五色ごしき)” の例文
上からながめると、みなと区から銀座にかけて、ネオンや電灯が、五色ごしきの星をばらまいたように、うつくしくまたたいています。
探偵少年 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
第二の浅草の記憶は沢山たくさんある。その最も古いものは砂文字すなもじの婆さんの記憶かも知れない。婆さんはいつも五色ごしきの砂に白井権八しらゐごんぱち小紫こむらさきいた。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこは雲の上までそびえ立った高い山のいただきで、はるか向こうの方に五色ごしきの雲がたなびいて、その中からまんまるい太陽がぎらぎら出てくる所です。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
五色ごしきばかりではなくの葉の黄ばんだのも面白く、又しみだらけになったのも面白い、これは唯其の人の好みによって色々になるのでございます。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかもその一つ一つが「助けてくれ助けてくれ」と五色ごしきの悲鳴をあげているのだから、平生なら抱腹絶倒の奇観なんだが
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
元日の礼式 は朝起きますとすぐに麦焦むぎこがしを山のように盛り立てて、その上へ五色ごしきの絹——ハンカチーフを集めたような物を旗のような具合に
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
大伴おほとも大納言だいなごんにはたつくびについてゐる五色ごしきたま石上いそのかみ中納言ちゆうなごんにはつばめのもつてゐる子安貝こやすがひひとつといふのであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
五色ごしきもていろどられた美しいつがいのおしどりはかれらに見入っている傍観者ぼうかんしゃなどすこしも気にかけず、つつましやかに、しかしむつまじげに遊んでいた。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
しかして富嶽の眺望の最も美しきはやはり浮世絵の色彩に似て、初夏晩秋の夕陽せきように照されて雲と霞は五色ごしきに輝き山は紫に空はくれないに染め尽される折である。
五色ごしきにいろどられた色紙いろがみ短尺たんざくが夜風にゆるくながれているのは、いつもの七夕の夜と変らなかったが、今年は残暑が強いので、それは姿ばかりの秋であった。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「どうしても好いが、——たとえば金を五色ごしきに分けて、赤い金、青い金、白い金などとしても好かろう」
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青い玉のようなものがぎらぎらとその周囲まわりに光っていた、それを見つけた時の俺の気もちと云うものはなかったよ、俺はなんだか五色ごしきの雲に包まれて、竜宮りゅうぐうへでも往って
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
くつさきもて押へたる五色ごしきたまを、小槌こづちふるひて横様よこざまに打ち、かの弓の下をくぐらするに、たくみなるは百に一つを失はねど、つたなきはあやまちて足など撃ちぬとてあわてふためく。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
づ口だけはていい事を言うて、其の実はお互に餌食えじきを待つのだ。又、此の花は、紅玉のしべから虹に咲いたものだが、散る時は、肉に成り、血に成り、五色ごしきはらわたと成る。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宿り木、かづらなどにてすくなくも一木ひとぎ五色ごしきの花附けぬはなくさふらへば、実れる木も多く、葉の紅葉もみぢはた雁来紅がんらいこうの色したる棕櫚しゆろに似たる木など目もあやに夕闇に浮び申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ポアッソニエの大通グランブールヴァルはもう五色ごしきの光の槍襖やりぶすまを八方から突出つきだしていた。しかしそれにされ、あるいはそれをけて行く往来の人はまだふるいにかけられていなかった。ゴミが多かった。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いしみな奇状両岸に羅列す、あるい峙立じりつして柱のごとく、或は折裂せつれつして門のごとく、或は渇驥かっきの間に飲むが如く、或は臥牛がぎゅうの道に横たわる如く、五色ごしき陸離りくりとして相間あいまじわり、しゅんおおむね大小の斧劈ふへき
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
もとより仲違なかたがひをしたSのお母さまのところではないにしても、どこか軽井沢か五色ごしきか、あの辺の山小屋みたいな別荘へ疎開してらつしやることと思ひ、むりやりさう信じようとしてゐました。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
これなお瞽者こしゃをして五色ごしきえらばしむるがごとし。いやしくもかの愚夫愚婦をして、おのおのその真とするものを信ぜしめば、ついに草鞋そうあい大王を拝するに至らん。これ手を拱して人をすつるの道なり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
ひるがえる五色ごしきの尾にたわむれるように、とびが一羽。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
五色ごしきゼリー 夏 第百七十八 胡瓜きゅうり茄子なす
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
染めてせ 五色ごしき
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
五色ごしきの糸を巻いたよな
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
五色ごしきのシナ縮緬ちりめん捲立まきたてられた柱もあれば、またある大きな柱は赤地に青と白との唐草からくさ模様の羅紗らしゃで捲立ててある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
毒々しい五色ごしきのもやが、目もあやに、もつれ合った。ある時は、芙蓉のうなじが、眼界一杯に、つややかな白壁の様に拡がって、ドキンドキンと脈をうった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
