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この鐘きかむとて、われとせの春秋はるあきをあだにくらしき。うれたくもたのしき、今のわが身かな。いざやおもひのまゝに聽きあかむ。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
人間と同じように歌わせることだけはつかしいが、器楽が自由自在に演奏出来るのだから、追々と歌や言葉だって出来ない筈はない
音波の殺人 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
茶の湯を学ぶ彼らはいらざる儀式に貴重な時間を費やして、一々に師匠の云う通りになる。趣味は茶の湯よりずかしいものじゃ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まゐりましたところ堺町さかひちやうでうきたまちといふ、大層たいそうづかしい町名ちやうめいでございまして、里見さとみちうらうといふ此頃このごろ新築しんちくをした立派りつぱうち
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
何時迄も致すは迷惑めいわくなり殊に又私しの末の弟がツケしくふゆゑ何か最初さいしよより申通り持參金ぢさんきんの百兩衣類道具代等は兎も角も離縁状りえんじやうばかりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
椿つばきこずゑには、ついのあひだ枯萩かれはぎえだつて、そのとき引殘ひきのこした朝顏あさがほつるに、いつしろのついたのが、つめたく、はら/\とれてく。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
食物でいえばガラス絵などは、間食の如きものでしょう、間食で生命をつなぐ事はつかしい、米で常に腹を養って置かなくてはなりません。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
しからばどんな歌が、味いは無くても面白い歌という例歌があるかと云われると、その例歌を上げることは余程つかしい。
歌の潤い (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
付記 なほ四五十年ぜんの東京にはかう云ふ歌もあつたさうである。「ねるぞ、ねだ、たのむぞ、たる木、はりも聴け、明けのつには起せおほびき」
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
みんなつの瀬戸もののエボレツトを飾り、てつぺんにはりがねのやりをつけた亜鉛とたんのしやつぽをかぶつて、片脚でひよいひよいやつて行くのです。
月夜のでんしんばしら (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
明けのつから暮の六つまで、人をいたり流したりしていましたが、これはもちろん、その時刻にしてはあまりに早過ぎることなのであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
急に彼はその姿をとらへようといつ足追ひすがつた。がすぐに棒立ちにそこに立ちすくんでしまつた。ふと思ひあたるところが彼にはあつたのである。
黎明 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
まだつが鳴ってもないというのに彫師ほりしの亀吉は、にやにや笑いながら、画室の障子に手をかけた。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
独見どくけんもでき、翻訳もでき、教授もでき、次第に学問の上達するにしたがい、次第に学問はッかしくなるものにて、真に成学したる者とては、慶応義塾中一人もなし。
慶応義塾新議 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
はなはだツかしいかおを作り、役所の方からはまだ月給が下らない、学校の方も駄目だめで、実に「愛してはいるが助けることが出来ない」と言って彼を空手で追い帰した。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
これ縛る星の意であって、幾つもの小星が連なりて一団をなしおるを以てなづけたのであろう。また連星つれぼしともいう。これ普通の視力ある人に六つだけ星が見ゆるからである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
文久二年渡欧の船中で松木弘安まつきこうあん(後の寺島宗則てらじまむねのり)らに向い「とても幕府の一手持はつかしい。ず諸大名を集めて、独逸ドイツ連邦のようにしては如何」(『自伝』)と述べ幕府を
福沢諭吉 (新字新仮名) / 服部之総(著)
七つの落ち葉の山、つまで焼きて土曜日の夜はただ一つを余しぬ。この一つより立つ煙ほそぼそと天にのぼれば、淡紅色うすくれないかすみにつつまれて乙女おとめの星先に立ち静かに庭に下れり。
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
まだいとけなくて伯母をばなる人に縫物ならひつる頃、衽先おくみさきつまなりなどづかしう言はれし。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あさはんつてから、老人らうじんあしだから、池田いけだいたときは、もうつであつた。おくれた中食ちうじきをして、またぽつ/\と、うまかよひにくいみちを、かはつて山奧やまおくへとすゝんでつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
い、う、い、お、つ、う、ななあ、こことを、十一、十二……十三……
落葉日記(三場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
秋の日の暮れ切つたくれはん(午後七時)頃である。小僧はどこへか使つかいに出た。
赤膏薬 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「種員さん、もうやがてツだろうが先生はどうなされた事だろうの。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして、裏面には、手薊であざみの模様が、透し彫りになっているのだ。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
