何ぞ忠兵衞が右長庵に遺恨ゐこんにても是ある事にはあらざるか何ともあやしき證據人なり八箇年以前同役が調しらべのせつかみ然樣さやうの不吟味は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
バルタ 其通そのとほりにござります。あそこに主人しゅじんられまする、御坊ごばう可憐いとしうおもはせらるゝ。
本當ほんたうやつなれば、今度こんどぼくくつしたをみてたまはるときれにもなにこしらへてたまはれ、よろしきか姉樣ねえさま屹度きつとぞかし姉樣ねえさま、と熱心ねつしんにたのみて、覺束おぼつかなき承諾しようだくことば其通そのとほさとしつたふれば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くしじようさまにもぞおよろこ我身わがみとても其通そのとほりなり御返事おへんじ屹度きつとまちますとえば點頭うなづきながら立出たちいづまはゑんのきばのたちばなそでにかをりて何時いつしつき中垣なかがきのほとりふきのぼる若竹わかたけ葉風はかぜさら/\としてはつほとゝぎすまつべきなりとやを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よめになどゝはおもひもらぬことなり芳之助よしのすけもあれゆるさずと御立腹ごりつぷく數々かず/\それいさゝかも御無理ごむりならねどおまへさまとえんきれて此世このよなんたのしからずつらき錦野にしきのがこともあり所詮しよせん此命このいのちひとつぞと覺悟かくごみちおなじやうに行逢ゆきあつておまへさまのおこゝろうかゞへば其通そのとほりとか今更いまさら御違背ごゐはいのあるはずなしわたしうれしうぞんじますを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)