すなわ)” の例文
すなわ曹国公そうこくこう李景隆りけいりゅうに命じ、兵を調してにわかに河南に至り、周王しゅく及び世子せいし妃嬪ひひんとらえ、爵を削りて庶人しょじんとなし、これ雲南うんなんうつしぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
御前ごぜん谷の下およそ一里ばかりにして、内蔵助くらのすけ谷と相対して東から落ち込む沢といえば、赤沢である。すなわち栂谷は赤沢と同じ沢であることが分る。
今日の事、同志の諸士、戦敗の余、傷残の同志を問訊もんじんする如くすべし。一敗すなわち挫折する、に勇士の事ならんや。切に嘱す、切に嘱す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
清閑せいかん消シガタシ。すなわ巾箱きんそうヲ開キ客歳かくさいノ詩ヲ閲シテ煩ヲリ冗ヲ除キテ一百首ヲ得タリ。ひそかニ浪仙ニ擬シ詩ヲ祭リテ労ニ報フ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
すなわち社内へ進入すすみいッて、左手の方の杪枯うらがれた桜の樹の植込みの間へ這入ッて、両手を背後に合わせながら、顔をしかめて其処此処そこここ徘徊うろつき出した。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
十六日海城丸に帰り十九日小蒸汽船にて旅順へおもむけり。大総督府附新聞記者は今ままさに上陸せんとする処なり。すなわち共に同新聞記者宿所に入る。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この芋焼器の「作用と効果」というのが、実に名文で、一読いちどく、やき芋屋へ走りたくなるという御婦人方には極めて蠱惑的こわくてきなものである。すなわち——
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
といったそうであるが、その某という学者はただそれだけの御用だ。これは何のためであるか、すなわわば国家の飾りだ。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
本町通——すなわち今の山口銀行のあるところから入る路がその主路になっていて、電車になる前の鉄道馬車はかなり後までそこを通っていたのである。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
この問題が定まればすなわちその目的を達するに最も近い最も適する文章がおのずから将来の文体となるのである——
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
堯典に曰く、二十有八さい放勲ほうくんすなわ徂落そらくせり、百姓考妣ふぼするが如くなりき、三年、四海しかい八音はちいん遏密あつみつせりと。孔子曰く、天に二日無く民に二王無しと。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
妾がこの行に加わりしは、爆発物の運搬に際し、婦人の携帯品として、他の注目を避くることに決したるより、すなわしょうをして携帯の任に当らしめたるなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
すなわち前記W氏の観察と、三項の談話とを通じて、この事件の真相をきわむべき、観察要項を列挙すれば左の如し。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
仕丁 (揚幕あげまくうちにて——突拍子とっぴょうしなるさるの声)きゃッきゃッきゃッ。(すなわ面長つらなが老猿ふるざるの面をかぶり、水干すいかん烏帽子えぼし事触ことぶれに似たるなりにて——大根だいこん牛蒡ごぼう太人参ふとにんじん大蕪おおかぶら。 ...
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すなわち先ずコレを我牧農の小村落に実施し、いて他に及ぼさんことを期し、コレを積善社と名づく。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
すなわち尋常紙上に記載する事件のはじめにおいて次をふて我儕の所見を叙述し、以てあまねく可否を江湖の君子にとわんとし、ここにその目を掲するに左の数項の外に出でず。
その結果は、ただに道徳上の破産であるのみならず、凡ての男女関係に対する自分自身の安心というものを全く失って了わねばまない、すなわち、自己その物の破産である。
性急な思想 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
その卦兆の辞を見るに「魚の疲れ病み、赤尾を曳きて流に横たわり、水辺を迷うが如し。大国これを滅ぼし、まさに亡びんとす。城門と水門とを閉じ、すなわち後よりえん」
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
人に恵まれたる物を食らいて腹を太くし、あるいは駆けまわり、あるいはみ合いて疲るればすなわち眠る。これ犬豕が世を渡るの有様にして、いかにも簡易なりというべし。
家庭習慣の教えを論ず (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
すなわちこれを独立地帯として、歳旦という特別な気分の下に生れた句を一括する所以ゆえんである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
上州の麻に煙草たばこ、江戸から来る雑貨類を互に交易するためには、少しも中山道を利用しなかったものが、鉄道はすなわち国境の山脈をただの屏風びょうぶにし終り、甘楽かんらの奥の処々の米蔵
峠に関する二、三の考察 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
女がふりかえって微笑しながら、「初めより桑中そうちゅう無くして、すなわ月下げっかぐう有り、偶然にあらざるに似たり」と持ちかけたので、喬生は、「弊居咫尺へいきょしせき佳人かじんく回顧すべきや否や」
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
因つて校修を加へて以て改刻せんと欲すること一日に非ざるなり。独り奈何いかんせん、老衰日にせまり、志ありて未だ果さず、常に以てうらみとなす。すなわち門人茂質に命じて改訂に当らしむ。
杉田玄白 (新字新仮名) / 石原純(著)
すなわち善を求め善にうつるというのは、つまり自己の真を知ることとなる。合理論者が真と善とを同一にしたのも一面の真理を含んでいる。しかし抽象的知識と善とは必ずしも一致しない。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
昨年かの新聞が六千号を刊するに至ったとき、主筆が我文を請われて、予は交誼上こうぎじょうこれに応ぜねばならぬことになったので、すなわち我をして九州の富人たらしめばという一篇を草して贈った。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
