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余
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あまり
ふりがな文庫
“
余
(
あまり
)” の例文
旧字:
餘
この二家が枕山を推して
畏友
(
いゆう
)
となしているのは、その前途
洵
(
まこと
)
に測るべからざることを証して
余
(
あまり
)
あるものであろうとの意を述べている。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかもかくのごときはただこれ困窮の
余
(
あまり
)
に
出
(
い
)
でたことで、他に何等の
煩悶
(
はんもん
)
があってでもない。この煩悶の
裡
(
うち
)
に「鐘声夜半録」は成った。
おばけずきのいわれ少々と処女作
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「その方の衣服と扇子は、それで判っておるが、その
余
(
あまり
)
の
贓物
(
ぞうぶつ
)
は、どこへ隠してある、早く云え、云わなければ、
拷問
(
ごうもん
)
にかけるぞ」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
これぎり
空
(
むなし
)
く相成候が、
余
(
あまり
)
に
口惜
(
くちをし
)
く
存候故
(
ぞんじさふらふゆゑ
)
、一生に一度の
神仏
(
かみほとけ
)
にも
縋
(
すが
)
り候て、此文には私一念を巻込め、
御許
(
おんもと
)
に
差出
(
さしいだ
)
しまゐらせ候。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
また少女の姿は、初めて
逢
(
あ
)
ひし人を動かすに
余
(
あまり
)
あらむ。
前庇
(
まえびさし
)
広く飾なき
帽
(
ぼう
)
を
被
(
か
)
ぶりて、年は十七、八ばかりと見ゆる
顔
(
かん
)
ばせ、ヱヌスの古彫像を
欺
(
あざむ
)
けり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
その女は昔し芸者をしていた頃人を殺した罪で、二十年
余
(
あまり
)
も
牢屋
(
ろうや
)
の中で暗い月日を送った
後
(
あと
)
、
漸
(
やっ
)
と世の中へ顔を出す事が出来るようになったのである。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実
(
じつ
)
に
此
(
この
)
音色
(
ねいろ
)
を
蓄
(
たくは
)
へて
置
(
お
)
く
等
(
など
)
といふは、
不思議
(
ふしぎ
)
と
申
(
まう
)
すも
余
(
あまり
)
あることでござりまする。
殊
(
こと
)
に親、
良人
(
をつと
)
、
誰
(
たれ
)
に
拘
(
かゝは
)
らず
遺言
(
ゆゐごん
)
抔
(
など
)
を
蓄
(
たくは
)
へて
置
(
お
)
いたら
妙
(
めう
)
でござりませう。
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夫婦の情愛というものが水の上の油のように別になって「人」のする百般の事柄と何の
関係
(
かかわり
)
もないと考えていられるのは
余
(
あまり
)
に
浅浅
(
あさあさ
)
しくはありますまいか。
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
小太郎が
会釈
(
えしゃく
)
の
中
(
うち
)
も、なほ上手の子供をずつと見廻して漸く心付き、これならばと思案を定める工合得心がいき、貴人高位の
白
(
せりふ
)
も
喜
(
よろこび
)
の
余
(
あまり
)
溢れ出でし様にて好し。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
駄賃
(
だちん
)
の
徒
(
と
)
はこの翁を
父親
(
ちちおや
)
のように思いて、
親
(
した
)
しみたり。少しく収入の
余
(
あまり
)
あれば、町に
下
(
くだ
)
りきて酒を飲む。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ただ
喫驚
(
びっくり
)
した余りに怒鳴り、
狼狽
(
うろた
)
えた
余
(
あまり
)
に喚いたので、
外面
(
そと
)
に飛び出したのは逃げ出したるに過ぎない。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
零下何度じゃ絵筆が凍るからね……とにかく忠義一遍に
凝
(
こ
)
り固まって、そんな誤算がある事を全く予期していなかった呉青秀の
狼狽
(
ろうばい
)
と驚愕は察するに
余
(
あまり
)
ありだね。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
余は「歌念仏」を愛読するの
余
(
あまり
)
、其女主人公に就きて感じたるところを
有
(
あり
)
の
儘
(
まゝ
)
に筆にせんとするのみ。
「歌念仏」を読みて
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
毎日毎日根気よく同じようなことを繰返していたが、とうとう夏から秋にかけて——
尤
(
もっと
)
もその
中
(
うち
)
の半分
余
(
あまり
)
は無駄に遊んだ——たった三つばかりしか出来上らなかった。
蝋人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
一、課題を得て空想上より俳句を得んとする時に、その課題もし難題なれば作者は苦吟の
余
(
あまり
)
見るに堪へざる拙句を為すこと、老練の人といへども往々免れざる所なり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
かれは人に捕へられて、
憎悪
(
ぞうを
)
の
余
(
あまり
)
、その火の中に投ぜられたのであらうか、それとも又、
独
(
ひと
)
り
微笑
(
ほゝゑ
)
んで身をその中に投じたのであらうか。それは恐らく誰も知るまい。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
