兄弟きょうだい)” の例文
その金魚きんぎょともだちもなく、おやや、兄弟きょうだいというものもなく、まったくのひとりぼっちで、さびしそうに水盤すいばんなかおよぎまわっていました。
水盤の王さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
小さい太郎は、兄弟きょうだいがなくてひとりぼっちだったからです。ひとりぼっちということは、こんなとき、たいへんつまらないと思います。
かぶと虫 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「例えば夫婦だとか、兄弟きょうだいだとか、またはただの友達だとか、情婦いろだとかですね。いろいろな関係があるうちで何だと思いますか」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このかみさまたちの中に、秋山あきやま下氷男したびおとこ春山はるやま霞男かすみおとこという兄弟きょうだいかみさまがありました。ある日あに秋山あきやま下氷男したびおとこは、おとうと霞男かすみおとこかって
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
岩倉少将(具定ともさだ)、同八千丸やちまる具経ともつね)の兄弟きょうだい公達きんだちが父の名代みょうだいという格で、正副の総督として東山道方面に向かうこととなったのである。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
じつをいうと、兄弟きょうだいは三人だったのです。しかし、この三番めの息子を兄弟の中にかぞえる者は、ひとりもありませんでした。
それから十年というあいだ、兄弟きょうだいたちはこの小屋こやでいっしょにくらしましたが、みんなはそれほど長いとも思いませんでした。
あたしとお前さんとは、兄弟きょうだいかも知れないんだよ。般若の五郎さんは、おッ母さんの亭主じゃあないけれど、亭主みたようなときもあったんだ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
けれども哀れな兄弟きょうだいたちの乗り込んでいる妹の難破船は、だんだんわれわれの視野に大きく明瞭めいりょうにはいるようになった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
でもそのときには、もう奥がたも気が遠くなって、死んだようになっていましたから、とても立ちあがって、兄弟きょうだいたちをむかえる気力きりょくはありませんでした。
青ひげ (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
ですから、ふだんは兄弟きょうだいのようになかのよい生徒せいとたちも、このときばかりは、はげしいきょうそうになりました。
普通の兄弟きょうだいのようには話し合わない二人であるから、生活苦も末摘花すえつむはなは訴えることができないのである。
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
兄弟きょうだいのない自分には葉子が前世ぜんせからの姉とより思われぬ。自分をあわれんで弟と思ってくれ。せめては葉子の声の聞こえる所顔の見える所にいるのを許してくれ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
人間にんげん世界せかいは、主従しゅじゅう親子おやこ夫婦ふうふ兄弟きょうだい姉妹等しまいなど複雑こみいった関係かんけいで、いろとりどりの綾模様あやもようしてりますが、天狗てんぐ世界せかいはそれにきかえて、どんなにも一ぽん調子ちょうし
人々は彼と朝日照り炊煙すいえん棚引たなびき親子あり夫婦あり兄弟きょうだいあり朋友ほうゆうあり涙ある世界に同居せりと思える、彼はいつしか無人むにんの島にその淋しき巣を移しここにその心を葬りたり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その妹というのが、真実の兄弟きょうだいには相違ないんだが、音楽学校出身の才媛で、兄貴とはウラハラの非常に品のいい美人なんだ。何でも、死んだ轟氏がパトロンで兄妹の学費を
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
心血を注いだ劇音楽「雪娘」も不成功におわり、当時ロシア楽壇の支柱と思われていたルービンシュタイン兄弟きょうだいはチャイコフスキーの作品を無視して、少しの好意も示さなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
わが輩も子供の時から君と兄弟きょうだいのように育って、実際才力の上からも年齢としからも君を兄と思っていた。今後も互いに力になろう、わが輩も及ぶだけ君のために尽くそうと思っていた。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
よしたおるるも、兄弟きょうだいある者には、跡職あとしきの儀は申すに及ばず、兄弟子なき者どもとて筋目筋目の縁を尋ね出し、後々の跡目恩賞は決して相違あるものではない。もっとも働きの高下にはよるが
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ばてれん」とは教父、宣教師のことであり、「いるまん」とは法の兄弟きょうだいすなわち準宣教師のことであり、「立ちかえり者」とはいったん宗門をころんで再び切支丹キリシタンに帰った者のことである。
だれでもそうであるが、わたしたち兄弟きょうだい姉妹しまいは、おおきくなってから、いつまでもおかあさんのそばにいっしょにいることができなかった。
お母さまは太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
実の兄弟きょうだいはなし、ただ一人ひとりお喜佐のような異腹はらちがいの妹に婿養子の祝次郎はあっても、この人は新宅の方にいて彼とはあまり話も合わなかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この兵隊さんたちは、みんな兄弟きょうだいでした。なぜって、みんなは、一本の古いすずのさじをとかして作られていましたから。
それから、十二人の兄弟きょうだいたちは、森のおくへおくへとはいっていきました。いつのまにか、森のまんなかのいちばんくらいところまできました。
大きくなって、義家よしいえはおとうさんの頼義よりよしについて、奥州おうしゅう安倍貞任あべのさだとう宗任むねとうという兄弟きょうだいあらえびすを征伐せいばつに行きました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これは奥がたの兄弟きょうだいで、ひとりは竜騎兵りゅうきへい、ひとりは近衛騎兵このえきへいだということを、青ひげはすぐと知りました。
青ひげ (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
兄弟きょうだいげんかはいけません。諭吉ゆきち勉強べんきょうぎらいは、かあさんにもせきにんがあります。いえがまずしいものだから、つい、諭吉ゆきちいえだすけばかりをしてもらっていました。
わたくしいまでも時々ときどきはいつの時代じだいになったら、夫婦ふうふ親子おやこ兄弟きょうだいむかしのようにたのしく同居どうきょすることができるのかしらとおもわれてなりませぬ。あなたにはそんなことがないのですか?
