不便ふべん)” の例文
十六ではまだはりたなくつてもいゝといふのはそれは無理むりではない。しか勘次かんじいへでおつぎの一かうはりらぬことは不便ふべんであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私共わたしども今日こんにち生活せいかつから茶碗ちやわんつぼなどをなくしてしまつたならば、どれだけ不便ふべんなことであるかは、十分じゆうぶん想像そう/″\出來できるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
かれ夏休なつやすまへから、すこ閑靜かんせい町外まちはづれへうつつて勉強べんきやうするつもりだとかつて、わざ/\この不便ふべん村同樣むらどうやう田舍ゐなか引込ひつこんだのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
このへんは、まちるにはとおいし、お医者いしゃさまもいない、まことに不便ふべんなところですから、まん一の場合ばあいこまってしまいます。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
当時外国公使はいずれも横浜に駐剳ちゅうさつせしに、ロセツは各国人環視かんしの中にては事をはかるに不便ふべんなるを認めたることならん、やまいと称し飄然ひょうぜん熱海あたみに去りて容易よういに帰らず
ドーもこちらの世界せかいのお仕事しごとは、人霊じんれいのみでは何彼なにかにつけて不便ふべんがあるのではないかとぞんじられます。
「よし、それじゃそうしたまえ、だがふたりきりでは不便ふべんだからいまひとりぐらい増したらどうか」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
昨年は宿屋やどやもなく、道路も悪く、旅行に不便ふべんであったところが、今年は大いに改良され、車も通ずれば旅館もできるというふうで、台湾の旅といえば、難儀とのみ思うが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かずらざる無學むがくひとには、一時いちじおどろかすの不便ふべんあらん文盲人もんまうじん不便ふべんどくながらかへりみるにいとまあらず。其便不便そのべんふべんしばらさしをき、かく日輪にちりんもとなり、つきつきものなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
明治めいぢ三十七ねん戰爭せんさうおこるや、又一またいち召集せうしふせられ、ゆゑかはりてこのきた留守るす監督かんとくすることとなれり。わが牧塲ぼくぢやう事業じげふやうやそのちよきしものにて、創業さうげふ困難こんなんくはふるに交通かうつう不便ふべんあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
引留ひきとめ其金にて不足も有ば濱町の堀部彌兵衞片岡源吾右衞門にて廿卅の金は借候べしと申渡し又貴樣の刀は寸延すんのびと見えたり室内のはたらきには不便ふべんなればこれまゐらせんと則光のりみつの二尺五寸有しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
場處ばしよ小石川こいしかは植物園しよくぶつゑんにちかく物靜ものしづかなれば、すこしの不便ふべんきずにしてほかにはまをむねのなき貸家かしやありけり、かどはしらふだをはりしより大凡おほよそ三月みつきごしにもなりけれど、いまだに住人すみてのさだまらで
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これつい不便ふべんな事は、其昔そのむかし朝夕あさいふ往来わうらいして文章を見せ合つた仲間の大半は、はじめから文章をもつて身をたてこゝろざしの人でなかつたから、今日こんにちでは実業家じつげふかつてるのも有れば工学家こうがくかつてるのも有る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
またさうした博物館はくぶつかんをこしらへるには非常ひじようおほきなものる、それをまはるだけでも二日ふつか三日みつかもかゝり、かへって不便ふべんになります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
蓮池れんち手前てまへからよこれる裏路うらみちもあるが、このはう凸凹とつあふおほくて、れない宗助そうすけにはちかくても不便ふべんだらうとふので、宜道ぎだうはわざ/\ひろはう案内あんないしたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あのさびしい、不便ふべんな、田舎いなかがなんでいいことがあろう。ぜひ、今年ことしうちに、むかえにいってつれてこなければならない。」と、息子むすこ毎日まいにちのようにおもっていました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうどみなさんの學校がつこうでも、あまりおほきい學校がつこうはかへって勉強べんきよう不便ふべんのことがあるのとおなじです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
いくらさしあげたいとおもっても、山国やまぐに不便ふべんなところでありましたから、さしあげるものもありませんでしたけれど、殿とのさまは、百しょう真心まごころをうれしくおもわれ、そして
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あんなさびしいやまなかかえってもしかたがないではありませんか。どうして、あの不便ふべんなところがいいのですか?」と、息子むすこは、父親ちちおやこころをはかりかねて、たずねました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんなように、いままでつごうがよく、便利べんりであったものが、すっかりくるってしまって、三十ねんも四十ねんものむかしかえったように、不便ふべんなみじめなさまになったのでありました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、時計とけいをそんな、たかいところにせておくのは、おかあさんにも、不便ふべんでありました。なぜならおかあさんは、すわっていて、時間じかんることができなかったからであります。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
石油せきゆける時代じだいはすぎて、いまでは、どんな田舎いなかへいっても、電燈でんとうをつけるようになりましたが、まれに、不便ふべんなところでは、まだランプをともしているところもあります。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
おれたちのむらばかり、毎日まいにちえたようでは、ほかのむらたいしても、こんなおおきなかねちながらみっともねえし、だいいちあさきるにも、仕事しごとやすむにも不便ふべんこまっちまうだ。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
行商人ぎょうしょうにんは、かえって汽車きしゃなどのとおらないところ、まちのないところ、不便ふべんなところほど、得意とくいつくるのに都合つごうがいいとされていましたので、少年しょうねんとて、不便ふべんやさびしいということは、覚悟かくごでありました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)