「
多寡
(
たか
)
が一里だ。」と、彼は難所に逢う毎に自ら励ました。が、
或
(
あるい
)
は
路
(
みち
)
を踏み違えたのかも知れぬ。
已
(
すで
)
に二時間
余
(
あまり
)
を費したかと思うのに、目指す
窟
(
いわや
)
を
未
(
いま
)
だ探り得なかった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何事をも永遠に
免
(
ゆる
)
すものの目の前で、のた打ち廻るような必死の苦痛を、最初たった一人が受けたなら、その外の一切の人間の罪は、もうそれで
贖
(
あがな
)
って
余
(
あまり
)
あろうではないか。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
其時、草色の真綿帽子を冠り、糸織の綿入羽織を着た、五十
余
(
あまり
)
の男が入口のところに
顕
(
あらは
)
れた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
然
(
しか
)
れども
其
(
そ
)
の文章
亦
(
また
)
おのずから佳、前人評して曰く、
醇龐博朗
(
じゅんほうばくろう
)
[#「醇龐博朗」は底本では「醇※博朗」]、
沛乎
(
はいこ
)
として
余
(
あまり
)
有り、
勃乎
(
ぼっこ
)
として
禦
(
ふせ
)
ぐ
莫
(
な
)
しと。又曰く、
醇深雄邁
(
じゅんしんゆうまい
)
と。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかし一方潜水艦が発見された! 父が救助された! そう云う電話を聞いて、嬉しさの
余
(
あまり
)
、前後の思案もなく、迎えの自動車に乗って横須賀へ向かった文子は、どうなったか。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
今にして思えば、中野の死は惜しみても
余
(
あまり
)
あるものであり、いささか礼を失するかも知れぬが、私の信ずるところを率直に語れば、中野本来の面目から逸脱した無意味な行為であった。
叛骨・中野正剛:――主観的な覚え書き
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
福渡からは旭川の流れに沿って、山の
麓路
(
ふもとじ
)
を七里
余
(
あまり
)
、人力車に曳かれて進んだ。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
彼の講義
振
(
ぶり
)
は
鮮
(
あざや
)
で
所謂
(
いわゆ
)
る水際立っていた。二月
余
(
あまり
)
経った頃には塾生の数も八十人を越し、
咿唔
(
いご
)
の声道に響き行人の足を止める程であった。佐藤は
頗
(
すこぶ
)
る得意であった。従って講義に油が乗る。
国事犯の行方:―破獄の志士赤井景韶―
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ル・マタンの記者が口を極めて子供を公園へ出し屋外の空気に触れさせよと勧告して居るのは
道理
(
もつとも
)
である。
巴里
(
パリイ
)
の母親は
余
(
あまり
)
に自分の遊楽に
耽
(
ふけ
)
つて子供の自由を顧みないと記者は言つて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
しかしながら一刹那でも人類の歴史がこの詩的高調、このエクスタシーの刹那に達するを
得
(
え
)
ば、長い長い旅の辛苦も償われて
余
(
あまり
)
あるではないか。その時節は必ず来る、着々として来つつある。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
未
(
いま
)
だ悟らぬか。五つのパンを五千人に分ちて、その
余
(
あまり
)
を
幾筐
(
いくかご
)
ひろい、また七つのパンを
四千人
(
しせんにん
)
に分ちて、その
余
(
あまり
)
を
幾籃
(
いくかご
)
ひろいしかを覚えぬか。我が言いしはパンの事にあらぬを
何
(
なん
)
ぞ悟らざる。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
夜
(
よ
)
は
余
(
あまり
)
ありとく
醒
(
さ
)
めよ
全都覚醒賦
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
名門の女子深窓に養われて、
傍
(
かたわら
)
に夫無くしては、
濫
(
みだ
)
りに他と言葉さえ交えまじきが、今日朝からの心の
裡
(
うち
)
、
蓋
(
けだ
)
し察するに
余
(
あまり
)
あり。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
宮は
毎
(
いつ
)
よりも
心煩
(
こころわづらはし
)
きこの日なれば、かの筆採りて書続けんと
為
(
し
)
たりしが、
余
(
あまり
)
に思乱るればさるべき力も無くて、いとどしく紛れかねてゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
目を廻したのだと、療治に二百日
余
(
あまり
)
掛かるが、これは百五、六十日でなおるだろうといったそうである。戒行とは
剃髪
(
ていはつ
)
した
後
(
のち
)
だからいったものと見える。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
なほ浄瑠璃すみし
後
(
のち
)
は親しく
役々
(
やくやく
)
言葉の語りやうをば太夫へ質問するなぞ苦心のほど察するに
余
(
あまり
)
あり。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼はある男を探偵しつつ、またある女に探偵されつつ、一時間
余
(
あまり
)
をここに過ごしたのではなかろうか。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
就
(
つい
)
ては嬢さんをお助けなすった大夫は、身柄は小兼にお聞きになれば分りますが、
前々
(
ぜん/\
)
は今お話しの金森家の重臣で、千石
余
(
あまり
)
をお取り遊ばしたお方で、
主家
(
しゅうか
)
は
彼
(
あ