「君の兄弟きょうだいは何人でしたかね」と先生が聞いた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兄弟きょうだいのようすはわからなかったのです。そのから、やまでは、母親ははおや子供こどもこえがさびしく、陰気いんきに、毎日まいにちのようにかれました。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてこんな有様ありさまはそれから毎日まいにちつづいたばかりでなく、しそれがひどくなるのでした。兄弟きょうだいまでこのあわれな子家鴨こあひる無慈悲むじひつらあたって
早い話が、義理ある兄弟きょうだいの半蔵は平田門人の一人ひとりであり、この神葬祭の一条は平田派の国学者が起こした復古運動の一つであるらしいのだから。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こんなふうですから、子供こどもときからつよくって、けんかをしても、ほかの兄弟きょうだいたちはみんなかされてしまいました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おれの兄弟きょうだいたちは、みんなあのばあさんのおかげで、火をつけられて、けむりになっちまったんだ。ばあさんたら、いっぺんに六十もつかんで、みんなのいのちをとっちまったのさ。
神様かみさまのお言葉ことばによれば、いつか時節じせつがまいれば、親子おやこ夫婦ふうふ兄弟きょうだいが一しょらすことになるとのことでございますが、あんな工合ぐあいでは、たとえ一しょらしても、現世げんせのように
まあ、わたしがここにいなければともかく、おまえとここでかおをあわせながら、このまま江戸えどへいかせたとあっては、まるで兄弟きょうだいがぐるになってやったようで、おかあさんにもうしわけないではないか。
まあ、よくけんかのこるりんごですね。このことを田舎いなかのおばあさんにいってあげようかしらん。おばあさんは、きっと兄弟きょうだいげんかを
政ちゃんと赤いりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
片岡山かたおかやまという言葉ことばかぶせたかざりの枕言葉まくらことばで、うた意味いみは、片岡山かたおかやまの上に御飯ごはんべずにえてているたびおとこがあるが、かわいそうに、おや兄弟きょうだいもない
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
七十三歳の春を迎えたおまんはしきりに襦袢じゅばんそでで老いのまぶたをおしぬぐっていたが、いよいよ兄弟きょうだいの子供が東京への初旅に踏み出すという朝は涙も見せなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さて、この国にふたりの兄弟きょうだいが住んでおりました。あるまずしい男のむすこたちでしたが、このふたりが名のってでて、このたいへんな冒険ぼうけんをやってみよう、ともうしでました。
真紅まっかなアネモネが、花屋はなやみせならべられてありました。おなつちからまれた、このはなは、いわば兄弟きょうだいともいうようなものでありました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
保名やすなからだもとどおりになるにはなかなか手間てまがかかりました。むすめはそれでも、毎日まいにちちっともきずに、親身しんみ兄弟きょうだい世話せわをするように親切しんせつ世話せわをしました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
今は黙ってみている場合でないとして、北原兄弟きょうだいのような人たちがたち上がったのに不思議もない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ごはんがにえたら、おかあさんにあげて、さきべておしまい。」と、父親ちちおやは、戸口とぐち兄弟きょうだい注意ちゅういして、そらをながめていましたが
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
兄弟きょうだいはだんだん大きくなって、よくけんかをしました。するとおとうとはにいさんにさんざんわるいいたずらをしては、げてって、とおくのほうでまだからかっていました。
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
半蔵夫婦の見ている前では、兄弟きょうだいの子供の取っ組み合いが始まった。兄の前髪を弟がつかんだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ねこは、おな母親ははおやはらから、いっしょにまれた兄弟きょうだいわかれて、このうちにきて、こうして、ながやしなわれることとなったのでありました。
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)
このむすめおや兄弟きょうだいもない、ほんとうの一人ひとりぼっちで、このさびしいもりおくんでいるのでした。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「どうしてお前はそんなことを言うんだい。寿平次さんとおれとは、同じように古い青山の家に生まれて来た人間さ。立場は違うかもしれないが、やっぱり兄弟きょうだいは兄弟だよ。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
午後ごごから、きゅうそらくらくなって夕立ゆうだちがきそうになりました。兄弟きょうだいが、縁側えんがわはなしをしていると、ぽつりぽつりあめがふりだしました。
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)