又その四隅には白木の三宝さんぼうを据えて、三宝の上にはもろもろの玉串たまぐしが供えられてあった。壇にのぼる者は五人で、白、黒、青、黄、赤の五色ごしきかたどった浄衣じょうえを着けていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まず口だけはていい事を言うて、その実はお互に餌食えじきを待つのだ。また、この花は、紅玉のしべから虹に咲いたものだが、散る時は、肉になり、血になり、五色ごしきはらわたとなる。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鈴のついた小鼓に、打つ手拍子踏む足拍子の音烈しく、アンダルジヤの少女をとめが両手の指にカスタニエツト打鳴らし、五色ごしき染色そめいろきらめくすそを蹴立てゝ乱れ舞ふ此の国特種の音楽のすさまじさ。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そのそばにきれいな風車かざぐるまいつけた。車がしきりに回る。車の羽弁はね五色ごしきに塗ってある。それが一色いっしきになって回る。白い棺はきれいな風車を絶え間なく動かして、三四郎の横を通り越した。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その七ツの燈火ともしびに照らされた向うの有様を見ると、見事な飾りをした広い廊下で、天井てんじょうや壁に飾り付けてある宝石だか金銀だかが五色ごしきの光りを照り返して、まことに眼もくらむばかりの美しさである。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
命なり散華の五色ごしき早や撒きて地に著かぬまを突入す我は
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そうかと思うと緑と白の段だらを付けてあるとか、あるいはむらさきの色とかいろいろの色があって五色ごしきどころじゃない。七色にも八色にもその隊が分れて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すると、私の癖として、止めどもない妄想が、五色ごしきの虹の様に、まばゆいばかりの色彩をもって、次から次へとき上って来るのです。あれをまぼろしというのでしょうか。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかしうしてもても母様おつかさんにうつくしい五色ごしきはねへちやあないから、またさうではなく、ほかにそんなひとるのかもれない、うしても判然はつきりしないでうたがはれる。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
老婦人が去った後、ひさごかきでかこってふたをかぶせて置くと、虫は俄かに変じて犬となった。犬の毛皮には五色ごしきあやがあるので、これを宮中に養うこととし、瓠と盤とにちなんで盤瓠ばんこと名づけていた。
舟は走る、五色ごしきの日本ライン鳥瞰図ちょうかんずが私の手にある。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
暗闇を裂く様な、烈しい音響が耳をつんざいたかと思うと、いきなり夫の首に取りすがった千代子の頭上に、パリパリと火花が散って、化物の様な五色ごしき光物ひかりものが拡ったのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おのおの名にそぐえる姿、鼓の緒の欄干に、あるいは立ち、あるいはて、手に手に五色ごしきの絹糸を巻きたる糸枠に、金色きんしょく銀色の細きさおを通し、糸を松杉の高き梢をくぐらして、つりの姿す。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼らはやはり五色ごしきかたどった浄衣じょうえをつけていた。泰親の姿は白かった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
五色ごしきのパノラマ、綺麗きイれいな。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
巌組いわぐみへ、池から水の落口の、きれいな小砂利の上に、巌の根に留まって、きらきら水が光って、もし、小雨のようにさします朝晴の日の影に、あたりの小砂利は五色ごしきに見えます。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五色ごしきの部屋部屋を通り過ぎ、大階段を昇ると、案の定、物音が大きく聞えて来る。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
(廉や、それはね、大きな五色ごしきはねがあって天上に遊んでいるうつくしい姉さんだよ。)
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は百万の資財を投じ、三年の年月としつきついやして、地殻上ちかくじょうに、一つの大きなおできを作り出した。眠り病にかかった城下町Y市の郊外に、突如とつじょとして五色ごしきの造花の様にけばけばしい腫物の花が開いた。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかしどうしてもどう見ても、母様にうつくしい五色ごしきはねが生えちゃあいないから、またそうではなく、ほかにそんな人が居るのかも知れない、どうしても判然はっきりしないで疑われる。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五色ごしきの雪
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
れんや、それはね、おほきな五色ごしきはねがあつて天上てんじやうあそんでるうつくしいねえさんだよ)
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
氏神の境内まで飛ばないと、蜻蛉とんぼさえたやすくは見られない、雪国の城下でもせせこましい町家に育ったものは、瑠璃るり丁斑魚めだか、珊瑚の鯉、五色ごしきふなが泳ぐとも聞かないのに、池を蓬莱ほうらいの嶋に望んで
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふねくやうに連中れんぢう大手おほて眞中まんなか洋傘かうもり五色ごしきなみとほりました。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ともえも出る、倶利伽羅の宮の石段の数から、その境内の五色ごしきこいし、==月かなし==という芭蕉ばしょうの碑などで持切って、二人の身の上に就いては何も言わず、またこっちから聞く場合でもなかったから
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)