)
の通りの大変で
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
毎年
(
まいとし
)
降る大雪が
到頭
(
たうとう
)
やつて来た。町々の人家も往来もすべて白く
埋没
(
うづも
)
れて了つた。昨夜一晩のうちに四尺
余
(
あまり
)
も降積るといふ勢で、急に飯山は北国の冬らしい
光景
(
ありさま
)
と変つたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
その熱心実に感ずるに
余
(
あまり
)
ありといへどももし一般の人より見れば余り熱心過ぎてかへつてうるさしと思はるる所多からん。しかれども不折君はそれほど人にうるさがらるるとは知らであるべし。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
万事此室と同じように其室も純白に塗られていた。そして正面の壁によせて八尺
余
(
あまり
)
の箱があった。箱の中には人間がいる。フロックコートを上品に着た、体格容貌魁異極まる
洵
(
まこと
)
に堂々たる男である。
人間製造
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かれが
到頭
(
たうとう
)
家屋敷を抵当に取られて、
忌々
(
いま/\
)
しさの
余
(
あまり
)
に、その家に火を放ち、露顕して長野の監獄に捕へらるゝ迄其間の行為は、多くは暗黒と罪悪とばかりで、少しも改善の
面影
(
おもかげ
)
を
顕
(
あら
)
はさなかつたが
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
呉一郎
母子
(
おやこ
)
と塾生に関する事跡及び勝手口の唯一の締りとされおりたる径約一
寸
(
すん
)
、長さ四尺一寸
余
(
あまり
)
の竹の
支棒
(
つっかいぼう
)
が、不明の原因にて土間に脱落しおりたる以外に、犯人の指紋、足跡等の一切を認め居ず
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
奥様と殿様とは、嬉しさの
余
(
あまり
)
に、交る交る
抱附競
(
だきつきくら
)
をする。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
その
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な
風采
(
ふうさい
)
は、あたかも古武士が
鎧
(
よろい
)
を取って投懸けたごとく、白拍子が
舞衣
(
まいぎぬ
)
を
絡
(
まと
)
うたごとく、自家の特色を発揮して
余
(
あまり
)
あるものであった。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
行けよと命ぜられたるとなんぞ択ばん、これ有る
哉
(
かな
)
、紅茶と栗と、と貫一はその
余
(
あまり
)
に安く売られたるが
独
(
ひと
)
り
可笑
(
をかし
)
かりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それが二尺
余
(
あまり
)
になっても、まだ尽きる気色はなかった。代助の眼はちらちらした。頭が鉄の様に重かった。代助は強いても仕舞まで読み通さなければならないと考えた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初め独美は
曼公
(
まんこう
)
の遺法を尊重する
余
(
あまり
)
に、これを一子相伝に
止
(
とど
)
め、他人に授くることを拒んだ。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
しかしてもしこれら国芳の板画を以て更に寛政及びその以前の画家の作に比較すれば全くその外形を異にしたる背景風俗と共に幕末の人心のいかに変化せしかを想像するに
余
(
あまり
)
あり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
此の社を境にして下の
方
(
かた
)
を
宮下村
(
みやしたむら
)
と申し、
上
(
かみ
)
の方を宮上村と申すので、宮下の
方
(
ほう
)
は戸数八十
余
(
あまり
)
、人口五百七十ばかり、宮上村は湯河原のことで、此の方は戸数三十余、人口二百七十ばかりで
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼にしてもし
自
(
みずか
)
ら大歌人たらんとする野心あらんかその歌の発達は
固
(
もと
)
より
此
(
ここ
)
に止まらざりしや必せり。その歌の時に常則を脱する者あるは彼に発達し得べき材能の潜伏しありし事を証して
余
(
あまり
)
あり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
今まではお世辞を言って大ぶお
余
(
あまり
)
を貰っていたが
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
「そりゃお
前
(
まい
)
疾
(
とう
)
に済んだよ。」と
此方
(
こなた
)
も案外な風情、
余
(
あまり
)
の
取込
(
とりこみ
)
にもの忘れした、
旅籠屋
(
はたごや
)
の混雑が、おかしそうに、
莞爾
(
にっこり
)
する。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三百両は建築の
費
(
ついえ
)
を弁ずるには
余
(
あまり
)
ある金であった。しかし
目見
(
めみえ
)
に伴う
飲醼贈遺
(
いんえんぞうい
)
一切の費は
莫大
(
ばくだい
)
であったので、五百は
終
(
つい
)
に
豊芥子
(
ほうかいし
)
に託して、
主
(
おも
)
なる
首飾
(
しゅしょく
)
類を売ってこれに
充
(
あ
)
てた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
“余”の解説
余(よ)は、漢姓の一つ。
(出典:Wikipedia)
余
常用漢字
小5
部首:⼈
7画
“余”を含む語句
余程
残余
余光
剰余
余沫
有余
余裕
余燼
余波
零余子
磐余
余部
自余
余戸
余韻
持余
余計
余所行
余人
紆余曲折
...