つきて見むこことを手もて数へてこれの手鞠を
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
唱 六っの道今は迷はじっの文字
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「——ツ、ウ、……」
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たび歌よみに与ふる書
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
もとなゝもと立つ柳
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
なゝつのゆびつおりて
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
つかしい白髪頭の家来達の外に、男というものを見たことの無い京姫は、この不思議な男——何時いつぞやの闖入者、——小柄で綺麗で
「わたしは、あなたよりなお大丈夫です。——それからと、ええと、少しくずかしくなって来たな。どうも訳し——いや読みにくい」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
到底詩的趣味の感懐を満足させることはつかしい、普通一般的浅薄な娯楽としてはもちろんこの上なきものであろうが
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
みんなつの瀬戸せともののエボレットをかざり、てっぺんにはりがねのやりをつけた亜鉛とたんのしゃっぽをかぶって、片脚かたあしでひょいひょいやって行くのです。
月夜のでんしんばしら (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
従って万事は心の問題であるので技法としてお伝えする事も甚だつかしい。私自身も油絵という船に目下皆様と共に乗り込んで難航最中なのである。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
……来かゝる途中に、大川おおかわ一筋ひとすじ流れる……の下流のひよろ/\とした——馬輿うまかごのもう通じない——細橋ほそばしを渡り果てる頃、くれつの鐘がゴーンと鳴つた。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女子をなごこそ世にやさしきものなれ。戀路はつに變れども、思ひはいづれ一つ魂にうつる哀れの影とかや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
中にも恒太郎は長二が余りの無作法にかっいかって、突然いきなり長二のたぶさを掴んで仰向に引倒し、拳骨で長二の頭を五つつ続けさまに打擲ぶんなぐりましたが、少しもこたえない様子で
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どう考えても乃公は悪人ではないが、古久先生の古帳面に蹶躓けつまづいてからとてもツかしくなって来た。彼等は何か意見を持っているようだが、わたしは全く推測が出来ない。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「何んでもいいから石町こくちょうつを聞いたら、もう一度ここへ来てくんねえ。勝負にならねえといわれたんじゃ歌麿の名折なおれだ。飽くまでその陰女に会って、お前の敵を討たにゃならねえ」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
やさしいかたなれば此樣こんづかしいのやうの世渡よわたりをしておいでならうか、れもこゝろにかゝりまして、實家じつかたび御樣子ごやうすを、もしつてもるかといてはまするけれど
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
縁の欠けた土器かわらけがたった一つ(底に飯粒がへばりついているところを見ると、元はかゆでも入れたものであろう。)捨てたように置いてあって、たれがしたいたずらか、その中に五つ
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ソノウチ普請モ出来、新宅ヘ移リ居ルト、右京方ニテハ跡取ガ二歳故、本家ノ天野岩蔵トイウ仁ガ、久来ノ意趣ニテ、家督願ノ時ツカシク云イ出シテ、右京ノ家ヲツブサントシタカラ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老いし兵わらひ落しつかきかぞへ九人ここなたりの子
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いつこえたるがといふ者は長三郎とて今茲十九になる男子一にんさるに此長三郎はうまれ附ての美男にて女の如き者なればたれいふともなく本町業平なりひらまた小西屋の俳優息子やくしやむすこと評判殊にたかかるより夫婦は何卒なにとぞよきよめとつ樂隱居らくいんきよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
五めんなされよアラずかしや。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
坪ばかりの庭ながら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かくして四、五日はいたずらに過ぎた。健三がようや守坂かみざかへ出掛けた時はずかしいかも知れないといった姉が、もう回復期に向っていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宇佐美六郎の顔のつかしさ、眉も眼も鼻も口も、キリリと引締って、次の間に通ずる厚っぽいカーテンへ、その鋭い目をきっと注ぎました。
青い眼鏡 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ここがはなはだつかしい誤解しやすいところですから、よく注意を願います、吾々とてその新しい珍らしい変化とか新思想を毫末ごうまつも嫌うのではない
子規と和歌 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)