小さな如来にょらいを安置した佛壇の中に「江東院正岫因公大禅定門」と記した位牌いはいがある、それぞまさしく三成の法名であったから、源太夫すなわってその前に至り、うや/\しく香をねんじて礼をした。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すなわち法を説いてのたまわく
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たすク可キ者ノ我国ニ欠損けっそんシテ而シテ未ダ備ハラザルヲ思ヒ此ニ漸ク一挙両得ノ法ヲもとメ敢テ退食たいしょくノ余暇ヲぬすンデ此書ヲ編次シすなわ書賈しょこヲシテ之レヲ刊行セシメ一ハ以テ刻下教育ノ須要ニ応ジ一ハ以テ日常生計ノ費ヲ補ヒテ身心ノ怡晏いあんヲ得従容しょうよう以テ公命ニ答ヘント欲ス而シテ余ヤト我宿志しゅくしヲ遂ゲレバ則チ足ル故ヲ
朕祖宗ちんそそう遺列いれつ万世一系ばんせいいっけい帝位ていいちんカ親愛スル所ノ臣民しんみんすなわチ朕カ祖宗ノ恵撫慈養けいぶじようシタマヒシ所ノ臣民ナルヲおも康福こうふくヲ増進シ其ノ懿徳良能いとくりょうのうヲ発達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼賛よくさんともともニ国家ノ進運しんうん扶持ふじセムコトヲ望ミすなわチ明治十四年十月十二日ノ詔命しょうめい履践りせんここ大憲たいけんヲ制定シ朕カ率由そつゆうスル所ヲ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
張昺部下にして内通せる李友直りゆうちょく布政司ふせいし参議さんぎし、すなわち令を下して諭して曰く、予は太祖高皇帝の子なり、今奸臣かんしんの為に謀害せらる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すなわち富の勢力が一方において封建社会を呑みつつあるに、他方においては、封建社会はその活力を失うて、既に枯死こしせんとす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
すなわチ一策ヲ進メ京紳ノ間ニ周旋ス。事すなわチ行ハレズ。他日石河鵜飼うがいノ諸氏遊説スルヤ別勅終ニくだル。アルイハコレニもとづクカ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この時千思万考せんしばんこう佳句を探るに、天の川の趣はついに右三句に言ひ尽されて寸分の余地だもなき心地ここちす。すなわち筆をなげうっ大息たいそくして曰く、みなん已みなんと。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
すなわち、人間が喋ると口が動き、その附近の筋肉が伸縮する。その運動を、別の器械に通じて発電させそれでモーターを動かし、水を汲み上げるのである。
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
尋ねて見ると幸い在宿、すなわち面会して委細を咄して依頼すると、「よろしい承知した」ト手軽な挨拶あいさつ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
子曰く、しからざるかな、弗ざるかな。君子は世をおわるも名の称せられざるをむ。吾が道行なわれず。われ何を以てか自らを後世にあらわさん、と。すなわち史記に因りて春秋を作る。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
遂に事実の実を知り得てすなわち云く、自分は既に証明を得たれども、さて帰国の上これを婦人社会の朋友に語るも容易に信ずる者なく、かえって自分を目し虚偽を伝うる者なりとして
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
すなわちここに本会を組織し、その製作品の輸出に付いて特別なる便利を与えんと欲す。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
すなわ其処そこみしかば、落ちて隠れ入りたまふ間に、その火は焼け過ぎぬとある。是を直接に「鼠浄土」の古い形とまでは言えまいが、この話とても、やはり一つの昔話ではあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
れ幽明の異趣、すなわ詭怪きかいの多端、之に遇えば人に利あらず、之に遭えば物に害あり。故に大厲だいれい門に入りて晋景しんけい歿ぼっし、妖豕ようしに啼いて斉襄せいじょうす。禍を降し妖をなし、さいを興しせつをなす。
牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
読み尽してすなわち去るとあるのに出たということが、枳園の書後に見えておる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここおいテ項王すなわチ悲歌慷慨こうがいシ自ラ詩ヲつくリテいわク「力山ヲ抜キ気世ヲおおフ、時利アラズ騅カズ、騅逝カズ奈何いかんスベキ、虞ヤ虞ヤなんじ奈何いかニセン」ト。歌フコト数けつ、美人之ニ和ス。項王なみだ数行下ル。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
すなわち、走り家に還る
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち剣をひっさげて、衆に先だちて敵に入り、左右奮撃す。剣鋒けんぽう折れ欠けて、つにえざるに至る。瞿能くのうあいう。ほとんど能の為に及ばる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すなわち自由ならずといえども、なおその志を行わんとせり、彼は蟄居ちっきょ中なるにかかわらず、なお長防革命的運動の指揮官たりしなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
黒煙こくえんを吐く煉瓦づくりの製造場せいぞうばよりも人情本の文章の方が面白く美しく、すなわち遥に強い印象を与えたがためであろう。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
たまたま一、二巻の俳書を見る、敢て研究せず、熟読せず、句の解せざる者十中に九、すなわち巻をなげうつて他を為す。
俳句の初歩 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
これすなわち、わが国が、完全なる防空力を有する地殻ちかく及び防空硬天井ぼうくうこうてんじょうの下に、かくの如く地下千メートルの地層に堅固けんごなる地下街を建設したことによって
すなわち眼を閉じ頭顱かしらを抱えて其処そこへ横に倒れたまま、五官を馬鹿にし七情のまもりを解いて、是非も曲直も栄辱も窮達も叔母もお勢も我のわれたるをも何もかも忘れてしまって
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
けだし聞く、大禹鼎だいうかなえて、神姦鬼秘しんかんきひその形を逃るるを得るなく、温嶠犀おんきょうさいねんして、水府竜宮すいふりゅうぐうともその状を現すを得たりと。れ幽明の異趣、すなわ詭怪きかい多端たたんこれえば人に利あらず。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)